医学検査
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技術論文
抗リン脂質抗体測定試薬BioPlex® APLSの陽性陰性判断値の設定と臨床的有用性の検討
本木 由香里, 金重 里沙, 内藤 竜大, 吉山 透, 野島 順三
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2026 年 75 巻 1 号 p. 118-126

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Abstract

抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断には,抗リン脂質抗体の存在を証明する必要がある。抗リン脂質抗体はリン脂質およびリン脂質と血漿蛋白の複合体に対する自己抗体であり,患者ごとに保有する抗体が異なるため,定量検査では抗カルジオリピン抗体(aCL)と抗β2グリコプロテインI抗体(aβ2GPI)のIgGならびにIgMを測定することが重要である。これら4種類の抗体をIgGまたはIgM別に同時に測定可能な試薬として,新たにバイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社のBioPlex® APLS IgGキットとBioPlex® APLS IgMキットが2024年に保険収載された。本研究ではBioPlex® APLSの臨床的有用性を検証した。まず,健常人208例の各抗体価を測定し,測定値の99パーセンタイル値を抗体の陽性陰性判断値に設定した。さらに,APS患者50例および非APS(膠原病)患者50例の抗体価を測定した。APSと非APSの判別において,ROC解析により得られた曲線下面積は,aCL IgGで0.90,aβ2GPI IgGでは0.92と非常に高いAPS判別能を示した。また,同一抗体を検出する既存試薬の測定値との相関は,スピアマンの順位相関係数が0.49~0.92と良好であり,抗体の陽性陰性判定は既存試薬と89~99%一致した。BioPlex® APLSは簡便な操作で4種類の抗体をIgGまたはIgM別に同時に測定でき,既存の試薬と同等の検出精度を有しており,APSの検査診断に有用である。

Translated Abstract

To diagnose antiphospholipid syndrome (APS), it is essential to demonstrate the presence of antiphospholipid antibodies. These antibodies are directed against phospholipids or complexes of phospholipids with plasma proteins, and their types vary among patients. Therefore, in quantitative testing, it is important to measure both the IgG and IgM isotypes of anti-cardiolipin antibodies (aCL) and anti-β2-glycoprotein I antibodies (aβ2GPI). BioPlex® APLS IgG and BioPlex® APLS IgM, developed by Bio-Rad Laboratories, were added to the insurance reimbursement list in 2024. These reagents enable the simultaneous measurement of aCL and aβ2GPI antibodies for each isotype (IgG and IgM), respectively. This study evaluated the utility of BioPlex® APLS. First, antibody levels were measured in 208 healthy individuals, and the 99th percentile values were set as the cutoff points for determining antibody positivity. In addition, antibody levels were measured in 50 APS patients and 50 non-APS patients with collagen diseases. In distinguishing APS from non-APS, the area under the ROC curve was 0.90 for aCL IgG and 0.92 for aβ2GPI IgG, indicating high discriminatory ability. Furthermore, the correlation between measurements from conventional assays and those from BioPlex® APLS was moderate to strong, with Spearman’s rank correlation coefficients ranging from 0.49 to 0.92, and the positive/negative classifications showed 89–99% agreement with the conventional assays. BioPlex® APLS enables simultaneous measurement of four types of antibodies (two each of the IgG and IgM isotypes) through a simple procedure, and demonstrates detection accuracy comparable to that of conventional assays, supporting its utility in APS diagnosis.

I  はじめに

抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome; APS)は血中に抗リン脂質抗体を検出し,動脈血栓症や静脈血栓症,妊娠合併症などを発症する後天性血栓性素因である1)~3)。血栓のリスク因子となる抗リン脂質抗体は,リン脂質とリン脂質結合タンパクの複合体に対する自己抗体の総称であり,様々な抗体が知られている4),5)。APSを診断するためには,その存在を証明することが必須であり,抗リン脂質抗体によるリン脂質依存性凝固反応に対する阻害活性を検出するループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)検査と,抗リン脂質抗体そのものの存在を検出する定量検査があり,後者では抗カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibody; aCL)や抗β2グリコプロテインI抗体(anti-β2glycoprotein I antibody; aβ2GPI)のIgGクラスおよびIgMクラスの抗体価測定が実施される6),7)。

