医学検査
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技術論文
AmpC/ESBL鑑別ディスクを用いた迅速同定の精度に関する検討
徳田 杏乃辰巳 滉輝藤社 果林安井 桃音足立 紗世佐藤 望裕中村 竜也
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2026 年 75 巻 2 号 p. 313-319

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Abstract

目的:第三世代セファロスポリン系薬耐性菌の増加が問題であり,感染拡大および抗菌薬適正使用の観点から,迅速検出が求められる。そこで,AmpC/ESBL鑑別ディスク(関東化学株式会社)を用いたESBLおよびAmpC産生菌の迅速同定の精度について検討した。方法:腸内細菌目細菌69株を対象とし,培養4,6,8,18–24時間におけるAmpC/ESBL鑑別ディスクの判定と遺伝子型との一致率を算出した。不一致例における追加試験として,クロキサシリンのβ-ラクタマーゼ阻害活性を測定した。結果:培養4時間では69株全てが測定不可であった。ESBL産生株の培養6,8,18–24時間の一致率は,57.6%,66.7%,66.7%,AmpC産生株で33.3%,100%,91.7%,ESBLまたはAmpC産生外膜欠損株で20%,80%,40%,CPEで47.1%,76.5%,76.5%であった。不一致例のうち,クロキサシリン添加によりblaCTX-M-9 group保有株で阻止円が形成された。考察:迅速法(8時間)と標準法で概ね同等の結果が得られたことから,本迅速法を日常検査に導入できる可能性が示唆された。一方,ESBL産生株群での一致率低下はblaCTX-M-9保有株に対するクロキサシリンの活性に起因し,AmpC偽陽性を示すため判定解釈に注意を要することが明らかとなった。

Translated Abstract

Introduction: The increasing prevalence of Enterobacteriaceae resistant to third-generation cephalosporins poses a significant global health concern. Accurate and timely detection of resistance determinants is essential for preventing hospital-acquired infections and supporting antimicrobial stewardship. This study evaluated the diagnostic accuracy of the AmpC/ESBL Detection Discs (Kanto Chemical Co., Inc.) in differentiating ESBL and AmpC producing isolates.Methods: Sixty-nine Enterobacteriaceae strains were analyzed. Disc diffusion profiles after 4, 6, 8, and 18–24 hours of incubation were compared with molecular results obtained by polymerase chain reaction (PCR) or next-generation sequencing (NGS). Additional susceptibility testing with cloxacillin was performed to clarify discordant cases. Results: No interpretable growth was observed at 4 hours. For ESBL producers, concordance was 57.6%, 66.7%, and 66.7% at 6, 8, and 18–24 hours, respectively. For AmpC producers, the corresponding values were 33.3%, 100%, and 91.7%. Isolates with outer membrane protein loss showed reduced agreement (20%, 80%, 40%), while carbapenemase-producing Enterobacteriaceae displayed similarly low consistency (47.1%, 76.5%, 76.5%). Notably, isolates harboring blaCTX-M-9 demonstrated inhibition zones in the presence of cloxacillin, leading to misclassification as AmpC producers. Conclusion: The 8-hour protocol yielded performance comparable to the conventional 18–24-hour method, suggesting practical utility in routine diagnostics. However, cloxacillin interference in blaCTX-M-9 isolates represents a limitation requiring careful interpretation. Given its affordability and operational simplicity, this approach may serve as a feasible rapid screening strategy in diverse clinical laboratory settings.

I  目的

薬剤耐性菌の増加は,21世紀における世界的な公衆衛生上の深刻な課題の一つである。特に,第三世代セファロスポリン系薬に耐性を示す基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase; ESBL)およびAmpC型β-ラクタマーゼ(AmpC)産生菌の増加が顕著であり,Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeでは高頻度に検出されている1)~3)。これらの耐性菌は,尿路感染症や敗血症などの重篤な感染症の治療を困難にし,入院期間の延長,医療費の増加,さらには死亡率の上昇とも関連することが報告されている4),5)

ESBLやAmpCの正確な識別は,抗菌薬の適切な選択に直結し,特に第三・第四世代セファロスポリン系薬,セファマイシン系薬,カルバペネム系薬の使用方針に大きな影響を及ぼす。また,これらの耐性遺伝子の多くはプラスミド上に存在し,菌種間で容易に伝播することから,院内感染対策および耐性菌拡大防止の観点においても,迅速かつ高精度な検出体制の整備が不可欠である。

