2025 年 74 巻 4 号 p. 764-771
クロスミキシングテスト(Cross Mixing Test; CMT)は,活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time; APTT)の延長を認める場合に,その延長原因の精査として用いられる。今回我々は,CMTの即時反応は基線近似パターン,遅延反応は下に凸のパターンを示したループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)陽性(軽症)血友病Aを経験した。症例は70歳代男性,腹部大動脈瘤の手術前後にペグ化遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤(アディノベイト)を投与し手術が行われた。アディノベイト投与翌日のCMTの即時反応・遅延反応はともに基線近似パターンであった。一方,アディノベイト投与前の第VIII因子活性は,加温により0.4%未満と低値を示した。これにより,患者血漿100%の凝固時間が著明に延長し,即時反応とは異なるパターンを示したと考えられた。凝固因子低下とLAが共存するサンプルでのCMTの解釈は,患者血漿100%の即時反応と遅延反応の差に着目することが重要と考えられた。また,数値判定法はアディノベイト投与前後においてすべての指標で判定結果はインヒビターであり,用いる指標の性能特性に寄与すると考えられた。そのため,CMTの波形パターンが不明瞭な場合や,視覚判定法と数値判定法の結果が異なる場合は,追加検査を行い鑑別する必要がある。
The cross mixing test (CMT) is used to investigate the cause of prolonged activated partial thromboplastin time (APTT). In the present study, we experienced a case of lupus anticoagulant (LA)-positive mild hemophilia A in which the immediate response of CMT showed an approximate baseline pattern and the delayed response showed a convex downward pattern. The patient, a man in his 70s, underwent surgery before and after surgery for an abdominal aortic aneurysm with pegylated recombinant factor VIII blood coagulation (Adinovate). Both immediate and delayed responses of CMT on the day after adinovate administration showed a baseline approximation pattern. On the other hand, Factor VIII activity before adinovate administration was low (< 0.4%) due to heating. This markedly prolonged the clotting time of 100% patient plasma, which may have resulted in a different pattern from the immediate response. For the interpretation of CMT in samples with both low coagulation factors and LA, it was important to focus on the difference between immediate and delayed reactions in 100% patient plasma. In addition, the numerical judgment method was considered to contribute to the performance characteristics of the indicators used, since the judgment results were inhibitory for all indicators before and after adinovate administration. Therefore, when the waveform pattern of the CMT is unclear or when the results of the visual and numerical judgment methods differ, additional tests should be performed to differentiate between them.
