2026 年 75 巻 2 号 p. 356-366
コンピテンシーは,業務効率向上や成長に寄与する能力目標として注目されている。新人臨床検査技師(以下,新人技師)は,新人教育プログラムを通じて段階的に検査業務に従事するが,その教育効果を示す客観的な評価指標は明確ではない。本研究は,新人教育プログラム修了後の新人技師が,どのように能力を獲得したかをコンピテンシーの視点から評価することを目的とした。岐阜大学医学部附属病院検査部および輸血部に所属し,新人教育プログラムを受講した臨床経験2年未満の臨床検査技師5名に半構造化インタビューを実施し,前川らが提示したコンピテンシーを枠組みとして演繹的アプローチによる主題分析を行った。インタビューから19の主題が抽出された。新人技師は,体系的な検査の相互理解,経験を通じた機器操作に対する考え方の変化,同僚との関係構築,学会参加による自己啓発,正確な検査結果を出すための行動と責任,現場経験を通じた倫理的配慮の理解を認識していることが明らかになった。新人教育プログラムは,新人技師の技術習得だけでなく,責任感,倫理観と対人能力を育み,卒前教育から臨床現場への移行を円滑にする可能性が示された。経験学習を促すためにはメンター制度,医療安全教育,精度管理への参加が重要であり,今後は教育内容の充実と多施設での検証が求められる。新人教育プログラムと実務経験は,新人技師のコンピテンシー獲得に重要な経験と認識されている。
Competency is recognized as a key goal that contributes to work efficiency and professional growth. Newly certified biomedical laboratory scientists (BLSs) gradually undertake clinical duties through structured training programs; however, objective indicators for evaluating their educational outcomes remain unclear. This study aimed to evaluate the competencies acquired by newly certified BLSs after completing a training program. Semi-structured interviews were conducted with five BLSs with less than two years of clinical experience at the Department of Laboratory Medicine and the Blood Transfusion Division, Gifu University Hospital. A deductive thematic analysis was performed using the competency framework proposed by Maekawa et al. Nineteen themes were identified, including mutual understanding of systematic examinations, evolving perspectives on equipment operation through experience, relationship-building with colleagues, self-development through academic engagement, responsibility for producing accurate test results, and ethical awareness derived from clinical practice. The training program not only fostered technical skills but also cultivated responsibility, ethical awareness, and interpersonal abilities, thereby supporting a smooth transition from undergraduate education to clinical practice. Experiential learning was further promoted through mentorship, patient safety education, and participation in quality control. These findings suggest that both structured training and subsequent clinical experience play vital roles in competency development among newly certified BLSs. Ongoing refinement of educational content and multi-institutional validation are required to enhance program effectiveness and support professional growth.
