医学検査
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原著
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における血栓塞栓症と抗リン脂質抗体との関連
入井 あすな, 金重 里沙, 藤岡 凜, 本木 由香里, 野島 順三
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2026 年 75 巻 1 号 p. 59-65

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Abstract

新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019; COVID-19)は,呼吸器系の炎症に加え,血栓症を引き起こすことが知られている。近年,COVID-19罹患者の多くでループスアンチコアグラントが検出され,抗リン脂質抗体の関与が示唆されている。本研究では,①COVID-19罹患者18例,②非感染者10例,③一般住人30例を対象に,抗カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibodies; aCL)と,ループスアンチコアグラントの責任抗体である抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体(anti-phosphatidylserine/prothrombin antibodies; aPS/PT)を測定し,COVID-19罹患者における陽性率と血栓症との関連性を検討した。その結果,陽性率は,aCLで①45%・②20%・③3%,aPS/PTで①56%・②0%・③0%であり,aPS/PTはCOVID-19罹患者に特異的に認められた。さらに①で血栓症を発症した4例はすべてaPS/PT陽性・aCL陰性であった。さらに,COVID-19の重症度指標である相対的酸化ストレス度とaPS/PT抗体価に相関が認められた(rS = 0.810)。COVID-19における血栓症発症リスク評価には,aCLよりも,aPS/PTの測定が有用と考えられる。

Translated Abstract

Background: Coronavirus disease 2019 (COVID-19), caused by a severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2), is known to cause respiratory inflammatory disease, a hypercoagulable state, and thromboembolic events. Recent studies have reported that lupus anticoagulant (LA) is detectable in 44–87% of COVID-19 patients, suggesting the involvement of antiphospholipid antibodies (aPLs) in COVID-19-associated thrombosis. This study aimed to investigate the prevalence of various aPLs in COVID-19 patients and their association with thromboembolism. Methods and results: We measured anti-cardiolipin antibodies (aCL) and anti-phosphatidylserine/prothrombin antibodies (aPS/PT) by ELISA in 18 COVID-19-infected patients, 10 non-infected individuals, and 30 healthy volunteers. The positivity rate of aCL was 45% in COVID-19 patients and 20% in non-infected individuals. In contrast, aPS/PT was positive in 56% of COVID-19 patients and 0% in the other two groups, indicating aPS/PT is specific to COVID-19. Venous thromboembolism occured in 4 of 18 COVID-19 patients, all of whom were aPS/PT-positive and aCL-negative. Additionally, a significant correlation was observed between aPS/PT titers and oxidative stress index values, a marker of COVID-19 severity (r = 0.810), aCL, while no such correlation was found for aCL (r = 0.22). Conclusion: These results suggest that measuring aPS/PT may be more useful than aCL, which is included in the classification criteria for antiphospholipid syndrome, for assessing thromboembolic risk in patients with COVID-19.

I  はじめに

新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019; COVID-19)はsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)による感染症であり,呼吸器系の炎症疾患に加え種々の血栓塞栓症を引き起こすことが知られている1),2)。実際に,COVID-19患者のうち集中治療室(intensive care unit; ICU)に入院した重症例の40%に血栓症が認められたとの報告があり,その内訳は79%が静脈血栓症,21%が動脈血栓症であった2)。COVID-19における血栓形成機序の詳細は明らかになっていないが,SARS-CoV-2感染に起因する炎症や過剰な免疫応答(いわゆるサイトカインストーム),活性酸素種(reactive oxygen species; ROS)の産生増加,補体および血小板の活性化,さらには好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps; NETs)による凝固促進など,さまざまな因子の関与が報告されている2)。

さらに自己抗体の一種である抗リン脂質抗体の存在も,COVID-19における血栓形成の重要な因子として注目されている。特に,抗カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibodies; aCL),抗β2グリコプロテインI抗体(anti-β2 glycoprotein I antibodies; aβ2GPI),およびループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)は,抗リン脂質抗体症候群(anti-phospholipid syndrome; APS)の分類基準に採用されており3),血管内皮障害や血栓形成の促進に寄与することが明らかになっている4)。なかでも,LAやaβ2GPIの存在は血管炎症を促進し,血栓形成の基盤となることが示唆されている5)。

近年の研究において,COVID-19罹患者の44–87%でLA活性が検出されたとの報告があり6),抗リン脂質抗体の存在がCOVID-19における血栓塞栓症の発症に関与している可能性が示唆されている。

そこで本研究では,COVID-19罹患者における各種抗リン脂質抗体の出現率およびそれらと血栓塞栓症発症との関連性を検討するとともに,血栓症のリスク因子の1つであり,COVID-19の重症度判定に有用とされる相対的酸化ストレス度7)と抗リン脂質抗体の関連についても解析を行った。