活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time; APTT)延長の原因には,血友病などの凝固因子低下や自己免疫性後天性凝固因子欠乏症,抗リン脂質抗体の存在等が考えられる1)。出血傾向となる凝固因子低下や自己免疫性後天性凝固因子欠乏症と,血栓傾向を示す抗リン脂質抗体では治療方針が異なるため,迅速な診断が必要とされる1)~4)。凝固因子活性や抗リン脂質抗体などは院内で検査を行っている施設は少なく結果に数日を要するが,クロスミキシングテストは当日中に結果を得ることが可能で,APTT延長を鑑別するスクリーニング検査として有用である。今回我々は,術前検査でAPTT延長を示し,クロスミキシングテストの解釈に苦慮したループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)陽症(軽症)血友病Aを経験した。また,ペグ化遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤(アディノベイト,武田薬品工業株式会社;以下,アディノベイト)投与前後のクロスミキシングテストおよび,第VIII因子活性の比較を行ったので報告する。
患者は70歳代男性,血液型A型。既往歴に糖尿病があり,他院にて腹部大動脈瘤を指摘され,手術目的に当院心臓血管外科へ紹介された。大腸ポリープ切除後に出血を来した既往あり。抗凝固薬の使用なし。来院時の術前検査で,APTT 122.0秒と著明に延長していた。生化学検査では肝機能異常,腎機能異常,電解質異常を認めず,血糖とヘモグロビンA1cが高値であった。術前検査結果をTable 1に示す。APTT延長の原因検索のため,残検体にてクロスミキシングテストを実施した。3.2%クエン酸加血漿を1,500 × gで15分間遠心し,上清を別のチューブに分注後,再度1,500 × gで15分間遠心後得られた血漿を用いた。全自動血液凝固測定装置CS-5100(以下,CS-5100),レボヘムAPTT SLA,レボヘム0.025M塩化カルシウム液,正常血漿としてコアグトロールNを使用した(いずれもシスメックス株式会社)。即時反応はCS-5100の自動希釈機能を使用し,正常血漿:患者血漿=10:0,9:1,8:2,5:5,2:8,0:10の6ポイントでAPTTを測定した。遅延反応は10:0,5:5,0:10の3ポイントを用手にて混合し,2時間加温後CS-5100でAPTTを測定した。即時反応は基線近似パターン,遅延反応は下に凸パターンを示した(Figure 1)。即時反応からLAや凝固因子インヒビターが示唆され,遅延反応から凝固因子インヒビターは否定的と考えられた。しかし,即時反応と遅延反応の波形パターンが大きく異なることから,その解釈が困難であった。追加検査として第VIII因子活性,第IX因子活性を各因子の欠乏血漿(シスメックス株式会社)を用いて凝固一段法にて測定を行い,第VIII因子活性17.8%,第IX因子活性87.6%であった。なお,LAによる影響を考慮し,患者血漿を段階希釈(4倍,16倍)して第VIII因子活性を測定した。4倍,16倍での第VIII因子活性値に希釈倍率をかけ戻した結果,15.4%,12.7%であり,LA存在下における凝固一段法の偽低値ではないと判断した5)。また,LA(dilute Russell’s viper venom time; dRVVT)をLA試薬DRVVT(シスメックス株式会社)を用いて測定したところ,1.73で陽性であった。外注検査として行われたフォンヴィレブランド因子(von Willebrand factor; vWF)活性79%,LA(リン脂質中和法)2.26で陽性,抗リン脂質抗体パネルはすべて陰性であった(Table 2)。以上よりループスアンチコアグラント陽性(軽症)血友病Aと診断された。遺伝子検査を実施し,第VIII因子遺伝子にミスセンス変異(exon18 c.5932A>G p.Ser1978Gly)を確認した(Figure 2)。
| 血液検査 | 生化学検査 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| WBC | 9.24 × 109/L | (3.30~8.60) | TP | 7.4 g/dL | (6.6~8.1) |
| RBC | 4.74 × 1012/L | (4.35~5.55) | ALB | 4.7 g/dL | (4.1~5.1) |
