日本惑星科学会誌遊星人
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火の鳥「はやぶさ」未来編 その26 ~リュウグウ帰還試料のキュレーション~
矢田 達 安部 正真岡田 達明中藤 亜衣子与賀田 佳澄宮﨑 明子西村 征洋坂本 佳奈子畠田 健太朗熊谷 和也古屋 静萌岩前 絢子吉武 美和人見 勇矢副島 広道長島 加奈金丸 礼山本 大貴林 佑深井 稜汰菅原 春菜鈴木 志野橘 省吾臼井 寛裕圦本 尚義藤本 正樹澤田 弘崇岡崎 隆司高野 淑識三浦 弥生矢野 創Ireland Trevor杉田 精司長 勇一郎湯本 航生矢部 佑奈森 晶輝Bibring Jean-PierrePilorget CedricBrunetto RosarioRiu LucieLoizeau DamianLourit LionelHamm Vincent中澤 暁田中 智佐伯 孝尚吉川 真渡邊 誠一郎津田 雄一
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2022 年 31 巻 2 号 p. 153-164

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抄録

2020年12月6日に小惑星探査機「はやぶさ2」はC型小惑星リュウグウ表層物質を収めた再突入カ プセルを地球に帰還させた.回収された再突入カプセルに収められた試料コンテナは,オーストラリア現地でのガス採取を実施した後,JAXA相模原キャンパスの惑星物質試料受入設備に搬入され,チェンバー導入前の部品取り外し・洗浄等のプロセスを経てクリーンチェンバー内で真空中での開封・高純度窒素環境下での帰還試料の取り出し・初期記載が行われた.これらのリュウグウ帰還試料の初期記載の結果,これまでに回収されたどの隕石よりも反射率が低く,全体密度が小さい事が判明した.また,赤外反射スペクトルの吸収特性から水酸基を含む含水鉱物と炭酸塩鉱物,及びCH結合に富む有機物が試料中に含まれることが明らかになった.これらの情報を既知の隕石と比較すると,CIコンドライト隕石に最も似ていると言える.また探査機搭載機器によって得られた可視・近赤外スペクトルと比較した結果,帰還試料はリュウグウ表層全体を代表している事が分かった.取り出された試料の一部は既に初期分析チーム,2次キュレーションチーム,NASAへ配分され,更に国際公募研究による配布が予定されている.本稿では一連の試料取り扱いプロセス・初期記載内容について述べる.

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© 2022 日本惑星科学会
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