II  対象および方法

1. 対象

1) 酵素固相化免疫測定法(enzyme-linked immuno­sorbent assay; ELISA)

COVID-19罹患者18例およびCOVID-19非感染者10例を対象とし,比較対照として一般住人30名を用いた。COVID-19罹患者は,発熱や倦怠感を主訴に受診し,COVID-19陽性と診断された患者であり,COVID-19非感染者は同様に発熱や倦怠感を主訴に受診したが,COVID-19陰性と診断された患者であった。一般住人は,既知の疾患を有さず,酸化ストレスの検診目的で採血を受けた健常者とした。

2) 酸化ストレス・抗酸化力

COVID-19罹患者18例およびCOVID-19非感染者10例を対象とした。

酸化ストレス値と抗酸化力値の健常人基準範囲の設定に関しては,絶対的健常人312名を対象とした我々の研究報告を参照した8)。

2. 方法

計58例の血清を対象に,APS分類基準に含まれるaCLに加え,LAの責任抗体として臨床的有用性が高い抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体(anti-phosphatidylserine/prothrombin antibodies; aPS/PT)9)の2種類の抗体価をELISAにて定量するとともに,酸化ストレス値および抗酸化力値を測定した。

1) ELISAのプロトコル

① aCL-ELISA

96ウェルELISAプレート(Thermo SCIENTIFIC, USA)の各ウェルに50 μg/mL CL(SIGMA-ALDRICH, USA)を30 μL添加し,室温で3時間静置した。冷風でドライアップさせた後,10% adult bovine serum(ABS)(Bio West, USA)を200 μL添加し,ブロッキングを行い,4℃で一晩(overnight)反応させた。洗浄後,10% ABSおよび0.05% Tween 20(SIGMA-ALDRICH, USA)を含むphosphate-buffered saline(PBS)にて患者血清を101倍希釈し,100 μL/well添加して室温で1時間反応させた。再度洗浄後,10,000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Cosmo Bio Co., Ltd., Japan)を100 μL/well添加し,室温で1時間反応させた。洗浄後,Tetramethyl­benzidine(TMB)(Life technologies, USA)を100 μL/well添加し,30分間反応させた後,1N HClを100 μL添加し,反応を停止させた。450 nmにおける吸光度をMultiskan FC(Thermo SCIENTIFIC)にて測定した。

② aPS/PT-ELISA

96ウェルELISAプレートの各ウェルに50 μg/mL PS(SIGMA-ALDRICH)を30 μL添加し,冷風にてドライアップさせた。その後,0.5% bovine serum albmin(BSA)(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corpo­ration, Japan)を200 μL添加し,室温で2時間ブロッキングを行った。洗浄後,0.5% BSAおよび0.074% CaCl2含有Tris Buffered Saline(TBS)にて患者血清を101倍に希釈したものを,50 μL/well添加して室温で1時間反応させた。患者血清添加後の操作は,aCL-ELISAのプロトコルに準じて実施した。

③ 抗リン脂質抗体価(aCL・aPS/PT)のカットオフ値の設定

APS国際分類基準3)に則り,一般住人30名の測定抗体価から99パーセンタイル値(98%信頼区間の上限値)を算出し,抗体の陽性・陰性判定に用いるカットオフ値として設定した。

2) 酸化ストレス・抗酸化力・相対的酸化ストレス度の評価法

酸化ストレス値および抗酸化力値は,d-ROMsテストおよびBAPテスト(ともにWISMERLL Co., Japan)を用い,自動分析装置AU480(Beckman Coulter, USA)にて測定した。

d-ROMsテストによって得られた酸化ストレス値と,BAPテストによる抗酸化力値の測定結果から,両者のバランスを示す相対的酸化ストレス度(oxidative stress index; OSI)を算出した。OSIは,「OSI = d-ROMs ÷ BAP × 8.85」により算出した。8.85(補正係数)は,絶対的健常人における平均OSIが1.00となるように設定された値である7),9)。

3) 統計解析について

統計学的解析はStatFlex ver. 6.0(株式会社アーテック,Japan)を使用して実施し,各種抗リン脂質抗体価については,Dunn検定を用いて群間差を比較した。また,一般住人30名における99パーセンタイル値をカットオフ値として設定し,一般住人,COVID-19非感染者群,COVID-19罹患者群における各種抗リン脂質抗体(aCL・aPS/PT)の陽性率を算出した。

COVID-19罹患者とCOVID-19非感染者における酸化ストレス値・抗酸化力値・OSIの比較には,Mann-Whitney U検定を用いて解析を行った。また,絶対的健常人におけるMedian(25–75パーセンタイル)を参照領域として算出した。さらに,各指標間の相関関係については,スピアマンの順位相関係数(rS)を算出して評価した。

