医学検査
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症例報告
血液検査と腹部超音波検査にて経過を追えたワイル病の1症例
城戸 隆宏野崎 加代子大迫 亮子岡村 優樹久保 祐子日野出 勇次梅橋 功征西方 菜穂子
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2024 年 73 巻 4 号 p. 800-806

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抄録

症例は60歳代,男性。黄疸や眼球結膜充血などの臨床症状に加え,前医の血液検査にて肝機能障害,腎障害および血小板低下があり当院受診。腹部超音波検査(AUS)が実施され肝実質の輝度低下,内部脈管の相対的明瞭化,胆嚢内腔の虚脱,胆嚢壁の著明な肥厚といった急性肝炎を疑う超音波所見を呈していた。血液検査では総ビリルビン濃度(T-Bil)および胆道系酵素活性は上昇していたが,肝逸脱酵素であるASTやALTの活性上昇は僅かでAUS所見と解離した。単純CT検査で胆嚢壁は著明な浮腫性肥厚を呈していたが,総胆管結石など黄疸に起因する所見はなかった。全身状態の悪化が著しく,入院加療となった。血液培養検査は陰性で,第4病日に再度施行されたAUSでは胆嚢は正常形態を呈し,胆道系酵素活性は低下したが,T-Bil濃度は5.54 mg/dLと更に上昇し,第11病日には13.96 mg/dLまで上昇した。多彩な臨床症状,胆道系酵素活性の上昇,T-Bil濃度の顕著な上昇,患者の行動歴よりレプトスピラ症が疑われた。第15病日にレプトスピラに対する抗体価上昇が確認され,眼球結膜充血,黄疸,急性腎障害などの臨床症状を踏まえてワイル病(レプトスピラ症の重症型)と診断された。T-Bil濃度の顕著な上昇,胆道系酵素活性の上昇に加え,急性肝炎に類似したAUS所見で肝逸脱酵素活性の上昇を伴わない場合,鑑別疾患の一つとしてレプトスピラ症を挙げ,早期診断・治療に繋げることが重要である。

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© 2024 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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