近年,検査室の外部評価としてISO 15189を取得する施設が増加している。ISO 15189では検査の品質と能力を保証するために臨床検査技師の力量評価が求められており,それに伴い継続的な教育が不可欠となっている。新人臨床検査技師(以下,新人技師)においても幅広い知識と高度な技術の習得が求められており,多くの医療機関で新人教育プログラムが実施されている1)~4)。しかし,新人教育プログラムとその評価の標準化が不十分であり,施設によって異なっているのが現状である。
一方,専門職の能力評価においてコンピテンシーを取り入れた教育が注目されている。コンピテンシーとは,専門職として業務を遂行する上で必要な能力や行動特性であり,技術や知識だけでなく倫理観や態度も含まれる5)。コンピテンシーは研修により修得が可能で,第三者による評価も可能であることから,人材育成や人事評価の観点から医療現場でも幅広く活用されている。そのため,新人教育プログラムの設定や新入職員の育成支援において,目標設定や進捗の可視化にも役立つ。臨床検査技師のコンピテンシーに関しては,Maekawaら6)によるデルファイ法を用いた研究により,「検体採取・準備」「分析」「医療安全の管理」「対人関係」「倫理」などを含む8つのカテゴリー,計54項目として整理されている。しかし,コンピテンシー獲得のため新人教育プログラムをどのように構造化すべきかについては,未だ確立された研究は存在しない。また,新人教育プログラムだけでなく実務経験からも多くを学ぶが,その成長プロセスについても十分な報告がなされていないのが現状である。
本研究の目的は,新人技師が新人教育プログラムの受講とその後の実務経験を通じて,コンピテンシーをどのように認識・修得しているかを探索することである。
本研究は,岐阜大学医学部附属病院の検査部および輸血部に所属する臨床検査技師のうち,臨床経験年数が2年未満であり,新人教育プログラムを受講した者を対象とした。新人技師が受講した新人教育プログラムの概要をFigure 1に示す。対象者には本研究の主旨を説明し,口頭および文書による同意を得た上で協力を依頼した。

新人技師が,臨床検査に必要な幅広い知識と技能を体系的に身につけることを目的とした新人教育プログラムである。研修部署は「検体受付業務」「生化・免疫検査」「一般・血液・微生物検査」「輸血検査」「生理検査」の5領域であり,配属部署を除く4領域を各2週間ずつ(合計8週間)ローテーション研修する。各研修終了後には自己評価と指導者評価をもとに振り返りを行う。プログラム終了後は,配属部署での研修を継続しつつ,先輩臨床検査技師とともに実務的な場面に参加し,必要に応じて追加研修を行う。
臨床検査技師免許取得年数,勤務年数,現在の所属部署,現所属部署年数,役職,これまでに経験したことのある部署(前職含む)などについては,インタビュー前にシートに記載させた。なおインタビュー結果の提示にあたっては,個人の特定を回避するため,対象者を「参加者A~E」と匿名化した。
2) 臨床検査技師の認識(インタビューガイド)インタビューガイドはTable 1に示す。
| インタビューガイド |
|---|
| ・臨床検査技師として働いている気持ち |
| ・新人教育プログラムを受講してよかった点・悪かった点 |
| ・新人教育プログラムを受講してから大切にしていること,そのきっかけ |
| ・新人教育プログラムを受講したのち,どのような経験をしたか |
| ・新人教育プログラム受講後に自信が持てるようになったこと |
| ・臨床検査技師の役割は何か |
| ・新人教育プログラムを受講してこれから頑張っていきたいこと |
| ・新人技師に新人教育プログラムは必要か |
本研究では,半構造化インタビューによってデータを収集した。前述の「収集データ項目」に示した質問事項に基づき,新人教育プログラムを受講した臨床検査技師を対象に,対面形式で半構造化インタビューを実施した。インタビューは,守秘性が確保された岐阜大学医学部附属病院内の個室で行い,その時間を計測した。インタビューの内容は対象者に許可を取った上で録音し,その内容を自動文字起こしツールを用いて逐語化した。その際には語尾や接続語を適切に修正し,冗長な表現を省くことで,読みやすく整理されたテキストに整えた。
4. 分析方法まず分析の枠組みとしては,Maekawaら6)の提唱するコンピテンシーモデルを用いて演繹的にカテゴリー分けをして分析した。モデルに示されたカテゴリーおよび領域の日本語訳については,Table 2の左2列に示した。次にインタビュー調査によって取得した質的データの分析については,Braun & Clarkeの主題分析7)を実施した。主題分析法は,質的データの中からパターンを見出すための体系的な手法である。データ分析の手順としては,インタビューで得られた音声データを逐語録に起こし発言の意味内容に従い切片化を行った(step 1)。切片化されたデータの内容を表すラベルを付けることでコード化し(step 2),各コードを表す上位概念を検討した(step 3)。その後,テキスト・コードを再検討し,一貫性を確認した上で,類似する内容は統合し,異なる内容は分類した(step 4)。得られたコードをMaekawaら6)の提唱するコンピテンシーモデルに沿ってテーマごとに整理・精緻化し(step 5),最後にテーマ間の関係性を検討し,俯瞰的な視点から全体を読み取り行った(step 6)。各Stepの変換過程については,Table 3に具体例を示す。
| カテゴリー* | 領域* | 主題 |
|---|---|---|
| 1.検体収集 | 全般的 | 採血スキルの上達と自信の向上 |
| 静脈穿刺 | 採血練習の必要性 | |
| 2.準備と分析(全般的) | 検査前の手続き | 検査前準備の重要性と体系的な検査の相互認識 |
| 検査中の手続き | ローテーションを通じた検査手技の習得 | |
| 検査後の手続き | 検査結果の解釈とその重要性の認識 | |
