医学検査
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原著
Campylobacter属菌の同定方法に関する検討
川嵜 奈央有馬 由美子上田 舞衣子村谷 哲郎
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2025 年 74 巻 4 号 p. 645-651

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Abstract

Campylobacter属菌の代表的な菌種としてはCampylobacter jejuniCampylobacter coliCampylobacter fetusがある。今回,発熱を伴う基礎疾患のない下痢症患者の便の42℃微好気培養から,C. fetusを検出したことを契機に,Campylobacter属菌66株を用いてPCR,25℃と42℃の発育試験,馬尿酸塩加水分解試験,酢酸インドキシル加水分解試験を実施し,同定方法を検討した。発育試験にて,42℃では全株発育し,25℃で発育したのはC. fetus 6株のみであった。馬尿酸塩加水分解試験については判定時間を添付文書に記載の15分と,60分まで延長した場合で実施したが,感度はそれぞれ55.6%(20/36),88.9%(32/36)となった。また,60分まで延長しても偽陽性はなく,少なくとも60分まで延長する必要があると考えられた。酢酸インドキシル加水分解試験についても偽陽性はなく,感度は98.3%(59/60)であった。馬尿酸塩加水分解試験(判定時間60分)を用いた全66株のPCRとの同定一致率は93.9%(62/66)であった。Campylobacter属菌の同定において,C. fetusの多くが42℃で発育可能であること,馬尿酸塩加水分解試験の判定時間延長の必要性,補助試験としての酢酸インドキシル加水分解試験の有用性が示された。

Translated Abstract

Representative species of Campylobacter include Campylobacter jejuni, Campylobacter coli, and Campylobacter fetus. We experience a case that it has been detected C. fetus from culture of diarrhea stool at 42°C in a microaerobic condition. So, to investigate the identification of Campylobacter spp., we performed PCR as golden standard, growth tests at 25°C and 42°C, hippurate hydrolysis tests, and indoxyl acetate hydrolysis tests using 66 strains of Campylobacter spp. In the growth tests, all strains grew at 42°C, and only 6 strains of C. fetus grew at 25°C. The hippurate hydrolysis test was performed at the observation time of 15 minutes (manufacture’s insertion) and 60 minutes, and the sensitivity was 55.6% (20/36) and 88.9% (32/36), respectively. And there were no false positives when the test was extended to 60 minutes. There were no false positives in the indoxyl acetate hydrolysis test, and the sensitivity was 98.3% (59/60). The agreement rate between the PCR method and the biochemical property tests (using observation time 60 min for the hippurate hydrolysis test) was 93.9% (62/66). For the identification of Campylobacter spp., it was shown that many Campylobacter fetus subsp. fetus can grow at 42°C, that the observation time of the hippuric acid hydrolysis test needs to be extended up to at least 60 min, and that the indoxyl acetate hydrolysis test is a useful auxiliary test.

I  目的

Campylobacter属は直径0.2~0.9 μm,長さ0.5~5 μmのらせん状グラム陰性桿菌で,S字状やカモメ状で観察される。一端または両端に1本の鞭毛を有し,コークスクリュー様の回転運動性をもつ1)。2019年10月の時点で32菌種9亜種が登録されているが2),代表的な菌種にはCampylobacter jejuniCampylobacter coliCampylobacter fetusがあり,それぞれニワトリ,ブタ,ウシから高頻度に分離される。人への感染が多く報告されているのはC. jejuniC. coliで,腸管感染症や稀には菌血症,敗血症といった全身感染を起こす。最近は細菌性食中毒の中でも発生件数が増加しており,原因菌の95~99%はC. jejuniによるもので,C. coliは5%以下である3)。一方,C. fetusは腸管外感染症の報告が多く,髄膜炎や敗血症,心内膜炎,脳膿瘍などの原因となり,免疫不全者や新生児での報告が多い。腸管感染症についても報告されているが4),その頻度は低い。