β-ラクタマーゼ検出については,Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)6)およびEuropean Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing(EUCAST)7)により基準が示されている。ESBLに関しては確立された検出法が存在する一方,AmpCについては,EUCASTではボロン酸やクロキサシリンを用いた確認試験が紹介されているものの,CLSIにおいては依然として統一的な判定基準が提示されていないのが現状である。さらに,ディスク拡散法に基づく迅速抗菌薬感受性検査(rapid antimicrobial susceptibility test; RAST)は存在するものの,ESBLおよびAmpCを対象とした標準化された迅速検出法は未だ確立されていない。

近年,遺伝子検査の進歩により耐性遺伝子の迅速検出が可能となりつつあるが,コストや設備面での制約から,日常検査への全面的な導入は現実的ではない。そのため,多くの施設で導入可能かつ簡便なディスク拡散法によるESBLおよびAmpCの同時迅速検出法の確立が強く求められている。

AmpC/ESBL鑑別ディスク(MAST DISCS Combi AmpC and ESBL ID set; Mast AE,関東化学株式会社)は,各種β-ラクタマーゼ阻害剤を含有したcefpodoxime(CPDX)ディスクで構成されており,ESBL産生株,AmpC産生株,さらに両者の共産生株の識別を簡便に行うことが可能である。従来法では判別が困難であった共産生株に対しても,高い精度が期待される。

本研究では,Mast AEを用いてESBLまたはAmpCを産生するEscherichia coliおよびKlebsiella pneumoniaeの迅速検出が可能であるかを検討し,その有用性を評価した。

II  対象および方法

1. 対象

対象は,本学に保存されているE. coliおよびK. pneumoniae計69株とした。内訳は,ESBL産生株33株(blaCTX-M-1 group保有12株,blaCTX-M-9 group保有11株,blaCTX-M-2 group保有4株,blaCTX-M-8 group保有1株,blaCTX-M-1 group + blaCTX-M-9 group保有3株,blaCTX-M-1 group + blaCTX-M-8 group保有1株,blaCTX-M-1 group + blaCTX-M-2 group保有1株),AmpC産生株12株(chromosomal[c-AmpC]9株,CIT型AmpC 1株,DHA型AmpC 1株,CMY-2型AmpC 1株),AmpCおよびESBL両産生E. coli 2株,β-ラクタマーゼ産生外膜欠損株5株(blaCTX-M-1 group+外膜欠損2株,blaCTX-M-9 group+外膜欠損1株,DHA型AmpC+外膜欠損1株,SHV-11+外膜欠損1株),カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(Carbapenem-Producing Enterobacteriaceae; CPE)17株(blaIMP-1保有1株,blaIMP-6 + blaCTX-M-1 group保有1株,blaIMP-6 + blaCTX-M-2 group保有6株,blaNDM-1保有1株,blaNDM-1 + blaCTX-M-1 group保有2株,blaNDM-5保有1株,blaVIM保有1株,blaKPC保有1株,blaOXA-48保有2株,blaOXA-48 + blaCTX-M-1 group保有1株)である。これらの各種耐性遺伝子の確認は,PCR法により実施した。またESBLおよび/またはAmpC産生外膜欠損株5株についてはEUCASTのCRE検出フローに従い判定した7)。対象株すべてに対し,PCR法にてAmpC β-ラクタマーゼ遺伝子の有無を確認し,mCIM法にてカルバペネマーゼの非産生を確認した。また,CTX-M-9 group産生株についてはドライプレート(極東製薬)を用いた微量液体希釈法を実施した。

2. Mast AEによる測定

–30℃でスキムミルクまたはビーズに保存されている株を5%ヒツジ血液寒天培地にて,35℃ 18時間培養したコロニーを用いた。発育した菌株をMcFarland 0.5に調整しミューラーヒントンII寒天培地(日本Becton Dickinson;日本BD)に塗抹し,Mast AE(ディスクA:CPDX 10 μg,ディスクB:CPDX 10 μg + ESBL阻害剤,ディスクC:CPDX 10 μg + AmpC阻害剤,ディスクD:CPDX 10 μg + ESBL阻害剤+AmpC阻害剤)を配置後,35℃で培養した。培養18–24時間時点(標準法)に加え,培養4,6,8時間時点(迅速法)におけるディスクA,B,C,Dの各阻止円直径(mm)を測定した。添付文書に従い,以下の1)~4)の条件を基に判定した(Figure 18)。それ以外の結果については判定不能(N/A)とした。また,Mast AEより得られた判定結果と耐性遺伝子との一致率を算出した。判定は,4名の技師が2人1組でダブルチェックした上で,CLSI-M100-34thに従い実施した。

Figure 1  MAST A/E判定画像

1)|A − B|,|A − C|,|A − D| がすべて ≤ 2 mm:ESBL(−)/AmpC(−)