| Hb | 14.8 g/dL | (13.7~16.8) | GLB | 2.7 g/dL | (2.2~3.4) |
| Ht | 46.3% | (40.7~50.1) | Glu | 138 mg/dL | (73~109) |
| MCV | 97.7 fL | (83.6~98.2) | AST | 17 U/L | (13~30) |
| PLT | 128 × 109/L | (158~348) | ALT | 12 U/L | (10~42) |
| 凝固検査 | ChE | 301 U/L | (240~486) | ||
| PT | 11.2秒 | (10.5~13.5) | LD | 178 U/L | (124~222) |
| PTー% | 101.7% | (78.8~129.9) | T-Bil | 0.4 mg/dL | (0.4~1.5) |
| PT-INR | 0.99 | (0.88~1.12) | ALP | 69 U/L | (38~113) |
| APTT | 122.0秒 | (24.0~34.0) | T-Cho | 191 mg/dL | (142~248) |
| Γ-GT | 28 U/L | (13~64) | |||
| CRE | 0.71 mg/dL | (0.65~1.07) | |||
| eGFR | 82.0 mL/min/1.73 m2 | (≥ 90.0) | |||
| UN | 17 mg/dL | (8~20) | |||
| UA | 3.2 mg/dL | (3.7~7.8) | |||
| Na | 142 mmol/L | (138~145) | |||
| K | 4.4 mmol/L | (3.6~4.8) | |||
| Cl | 105 mmol/L | (101~108) | |||
| HbA1c | 7.5% | (4.9~6.0) | |||
( )内は基準範囲を示す。

| 第VIII因子活性 | 17.8% | (60~150%) | |
| 第IX因子活性 | 87.6% | (70~130%) | |
| LA(dRVVT) | 比 | 1.73 | (< 1.3) |
| LA1(低濃度リン脂質) | 55.3秒 | ||
| LA2(高濃度リン脂質) | 32.0秒 | ||
| vWF活性 | 79% | (60~170%) | |
| LA(リン脂質中和法) | 比 | 2.26 | (< 1.16) |
| スクリーン値 | 145.6秒 | ||
| コンファーム値 | 62.6秒 | ||
| 抗リン脂質抗体パネル | 抗CL IgG | 4.1 U/mL | (< 24.9 U/mL) |
| 抗CL IgM | 1.6 U/mL | (< 17.8 U/mL) | |
| 抗β2GP1 IgG | 9.2 U/mL | (< 14.4 U/mL) | |
| 抗β2GP1 IgM | < 1.1 U/mL | (< 8.8 U/mL) |
( )内は基準範囲を示す。

日本血栓止血学会による「インヒビターのない血友病患者の急性出血,処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン」を参考に,術中第VIII因子活性の目安値を100%に設定された。アディノベイトを手術直前に3,000単位ワンショット静注投与し,腹部大動脈瘤に対し腹部ステントグラフト内挿術,腰動脈塞栓術を施行された。手術後にアディノベイト3,000単位をワンショット静注投与し,以後翌日,翌々日に3,000単位を同様に投与された。術後の造影CTでエンドリークや血管損傷を認めず,経過良好で術後7日目に退院された。
アディノベイト3,000単位 × 2回投与した翌日にクロスミキシングテスト,第VIII因子活性を測定し,アディノベイト投与前後の比較を行った。アディノベイト投与前のクロスミキシングテストの即時反応,遅延反応はそれぞれ基線近似パターン,下に凸パターンであった。アディノベイト投与後のクロスミキシングテストの即時反応,遅延反応はともに基線近似パターンであった。第VIII因子活性はアディノベイト投与前14.5%,投与後127.5%であった。また,37℃ 2時間加温後の第VIII因子活性はアディノベイト投与前0.4%未満,投与後94.0%であった(Figure 3)。また,患者50%の即時反応と遅延反応の差はアディノベイト投与前11.4秒,投与後5.9秒,患者100%のそれは投与前107.3秒,投与後10.7秒であった。また,クロスミキシングテストの数値判定方法として,Rosner index(index of circulating anticoagulant;以下,ICA)や%Correctionなどの指標による定量的な判定方法が用いられている。