2025 年 74 巻 1 号 p. 26-36
目的:超高齢化社会となった我が国において,心血管疾患を合併した症例は増加しており,心疾患が疑われる患者には検査を実施する,包括的術前評価の重要性は増している。当院では手術を控えた患者の入院前の外来期間を利用し,患者リスクを正確に把握しスムーズな入院治療,より安全な手術,早期退院を実現するという目的で,「入退院センター」という独自の部署が2015年度より設置された。2021年度からはこの入退院センター専用超音波予約枠を設け目的実現に努めているが,この心臓超音波検査において,どれ程の患者においてどのような検査所見が検出されたのか,検出された検査所見がどの程度の患者の周術期管理に寄与したのかは明らかになっていない。そこで今回我々は,心臓超音波検査を対象に,有意所見の検出率と,超音波検査結果の周術期管理への影響を後ろ向きに調査し,術前評価システム構築の重要性を考察した。方法:2021年4月より2023年3月までの期間で,入退院センター専用の予約枠より依頼された心臓超音波検査677例を対象とし調査した。結果:術前心臓超音波検査の追加依頼が発生したことで予定された手術日程が延期された症例は認められなかった。有意所見は全体の72%に認め,それぞれ周術期管理が必要・延期・中止等の対応が施されたことがわかった。結論:術前心臓超音波検査が患者,臨床にとって有益であることを改めて認識する結果となった。当院独自の部署である入退院センターの取り組みを合わせ,その詳細を報告する。