2)(B − A)および(D − C) ≥ 5 mmかつ |B − D| および |A − C| ≤ 4 mm:ESBL(+)

3)(D − B)および(C − A) ≥ 5 mmかつ |A − B| および |C − D| ≤ 4 mm:AmpC(+)

4)(D − C) ≥ 5 mmかつ |B − A| ≤ 4 mmの場合:ESBL(+)/AmpC(+)

3. クロキサシリンのβ-ラクタマーゼ阻害活性の測定

ESBL産生株において,Mast AEのディスクCの阻止円拡張により判定保留となった株が得られたため,追加試験としてクロキサシリンによる阻止円拡大の影響について検討した。対象には,Mast AE対象株のうちESBL産生株およびAmpC産生株の45株を用いた。5%ヒツジ血液寒天培地にて35℃ 18時間培養後,McFarland 0.5に調整した菌液をミューラーヒントンII寒天培地(日本BD)に塗抹した。6 mmペーパーディスク抗生物質検定用(ADVANTEC)を配置し,クロキサシリン(TCI)を終濃度が200 μg/Disc,400 μg/Disc,600 μg/Disc,800 μg/Disc,1,000 μg/Discとなるようにディスクに10 μL添加した9)。35℃で18–24時間培養後,阻止円直径(mm)を測定し,クロキサシリンの濃度変化による阻止円直径の変化を調べた。基準株には,E. coli ATCC 25922およびK. pneumoniae ATCC 700603を使用した。

III  結果

1. Mast AEによる検出精度

培養4,6,8,18–24時間のMast AEによる結果と遺伝子型との判定結果をTable 1に示した。培養4時間では,全69株において発育不良により判定保留となった。また,培養6時間においても,AmpC産生菌,外膜欠損株における50%以上で,発育不良による判定保留となった。迅速法(培養8時間)と標準法の間で,AmpC産生1株と外膜欠損3株を除く63/69株で判定が一致した。

Table 1 培養4,6,8,18–24時間でのMast AE判定結果と遺伝子型との比較

培養時間 ESBL産生菌(33株) AmpC産生菌(12株) ESBLおよびAmpC両産生菌(2株)
一致 不一致 判定不能 発育不良 一致 不一致 判定不能 発育不良 一致 不一致 判定不能 発育不良
4時間 0 0 0 100%
(33/33)
0 0 0 100%
(12/12)
0 0 0 100%
(2/2)
6時間 57.6%
(19/33)
0 12.1%
(4/33)
30.3%
(10/33)
33.3%
(4/12)
0 8.3%
(1/12)
58.3%
(7/12)
100%
(2/2)
0 0 0
8時間 66.7%
(22/33)
0 30.3%
(10/33)
3%
(1/33)
100%
(12/12)
0 0 0 100%
(2/2)
0 0 0
18–24時間 66.7%
(22/33)
0 33.3%
(11/33)
0 91.7%
(11/12)
0 8.3%
(1/12)
0 100%
(2/2)
0 0 0
培養時間 ESBL/AmpC+外膜欠損(5株) CPE(17株)
一致 不一致 判定不能 発育不良 一致 不一致 判定不能 発育不良
4時間 0 0 0 100%
(5/5)
0 0 0 100%
(17/17)
6時間 20%
(1/5)
0 0 80%
(4/5)
47.1%
(8/17)
29.4%
(5/17)
0 23.5%
(4/17)
8時間 80%
(4/5)
0 0 20%
(1/5)
76.5%
(13/17)
23.5%
(4/17)
0 0
18–24時間 40%
(2/5)
20%
(1/5)
40%
(2/5)
0 76.5%
(13/17)
23.5%
(4/17)
0 0

2. 不一致例の解析

標準法で,Mast AEが判定不能(N/A)または遺伝子型と不一致判定となった株の一覧をTable 2に示した。ESBL産生株では,blaCTX-M-9 group単独保有株の8/12株(66.7%),blaCTX-M-1 group単独保有株の16.7%(2/12株),blaCTX-M-2単独保有株の25%(1/4株)において判定保留となった。