| 結果の報告 | 検査結果の報告とその意義 | |
| 機材と在庫管理 | 経験を通じた機器の取り扱いに対する考えの変化 | |
| 3.準備と分析(標本) | 検査前の手続き | 適切な検体の判断の必要性 |
| 検査中の手続き | 一人で判断しなければならない状況から得た学習 | |
| 4.準備と分析(生理検査) | 検査前の手続き | 生理検査での接遇を通じた経験 |
| 検査中の手続き | 実践を通してのコミュニケーション方法の獲得 | |
| 5.医療安全の管理 | 日常業務での実践 | 感染に関する知識とその予防策の認識 |
| 緊急対応 | 緊急対応の必要性の認識 | |
| 6.対人関係 | コミュニケーション | 他臨床検査技師との関係性の構築 |
| 医療職との協議 | 他部署への理解と臨床検査技師としての役割 | |
| 7.専門能力開発 | 学術活動 | 学会参加を通じた自己啓発 |
| 自己改善 | 臨床検査技師として成長するための目標の設定 | |
| 8.倫理 | プロフェッショナルな責務 | 正確な検査結果を出すための技師としての行動と責任 |
| 医療倫理 | 現場経験を通じた倫理的配慮の理解 |
Maekawaの論文に示された分類の翻訳に基づき,それぞれのカテゴリー・領域に該当する主題を19個抽出した。
*:左の2列はMaekawaのコンピテンシーモデルの日本語訳である。
| Step | 方法 | 具体例 |
|---|---|---|
| Step 1 切片化 | 発言を意味の単位に分割 | やっぱり輸血でもそういう患者取り違い,製剤取り違えとかは一番注意しないといけないなって思います。 |
| Step 2 コード化 | 内容を表すラベルを付与 | 「やっぱり輸血でもそういう患者取り違い,製剤取り違えとかは一番注意しないといけないなって思います。」 →「患者取り違い」,「製剤取り違え」,「一番注意しないといけない」をコードとする。 |
| Step 3 上位概念 | 類似コードをまとめる | 「患者取り違い」,「製剤取り違え」,「一番注意しないといけない」から上位概念を考える。 →上位概念「検査準備における確認行為の重要性」 |
| Step 4 統合・分類 | 他の概念と整理 | 他の逐語を基に得られた上位概念を分類し整理する。 |
| Step 5 テーマ精緻化 | 分析結果から主題(テーマ)を抽出 | まとめた上位概念群を統合しながら結果で提示する「主題(テーマ)」を考える。本研究では,上位概念群をまずMaekawaのモデルのカテゴリーに沿って演繹的に分類した。そして上位概念「検査準備における確認行為の重要性」は,「準備と分析(全般的) 検査前の手続き」に分類され,主題としてはMaekawaモデルのカテゴリー概念と照らし合わせ言葉を精緻化し「検査前準備の重要性と体系的な検査の相互認識」という主題名に決定した。 |
| Step 6 関係性検討 | 他の主題(テーマ)と関連付ける | 抽出された主題(テーマ)同士の関連性や構造を検討し,全体としての意味や流れを明らかにする。 |
逐語より「うまいことすり抜けちゃって,投与されるってなっちゃったら,命に関わるので,やっぱり輸血でもそういう患者取り違い,製剤取り違えとかは一番注意しないといけないなって思います。」を例に提示する。
なお,本研究は,岐阜大学大学院医学系研究科医学研究等倫理審査委員会にて審査,承認され,研究機関の長の許可を得て研究を実施した(許可番号2023-302)。
インタビューの結果,入職1~2年目の20代の新人技師5名からデータを収集することができた。インタビューの平均時間は33分であった。分析は,Maekawaら6)が提唱したコンピテンシーモデルに基づき,カテゴリーおよび領域に分類して行った。これらのカテゴリーおよび領域名は,Maekawaらの論文に示された分類の翻訳に基づくものである。本研究では,各カテゴリー・領域に該当する主題を新たに抽出し,それぞれの主題に対応する概念および逐語録の引用とともに,Table 2およびTable 4に提示した。
| カテゴリー1 検体収集 | |
|---|---|
| 領域 | 全般的 |
| ・気持ちとしてはやっぱり実際人の手に刺すっていうのがあったので,どこまで刺していいかとか,どこまでその侵襲があるのかとかの人によって違うと思う。そういった点でやっぱり(採血には)不安はありました。(Aさん) ・採血とかは最初は失敗してとか多かったですけど,「今日は一人も失敗しなかった」とか「よし,よしよし!」って思います(笑) (褒められて)嬉しかったです。刺した時に,「え,君,上手だね。」みたいな。「痛い人いるんだよね」って言われたんで「あ,ほんとですか?」って。(Dさん) ・(中略)(採血に)毎週入って1人でも5人ぐらい取れる患者さん。(採血当番の時間が)45分で10人か,10人ぐらい取れるんですけど。やっぱ患者さん対応もそこで身につくこともあったし。(中略)たかが,2–3分の患者対応なんですけど,やっぱり今どういう状況かなとかすごい観察するから,とか体調悪くないかなとか,最初のパッと見た時にもありますし。(Cさん) |
|
| 領域 | 静脈穿刺 |
| ・模型があって,全然(血管が)わかんなくて,あんまりうまく取れなかった覚えしかなくて(中略),そんな私のところが難しいみたいな。なんか古くて無理みたいな感じだったんですけど。でも,ずっと採血無理だと思ってて,なんですけど,実際,(先輩臨床検査技師の血管で)取らせていただいた方が取りやすい方が多かったんであれですけど。(Dさん) ・技術としても,やっぱ経験が増えたし,正中のいつもあの3本(の血管),以外の場所から変なとこから,(腕の)裏とか入れましたとか,から取ったりもするんで度胸がついたし(笑)(Cさん) ・(患者さんから)「上手だね」って褒められたことありました(笑) (中略)でも,なんか前よりは,(採血が)怖くなくなったと思います,刺すのが。(Dさん) |