2022年9月に徳山医師会病院に38℃の発熱を伴う下痢症の患者由来の便の微生物検査が依頼された。便のグラム染色で長いらせん状のグラム陰性桿菌を認め,変法スキロー培地(極東製薬工業株式会社)での42℃微好気培養で2日間培養したコロニーのグラム染色でも同様に,長いらせん状のグラム陰性桿菌を認めた(Figure 1A)。コロニーを用いたオキシダーゼ試験は陽性,馬尿酸塩加水分解試験は陰性であった。通常ならC. coliとするところであるが,形態が異なることからC. coliとは報告せずにらせん状グラム陰性桿菌と報告した。PCRを行ったところ,C. fetus subsp. fetusと同定された。この株は−80℃で保存したが,凍結より起こした株で再度発育試験を実施したところ,変法スキロー培地で42℃および25℃とも同等の発育を認めた。42℃で発育したことは成書の記述と異なるが,25℃での発育は一致していた。

Figure 1  グラム染色像 ×1,000

A:便を2日間微好気培養して発育したコロニーのグラム染色像。

長いらせん状のグラム陰性桿菌が見られた。

B,C:25℃で発育しなかった株のコロニーのグラム染色像。

全てらせん状のグラム陰性桿菌であったが,らせんの短いものが大半であり,一部長いものも見られた。

D,E:25℃で発育した株のコロニーのグラム染色像。

長く緩いらせん状のグラム陰性桿菌であるという共通点が見られた。

この事例を契機に,保存株を含め同定方法を見直したので報告する。

II  方法

1. 使用菌株

ひびきAMR研究会で−80℃で保存されていた,2014~2022年に血培から分離されたC. fetus 3株,便から分離されたC. fetus 1株,および便から分離されたCampylobacter spp. 62株の計66株を用いた。対象とした66株については,検査材料と分離年,および山口県または福岡県で分離されたということ以外は記録が残っていない完全匿名化された株である。

2. 同定に用いた方法

グラム染色は,neo B&M(富士フイルム和光純薬株式会社)を用いて,培養後のコロニーのグラム染色を行った。

オキシダーゼ試験はポアメディアオキシダーゼテスト(栄研化学株式会社),馬尿酸塩加水分解試験は馬尿酸塩ディスク(株式会社スギヤマゲン),酢酸インドキシル加水分解試験用ディスクはアセトン,酢酸インドキシル,6 mm径のペーパーディスク(アドバンテック東洋株式会社)を用いて作成した。

オキシダーゼ試験は,スティックに貼付したろ紙を微量の精製水で湿らせた後,培地からコロニーをとってディスクに塗り,1分以内に濃青色を呈したものを陽性とした。

馬尿酸塩加水分解試験は,小試験管にディスクとMcFarland No. 3.0以上に調整した菌液を入れて2時間培養後,ニンヒドリン試薬を2滴滴下し,15,20,25,30,60分後に観察した。添付文書では,ニンヒドリン試薬滴下後15分以内に青変したものを陽性とするとされているが,これまで15分では変化しなかった経験から,60分で青変したものを陽性としている。今回は,15分までを陽性とした場合と,60分までを陽性とした場合を比較検討した。

酢酸インドキシル加水分解試験は,培地からコロニーをとり,ディスクに塗り,滅菌蒸留水をスポイトで1滴滴下後,30秒後に青から青緑色に変化したものを陽性とした。

凍結保存株は,5%羊血液TSA培地(極東製薬工業株式会社)でアネロパック微好気ガスパック(株式会社スギヤマゲン)を用いて37℃,48時間培養後に使用した。その後の培養は血液寒天培地(極東製薬工業株式会社)を用いて,嫌気ジャー42℃または25℃でアネロパック微好気ガスパックを用いて行い,25℃での培養は,当院で真菌用に常設しているふ卵器を用いた。

3. PCRによる菌種同定

PCR用のDNA溶液は,50 mM NaOHにMcFarland No. 1.0程度懸濁し,98℃,10 min加熱後,2.5 mM Tris-HCl(pH 8.0)を4倍量添加したのち,10,000 × g,8 min遠心分離した上清を用いた。PCRは,KOD-Multi & Epi-®(東洋紡株式会社)を用いて,94℃,2 minに引き続き,98℃,10 sec,56℃,30 sec,68℃,15 secを30 cycle実施した。

