医学検査
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技術論文
RNA精製の必要がないAmpdirectTM 2019-nCoV検出キットの基礎的性能評価ならびにサイクル閾値の測定者間差についての検討
伊達 卓司戸田 宏文山出 健二上野 稔吉冨 一恵吉田 耕一郎上硲 俊法
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2025 年 74 巻 1 号 p. 81-87

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抄録

本研究はRNA精製の必要がないAmpdirectTM 2019-nCoV検出キット(株式会社島津製作所)の基本性能評価ならびにサイクル閾値の測定者間差について検討を行った。併行精度試験ならびに室内再現精度試験はEDX SARS-CoV-2 Standard(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を2濃度に調整した試料を測定し,サイクル閾値の変動係数(coefficient of variation; CV)が2%以下の安定した結果であった。検出限界試験はEDX SARS-CoV-2 Standardを6濃度に調整した試料を測定し,N1遺伝子が250 copies/mL,N2遺伝子が750 copies/mLと,COVID-19の検査室診断に十分な検出限界であった。2022年11月から2023年2月に測定された臨床検体を用いた国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに準拠した方法との比較では,全体一致率は96.3%(104検体/108検体)であった。不一致の4検体は,サイクル閾値が36以上の低ウイルス量の検体であった。サイクル閾値の測定者間差の検討では,サイクル閾値のCVは各々0.79~1.33%に収束しているものの,測定者間のサイクル閾値は多重比較検定により,有意差が認められた(p < 0.05)。本試薬は良好な基本性能を有し,SARS-CoV-2の検査室診断のツールとして臨床検査室での幅広い利用が期待できると考えられる一方で,サイクル閾値の定量的な評価には,測定者間差を考慮する必要があると考えられた。

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