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| カテゴリー2 準備と分析(全般的) | |
| 領域 | 検査前の手続き |
| ・(中略)もしその患者さんが不規則抗体とか持ってたりしたら同じA型でも溶血反応が起きてしまうと思うので,(中略),うまいことすり抜けちゃって,投与されるってなっちゃったら,命に関わるので,やっぱり輸血でもそういう患者取り違い,製剤取り違えとかは一番注意しないといけないなって思います。(Bさん) ・(輸血で)なんかちゃんと対応できるかなとか,超緊急来たら(慌てずに一人で対応ができる自信がないから)どうしようとか。(Dさん) ・なんか,その検体仕分けの時も見ますけど,やっぱ実際に(他の部署を)回ってやってた時の方があの時あれ触ったなとかっていう,なんか頭に紐付けされてる方がなんか,思い出しやすいというか。(Dさん) |
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| 領域 | 検査中の手続き |
| ・(新人教育プログラムの研修で)2週間ずつ(各部署に)いたので,だからレアものとかも結構見学できたりとか,血液とかだと顕微鏡で血算,数数えたりとかもやらせてもらえたりいい経験でした。(Cさん) ・尿検体を破壊したりしたんですけど,粉々ぐらいにしちゃって,もう本当に一個一個の動作を気を配ってやんないと最悪,もう一回患者さんに針を刺すことになったりするのでその注意深さ,注意深くするってことを気をつけるようになりましたね。(Bさん) ・(中略)検体の凝固だったりが,血小板の数値だったり。あと固まってたらその凝固検査の方でも,結構最近よくFDPが高く,なってて固まってるみたいなことがあるので,そこあたりは,気にしてみるようになりました。で,結構固まってたっていうことはやっぱ多かったので。(Eさん) |
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| 領域 | 検査後の手続き |
| ・時間外の場合だと自分の専門外のことがやっぱり,発生してくると思うので,そういった専門じゃない分野のことに関してどこまで検査をしていいかとか,どこまで結果を送っていいかとか,分からないのでそういった場合はやっぱりもう一人の時間外だともう一人の先輩の技師に(検査結果について)聞くしかないっていうのもあるので。(Aさん) ・精度管理とかもそうですけど,なんかちょっとおかしいなと思ったら,そのまま返しちゃうと後から「なんで?」って電話かかってきたりとか,自分でも「え,これなんでだろう?」とか思うと(上司に)一回聞いてみると,あーもう一回検査した方がいいかなとかっていうのもあったんで。(中略)あ,その時はとりあえず上司に聞いてみます。(Dさん) ・(中略)なんかでも前よりも,この検査値でいい,このこうなってるから多分こうなんだろうな,みたいなつながりが,はっきり見えるようになると「あ,(つながりが分かって)嬉しいな」って。(Dさん) ・採ってこられたやつはもうめちゃめちゃ下がってたり,なんかパニック値レベルのFDPだったのが下がってたりっていうこと(経験)があるので,大切だなぁと思って,思ったことが何回かあります。(中略)実際の患者さんの病態ではないので,それは,こちらで気づけて対応できてよかったなと,思ってます。(Eさん) |
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| 領域 | 結果の報告 |
| ・(中略)(学生の時の病院)実習の時とかもやっぱりというふうに教えられやっぱ早く正確にやってるのを大事にしてるんだっていうのは生化とかから聞いてて,やっぱそうだよな,みたいなのもあったし。(Cさん) ・(臨床検査技師の)役割が,正しい検査結果を返すことで,今までは研修受けるまではなんか漠然とそういう役割があるっていう認識だったんですけど,実際に研修を受けてみて正しく返すために,どういう手順を踏んでるかと。(Eさん) ・パニック値ってその結果上は出て,それはパニック時報告しちゃって,もし先生が何も知識がない方だったら,もうパニック値だ,ってなっちゃうと思うのでちょっと検査技師として,良くないかなって思ってます。(Bさん) |
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| 領域 | 機材と在庫管理 |
| ・その再検値とかを見て,再検で(検査値の)差がひどいとかだとか(機械の)精度管理大丈夫かな?とか。(中略)(検査値が)何パーセント違うけど,というのがちょっとわかってくると,そうすると今まで(の結果は)大丈夫?だったかな?とか怖くなりますけど。(Dさん) ・雰囲気だと,(血液の検査で)なんか(試薬の)ロットのこう変わったから多分(検査結果が)高くなってるっていう判断をしてたりするんですけど,それを言うのを生化でも(自分の部署の検査と同じくらい)わかるようになれたらいいなとは思います。(Eさん) |
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| カテゴリー3 準備と分析(標本) | |
| 領域 | 検査前の手続き |
| ・すごい検体の,その,検体の性状?例えば,溶血しているだけ,絶対電話するし,それのこだわりというか。(Cさん) ・外注(検査項目)以外(の院内で実施され,時間により検査可能/不可能な検査項目)は,だいぶ区別がつくようになりました。(Bさん) |