APS国際分類基準において抗リン脂質抗体価は酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)による測定が推奨されているが7),近年,自動分析装置を用いて測定する様々なsolid phase assay(SPA)試薬が複数メーカーより開発,販売されている。ELISAよりも迅速かつ簡便に測定することができ,さらに再現性の高いデータを得ることができるため,抗リン脂質抗体価測定は自動分析装置による測定が主流になりつつある。2023年12月にバイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社(BioRad社)の抗リン脂質抗体価測定試薬であるBioPlex® APLS IgGキットとBioPlex® APLS IgMキットが新たに薬事承認され,2024年6月に保険適用となった。今回,我々はBioRad社との共同研究にて,本試薬によるaCL IgG/IgMおよびaβ2GPI IgG/IgM測定における陽性陰性判断値を算出し,さらに既存の抗リン脂質抗体測定試薬との比較検討にてAPS検査診断における本試薬の臨床的有用性を検討した。

II  対象および方法

1. 対象

1) 検討対象試薬および比較対象試薬

検討対象試薬はBioPlex® APLS IgGキットおよびBioPlex® APLS IgMキット(BioRad社)であり,測定機器BioPlex® 2200システム(BioRad社)にてaCL IgG/IgMおよびaβ2GPI IgG/IgMを測定した。

比較対象試薬(対照試薬)として,ELISA試薬であるMESACUPTM-2カルジオリピンIgG/IgM(株式会社医学生物学研究所,MBL)にてaCL IgG/IgMを測定し,測定機器STACIA(PHC株式会社)を用いてMEBLuxTM test β2GPI IgG/IgM(MBL)にてaβ2GPI IgG/IgMを測定し,測定機器ACL AcuStar(Instru­mentation Laboratory)を用いてQUANTAFlash® APS(INOVA)にてaCL IgG/IgMおよびaβ2GPI IgG/IgMを測定した。

2) 対象検体

健常人検体として,健康状態や生活習慣による一次除外基準(喫煙 ≥ 25本/日,飲酒エタノール量 ≥ 75 g/日,BMI ≥ 28,妊娠中,または分娩後1年以内,慢性疾患による定期服薬中,入院を要する急性疾患または手術からの復帰後1週間以内)に該当せず,臨床検査94項目がすべて基準値範囲内であった208例(男:女=104:104,平均年齢42.5歳)の血清を用いた。

APS患者検体として,APS分類基準(Sydney revised Sapporo criteria)6)に基づいてAPSの診断が確定した患者の血漿50例,ならびに,非APS患者検体として,検体採取時点でAPS関連合併症(血栓症や妊娠合併症)のないSLE患者および膠原病患者の血漿50例を用いた(Table 1)。

Table 1 対象検体

APS 非APS
症例数 50 50
年齢(平均年齢 ± SD) 45.0 ± 13.5 54.2 ± 19.2
男/女 8/42 17/33
血栓症 38 0
 動脈血栓症 27 0
 静脈血栓症 19 0
妊娠合併症 15 0

2. 方法

1) 陽性陰性判断値の算出

検討対象試薬にて健常人208例の抗体価を測定した。得られた抗体価から99パーセンタイル値を算出し,抗体の陽性陰性判断値とした。99パーセンタイル値は,健常人の抗体価を適宜べき乗変換後,分布が正規化した場合はパラメトリック法を用い,分布が正規化しなかった場合はノンパラメトリック法を用いて算出した。

2) 有用性の検証

APS 50例および非APS 50例を検討対象試薬(BioPlex® APLS)にて測定し,ROC解析にてAPSの識別能を評価した。また,同検体を対照試薬にて測定した結果と比較し,試薬間の相関関係ならびに陽性陰性判定の一致率を検証した。対照試薬における抗体の陽性陰性判定は,日本抗リン脂質抗体標準化ワークショップにより検証,報告されている健常人99パーセンタイル値を用いた8)。

3) 統計解析

統計ソフトStatFlex ver. 7(Artech)を用いた。

III  結果

1. 陽性陰性判断値の算出

検討対象試薬(BioPlex® APLS)により測定した健常人208例におけるaCL IgG,aCL IgM,aβ2GPI IgG,aβ2GPI IgMの抗体価は,いずれも,べき乗変換処理後も非正規分布を示した。このため健常人99パーセンタイル値の算出にはノンパラメトリック法を用いた。各抗体の99パーセンタイル値は,aCL IgGで18.5 GPL-U/mL,aCL IgMでは25.7 MPL-U/mL,aβ2GPI IgGでは14.7 U/mL,aβ2GPI IgMでは25.3 U/mLであった。