III  結果

1. 各種抗リン脂質抗体価および抗体陽性率の比較

aCLおよびaPS/PTの抗体価について,各群(一般住人,COVID-19非感染者群,COVID-19罹患者群)で比較した。その結果,aCLについては一般住人の抗体価8.34–13.4 U/mLに比較して,COVID-19非感染者群では,9.7–18.7 U/mLと差は認められなかったが,COVID-19罹患者群では14.4–152.5 U/mLと有意に抗体価が高かった。aPS/PTでは,一般住人の抗体価1.5–13.2 U/mLに比較して,COVID-19非感染者群では,2.5–5.8 U/mLと差は認められなかったが,COVID-19罹患者群では6.1–176.7 U/mLと有意に抗体価が高かった(Figure 1A, B)。

Figure 1  各種抗リン脂質抗体価の比較(aCL・aPS/PT)

Dunn test: *N.S., **p < 0.05, ***p < 0.01

aCL:抗カルジオリピン抗体

aPS/PT:抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体

一方,陽性率については,aCLでは一般住人および非感染者群でそれぞれ3%および20%であったのに対し,罹患者群では45%と高値を示した(Table 1)。一方,aPS/PTについては,一般住人および非感染者群では陽性例が認められなかったのに対し,罹患者群では56%の症例が陽性であった(Table 1)。

Table 1 各対照群における臨床的プロファイル

n 平均年齢 ± SD
(min–max)
性別
(男/女)
血栓症
発症率
aCL陽性率 aPS/PT陽性率
一般住人 30 36.8 ± 9.8(27–59) 3/27 0% 3%(n = 1) 0%(n = 0)
COVID-19非感染者 10 28.0 ± 11.0(18–54) 6/4 0% 20%(n = 2) 0%(n = 0)
COVID-19罹患者 18 57.4 ± 5.9(38–66) 2/16 0% 45%(n = 8) 56%(n = 11)
血栓症(−) 14 56.9 ± 16.0(38–66) 2/12 0% 50%(n = 7) 50%(n = 7)
血栓症(+) 4 59.3 ± 0.5(59–60) 0/4 100% 0%(n = 0) 100%(n = 4)

aCL:抗カルジオリピン抗体

aPS/PT:抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体

2. 抗リン脂質抗体価の相関関係(aCL vs. aPS/PT)

COVID-19非感染者群および罹患者群において,aCLおよびaPS/PTの抗体価の相関関係を解析した結果,rSは0.236(N.S.)であり,両抗体間に有意な相関は認められなかった(Figure 2)。

Figure 2  COVID-19非感染者群および罹患者群における抗リン脂質抗体価の相関関係(aCL vs. aPS/PT)

スピアマンの順位相関係数(rS):0.236

3. COVID-19罹患者における血栓塞栓症と抗リン脂質抗体の関連

COVID-19罹患者18例中4例において,画像診断により静脈血栓塞栓症(肺血栓塞栓症2例,静脈血栓症2例)が確認され,これら全例でaPS/PT陽性かつaCL陰性であった。

4. 酸化ストレス値・抗酸化力値・OSIの比較

COVID-19非感染者群および罹患者群において,酸化ストレス値および抗酸化力値を測定し,OSIを算出して比較した結果,非感染者群の酸化ストレス値281.6–368.1 unitに対し,罹患者群では513.4–686.4 unitと酸化ストレス値は有意に高く,酸化ストレス値の増加に伴いOSIも非感染者群の1.2–1.5と比較し,罹患者群では2.3–2.7と有意に上昇していた(Figure 3)。

Figure 3  酸化ストレス値・抗酸化力値・OSIと抗リン脂質抗体価(aCL・aPS/PT)の比較

*Mann-Whitney U test: *p < 0.001, **N.S., ***p < 0.001

絶対的健常者における中央値(25–75パーセンタイル)を参照領域とし,図中に青色のシェーディングとして表示した。

d-ROMS:酸化ストレス値

BAP:抗酸化力値

OSI:相対的酸化ストレス度

5. 酸化ストレス値・抗酸化力値・OSIと抗リン脂質抗体価(aCL・aPS/PT)の相関関係

aCL抗体価は酸化ストレス値(rS = 0.169, N.S.),抗酸化力値(rS = −0.242, N.S.)およびOSI(rS = 0.220, N.S.)のいずれとも相関は認められなかったが(Figure 4A),aPS/PT抗体価は酸化ストレス値(rS = 0.751, p < 0.01),OSI(rS = 0.810, p < 0.01)と正の相関性が認められた(Figure 4B)。

Figure 4  酸化ストレス値・抗酸化力値・OSIと抗リン脂質抗体価(aCL・aPS/PT)の相関関係

aCL vs. dROMs, rS = 0.169; BAP, rS = −0.242; OSI, rS = 0.220.