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| 領域 | 検査中の手続き |
| ・やっぱりその検体の保存条件とかを間違えるとやっぱりインシデントにもつながっちゃうので,検体の保管の条件とか,あとは院内で検査している項目がどれかとか,理解してないと先生からの問い合わせにも応じられないので,そういったところも理解しておく必要があるんじゃないかなって。(Aさん) ・(夜勤で)検査結果,怪しいのがあったりした時は生化の方に置いてある本で調べたりしてますね。これから頑張っていきたいことに追加なんですけどさっきの検査データの件と重なる部分ではあるんですけど,偽高値,偽低値とかっていうのがまだ自分で一人で判断ができないのでそれを先輩に聞かなくても分かるレベルなりたいです。(Bさん) |
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| カテゴリー4 準備と分析(生理検査) | |
| 領域 | 検査前の手続き |
| ・最初,本当来た時は患者さん怖くて,全然,あの時本当最初の4月とかはどう対応していいかわかんない,声もちっちゃかったし,めっちゃ早口だったし。(中略)でも,(検査の)伝わる,伝え方をすごい学んで,なんか。若い人とかは全然普通に喋っててもいいんですけど,やっぱ年重ねた人って伝えたいことだけ言わないと伝わらなかったりするって。たとえ敬語がちょっと崩れようと,伝えたいことだけ大きい声で伝えるみたいな。(Cさん) ・実際見てみると,あー,こうすると痛いんだとか,なんか実際に,その病状がわかるっていうかで,後から検査結果とかちょっと見たとき,あーあの人(検査で)見たな。なるほどってなったりするんで,実際に患者さんと,こう接することができたっていうのは。(Dさん) |
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| 領域 | 検査中の手続き |
| ・ちょっと雑談しながらでも,ちゃんとこう,(ABI検査のカフを)巻けてたんで話しながらでも(検査準備が)できるなって思いました。(中略)なんか話するのが自然にできるようになると作業しながらでも雑談ができるようになった。(中略)「(患者さんと話すことは)大丈夫だな」って思うのって大事だなって思いました。(Dさん) ・生理検査の中とか採血の中とかで,えっと耳にしてこう伝えた方がいいだとか。こういう人にはやっぱ丁寧に伝えた方がいいんだとかは,学べました。(中略)〇〇さん(上司の名前)とか,(患者さんとの話し方を)めっちゃ聞いてましたよ,どうしたらいいんだろうとか。(Cさん) |
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| カテゴリー5 医療安全の管理 | |
| 領域 | 日常業務での実践 |
| ・感染症の知識がやっぱり持っておいた方が一応,検査技師としても検査していく上で役立っていくと思うので。(Aさん) | |
| 領域 | 緊急対応 |
| ・なんかイレギュラーなんかVVRとかが起こった時とかは,なんか,あのー,話ではちゃんと聞いたんですけど,その講義,多分実際,あのあたりちゃんと全然動けなくて。(中略)自分で採血してる方がなったことはないんですけど,隣(の採血ブース)とかで,(VVRが)なったこと一回ぐらいあっても(自分からは)全然動けなくなっちゃって,あ,自信全然ないというか。(Eさん) | |
| カテゴリー6 対人関係 | |
| 領域 | コミュニケーション |
| ・だけど誰とペアになってもその研修で話したことがあるから,すごい,いざ夜勤をやるってなった時にやりやすくて,本当に研修がなかったら全く知らない人と喋ったことない人といきなり夜勤とかになっちゃうと思うので,それよりもやりやすいなって思って,そこが良かったなって思います。(Bさん) ・でも先になんかあの雑談じゃないですけど,顔見知りあの挨拶ぐらいで私のことを覚えてくださってたりするとちょっと話かけやすかったりとかがあって,それはすごい助かりました。(Eさん) ・その,あと血液部門とか一般の時も(質問の内容が)わかんない。電話でわかんなかったら,「こう電話来てるんですけど」とか(他の検査部門に聞くこと)もありますし,夜勤の時とかもこう生理検査の方と一緒になったりして(研修中に)喋ったことあると話しやすい。嬉しいなって思います。(Dさん) |
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| 領域 | 医療職との協議 |
| ・全体的にどの部門がどういう検査をしているのかが,分かったところが,すごいいいなって思います。(中略)実際やってみてうちの病院に何を検査してるのかっていうのを実際に見てると,やっぱ聞いてるだけとか調べただけとかよりも,なんか思い出しやすいですし。採血してても次あれですね,生理検査のことも言える。よかったなと思いますし。(Dさん) ・他の検査部門,部署,のその何をやってるかとか,何測っているか,の理解を深めるのにもよかったかなと思いました。(Eさん) ・各部門の検査のシステムとか病院の検査部のどういったつながりがあることとか,他の臨床とのつながりとか見えてきて,検査の意義っていうのを理解することができたので,大雑把ではあるんですけど,こういう検査をしているんだなっていうところを知ることができました。(Aさん) ・知ることも大事だし,今後なんか他の部署とか他の部門の検査に携わりたいなって思うきっかけとかにもなる気がする。(Cさん) |
