2025 年 74 巻 3 号 p. 605-612
抗リン脂質抗体を有したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の症例を経験したので報告する。症例は80歳代男性,背部痛を主訴に近医を受診,多発骨腫瘤を指摘された。PET-CT検査でFDG高集積リンパ節腫大を認め,精査加療目的に当院紹介となった。入院時検査でAPTT:61.0 sec,IgM:1,239.3 mg/dL,sIL-2R:2,608 U/mLと異常値を認め,免疫固定法でIgMκ型とIgMλ型のM蛋白が同定された。リンパ節生検でCD5,19,20陽性の細胞集団を認め,病理検査にてDLBCLと診断された。APTT延長の精査として,クロスミキシング試験は即時型,遅延型共にインヒビターパターン,希釈ラッセル蛇毒時間法:1.27,ELISA法にてIgM型抗カルジオリピン抗体(IgM型aCL)のみ陽性であったが,血栓症の既往無く抗リン脂質抗体症候群の診断には至らなかった。入院日よりデキサメタゾン投与と局所放射線治療が開始されると症状は改善,その後リツキシマブ併用化学療法が行われた。IgM値低下と共にAPTT正常化した経過よりAPTT延長はIgM型aCLが原因であり,ELISA法の測定原理からβ2GPI非依存性aCLであったと推測された。M蛋白を有する症例では,検査結果の適切な解釈が重要である。また,IgM型M蛋白を伴ったDLBCLは予後不良との報告があり,今後の経過には注意が必要である。
We report a case of diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) presenting with antiphospholipid antibodies. An elderly male patient presented to a local clinic with back pain and was found to have multiple bone lesions. PET-CT revealed lymph node enlargement with high FDG uptake, leading to referral to our hospital for further evaluation and treatment. Initial laboratory findings showed prolonged APTT (61.0 sec), elevated IgM (1,239.3 mg/dL), and increased sIL-2R (2,608 U/mL). Immunofixation identified both IgM κ and IgM λ M-proteins. Lymph node biopsy revealed CD5, CD19, and CD20 positive cell populations, confirming the diagnosis of DLBCL. Further investigation of prolonged APTT showed inhibitor patterns in both immediate and delayed mixing tests. Russell’s viper venom time was 1.27, and ELISA detected only IgM anticardiolipin antibodies (aCL). Despite these findings, antiphospholipid syndrome was not diagnosed due to the absence of thrombotic events. Treatment with dexamethasone and local radiation therapy was initiated, followed by rituximab-based chemotherapy. APTT normalized concurrent with declining IgM levels, suggesting that prolonged APTT was caused by β2GPI-independent IgM aCL, based on ELISA methodology. This case highlights the importance of careful interpretation of laboratory results in patients with M-proteins. Moreover, as DLBCL with IgM M-protein reportedly carries a poor prognosis, careful monitoring of disease progression is warranted.
