医学検査
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後天性凝固第V因子インヒビター症例における凝血学的検査所見の特徴
城田 紗希鈴木 敦夫柴田 悠奈桂木 裕実黒田 烈志弘津 真由子加藤 千秋松下 正
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2025 年 74 巻 1 号 p. 173-180

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抄録

後天性凝固第V因子インヒビター(acquired factor V inhibitor; AFVI)は,血液凝固第V因子(factor V; FV)に対する自己抗体である。後天性凝固因子インヒビターの中でも比較的稀な疾患であることからこれまでにまとまった報告が少なく,プロトロンビン時間(prothrombin time; PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time; APTT)そしてクロスミキシング試験などの凝血的検査所見の特徴は報告により様々である。今回我々は,AFVIの凝血学的検査所見の特徴を捉えるべく,当院で経験したAFVIの4症例を解析し検討を行った。解析にあたり,AFVIと同様にPTおよびAPTTの延長を呈し鑑別対象となるビタミンK欠乏症(vitamin K deficiency; VKD)および先天性FV欠乏症(congenital FV deficiency; CFVD)を比較対照としてその特徴を探索した。PTおよびAPTT延長の観点においては,VKDと比較した場合,AFVIおよびCFVDではPTの延長度に対しAPTTの延長がより顕著であった。これは測定試薬のFV活性に対する感受性が異なることに起因していることが示唆された。一方で,AFVIとCFVDではPTに対するAPTTの延長度を比較した場合,互いに大きな差を認めなかったが,クロスミキシング試験においてはAFVIのいずれの症例においてもインヒビターパターンを呈しており,凝固因子欠乏パターンを示すCFVDとはこの点で区別が可能であった。本検討において解析したAFVIは全てFVに対する明確な中和活性を認めるものであったが,AFVIの特徴として,測定試薬の凝固因子感受性に応じたPTおよびAPTTの延長度を比較し,かつクロスミキシング試験の結果を総合して考えることで,FV活性測定やFVインヒビター定量の結果を得る前に一定の予測が可能であり,VKDやCFVDとの鑑別が可能であることが示唆された。

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