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| カテゴリー7 専門能力開発 | |
| 慮域 | 学術活動 |
| ・研究発表をされている演題もすごい難しいのをばっかりで,これが輸血を極めた人たちのやる発表なのかっていう感心しました。(Bさん) ・(中略)そのーどこの部署もそうなんですけど,日々勉強し続けないといけないしー。医療も日々変わっているだろう,勉強は絶えずし続けないといけないなって最近は思っております。(Cさん) ・(中略)こないだ学会とかに参加させてもらって,凝固とか止血不全の話を聞いて,ちょっと面白かったので,もうちょっと,ここら辺を勉強したいなと,思うようになりました。(Eさん) |
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| 領域 | 自己改善 |
| ・私,結構,忙しくなると,そうやって注意,注意が散漫してしまう,タイプだっていうことがあって。その検体の取り扱いもそうですけど,自分の判断で結構いろいろ進めてっちゃうことが多くて,先輩に一回確認してから やらなきゃいけないこととかも,忙しかったりすると,もうこのぐらいいいかって勝手に自分で判断して決めていくことがあったので,それもほんと研修でやばいんだなって思いましたね。(Bさん) ・そのいろいろ研修の時に回ってて,今の部署を最初にできるようになるのはそうなんですけど,将来的にはやっぱ全体的にマルチに(検査が)できる人になった方がなんか見え方が違うなと思って。(Dさん) ・資格も一応興味を持っていて,資格の勉強もしつつその研究の力入れたいかなと思っています。(Aさん) |
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| カテゴリー8 倫理 | |
| 領域 | プロフェッショナルな責務 |
| ・やっぱり自分も輸血の部署も回ってきたんですけど,やっぱり輸血の部署って人の命の関わる,その理解しないところがあると人の命に繋がってしまうので,研修期間をもう少し長く取れればいいのかなって思うのと。(Aさん) ・私,検査技師になって正確性が本当に大事だなって気づかされて自分が思ってたよりも本当に慎重に正確にいろんな手技をしないと検査結果に影響が出ちゃうってことを研修ですごいいろいろ失敗したんですね。(Bさん) ・臨地実習の学生さんが来てくれた時とかは対応することも,ちょこちょこ出てきたりして,その時になんかあの丁寧に何回でも,あの同じことでも,言える,忙しくても,なんか対応でも,していきたいなっていうふうには思うようになりました。(Eさん) |
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| 領域 | 医療倫理 |
| ・(中略)皆やっぱ検査しながら患者さんもやっぱ結果どうですかって,絶対聞いてくる。(結果を)言えないんですけど,絶対聞いてくるし。よくても症状が本人がなくても,やっぱ検査すること自体不安だし。っていうのを聞くので,そう思うとちゃんと検査してしっかりちゃんと見て,責任がすごい感じますね。(Cさん) ・ちゃんと自分が何でそういう行動をしたのかっていうのがちゃんと言える行動しないと,なんか患者さんにも不信感につながると思いますし。(患者さんに対する行動の)理由は大事だなって。適当にやってるんじゃないか,ちゃんと考えて行動しないとなって思います。(Dさん) |
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主題1:採血スキルの上達と自信の向上
概念:新人技師は,職員での採血練習と患者に対して採血を実施する経験など,採血手技の流れを徐々に理解し,先輩臨床検査技師の動きを垣間見ながらスキルを獲得していると認識していた。採血経験の積み重ねや,患者との会話を通じて手技に対する肯定的な評価を得ることで,採血に対する自信が高まっていると感じている。
領域:静脈穿刺主題2:採血練習の必要性
概念:新人技師は,新人教育プログラムの中の採血トレーニングにおけるスタッフ同士の練習について感謝を感じていた。患者からの要望に応えることが出来る経験や感謝の言葉をかけられながら,上達を実感できていると認識していた。一方で,現場での検査業務の,特に初期の段階において失敗が多かったと内省していた。
2. カテゴリー2 準備と分析(全般的) 領域:検査前の手続き主題3:検査前準備の重要性と体系的な検査の相互認識
概念:新人技師は,検査を行う前に必要な物品,製剤を間違えることは検査に影響をあたえ,患者に不利益を与えてしまうと認識し,検査前手続きを適切にできる能力と責任ある行動の能力を同時に開発していた。一方で,検査に関する質問に適切な返答をするためには他の検査についても知っておく必要があると感じている。そして,新人技師は新人教育プログラムを通じた部署ごとの研修の成果として,検査の部署や機能を体系立てて記憶できたと認識していた。
領域:検査中の手続き主題4:ローテーションを通じた検査手技の習得
概念:新人技師は,夜勤に対応できるような基本的検査手技を体得するための新人教育プログラムのローテーションを通じて,十分な経験を積むことが出来たと認識していた。特に,手続きにおいては実地業務での検体の破損や検体の凝固といったエラーなどを経験しながら,より慎重な操作を心がけるよう経験を積んでいると振り返っていた。
領域:検査後の手続き主題5:検査結果の解釈とその重要性の認識
概念:検査後の手続きにおいては,検査結果をカルテへ送信する前に正しい検査結果が得られているかを確認する必要がある。新人技師は,得られた結果について正誤を判断することに困難を感じており,自己判断に大きなストレスを認識している。しかし,コンサルト出来る上司の存在によりその窮地をしのいでいると認識している。また,パニック値・異常値に出会ったときの対応を実際に何回か経験することで正確な結果を出すことの重要性を改めて痛感していた。