2. 陽性陰性判断値に基づくAPS検査診断能の評価

1) BioPlex® APLSのAPS検査診断能の評価

BioPlex® APLSによるAPSおよび非APS患者の各種抗体の測定値はFigure 1のように分布していた。Figure 2に示すROC解析により得られた曲線下面積(AUC)はaCL IgGで0.90,aCL IgMでは0.59,aβ2GPI IgGでは0.92,aβ2GPI IgMでは0.61であった(Table 2)。

Figure 1  BioPlex® APLSによる各種抗体の測定値の分布

APSおよび非APS患者(各50例)における各種抗体の測定値の分布を示す。赤色の数値,直線,三角は健常人99パーセンタイル値を表す。

Figure 2  BioPlex® APLSによる各種抗体のROC曲線

APSおよび非APS患者(各50例)を対象としたAPSと非APSの判別能についてのROC曲線を示す。AUC:曲線下面積

Table 2 各試薬のAPS判別能:ROC解析による曲線下面積

BioPlex® APLS MESACUPTM-2 test MEBLuxTM test QUANTA Flash®
aCL IgG 0.90 0.92 0.89
aCL IgM 0.59 0.62 0.61
aβ2GPI IgG 0.92 0.94 0.93
aβ2GPI IgM 0.61 0.57 0.63

BioPlex® APLSの測定値について,健常人99パーセンタイル以下を陰性,健常人99パーセンタイルを超える場合を陽性とした場合,APS群における抗体陽性率はaCL IgGで60%,aCL IgMでは18%,aβ2GPI IgGでは74%,aβ2GPI IgMでは20%であった。一方,非APS群における抗体陽性率は2~6%であった。また,対照試薬における各種抗体の陽性率は,MBL社のMESACUPTM-2 testおよびMEBLuxTM testにおいて,aCL IgGで66%,aCL IgMでは20%,aβ2GPI IgGでは76%,aβ2GPI IgMでは16%であり,INOVA社のQUANTA Flash®においては,aCL IgGで56%,aCL IgMでは20%,aβ2GPI IgGでは82%,aβ2GPI IgMでは28%であった。非APS群における抗体陽性率は0~12%であった(Table 3)。

Table 3 各種抗リン脂質抗体の陽性例数

BioPlex® APLS MESACUPTM-2 test
MEBLuxTM test
QUANTA Flash®
APS 非APS APS 非APS APS 非APS
aCL IgG陽性数(%) 30(60%) 1(2%) 33(66%) 1(2%) 28(56%) 2(4%)
aCL IgM陽性数(%) 9(18%) 3(6%) 10(20%) 0(0%) 10(20%) 4(8%)
aβ2GPI IgG陽性数(%) 37(74%) 2(4%) 38(76%) 2(4%) 41(82%) 4(8%)
aβ2GPI IgM陽性数(%) 10(20%) 3(6%) 8(16%) 6(12%) 14(28%) 4(8%)

2) 対照試薬による測定値との比較

患者検体100例(APS 50例および非APS 50例)における同一抗体・クラス間の抗体価について,対照試薬の測定値との相関関係を検証した。スピアマンの順位相関係数(rS)は,MBL社のMESACUPTM-2 testおよびMEBLuxTM testとの相関において,aCL IgGで0.69,aCL IgMで0.49,aβ2GPI IgGで0.90,aβ2GPI IgMで0.85であった(Figure 3A, D, G, J)。また,INOVA社のQUANTA Flash®との相関においては,aCL IgGで0.85,aCL IgMで0.81,aβ2GPI IgGで0.92,aβ2GPI IgMで0.75であった(Figure 3B, E, H, K)。