本症例のアディノベイト投与前後のクロスミキシングテストをICA,1:1% Correction,4:1% Correction,CMT index,Was-ALD50法を用いて判定した(Table 3)。カットオフ値については,自施設で使用するAPTT試薬と測定機器による設定が望ましいが,既報にあるカットオフ値を参考にした。ICA,1:1% Correction,4:1% Correction,CMT indexのカットオフ値はそれぞれ12.4,72,50,9.7を用いた。Was-ALD50法のALD50はLAと凝固因子低下のカットオフ値87.8,Wasは第VIII因子インヒビターとLA・凝固因子低下のカットオフ値10.2を用いALD50とWasを組み合わせたマトリクス表にて判定した6)。その結果,アディノベイト投与前後の数値判定結果はすべての判定法でインヒビターであった。

| 投与前 | 投与後 | |||
|---|---|---|---|---|
| 数値結果 | 判定結果 | 数値結果 | 判定結果 | |
| Rosner index(ICA) (≥ 12.4:インヒビター陽性) |
41.4% | インヒビター | 43.6% | インヒビター |
| 1:1% Correction (< 72%:インヒビター陽性) |
46.4% | インヒビター | 34.4% | インヒビター |
| 4:1% Correction (< 50%:インヒビター陽性) |
20.2% | インヒビター | 11.1% | インヒビター |
| CMT index (< 9.7:インヒビター陽性) |
4.2% | インヒビター | 4.7% | インヒビター |
| Was-ALD50法 | ALD50:104.5% Was:−73.1% |
即時型インヒビター | ALD50:115.5% Was:−3.7% |
即時型インヒビター |
クロスミキシングテストはAPTTを測定している施設であれば実施可能な検査であり,また当日中に臨床側へ結果報告が可能なため,APTT延長原因の鑑別において有用な検査である。患者血漿と正常血漿を混合して即時反応と遅延反応の凝固時間をプロットし,波形パターンから視覚判定を行い鑑別する。即時反応と遅延反応が同様に上に凸または基線近似パターンを示した場合にLAパターンと判断し,遅延反応でより上に凸の傾向が強くなれば凝固因子インヒビターパターンと判断する1)。また,即時反応と遅延反応の両方で下に凸のパターンを示した場合に凝固因子欠乏パターンと判断する1)。LAはリン脂質依存性の凝固反応を阻害する免疫グロブリンであり,正常血漿との混合で患者血漿中のLAが凝固反応を阻害するため凝固時間の延長を示す。そのため,即時反応で上に凸または基線近似パターンを示し,遅延反応でもパターンが大きく変化しないことが特徴である1),7)。一方,血友病AはX連鎖潜性遺伝形式を示す先天性の出血性疾患であり,第VIII因子の量的・質的異常が原因である8)。クロスミキシングテストは,正常血漿と混合することで凝固因子が補充されるため,患者血漿50%の凝固時間は正常値に近い値を示し,即時反応・遅延反応ともに下に凸のパターンを示す1)。しかし,視覚判定法は視覚による判定のため客観性が低く,パターンが不明瞭な場合は判定に苦慮することが多い。また,種々の定量的な数値判定法が考案されており,その有用性が報告されているが6),9)~11),凝固因子低下とLAが共存するサンプルでの解釈方法は一部で検討されたデータのみであり,因子欠乏とインヒビターの共存下でどのように判定されるかは不明である。
アディノベイト投与前のクロスミキシングテストは,即時反応が基線近似パターンでLAを疑ったが,遅延反応が下に凸パターンであり,解釈に苦慮した。また,患者血漿50%の即時反応と遅延反応の差は11.4秒であったが,患者血漿100%のそれは107.3秒と明らかな差を認めた。一方,アディノベイト投与後のクロスミキシングテストは,即時反応・遅延反応ともに基線近似パターンであり,波形パターンに差を認めなかった。患者血漿50%の即時反応と遅延反応の差は5.9秒,患者血漿100%のそれは10.7秒であり,遅延反応のグラフは即時反応よりも凝固時間が全体的に延長していた。アディノベイト投与後の第VIII因子活性は,加温前127.5%から加温後94.0%に低下していたが正常範囲内での変化であり,患者血漿50%と患者血漿100%の即時反応と遅延反応の差に明らかな差を認めないことから,APTT延長原因はLAのみによるものと考えられた。しかし,アディノベイト投与前の遅延反応は,患者血漿の第VIII因子活性が加温により著明に失活し0.4%未満に低下したことで,患者血漿100%の凝固時間が高度に延長した結果,即時反応とは異なる波形パターンを示したと考えられた。凝固因子低下とLAが共存するサンプルでのクロスミキシングテストの即時反応は,LAによる阻害作用から下に凸パターンを示さない場合もあるため,患者血漿100%の即時反応と遅延反応の差に着目することが重要と考えられた。クロスミキシングテストに用いる試薬はLAの検出を目的として,LA感受性の高い試薬を使用することが推奨されているため,自施設で使用する試薬の特性を理解し使用することが重要であると考えられた12),13)。
