2024 年 73 巻 3 号 p. 530-538
日本では1994年まで,寄生虫病予防法に基づいて徹底した検査,治療,予防が行われ,特に蠕虫類感染症が劇的に減少した。同時に,寄生虫検査の需要が低下し,臨床検査技師の寄生虫検査に関する知識や技術が低下した。この結果,寄生虫検査を外部委託する施設の増加や経験不足による検査への不安を抱く臨床検査技師の数も増えている。この課題を明らかにするため,2020年,(社)日本臨床衛生検査技師会中部圏支部臨床一般部門で,中部圏6県の施設に対して寄生虫検査に関するアンケート調査を実施した。回答は163施設から寄せられ,そのうち寄生虫検査を実施している施設は125施設であった。検査センターへの委託理由では,検査依頼がほとんどない,試薬がない,内部精度管理ができないという理由が多く挙げられていた。特に糞便検査においては,正確な検査手順を実施できない可能性が見受けられた。また,臨床検査分野では精度管理や標準化が強く求められており,寄生虫検査においても適切な体制整備が必要である。さらに,寄生虫検査の研修に対する需要が高いことが明らかとなり,実技を含む研修会を定期的に開催し,技術向上をサポートする仕組みを構築することが非常に重要である。