Figure 3  BioPlex® APLSと他試薬との測定値の相関

A–C: aCL IgG, D–F: aCL IgM, G–I: aβ2GPI IgG, J–L: aβ2GPI IgM

rS:スピアマンの順位相関係数

3) 対照試薬との判定一致率

各検査項目のMBL社試薬(MESACUPTM-2 testおよびMEBLuxTM test)に対する判定一致率は,健常人99パーセンタイル値にて陽性陰性判定をした場合,aCL IgGで89%,aCL IgMで94%,aβ2GPI IgGで99%,aβ2GPI IgMで95%であった。INOVA社のQUANTA Flash®との判定一致率は,aCL IgGで95%,aCL IgMで96%,aβ2GPI IgGで94%,aβ2GPI IgMで95%であった(Table 4)。

Table 4 BioPlex® APLSと他試薬との判定一致率

抗体 対照試薬 判定一致率 陽性一致率 陰性一致率
aCL IgG MESACUPTM-2 test 89%(89/100) 79%(27/34) 94%(62/66)
QUANTA Flash® 95%(95/100) 93%(28/30) 96%(67/70)
aCL IgM MESACUPTM-2 test 94%(94/100) 80%(8/10) 96%(86/90)
QUANTA Flash® 96%(96/100) 79%(11/14) 99%(85/86)
aβ2GPI IgG MEBLuxTM test 99%(99/100) 98%(39/40) 100%(60/60)
QUANTA Flash® 94%(94/100) 87%(39/45) 100%(55/55)
aβ2GPI IgM MEBLuxTM test 95%(95/100) 79%(11/14) 98%(84/86)
QUANTA Flash® 95%(95/100) 72%(13/18) 100%(82/82)

4) APS検査診断における有用性

4種の抗リン脂質抗体のうち,少なくとも1項目以上陽性となる割合について試薬販売元ごとに集計した。BioPlex® APLSにおける4種類の抗体のいずれか1つ以上が陽性となる割合は,APS群で76%,非APS群で8%であった。一方,MBL社試薬においてはAPS群で88%,非APS群で14%,QUANTA Flash®においてはAPS群で84%,非APS群で16%であった。

IV  考察

ELISAをはじめとするSPAによる抗リン脂質抗体検査では,抗リン脂質抗体の定量評価が可能である。APS国際分類基準においては,ELISAによるaCL IgG/IgMならびにaβ2GPI IgG/IgMの測定が推奨されており,抗体価の半定量的評価(中等度陽性,高度陽性)は標準化されたELISAに基づく測定値を基準に設定されている7)。しかしながら,ELISAは用手法での測定であり,操作が煩雑で施設間差が生じやすく,測定者の習熟度の影響も受けやすい。近年では自動分析装置に搭載して測定することにより,ELISAよりも簡便かつ迅速に再現性良く抗リン脂質抗体を測定できる試薬が多数開発され,汎用されている。今回検証したBioPlex® APLSは,蛍光免疫測定法(fluorescence immunoassay; FIA)を測定原理とする試薬であり,各抗原(カルジオリピンあるいはβ2GPI)が固相された異なる色のビーズの混合物と検体を37℃で反応させ,洗浄後,さらにPE標識抗ヒトIgG(IgM)抗体と37℃にて反応,洗浄後,ビーズの色により抗体の種類を判別し,PEの蛍光強度によって抗体価が測定されるシステムである。IgGまたはIgM別に複数の抗体を同時に反応させることでテストあたりの測定時間を短縮することができる。測定にかかる時間は45分と短く,1時間あたり最大200テスト(100検体 × 2項目)を処理することが可能である。また,対照試薬のうちMEBLuxTM test β2GPI IgG/IgMは化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay; CLEIA),QUANTA Flash® APSは化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay; CLIA)を測定原理とする試薬である。いずれも各抗体を高感度に精度良く検出することが可能な測定法であり,自動分析装置を用いた抗リン脂質抗体価測定は今後ますます普及していくと考えられる。

今回,昨年新たに保険収載されたBioPlex® APLSについて対照試薬との比較検討を行った。日本抗リン脂質抗体標準化ワークショップにおいては,各種抗リン脂質抗体の陽性陰性を判定する際に健常人99パーセンタイル値を閾値とすることを推奨しており8),9),これに基づき,健常人208例の測定値からBioPlex® APLSの陽性陰性判断値を設定した。この判断値により判定を行うと,APS患者ならびに非APS患者における抗体陽性率は対照試薬とほぼ同等であり,今回算出した陽性陰性判断値は適切に設定できていると考えられ,感度・特異度の両面からBioPlex® APLSの有用性が示唆された。