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma; DLBCL)は全非ホジキンリンパ腫の約30%を占め,最も頻度の高い悪性リンパ腫である1)。発症年齢の中央値は60歳代で,やや男性に多いとされている。リンパ節以外の節外臓器に発生することもある。組織学的に大型のリンパ腫細胞がびまん性に増殖し,免疫学的にCD19,CD20,CD22,CD79aなどの陽性率が高く,それに加えCD5,CD10やBCL-2などが陽性となることもある。DLBCLは全身の諸臓器に発生し,複数の亜型に分類される不均一な疾患単位であり,臨床像,病理組織像,免疫組織学的所見及び遺伝子変異などの特徴により細かく分類されている2)。また,IgM型M蛋白血症を伴ったDLBCLはM蛋白血症を伴わないDLBCLと比較して予後不良であり,特徴的なサブタイプであると報告されている3)。今回,DLBCLにM蛋白血症を合併し,同時にAPTT延長と抗リン脂質抗体陽性を示した症例を経験したため報告する。
年齢・性別:80歳代男性。
既往歴:高血圧症,腰痛症,変形膝関節症,睡眠時無呼吸症候群。
家族歴:肝臓癌(母),膵臓癌(妹),脳腫瘍(甥)。
生活歴:喫煙無し,機会飲酒。
現病歴:20XX − 2年よりIgM型M蛋白血症(IgM:864 mg/dL,20XX − 2年6月)を認めていた。20XX年3月より背部痛を訴え,近医を受診,MRI検査にて胸椎の多発骨腫瘤を指摘された。PET-CT検査も施行され,胸椎と腰椎など全身に多発するFDG高集積腫瘤に加え,頸部,鎖骨上窩及び縦隔に多発するFDG高集積リンパ節腫大を認めた。その後,腫瘍圧迫が原因と考えられる下肢の筋力低下など全身状態の悪化を認めたため,精査加療目的のために当院へ紹介となった。
入院時CT及びMRI検査では胸椎の一部に骨破壊を伴う軟部影を認めた(Figure 1a, b)。PET-CT検査では胸椎及び腰椎と仙骨及び左腸骨に複数のFDG集積亢進病変さらに,両側鎖骨上窩,両側上縦隔,左腋窩など広範囲にFDG高集積リンパ節腫大を認めた(Figure 1c)。血液検査ではAPTT:61.0 sec,Ferritin:351.2 ng/mL,IgG:542.5 mg/mL,IgM:1,239.3 mg/mL,sIL-2R:2,608 U/mLと異常値を認めた(Table 1)。蛋白電気泳動ではβ分画とγ分画にM-peakを認め(Table 2, Figure 2a),免疫固定法は血清でIgM-κ型とIgM-λ型のM蛋白,尿ではベンスジョーンズ蛋白(Bence Jones protein; BJP)κ,λがそれぞれ検出された(Figure 2b, c)。左腋窩リンパ節生検が施行され,フローサイトメトリー(Flowcytometry; FCM)検査,病理検査及び遺伝子・染色体検査が行われた。FCM検査にてリンパ球ゲーティングで解析を行うと少数ではあるがCD5,19,20陽性でCD11c弱陽性,CD19陽性細胞においてκ鎖有意な軽鎖制限を認める集団が認められた(Figure 3)。また,検体処理時に作成したタッチスメアでは15~30 μmの大型異常リンパ球を認めた(Figure 4a)。

CT検査及びMRI検査で骨破壊を伴う軟部影を認める(赤矢印)。PET-CT検査では胸椎及び腰椎,仙骨,左腸骨に複数のFDG集積亢進病変(黄矢印)を認めた。
| 末梢血検査 | 凝固検査 | 生化学・免疫学検査 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| WBC | 4.96 × 109/L | PT | 11.9 sec | TP | 7.3 g/dL | Na | 143 mmol/L |
| RBC | 4.63 × 1012/L | PT% | 97.3% | Alb | 4.4 g/dL | K | 3.8 mmol/L |
| Hb | 14.0 g/dL | PT-INR | 1.01 | CK | 31 U/L | Cl | 107 mmol/L |
| Ht | 42.0% | APTT | 61.0 sec | AST | 18 U/L | Ca | 9.3 mg/dL |
| MCV | 90.7 fL | APTT% | 27.4% | ALT | 11 U/L | IP | 2.3 mg/dL |
| MCH | 30.2 pg | Fib | 417 mg/dL | LD | 165 U/L | CRP | 0.61 mg/dL |
| MCHC | 33.3% | D-dimer | 0.8 mg/L | ALP | 104 U/L | PCT | 0.05 ng/dL |
| Ret | 1.1% | AT | 91.5% | γGTP | 20 U/L | KL-6 | 456 U/mL |
| PLT | 188 × 109/L | TAT | 1.0 ng/mL | T-Bil | 0.6 mg/dL | Ferritin | 351.2 ng/mL |
| 血液像 | PIC | 0.6 μg/mL | D-Bil | 0.2 mg/dL | Mg | 2.2 mg/dL | |
| N.band | 2.0% | UA | 5.6 mg/dL | IgG | 542.5 mg/dL | ||
| N.seg | 72.5% | Cre | 0.88 mg/dL | IgA | 202.5 mg/dL | ||
| Eo | 1.0% | UN | 19 mg/dL | IgM | 1,239 mg/dL | ||
| Baso | 1.0% | Glu | 123 mg/dL | BNP | 8.5 pg/mL | ||
