【はじめに】当院では抗CD38抗体薬投与による不規則抗体検査の偽陽性反応の確認として,不規則抗体スクリーニング(以下,SC)赤血球のDTT処理をロット変更毎に実施し,保存している。また,DTT処理赤血球は不規則抗体の化学的性質確認にも有用である。今回,不規則抗体検査において抗LWが疑われ,DTT処理SC赤血球による確認が有用であった2症例を報告する。【症例1】70歳代女性。末梢性T細胞リンパ腫で治療中。B型RhD陽性,SC陰性。1カ月後Hb低下のため,赤血球製剤2単位依頼。SC陽性となり同定検査の結果,抗D様反応がみられた。DTT処理SC赤血球による不規則抗体検査で陰性化し,抗LWと判断した。計6単位の赤血球製剤で輸血副反応は発生しなかった。【症例2】90歳代女性。骨髄異形成症候群。O型RhD陽性,不規則抗体陽性。同定検査で抗D様の反応がみられ,DTT処理SC赤血球による不規則抗体検査で陰性化し,抗LWと判断した。計16単位の赤血球製剤で輸血副反応は発生しなかった。【考察】抗LWは臨床的意義のある抗体ではないが,RhD陽性赤血球との交差適合試験では不適合となる場合が多く,LW抗原がより少ないRhD陰性赤血球の使用が望ましいと考える。DTT処理赤血球による反応性確認は,抗D様自己抗体と抗LWの鑑別に重要である。今回,抗CD38抗体薬投与の偽陽性反応確認用DTT処理赤血球が抗LWの判断に有用であった。