領域:結果の報告主題6:検査結果の報告とその意義
概念:新人技師は,正しい検査結果を返す必要があると認識している。間違った結果の報告は,患者に不利益が生じると考えており,結果の報告に緊張をすることもある。そのため,臨床検査技師は正しい検査結果であるかを判断することも必要であると認識している。
領域:機材と在庫管理主題7:経験を通じた機器の取り扱いに対する考えの変化
概念:新人技師は,学生時代の経験から検体操作に学習の焦点があったが,試薬ロットの違いによる検査値への影響など,検査の標準化にも関心を持ち,数値の確認を踏まえて在庫調整について上司に相談できるようになっていた。また,新人技師としては経験を通じて機材自体に数多く触れる機会を得ることができたと感じていた。特に,それは機材故障などの時に体感することが多いと認識している。ただし,機材の修理法の理解には至っておらず,故障対応出来る先輩へ憧憬するに留まると新人技師は認識している。
3. カテゴリー3 準備と分析(標本) 領域:検査前の手続き主題8:適切な検体の判断の必要性
概念:新人技師は,学生時代の見学経験から検体を粛々操作しているだけと理解していたが,実際の新人教育プログラムにおいては,その検体の性状の適切さに対する先輩臨床検査技師の情熱に驚きを覚えつつ,モチベーションを高める作用を感じていた。項目に関しては,夜勤に入り数か月で検査可能な項目の見極めが出来るようになると認識していた。
領域:検査中の手続き主題9:一人で判断しなければならない状況から得た学習
概念:新人技師は,院内で解析可能か,院外へ外注するかの区別ができるようにならなければいけないと感じていた。夜勤業務中などの正常値を一人で判断しなければいけない状況に遭遇するときは,本で調べるなどの努力を重ねていると認識しているが,先輩臨床検査技師にまだ依存している成長段階であると理解している。
4. カテゴリー4 準備と分析(生理検査) 領域:検査前の手続き主題10:生理検査での接遇を通じた経験
概念:新人技師は,患者の対応方法が分からず患者と接することに不安を抱いており,患者と接する機会を通じて,自らのコミュニケーションスキルの未熟さを自覚していた。しかし,現場の同僚などの会話を聞き取り,それを模倣するという試行錯誤を通じて,患者の年齢に応じた検査説明の工夫をし,相手に言葉で伝えることの大切さを学んでいた。また,患者の話を検査前に聞き取り詳細の病状を把握することで,その後の生理検査結果の解釈につながることを実感していた。
領域:検査中の手続き主題11:実践を通してのコミュニケーション方法の獲得
概念:新人技師は,先輩臨床検査技師の検査の手続きを踏襲することで,検査の進め方を徐々に習得していると認識している。他者とコミュニケーションをとることに苦手意識があった場合であっても,検査の実践を通して患者との会話をしながらでも検査を遂行することができる成功体験をしており,やがて患者とのコミュニケーションは難しくないものだと感じるように成長できたと認識していた。
5. カテゴリー5 医療安全の管理 領域:日常業務での実践主題12:感染に関する知識とその予防策の認識
概念:新人技師は,新人教育プログラムや日常業務での経験を通じて,検査室の環境づくりや感染予防の重要性を理解し,実践に努めていると認識していた。
領域:緊急対応主題13:緊急対応の必要性の認識
概念:新人技師は,迷走神経反射などの対応方法を新人教育プログラムで学ぶ機会はあるが,採血や生理検査など様々な場面での緊急対応について咄嗟の行動が出来ないと認識している。すなわち,実際に目の前で起こっても対応ができず,緊急対応は自信がほぼないと不安を感じている。
6. カテゴリー6 対人関係 領域:コミュニケーション主題14:他臨床検査技師との関係性の構築
概念:新人技師は,会話を交わしたことのない同僚との夜勤は緊張を伴い,コミュニケーション不足から質問が出来ない不安を抱くと感じていた。しかし,新人技師は新人教育プログラムを通じて他部署の先輩臨床検査技師と交流する機会ができたため,通常勤務時間帯で接触のない臨床検査技師と夜勤を行う際の不安の軽減に役立っていると認識していた。研修後の業務では,分からないことを先輩臨床検査技師に聞くことができるような関係性が構築されていることに感謝と安心を感じており,ひいてはその関係性のおかげで医療現場におけるミスを減らすことができていると感じている。
領域:医療職との協議主題15:他部署への理解と臨床検査技師としての役割
概念:新人技師は,新人教育プログラムを経験して他部署の業務内容を知ることができ,話を聞くだけではなく,実際に見ることにより検査の体系的な理解を深め検査内容を思い出し易くなることができたと認識している。そして,その中で医療職との連携における自らの役割を再度認識していた。また,臨床検査技師の大きな役割と位置づけを理解するためには,他の医療職の現場に赴くなど検査部以外へ出向して検査を行うことの必要性を感じている。
7. カテゴリー7 専門能力開発 領域:学術活動主題16:学会参加を通じた自己啓発
概念:新人技師は,学会や研修会の参加を通じて自らの専門知識を向上させる必要性を認識していた。また,学会参加により,臨床検査技師の職能の発展性を感じ取っており,やる気を感じていた。研修会の参加は,新人技師の興味のある分野について勉強することや研究を行うことの意欲を高めており,学会発表は動機を促進させると感じている。
領域:自己改善主題17:臨床検査技師として成長するための目標の設定