使用したprimerをTable 1に示す。菌種同定は,Wangら5)の菌種特異的primerを用いて,multiplex PCRを実施した。C. fetusとなった株については,Moolhuijzenら6)の亜種特異的primerを用いて,亜種の同定まで実施した。またそれぞれのPCR実施時のコントロールとして,16S rRNAのCampylobacter spp.を含む多くの細菌に共通の配列の部位に設定したprimerを用いた。

Table 1 PCRに用いたPrimer配列

Primer name Size bps. Sequence (5'→3') Target gene
CF-sapB2-2509F 435 GCAAATATAAATGTAAGCGGAGAG C. fetus sapB25)
CF-sapB2-2943R TGCAGCGGCCCCACCTAT
CJ-hipO-322F 323 ACTTCTTTATTGCTTGCTGC C. jejuni hipO5)
CJ-hipO-644R GCCACAACAAGTAAAGAAGC
CC-glyA-337F 126 GTAAAACCAAAGCTTATCGTG C. coli glyA5)
CC-glyA-462R TCCAGCAATGTGTGCAATG
Bac-805R 801 GACTACCAGGGTATCTAATCC 16S rRNA
16S-11F GTTTGATCCTGGCTCAG
nC1165g4F 233 AGGACACAAATGGTAACTGG C. fetus subsp. venerealis 6)
nC1165g4R GATTGTATAGCGGACTTTGC

III  結果

1. 生化学性状試験

計66株を用いて実施したPCR,オキシダーゼ試験,25℃および42℃での培養,馬尿酸塩加水分解試験,酢酸インドキシル加水分解試験の結果をTable 2に示す。PCRにより,C. jejuni 36株,C. coli 24株,C. fetus 6株と同定された。また,C. fetus 6株は,すべてC. fetus subsp. fetusであった。また,全株グラム染色にてグラム陰性のらせん状桿菌であり,オキシダーゼ試験陽性,42℃で発育を認めた。25℃で発育したのは,C. fetus 6株のみであり,これら6株は酢酸インドキシル加水分解試験,馬尿酸塩加水分解試験ともに陰性であった。C. coli 24株は酢酸インドキシル加水分解試験陽性,馬尿酸塩加水分解試験陰性であった。これら2菌種はPCRとの同定一致率は100%であった。C. jejuni 36株中3株は馬尿酸塩加水分解試験陰性となり,ニンヒドリン試薬滴下後,15分以内で陽性となった株のみを陽性とすると,C. jejuniのPCRとの同定一致率は20/36(55.6%),60分までを陽性とすると32/36(88.9%)であった。また,60分を陽性とした場合でも,偽陽性株は存在しなかった。

Table 2 PCRおよび生化学性状試験の結果

PCR同定結果 OX 培養温度 IA 馬尿酸判定時間(min) 株数
42℃ 25℃ ≤ 15 ≤ 30 ≤ 60
C. jejuni + + + + + + 20
C. jejuni + + + + + 9
C. jejuni + + + + 3
C. jejuni + + + 1
C. jejuni + + + 3
C. coli + + + 24
C. fetus + + + 6

OX:オキシダーゼ

IA:酢酸インドキシル加水分解試験(indoxyl acetate hydrolysis test)

酢酸インドキシル加水分解試験については,C. fetus 6株はすべて陰性となり,C. coli 24株は全て陽性となった。試験陽性となるC. jejuniは36株中1株が陰性となった。

オキシダーゼ試験,馬尿酸塩加水分解試験,酢酸インドキシル加水分解試験,25℃での発育試験を組み合わせた結果と,PCRの結果との全体の一致率は,馬尿酸塩分解試験の判定時間を15分以内とした場合は75.8%(50/66),60分とした場合は93.9%(62/66)であった。

2. グラム染色による形態

グラム染色像の典型例をFigure 1B–Eに示す。Bに示す短いらせん状桿菌,Cに示す短いらせん状桿菌と一部長いらせん状桿菌の混在,D,Eは長く緩いらせん状桿菌が多数を占める像である。この3つの分類で,PCRによる同定との関係をTable 3に示す。今回用いた株に関しては,C. jejuni/coliC. fetusは鑑別可能であるという結果となった。