Table 2 判定不能またはGenotypeと不一致判定の阻止円直径

Type Species Geno type Zone diameter (mm) Results
A B C D
ESBL E. coli blaCTX-M-9 6 21 17 23 N/A
ESBL E. coli blaCTX-M-27 6 28 11 29 N/A
ESBL E. coli blaCTX-M-14 6 22 12 28 N/A
ESBL E. coli blaCTX-M-17 6 28 18 30 N/A
ESBL E. coli blaCTX-M-27 6 28 11 27 N/A
ESBL E. coli blaCTX-M-14 6 22 11 25 N/A
ESBL E. coli blaCTX-M-14 6 24 11 23 N/A
ESBL E. coli blaCTX-M-27 6 22 10 27 N/A
AmpC E. coli c-AmpC 12 18 27 27 N/A
ESBL K. pneumoniae blaCTX-M-22 6 19 6 24 N/A
ESBL K. pneumoniae blaCTX-M-2 7 30 9 25 N/A
ESBL K. pneumoniae blaCTX-M-1 6 17 6 12 N/A
ESBL + porin loss K. pneumoniae blaSHV-11 + porin loss 6 6 10 7 N/A
ESBL + porin loss K. pneumoniae blaCTX-M-15 + porin loss 6 9 6 7 N/A
ESBL + porin loss K. pneumoniae blaCTX-M-14 + porin loss 6 6 6 6 ESBL(−)/AmpC(−)
CPE K. pneumoniae blaIMP-6+CTX-M-2 6 6 6 12 ESBL(+)/AmpC(+)
CPE K. pneumoniae blaIMP-6+CTX-M-2 6 6 6 12 ESBL(+)/AmpC(+)
CPE K. pneumoniae blaIMP-6+CTX-M-2 6 7 6 13 ESBL(+)/AmpC(+)
CPE K. pneumoniae blaIMP-6+CTX-M-2 6 6 6 11 ESBL(+)/AmpC(+)
CPE E. coli blaIMP-6+CTX-M-2 6 6 6 10 N/A
CPE K. pneumoniae blaIMP-6+CTX-M-2 6 7 6 10 N/A

AmpC産生株では,迅速法(培養8時間)で判定可能であったものの,標準法で判定不能となった株が1株存在した。

ESBLまたはAmpC産生外膜欠損株では,blaCTX-M-14 1株において,ESBL(−)/AmpC(−)の不一致判定,blaSHV-11 1株,blaCTX-M-15 1株で判定保留となった。

CPEにおいて,blaIMP-6+CTX-M-2 groupを保有する株のうち,4/6株(66.7%)でESBL(+)/AmpC(+)の不一致判定となり,2/6株(33.3%)で判定保留となった。blaIMP-6+CTX-M-1 groupを保有する株では,ESBL(+)判定となった。

3. クロキサシリンのβ-ラクタマーゼ阻害活性測定

200 μg/Discクロキサシリン滴下による阻止円直径は,基準株E. coli ATCC25922で11 mm,K. pneumoniae ATCC700603で6 mmとなった。blaCTX-M-9 group保有株を除くESBL産生株およびCPEでは,200 μg/Discクロキサシリン滴下による阻止円直径は全て6 mmとなり,阻止円の形成が認められなかった。一方,blaCTX-M-9 group単独保有株の72.7%(8/11株),AmpC産生株の90%(9/10株)では,阻止円直径6 mm以上となり阻止円の拡大が認められた。

クロキサシリン終濃度400 μg/Disc,600 μg/Disc,800 μg/Disc,1,000 μg/Discによる各阻止円直径の変動について,blaCTX-M-9 group単独保有株群では,89.5%(17/19株)でいずれかの濃度以上で阻止円の拡大が認められた。阻止円の拡大が認められなかった2株のうち一方は,blaOXA-1およびblaTEM-1Bを保有するESBL産生株で,Piperacillin/Tazobactam(PIPC/TAZ)耐性株であった。AmpC産生株群では,100%(13/13株)で200または400 μg/Disc以降に阻止円の拡大が認められた。blaCTX-M-9 group以外のCTX-M型遺伝子保有株群では,16.6%(4/24株)で600または800 μg/Disc以降に阻止円直径の拡大が認められた。内訳はblaCTX-M-8保有2株,blaCTX-M-2保有1株,blaCTX-M-55保有1株であった。

blaCTX-M-9 group保有株群,AmpC産生株群,blaCTX-M-9 groupを除くCTX-M型遺伝子保有株群におけるクロキサシリン終濃度400 μg/Disc,600 μg/Disc,800 μg/‍Disc,1,000 μg/Discによる各阻止円直径の平均値をFigure 2に示す。いずれの群もクロキサシリン濃度の増加に伴い,阻止円直径の平均値は徐々に上昇したが,特にAmpC産生株およびblaCTX-M-9 group保有株群においてクロキサシリン200 μg/Discおよび1,000 μg/Discによる阻止円の差は,AmpC産生株群で8.5 mm,blaCTX-M-9 group保有株群で7.8 mmであり,阻止円直径の拡大が顕著であった。

