【目的】大規模災害後には深部静脈血栓症(deep vein thrombosis; DVT)が増加するとされ,その原因として避難所環境,長期的な活動量の低下,車中泊などが考えられている。さらに加齢は一般的なDVTの危険因子であり,避難所でDVTを認める症例の多くは高齢者である。また,非被災地と比較したDVT検出率に関する報告は少ない。そこで,福井県敦賀市の一般住民(熊本地震被災地で実施したDVT検診対象者と同年代)を対象にDVT検診を実施し,DVT検出率とその背景因子について熊本地震での被災者と比較検討した。【方法】対象は敦賀市で実施した健康イベントに参加しDVT検診を希望した81名(男性24名,女性57名,平均年齢69.4 ± 8.0歳)とした。被災地群は熊本地震の被災者207名(男性48名,女性159名,平均年齢68.2 ± 16.1歳)とした。問診,下肢静脈超音波検査を実施し,被災地群と非被災地群に分類してDVT検出率と背景因子を比較した。【結果】被災地におけるDVT検出率は11.1%(23/207)であり,非被災地では2.5%(2/81)であった。両群間で有意差のあった項目はDVT,不眠,起立困難,臥床時間増加,脱水症状(排尿回数を減らすために意図的に水分摂取が低下することにより引き起こされる),車中泊,脂質異常症であった。非被災地のDVT検出率は低かったが,DVTがある一般住民にはひらめ静脈拡張を認めた。【結語】被災地におけるDVT検出率は一般住民の4倍以上であり,避難所環境に関連する因子がDVT発症の主な原因であった。