Table 3 グラム染色像による分類と菌種ごとの株数

短いらせん状
桿菌
一部長いらせん状
桿菌混合
長い緩いらせん状
桿菌
C. jejuni 36 0 0
C. coli 18 6 0
C. fetus 0 0 6

IV  考察

C. jejuniC. coliの発育温度は31~46℃で,25℃では発育できない。C. fetusの発育温度は20~40℃で,42℃では発育しないと記載されている7)。しかしながら,Schulzeらの報告8)では,C. fetus subsp. venerealis 81株中21株25.9%が42℃で発育し,C. fetus subsp. fetus 22株中20株90.9%が42℃で発育したと報告されている。この報告は2006年の報告であり,C. fetus subsp. fetusの90%は42℃で発育し,42℃で発育しない株も存在すると考えるのが妥当である。今回使用した6株は血液寒天培地42℃で十分な発育を認めており,42℃での培養でも25℃での培養でも同等の発育を認めた。C. fetusは42℃で発育しないという認識は改める必要があると考えられた。

保存されていたCampylobacter spp. 66株は,微好気培養で発育するグラム陰性らせん状桿菌,オキシダーゼ試験陽性であることを確認している株である。これらの株に対する既報4),5)のPCR primerを用いたPCR法による試験は,同定のゴールデンスタンダードとなると考える。そこでPCRによる同定をゴールデンスタンダードとして,グラム染色,オキシダーゼ試験,25℃および42℃での培養,馬尿酸塩加水分解試験,酢酸インドキシル加水分解試験の結果を検討した。オキシダーゼ試験陽性,グラム染色でのらせん状桿菌については全株満たしていたが,馬尿酸塩加水分解試験は,添付文書に記載の通り15分以内の青変のみを陽性とすると,感度は55.6%(20/36),60分以内に青変とすると88.9%(32/36)であった。また判定時間を60分とした場合でも特異度は100%であった。判定時間が15分か60分かにより,同定菌種が異なってしまうため,Campylobacter属菌の同定に用いる場合においては,馬尿酸塩加水分解試験の判定は60分まで延長すべきであると考えられた。判定時間を60分とした場合でも8.3%(3/36)が陰性であったことより,さらなる延長も必要かもしれないが検討はしていない。久松らの報告9)では,C. jejuni 219株中8株3.7%が馬尿酸塩加水分解試験陰性であったと報告しており,通常の馬尿酸塩加水分解試験では5%前後が陰性となる株が存在すると考えられた。今回陰性となった3株については再現性も確認できており,馬尿酸塩加水分解酵素の遺伝子hipOを有することから,産生されていない,または産生量が極めて少ない株であると考えられる。馬尿酸塩加水分解試験の結果は,使用する試薬によって感度特異度が異なることが考えられるため,判定時間を60分にするという見解は,あくまでも今回使用したスギヤマゲン社の試薬を用いた場合に限られる。他の試薬を使用する場合,感度特異度の検討が必要である。

今回グラム染色にて,C. fetusは長く緩いらせん状のグラム陰性桿菌であり,C. jejuni/coliと鑑別可能であった。C. fetusC. jejuniよりらせんの波長が長く,菌の球体化も起こらない10)。また,グラム陰性桿菌はセフェム系などの使用によりフィラメント化するが,Campylobacter spp.も例外ではなく,グラム染色像だけで判断することはできない。しかしながら,塗抹検査の時点で,長いらせん状のグラム陰性桿菌が見られた際は,C. fetusの可能性も考えるべきだと思われた。

今回の結果から,Campylobacter sp.の同定は,グラム染色によるグラム陰性らせん状桿菌,オキシダーゼ試験陽性であることを確認し,馬尿酸塩加水分解試験と25℃での発育を確認することにより,C. jejuni/coliC. fetusの鑑別は容易であると分かった。馬尿酸塩加水分解試験の感度については,添付文書の15分判定を採用すると,PCRとの同定一致率は55.6%と低いため,Campylobacter属菌の同定に用いる場合においては,60分まで延長する必要があると考えられた。当院では経験上60分判定を採用していたが,今回PCRによる同定との比較により,一致率が93.9%であり偽陽性もなかったことから,適切であったことが示された。しかしながら,約6%が偽陰性を示したことより,当院のようにPCR検査や質量分析の実施ができない施設では,一部C. jejuniC. coliと誤同定していると考えられた。近年,馬尿酸塩加水分解試験の弱陽性株が検出されているという報告もあり3),そのような株であった可能性も考えられる。