| Lympho | 17.5% | HbA1c | 5.3% | sIL-2R | 2,608 U/mL | ||
| Mono | 6.0% | ||||||
| 濃度(g/dL) | 割合(%) | |
|---|---|---|
| アルブミン分画 | 4.55 | 64.0 |
| α1グロブリン分画 | 0.21 | 3.0 |
| α2グロブリン分画 | 0.63 | 8.9 |
| βグロブリン分画 | 0.97 | 13.7 |
| γグロブリン分画 | 0.74 | 10.4 |

蛋白電気泳動ではβ分画及びγ分画にM-peakを認める。血清検体における免疫固定法ではβ分画のM-peakにIgM-λ型及びγ分画のM-peakにIgM-κ型のM蛋白を認めた。尿検体における免疫固定法ではβ分画のM-peakにλ型及びγ分画のM-peakにκ型のベンスジョーンズ蛋白を認めた。

CD45蛍光強度と側方散乱光強度によるリンパ球ゲーティング。少数ではあるがCD5,19,20陽性,CD11c弱陽性,CD19陽性集団は細胞表面κ陽性及びλ陰性であり軽鎖制限のあるB細胞集団を認める(黒い円内)。また,タッチスメアで認められる大型細胞領域のゲーティングでもリンパ球ゲーティングと同様の細胞表面抗原パターンを示すB細胞集団が認められた。

aはタッチスメア標本。多数の小リンパ球を背景に大型(15~30μm)で核形不整を伴った異常リンパ球が認められる。bは病理標本。大型~中型の異型リンパ球のびまん性増生が認められる。異型リンパ球はCD20陽性,半分程度でBCL-2陽性,一部CD5,BCL-6陽性,CD10陰性であった。
病理検査ではリンパ節の基本構造は認めず,中型から大型の異型リンパ球がびまん性に増生しており,異型リンパ球はCD20陽性,半数でBCL-2陽性,一部CD5,BCL-6陽性,CD10陰性であった(Figure 4b)。これらの所見よりDLBCLと診断された。リンパ節生検検体のG-banding検査は増殖不良のため解析できなかった。骨髄検査ではDLBCLの浸潤は認めなかった。
また,APTT延長の精査目的にクロスミキシング試験が施行された。即時型,遅延型共に上に凸のインヒビターパターンとなり,ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)陽性または凝固因子インヒビターの存在が疑われた(Table 3, Figure 5)。凝固因子欠乏や凝固因子インヒビターの存在は認めず,希釈ラッセル蛇毒時間(diluted Russell’s viper venom time; dRVVT)検査は1.27(基準値1.20以下)であり(Table 4),LA陽性が疑われた。そこで,ELISA法による抗リン脂質抗体の測定を行い,IgM型抗カルジオリピン抗体(IgM型aCL)のみ陽性であった(Table 5)。しかし,患者には現在に至るまで血栓症のエピソードは無く,抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome; APS)の診断には至らなかった。
| 正常血漿割合[%] | 0 | 10 | 20 | 50 | 80 | 90 | 100 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 即時型[sec] | 62.5 | 62.2 | 61.9 | 60.0 | 55.9 | 50.1 | 31.1 |
| 遅延型[sec] | 66.3 | 65.1 | 63.8 | 62.2 | 48.7 | ― | 28.0 |

即時型(青),遅延型(2時間,37℃でインキュベート,赤)共に上に凸でありインヒビターパターン。
| 凝固検査 | |||
|---|---|---|---|
| 第II因子 | 86% | 第VII因子インヒビター | 陰性 |
| 第V因子 | 90% | 第VIII因子インヒビター | 陰性 |
| 第VII因子 | 72% | von willebrand因子抗原定量 | 129% |
| 第VIII因子 | 70% | von willebrand因子活性 | 120% |
| 第IX因子 | 95% | PIVKA-II | 1.0 μg/mL |
| 第X因子 | 66% | FDP | 3.0 μg/mL |
| 第XI因子 | 74% | LA(dRVVT) | 1.27 |
| 第XII因子 | 58% | 中和前 | 49.8 sec |
| 第XIII因子 | 123% | 中和後 | 39.3 sec |
| 抗リン脂質抗体 | 測定値 | 参考基準範囲 | 健常人99パーセンタイル | 単位 |
|---|---|---|---|---|
| aCL IgG | 3.1 | < 10 | < 12.3 | U/mL |
| aPS/PT IgG | 1.6 | < 12 | < 19.1 | U/mL |
| aCL IgM | > 80 | < 8 | < 10.9 | U/mL |
| aβ2GPI IgM | 16.6 | ≤ 20 | < 18.0 | SMU |
左腋窩リンパ節生検のFFPE標本よりDNA抽出を行い,MYD88遺伝子及びCD79B遺伝子変異をダイレクトシークエンス法にて解析した。MYD88 L265P変異は陽性,CD79B Y196変異は陰性であった。