概念:新人技師は,新人教育プログラムを通じて自分の性格や行動パターンを自覚し,所属部署の検査だけでなく他部署の検査の知識を習得することが必要であると感じていた。自主的に検査の専門資格を取得すること,自身の検査の知識量をまず把握し向上させることで,何か社会に還元することを目標に定めている。
8. カテゴリー8 倫理 領域:プロフェッショナルな責務主題18:正確な検査結果を出すための臨床検査技師としての行動と責任
概念:新人技師は,新人教育プログラムを通じて,臨床検査技師として適切な検査結果を出すには正確性が大事であり,様々な手技における検査結果に正確性が大きく影響していると認識していた。輸血検査では人の命に係わるため,輸血に関する知識や手技の習得が必要であると認識していた。業務を遂行する中で,病院の一職員として自覚し自分自身の行動が患者の検査結果や診療,学生指導に影響してくると感じている。
領域:医療倫理主題19:現場経験を通じた倫理的配慮の理解
概念:新人技師は,新人教育プログラムよりも,現場での経験を通じて,人の命や人生を預かる重大さを痛感し,生命の重さを感じていた。患者とのやり取りから,守秘義務を守る難しさや苦悩を実感し,不安を感じていると認識している。その上で,自分の職業倫理を知り,臨床検査技師としての務めを果たすため,検査のスキルを磨く必要性を感じるに至っていた。そして,検査の根拠のみならず,患者への対応や行動に関しても根拠をもって行動する必要性を痛感していた。
本研究では,入職1~2年目の新人技師5名へのインタビューで得たデータは,Maekawaらのコンピテンシーモデルを枠組みとして主題分析によって分析された。その結果,8カテゴリーにて計19の主題が抽出された。新人技師は,採血や標本処理などの基礎手技を段階的に習得し,検査前後の責任ある行動やエラー対応の重要性を理解していた。また,生理検査や患者対応を通じてコミュニケーション能力を獲得し,感染予防や緊急対応など医療安全に関する課題も認識していた。さらに,他部署との協働や先輩臨床検査技師との関係構築によりチーム医療への理解を深め,学会参加や資格取得を目指す自己啓発の意欲も示された。現場経験を通じて生命倫理や専門職としての責任を自覚し,正確な検査結果を提供する重要性を強く認識していた。これらの結果から,新人教育プログラムと実務経験は,技術習得に加え責任感などを含む多面的なコンピテンシー形成を促し,卒前教育から入職後の経験学習への円滑な移行に寄与する可能性があると考えられる。
現場経験を重ねることで,対人関係能力や倫理観など多面的な能力も発達していた。本研究の結果は,Kolbの経験学習理論8)の「具体的経験」「内省的反省」「概念化・抽象化」「能動的計画」のプロセスを踏まえ,新人技師の成長を裏付けるものである。特に,失敗や緊急対応などの経験を先輩臨床検査技師との振り返りや業務内の学びを通じて抽象化し,次の検査計画に活かしている点を本研究は明示した。さらに,経験学習を効果的に進めるためには,メンターの存在が重要であることが先行研究9),10)で示唆されており,メンターの存在は,職場への適応,能力向上,職務満足の向上に寄与し,離職防止につながる可能性もあることが明らかにされている。これらを踏まえると,新人教育プログラムの期間中にメンター制度を導入することで,新人技師の経験学習が促進され,能力向上につながる可能性があると考えられる。また,検査の信頼性を担保する意識は新人期から育むことが重要である。精度管理には,内部精度管理(自施設内での正確性維持)と,外部精度管理(他施設との比較)11)があり,個人ではなく検査室全体で取り組むべき課題である。その過程に新人技師が関わることで,検査の意義や精度管理の重要性を理解し,専門職としての自覚を育む機会となり得ると考えられる。
本調査では,医療安全に関する逐語は少なく,その理由として2点が考えられる。1点目は新人技師には医療安全の概念にまで考えと体験が及んでいないこと,2点目は失敗を未然に防ぐ処置も施されているため,失敗を経験する機会が限定されており,医療安全について考える機会が少ないというパラドクスが考えられる。医療の質を担保する上で,ヒヤリハットやインシデントの解析は検査室のマネジメントにおいても重要である。検査室でのインシデントなどの原因は,不注意,錯誤,知識不足など多岐に渡り12),特に1~4年目の若手臨床検査技師による検査結果の誤報告は,不注意が多かったと報告されている13)。新人看護師の報告14)では,入職時は医療安全への関心が低かったが,実務経験を通じて1年後には高い関心へと変容をしていた。医療安全は,新人技師にも必要なコンピテンシーであり,今後は過去のインシデント事例を活用したシミュレーション学習の導入が有効であると考えられる。
本研究は,新人技師が教育プログラムと実務経験を通じて成長する過程を明らかにした点に意義がある。参加者数は限られるが,質的研究では統計的規模ではなく情報力によって妥当性が導かれる15)。また,飽和など伝統的基準よりも研究デザインと分析過程の透明性が重視される16)。他の文脈への適用可能性(transferability)には限界がある可能性があるが,少数例ながら理論枠組みに基づき一定の示唆を得ることができたと考える。
本研究は,新人技師が教育プログラムと実務経験を通じてどのように成長するかを明らかにした。コンピテンシーモデルに基づき,新人期の不安や認識の変化を体系的に捉えた点に意義がある。これらの知見は,今後の新人教育の指導方法の検討に貢献するものである。
本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。
本研究に際し,新人技師の指導を担当してくださった岐阜大学医学部附属病院検査部および輸血・細胞治療部の職員の皆様に感謝申し上げます。