当院では変法スキロー寒天培地にて42℃で発育を確認した際,鏡検でグラム陰性らせん状桿菌であること,およびオキシダーゼ試験陽性を確認し,馬尿酸塩加水分解試験の結果によりC. jejuniC. coliを同定していた。今回の事例を経験したことから,馬尿酸塩加水分解試験が陰性の場合,C. fetusの可能性も考える必要があることが判明した。酢酸インドキシル加水分解試験が有用であると考え検討を行い,1株C. jejuniで偽陰性株があったが,再現性も確認できたことより,分解酵素産生量が少ない株であった可能性が考えられる。本検討の結果,酢酸インドキシル加水分解試験の一致率は98.4%となり,C. coliC. fetusを同定するにあたり,有用な試験であると考えられた。しかしながら,25℃での発育試験が感度,特異度とも100%であったことより,25℃での発育が不明瞭であった場合などの補助試験として備えておくことは有用であると考えるが,ルチンで使用する必要はないと考えられた。25℃の発育試験は,当院では真菌用の25℃のふ卵器を用いた。一般にふ卵器は室温+2℃から設定可能であるが,それ以下にする場合は,冷却装置付きふ卵器が必要である。冷却機能付きふ卵器がない場合,多くの細菌検査室の室温は25℃前後に管理されていると思われるので,室温での培養でもよいと考える。今回の試験の一部はひびきAMR研究会で実施したが,冷却機能付きふ卵器を有していないため,ふ卵器の電源を落として培養した。その際,最高最低温度計で48時間管理したところ,22~25℃であったが,C. fetus 6株のみ発育したことを確認したことからも室温培養でもよいと考えられる。

全体の同定一致率は93.9%であり,従来当院で行っていたグラム染色,オキシダーゼ試験,馬尿酸塩加水分解試験に25℃での発育試験を加えることで,より同定精度が向上する。C. fetusは家畜の伝染性流産,不妊の原因菌であり,人への感染は稀だが,菌に汚染された水や生レバーなどの食品を経口摂取することで感染が起こる。人への感染頻度が低いため,過小評価されがちだが,免疫不全者や妊婦,新生児に敗血症や髄膜炎,心内膜炎,関節炎などの重篤な感染症を引き起こす。C. jejuniC. coliと異なり,全身感染を起こす可能性が高いため,見落としがないようにすべきである。今回検討を行った25℃での発育試験および酢酸インドキシル加水分解試験は,自施設で検査ディスクの作成ができるため,当院のようにPCR検査や質量分析の実施ができない施設でも,Campylobacter属菌の同定方法の一つとして導入可能である。

V  結語

今回Campylobacter属菌の同定方法について検討した。発育温度について,様々な文献でC. fetusは42℃で発育しないとの記載があるが,Schluzeらの報告8)同様,本検討では,C. fetus subsp. fetus 6株すべてが42℃で十分に発育し,C. jejuni/coliとは42℃での発育では鑑別できなかった。一方,C. jejuni/coliは25℃で全株発育しなかったが,C. fetusは全株発育したため,これらの鑑別に25℃での発育試験が有用であった。また,酢酸インドキシル加水分解試験の検討も行ったが,25℃での発育試験が感度,特異度ともに100%であったことより,25℃での発育が不明瞭であった場合などの補助試験として備えておくことは有用であるが,ルチンで使用する必要はないと考える。

また,馬尿酸塩加水分解試験の検討にて,判定時間を添付文書に記載の15分から延長し,60分とすることで感度が上がり,特異度は100%であったことより,Campylobacter属菌の同定に用いる場合においては,60分まで延長することは必須であった。また,C. jejuniのうち馬尿酸塩加水分解試験陰性となる株が8.3%存在したことを認識しておく必要がある。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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