入院日より悪性リンパ腫による神経症状が強く疑われたため,デキサメタゾン(6.6 mg/day)が開始され,脊椎腫瘍に対する局所放射線照射も開始された。速やかに背部痛や筋力低下症状の改善を認めた。その後,患者の居住地域へ転院となり,リツキシマブ併用化学療法が転院先で開始された。デキサメタゾン投与開始時より徐々にAPTTは短縮傾向となり血清IgM値,sIL-2R値も低下していた(Figure 6)。

入院初日より放射線照射とデキサメタゾンが開始された。転院後よりリツキシマブ併用化学療法が開始された。治療経過中にIgM値及び血清sIL-2R値は低下傾向,APTTは正常化した。
抗リン脂質抗体を有したDLBCL症例を経験した。治療経過中に臨床症状の改善とIgM値低下に伴い,APTTが正常化したこと,dRVVTによるLA陽性,ELISA法によってIgM型aCLが検出されたことから,DLBCLに由来するIgM型M蛋白がAPTT延長を引き起こした原因であると考えられた。
aCL-ELISAの測定原理は,ウエルに固相化したカルジオリピンに,緩衝液中に含まれるウシ血清由来のβ2-グリコプロテインI(β2-GlycoProtein I; β2GPI)を結合させ,構造変化を誘発することでβ2GPI分子上に出現するネオエピトープにてβ2GPI依存性aCLとして捉え,POD標識抗ヒトIgG/IgM抗体にてサンドイッチ法を行い,色原性基質を発色させることにより定量する。しかし,測定原理上,β2GPI依存性aCL(APSの血栓性病態に特異性の高い抗体)以外にも固相化カルジオリピンに直接結合するβ2GPI非依存性aCL(膠原病,造血器腫瘍,感染症等で出現する抗体)も混在して検出してしまうことが知られている4)。一方で抗 β2GPI(aβ2GPI)-ELISAでは,γ線照射等により陰性荷電を導入したウエルに精製ヒトβ2GPIを結合させ構造変化を誘発させることにより,β2GPI分子上のエピトープに対する抗体を特異的に測定する5)。本症例ではIgM型aCLのみ検出されており,IgM型aβ2GPIは基準値範囲内であった。この結果から,aCL-ELISAにて測定されたIgM型aCLが β2GPI依存性aCLではなく固相化カルジオリピンに直接結合するβ2GPI非依存性aCLであったと推測される。APTT測定についてはリン脂質の量が限られたin vitroで反応を行うため5),IgM型M蛋白がリン脂質を介した凝固反応を阻害し,APTT延長を来したと考えられる。
多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症をはじめとするM蛋白血症を伴うB細胞性腫瘍では,様々な検査の測定にM蛋白が干渉し,異常値となることがしばしばある6),7)。特に生化学・免疫学的検査領域ではM蛋白による影響も大きく,M蛋白による干渉を軽減するための様々な対策が報告されている。一方で,凝固検査においてはM蛋白による干渉を軽減するような検討報告は少なく,影響を回避することは困難なのが現状である。M蛋白血症を伴うB細胞性腫瘍症例では,凝固検査におけるM蛋白の干渉も想定し,異常値や臨床的に合致しない結果であった場合は,M蛋白による影響である可能性を考慮する必要がある。過去にはIgM型M蛋白がカルジオリピンと結合し,凝固反応を阻害するといった報告8),9)やM蛋白を伴ったB細胞リンパ腫において,抗リン脂質抗体とAPTT延長を認め,治療後に検査値が改善した報告10)もあり,凝固検査への干渉は珍しくはない。凝固検査は出血及び血栓傾向を調べる上で重要な検査であり,結果の適切な解釈が病態把握や治療方針の決定に重要となる。M蛋白を有する患者の検体を測定する際には臨床症状や病態を確認し,合致しない検査結果を認めた場合には,M蛋白による影響も考慮して,検査結果を判断する必要がある。
最近,IgM型M蛋白血症を伴ったDLBCLは特徴的なサブタイプ(IgM-secreting DLBCL; IgMs-DLBCL)であると報告されている。このIgMs-DLBCLは非IgMs-DLBCLと比較して予後不良であることや高齢好発,骨髄浸潤や全身性のリンパ節外局在を特徴とする。また,DLBCLは遺伝子プロファイリング解析に基づくCell of origin(COO)による分類では,活性型B細胞(activated B-cell type; ABC type)と胚中心B細胞型(germinal center B-cell type; GCB type)に分けられるが,IgMs-DLBCLは非GCB/ABC typeの頻度が高いと報告されている3)。ABC typeは予後不良であり11),再発や中枢神経浸潤(CNS)を来しやすいとも報告されている12)。IgM型M蛋白の存在はDLBCLにとって予後不良因子の1つであると考えられる。本症例はMYD88 L265P変異陽性でMCDサブタイプ(LymphGen分類)13),免疫染色にてCD10陰性でBCL-6陽性率も低い点から非GCB/ABC type(Hans分類)14)に該当すると考えられ,治療経過は良好であったが今後の経過には注意する必要があると考えられる。
本症例は山口大学医学部附属病院IRBにて承認を受けている(管理番号:20230322-5-2)。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。