Figure 2  各種遺伝子型のクロキサシリン濃度による阻止円直径の変動

IV  考察

本検討では,AmpCおよびESBL産生株に対する迅速検出法としてMast AEの精度を評価した。これまでの報告では,ESBL産生菌2株およびAmpC産生菌16株のいずれにおいても100%の正確性が示されている10),11)。本解析においても,AmpCおよびESBL共産生株で100%の一致率,AmpC産生株では91.7%の一致率が得られ,Mast AEがAmpCの迅速診断に有用であることが裏付けられた。一方,ESBL産生株に関しては一致率が66.7%にとどまり,約3分の1が不一致または判定保留となった。主因として,blaCTX-M-9 group保有株においてクロキサシリン含有ディスクCの阻止円直径がディスクAに比して5 mm以上拡大した点が挙げられる。加えて,クロキサシリン添加試験においても,AmpC産生株のみならずblaCTX-M-9 group保有株で濃度依存的な阻止円拡大が観察された。特に600 μg/mL以上では平均直径が11 mmに達し,ディスクAとの差が5 mmを超えるため,Mast AEにおける判定保留の一因となることが明らかとなった。クロキサシリンは抗菌薬の一種であるが,クロキサシリンとCPDXを含有するMast A/EディスクCの阻止円径が拡大していたことから,β-ラクタマーゼ阻害作用が機能していると推測した。したがって,判定保留例を解釈する際には各ディスクにおける阻止円の変化に注意を払い,AmpCやESBLの見逃しを回避することが重要である。

CREについては,MBL産生7株およびESBL/MBL産生3株のうち58.8%(10/17株)がESBL(−)/AmpC(−)と判定され,既報においても同様にMBL産生株の58.8%(10/17株)で遺伝子型と表現型の一致が報告されている10)。一方,blaIMP-6 + blaCTX-M-2 group保有株では,ディスクDの阻止円径が拡大し,10 mm以上に達した66.7%(4/6株)はESBL(+)/AmpC(+)と判定されたのに対し,10 mmに留まった33.3%(2/6株)は判定保留となり,遺伝子型との不一致が認められた。これまでにIMP型MBL産生株において,クロキサシリン添加によりMEPMのMICが低下することが報告されており12),クロキサシリンはAmpCのみならずIMP型MBLに対しても阻害作用を有する可能性が示される。以上の結果から,blaIMP-6 + blaCTX-M-2 group保有株においては,Mast AEのディスク拡散法のみでは耐性機序を正確に評価することは困難であり,PCR法などの遺伝子解析を併用することが不可欠である。

Mast AE迅速法(培養4,6,8時間)の一致率については,培養4時間時点では全株が判定保留となり,培養6時間時点では遺伝子型を問わず一致率が低率であった。しかし,8時間時点では標準法(培養18–24時間)とほぼ同等の結果を示した。したがって,迅速検出法としてMast AEを用いる場合には,少なくとも8時間以上の培養が必要である。8時間という判定時間は当日に検査結果を報告できる上限であり,本法を日常業務に導入する際には業務フローへの適合も含めて検討する必要がある。

本研究にはいくつかの限界が存在する。まず,対象菌種がE. coliおよびK. pneumoniaeに限定されており,他の腸内細菌目細菌に対する適用可能性は未検証である。また,解析に用いた株数は69株にとどまり,そのうちblaCTX-M-9 group保有株は13株,blaIMP-6保有株は7株と限られている。これらに対するクロキサシリンのβ-ラクタマーゼ阻害作用については,さらなる検証が必要である。

近年,遺伝子検査の普及により耐性遺伝子の迅速検出が可能となっているが,コストや設備面の制約からすべての菌株に適用することは困難である。本研究で検討した手法は比較的低コストで実施可能であり,多くの施設において迅速なESBLおよびAmpC産生株の検出に資することが期待される。なお,早期判定では誤判定のリスクが懸念されたため,少なくとも8時間以上の培養が必要であるが,検査室の運用体制を工夫することで,ESBLまたはAmpC産生菌の早期検出の実用化に寄与する可能性がある。

V  結語

本検討により,Mast AEを用いた迅速法では培養8時間時点で標準法とほぼ同等の結果が得られることが明らかとなった。また,AmpC阻害剤であるクロキサシリンは,ESBL産生株のうちblaCTX-M-9 group保有株およびblaIMP-6保有株における判定結果に影響を及ぼすことが示され,解釈に際して留意が必要である。

COI開示

本研究は,関東化学株式会社との共同研究により研究資材の提供を受けて実施されました。他に開示すべきCOIはありません。

文献
 
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