また,数値判定法はすべての指標で判定結果はインヒビターであった。ICA,1:1% Correction,4:1% Correction,CMT index,Was-ALD50法のALD50は即時反応を用いた数値指標であり,アディノベイト投与前後で大差が認められなかったのは,即時反応で凝固時間の補正を認めなかったためと考えられた。1:1% Correctionと4:1% Correctionは,アディノベイト投与後の方が低値を示した。これは,アディノベイト投与後は因子低下の影響がないため,LAのみの影響からより低値であったためと考えられた。Was-ALD50法では,アディノベイト投与前後においてWasの数値に差を認め,投与前−73.1%,投与後−3.7%であった。Wasは患者血漿50%の加温後変化率を表したパラメータであり,アディノベイト投与前は,加温後の患者血漿100%の凝固時間が著明に延長したことから,患者血漿50%の加温後変化率が大幅にマイナスとなったためと考えられた。しかしながら,Wasは遅延型インヒビターの検出を目的としたパラメータであるため,アディノベイト投与前後の値に差異を認めたが,いずれも < 10.2%であったことから第VIII因子インヒビターは否定的という判定であった。数値判定法は単一の原因をもつサンプルでの指標のため,第VIII因子活性低下とLAを有する本症例での数値判定法での鑑別は困難であった。Matsudaら14)によると,第VIII因子活性低下とLAが共存するサンプルを用い,第VIII因子活性とLA力価の程度によって数値判定が因子欠乏もしくはLAと判定が異なることを報告している。このことは,第VIII因子活性低下とLAが共存するサンプルでのクロスミキシングテストの即時反応は,補正あり,または補正なしのいずれのパターンも示す場合があり,同一サンプルでも数値指標により判定が異なり,数値指標に用いる患者血漿の正常血漿による希釈の影響や,患者血漿の混合割合が性能特性に寄与する14)。そのため,第VIII因子活性低下とLAが共存するサンプルでのクロスミキシングテストの即時反応は,補正ありの場合でも正常血漿の希釈効果からLAを除外することはできず,また,補正なしの場合でも正常血漿の添加のため凝固因子低下を除外することはできないと考えられた。そのため,クロスミキシングテストの波形パターンが典型的でない場合や,視覚判定と数値判定の結果が異なる場合は,凝固因子活性定量やLA,抗リン脂質抗体などの追加検査を行う必要がある。特に,術前検査でクロスミキシングテストでの解釈が困難な場合は,凝固因子活性を確認する必要がある。
また,本症例と同一の変異はCoagulation Factor Variant Databasesにおいて1例登録されており15),第VIII因子抗原量と第VIII因子活性値が乖離した分子異常症であった。本症例は合成基質法による第VIII因子抗原量を測定していないため詳細は不明であるが,軽症例から検出されるミスセンス変異の多くは分子異常症であるとされており,本症例も分子異常症の可能性が示唆された16)。軽症血友病は日常生活において出血傾向を示さず,術前検査や観血的な処置において止血困難を示すことなどして初めて発見される場合がある17)。術前検査でAPTTが延長しているにも関わらず,精査を行わず手術が施行され,不幸な転機を辿った血友病症例が報告されているため,術前検査でAPTT延長を認めた際はその原因を検索することが重要である。本症例は第VIII因子活性低下に対し適切な治療が行われ,安全に手術が施行された症例であった。
今回我々は,APTT延長の原因精査のために行ったクロスミキシングテストの解釈に苦慮した,LA陽性(軽症)血友病Aの症例を経験した。数値判定法は指標により性能が異なることを理解し,またAPTT延長の原因が単一でない可能性を念頭に置き,波形パターンが典型的でなく解釈に苦慮する場合は,追加検査を行い鑑別する必要がある。また,凝固因子低下とLAが共存するサンプルでは,患者血漿100%の即時反応と遅延反応の差に着目することが重要と考えられた。
本研究は,川崎医科大学・同附属病院倫理審査機構の承認(承認番号6334-00)を得て実施した。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。