aPS/PT vs. dROMs, rS = 0.751; BAP, rS = −0.270; OSI, rS = 0.810.

rS:スピアマンの順位相関係数

aCL:抗カルジオリピン抗体

aPS/PT:抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体

d-ROMS:酸化ストレス値

BAP:抗酸化力値

OSI:相対的酸化ストレス度

IV  考察

本研究では,COVID-19罹患者および非感染者を対象に,APS国際分類基準に採用されている抗リン脂質抗体であるaCLおよび,臨床的有用性の高いaPS/PTの保有率と抗体価を評価するとともに,血栓塞栓症や酸化ストレスとの関連性を検討した。

aCLは健常人群(3%),COVID-19非感染者群(20%),そして罹患者群(45%)と一定の割合で陽性が確認されたのに対し,aPS/PTはCOVID-19罹患者のみ陽性を示し,56%という高率で検出された。この結果は,COVID-19罹患者において,aPS/PTが特徴的な自己抗体プロファイルの一部として検出される可能性を示唆しており,感染による免疫応答により誘導される自己抗体のうち,特にaPS/PTがCOVID-19関連病態,特に血栓形成に深く関与していることを示唆するものである。

従来,APS患者における血栓症では,aCL(あるいはaCL/β2GPI)の併存が高頻度に認められることが報告されているが10),11),本研究におけるCOVID-19罹患者では,aCL陽性で血栓塞栓症を合併した症例は確認されず,すべての血栓症例がaPS/PT陽性・aCL陰性であった。このことは,COVID-19における血栓形成の背景に,従来のAPSとは異なる免疫学的メカニズムが存在することを示唆している。

また,COVID-19非感染者群および罹患者群において,aCLとaPS/PT抗体価間で有意な相関が認められなかった。そもそもaCLとaPS/PTは全く異なる抗リン脂質抗体であり,それぞれの抗体の産生が誘導される背景病態や炎症刺激の種類も異なる可能性が高い。特にCOVID-19においては,SARS-CoV-2感染による強い全身性炎症やサイトカインストームが,aPS/PT産生を誘導する因子として働いている可能性が示唆される。

さらにCOVID-19罹患者・非感染者間で相対的酸化ストレス度指数(OSI)との関連を検討した結果,COVID-19罹患者では非感染者に比べて酸化ストレス値およびOSIが有意に上昇していた。酸化ストレスは血管内皮機能障害やNETs形成と密接に関係しており12),血栓形成の一因となることから,COVID-19における重症度と血栓症発症の関連因子として重要であると考えられる。また,aPS/PT抗体価と酸化ストレス値およびOSIとの間に正の相関が認められたことから,COVID-19における血栓症の発症には,酸化ストレスの増加とaPS/PTの出現が関与している可能性が強く示唆された。ただし,酸化ストレスの亢進とaPS/PT抗体価の上昇との直接的な因果関係はわかっていない。本研究において,COVID-19罹患者で画像診断にて静脈血栓塞栓症が確認された重症患者4例すべてでaPS/PTが陽性だったことから,COVID-19の重症度と相関して上昇する酸化ストレス度とaPS/PT抗体価との間に相関関係が認められたものと考えられる。従って,aPS/PTはCOVID-19関連血栓症の早期診断およびリスク評価において有用なバイオマーカーとなりうる可能性が高いと考えられる。さらに,COVID-19陰性例ではaPS/PT陽性例が存在しなかったことから,COVID-19と類似の症状を呈する他疾患との鑑別にも有用性が期待される。

一方で,aCLはCOVID-19罹患者の一部で陽性が認められたが,これはAPSに関連したβ2GPI依存性aCLではなく,一過性の感染に伴う非病的aCL(β2GPI非依存性aCL)である可能性が高い13),14)。

本研究では,COVID-19罹患者のサンプル数が限られており,そのうちの血栓塞栓症の発症例も4例にとどまっていたため,統計学的な検出力に限界がある。今後は多施設共同研究として症例数を増やし,重症度や治療経過との関連も含めた詳細な解析が必要であると考える。β2GPI依存性のaCLとの関連についても検討を進めることで,COVID-19特有の自己抗体プロファイルの全体像が明らかになると期待される。

V  結語

COVID-19における血栓形成機序の詳細は明らかになっていないが,血栓塞栓症の発症にはaPS/PTの関与が示唆されている。本研究成果は,COVID-19感染者における血栓塞栓症のリスク評価において,aPS/PTの測定が有用である可能性を示した。また,aPS/PTを含む抗リン脂質抗体がもつ血栓形成機序を解明することが,COVID-19における重篤な血栓塞栓症の発症予防に寄与する可能性があると考えられる。

本研究は山口大学大学院医学系研究科保健学専攻医学系研究倫理審査委員会の承認(管理番号:509,670,853)を得て実施した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

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