また,BioPlex® APLSの各種抗体について,APS患者と非APS患者の判別能を評価したところ,ROC解析によるAUCから,IgGクラスの2つの抗体において非常に高い判別能を有しており,APS診断において本試薬の有用性が高いことが示唆された。一方,IgMクラスの抗体では,いずれもAUCが低く,APS患者と非APS患者を判別する上で有用性は低かった。IgMは免疫反応の初期応答で産生され,一過性に陽性となることが多く,一般的にAPS患者における陽性率は低い10)~12)。また,今回,非APS患者において,IgMクラスが高力価を示す症例が1例あったが,抗リン脂質抗体はウイルス感染や炎症などによって一過性に抗体価が上昇することが知られており13),APSに特異的な抗体ではない可能性も考えられる。BioPlex® APLSに限らず,他の試薬であっても,IgM単独では臨床的・診断的意義は限定的であり,APSを判断することは困難である7)。

BioPlex® APLSの対照試薬との測定値の相関関係は,おおむね良好であったが,MESACUPTM aCL IgGおよびIgMとの相関においてややバラつきが大きい結果であった。MESACUPTM aCL IgG/IgMはELISAを測定原理として用手法にて測定する試薬であり,他の自動分析装置により測定を行う試薬と比較してバラつきが生じやすかったことが要因と考えられる。また,試薬により,測定原理や使用抗原が異なるために患者抗体の反応性に差が生じ,各種試薬間において一部結果の乖離する例が生じたと考えられる。健常人99パーセンタイル値を陽性陰性判断値とした場合,他社試薬との判定一致率は89~99%と非常に良く一致した。BioPlex® APLSは,本邦ですでにAPS検査診断に使われているいずれの試薬と比較しても,同等の性能を有していることが示唆された。

APSは患者ごとに保有する抗体が異なるため,1種類の抗体価測定だけでAPSの検査診断を行うことはできない。今回検討した3社の試薬はいずれも,どれか1つの抗体を測定するよりも,4種類の抗体を測定することによってAPSの検出感度が上昇した。複数種類の抗リン脂質抗体を有する患者では,血栓症の発症リスクが高いことも知られており14)~16),APSの検査診断においては複数種類の抗体を同時に測定することが重要である。

抗リン脂質抗体価測定はELISAがゴールドスタンダード法であるが,ELISAは測定ごとに検量線を作成する必要があり,操作の煩雑さや測定にかかる時間,コストの面からみても少数検体での測定は非効率的である。また,通常1プレートで測定できる抗体の種類は1種類であり,複数抗体の測定には,さらに手間と時間が必要になる。これに対し,自動分析装置搭載試薬は1検体から測定可能であり,かつ,複数種類の抗体を同時に測定することができる。今回検証したBioRad社,MBL社,INOVA社の各試薬は,いずれも保険収載されており,APSの診断を目的に4項目(aCL IgG/IgM, aβ2GPI IgG/IgM)の測定を併せて実施した場合,4項目中で最大3項目までの点数を準用して一連の治療につき2回に限り検査実施料を算定することができる。APSの検査診断精度の向上とAPS患者の血栓症の発症リスク評価の観点から,LA検査と合わせて4項目の抗リン脂質抗体価測定の実施が望まれる。

V  結語

BioPlex® 2200システムを用いたBioPlex® APLS IgGキットおよびBioPlex® APLS IgMキットによる抗リン脂質抗体価測定は,4種類の抗体を同時に測定することができ,迅速かつ操作が簡便な検査試薬である。対照試薬との測定値の相関は高く,健常人99パーセンタイル値による抗体の陽性陰性判定結果も対照試薬とおおむね一致しており,本試薬はAPSの検査診断に有用である。

なお,本検討は山口大学大学院医学系研究科保健学専攻医学系研究倫理審査委員会の承認(管理番号:670-1)を得て実施した。

COI開示

本研究は,バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社から同社試薬による抗体価の無償測定を受け,実施した。

 謝辞

本研究にあたり,BioPlex® 2200システムによる抗体価測定において多大なご協力をいただきましたバイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社様に深謝いたします。

文献
 
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