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技術論文
ルミパルスプレストBNPと他社BNP測定試薬の比較検討とBNPコントロールシオノギの精度管理試料としての有用性―全自動免疫測定装置におけるBNP測定試薬3社比較と精度管理試料の評価―
松下 知世, 出間 智行, 小野 翔平, 藤原 典, 久原 太助, 徳弘 慎治, 藤本 新平
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2026 年 75 巻 3 号 p. 520-529

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Abstract

脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心不全診断・重症度評価に有用である一方,測定試薬間差が課題である。本研究では,富士レビオ株式会社のルミパルスプレストBNP(LP-BNP),東ソー株式会社のAIA-パックCL BNP(AIA-BNP),アボットジャパン合同会社のBNP-JP・アボット(AJ-BNP)を用い,患者検体90例,各社専用コントロール,BNPコントロールシオノギを対象に,試薬間の相関性とコントロールの妥当性を検証した。相関性試験では3機種間で良好な相関(r ≥ 0.98)を得たが,測定値には有意差を認めた(p < 0.0001)。各社専用コントロールは検体による相関傾向と一致しない結果を示した一方,BNPコントロールシオノギは検体およびBNPコントロールシオノギの試薬間関係性の評価において,ほぼ全測定が予測区間内となり,検体と同様の試薬間関係性を示す可能性が示唆された。LP-BNPおよびBNPコントロールシオノギのLOT間差は認められなかった。以上より,BNPコントロールシオノギは精度管理用試料として有用であり,試薬間差の把握とハーモナイゼーションへの貢献が期待される。

Translated Abstract

Brain natriuretic peptide (BNP) is useful for the diagnosis and severity assessment of heart failure; however, differences among measurement reagents remain a challenge. This study evaluated LUMIPULSE Presto BNP (Fujirebio Inc.), AIA-Pack CL BNP (Tosoh Corporation), and ARCHITECT BNP-JP (Abbott Japan LLC) using 90 patient plasma samples, manufacturer-specific controls, and BNP Control Shionogi to examine inter-assay correlations and the validity of control materials. Correlation analysis showed strong agreement among the three systems (r = 0.98 or higher), but significant differences in measurement values were observed (p < 0.0001). Manufacturer-specific controls produced results that did not align with patient-sample correlation trends, whereas BNP Control Shionogi demonstrated a possibility of showing reagent-to-reagent relationships similar to those of patient samples. No lot-to-lot differences were observed for LUMIPULSE Presto BNP and BNP Control Shionogi. These findings indicate that BNP Control Shionogi is useful as a quality control material and is expected to contribute to identifying inter-assay differences and promoting harmonization.

I  はじめに

脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は,主に心室から分泌される32個のアミノ酸からなる心血管ホルモンであり,強力な水・ナトリウム利尿作用および血管拡張作用を有することが知られている。BNPは,心室負荷の増加に伴い分泌が促進され,交感神経系およびレニン・アンジオテンシン系を抑制することで,これらのホルモンと拮抗的に作用し,心不全などの病態を改善する重要な役割を果たす。また,健常人の血中BNP濃度は極めて低値である一方,慢性および急性心不全患者においては,その重症度に比例して顕著に増加することから,BNPは心不全の診断および重症度評価において有用なバイオマーカーとして広く利用されている1)。

心不全は,循環器疾患の中でも特に罹患率が高く,日本国内では心不全患者数が約120万人に達しており,2035年には約132万人に達すると予測されている。このような背景から,心不全は「心不全パンデミック」とも形容され,医療界および行政機関から危惧されている2),3)。2021年には,日米欧の心不全学会により「心不全の世界共通定義と分類」が提唱され,特にナトリウム利尿ペプチド(BNPおよびNT-proBNP)の高値が心不全の診断基準として重要であることが明示された3)。また,2023年には近年増加している左室駆出率の保持された心不全(HFpEF)において,BNPおよびNT-proBNPの測定値が他の心不全タイプ(HFrEF,HFmrEF)と比べて相対的に低値であることが多いこと,HFpEFの大規模臨床試験における患者組入基準にBNP/NT-proBNP値の上昇が含まれていることなども踏まえて,血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメントの改訂も行われている4)。

BNP測定試薬に関しては,国内では1993年に塩野義製薬株式会社(以下,塩野義)から免疫放射測定法(immunoradiometric assay,以下,IRMA法)「シオノリアBNP」(2007年発売終了)が発売されて以降,多数の試薬が市場に投入されているが,各試薬間で測定値の相違が報告されている5),6)。一方で精度管理については,2018年の医療法改正に伴い,医療機関や検査機関における精度の確保が求められている現状にある。こうした状況を受け,塩野義は,すべてのBNP測定キットで使用可能なコントロール試料「BNPコントロールシオノギ」を開発し,2019年に販売をしている。本製品は,臨床検体に近い組成を持つヒト血漿ベースの試料であり,proBNPおよびBNP-32の両方を含有することで,実際の臨床検体におけるBNPの分子形を反映するよう設計されており,かつ製品のLOTごとに「シオノリアBNP」と同じ製造処方により作製された試薬により参考値幅が設定されていることから,精度管理物質として使用されている7),8)。また,一般社団法人日本臨床衛生検査技師会では「循環器病対策推進基本計画」に則った臨床検査の精度管理体制の拡充を目指し,循環器病関連検査項目についても精度管理調査を検討している9)。

このようにBNP測定および精度の確保の必要性が高まっている現状において試薬間差を確認することは重要であることから,今回我々は,富士レビオ株式会社から発売されているルミパルスプレスト試薬を含む主要な3社のBNP測定試薬を用いて,それぞれの試薬の相関性を評価するとともに,各種コントロール試料の評価およびBNPコントロールシオノギを用いた各試薬のハーモナイゼーションの可能性について検討を行ったため報告する。

II  対象および方法

1. 対象と検査材料

2023年12月20日および2023年12月27日に高知大学医学部附属病院検査部にBNPの検査依頼があり,検査部外来採血室において採血を行った患者検体の残余血漿90例(EDTA血漿)および「BNPコントロールシオノギ」,各社専用コントロールを対象とした。残余血漿の使用にあたっては,高知大学医学部附属病院 倫理審査委員会の承認を得た(登録番号:ERB-109677)。

2. 試薬および測定機器

1) 評価試薬/評価機器

・ルミパルスプレストBNP(富士レビオ株式会社)(以下,LP-BNP)/ルミパルスL2400(Chemiluminescence Enzyme Immunoassay;CLEIA法)(以下,L2400)

2) 対照試薬/対照機器

・AIA-パックCL BNP(東ソー株式会社)(以下,AIA-BNP)/AIA-CL 1200(CLEIA法)(以下,AIA)

・BNP-JP・アボット(アボットジャパン合同会社)(以下,AJ-BNP)/ARCHITECT i2000SR(Chemiluminescent Immunoassay;CLIA法)(以下,ARCHITECT)

3) 精度管理物質

・BNPコントロールシオノギ(塩野義製薬株式会社)

・LPコントロール・BNP(富士レビオ株式会社)

・東ソーコントロールセット(心疾患)(東ソー株式会社)

・ARCHITECT BNP-JP・コントロール(アボットジャパン合同会社)

3. 方法

1) 相関性試験

検査部外来採血室において採血を行った患者検体の残余血漿90例を用いて評価試薬(LP-BNP)および対照試薬2種(AIA-BNP, AJ-BNP)にて各々1重測定を行い,ピアソンの積率相関係数およびPassing Bablok法による回帰式を算出した。

2) 各種コントロール試料の評価

・各種測定試薬とコントロールの測定値確認

「BNPコントロールシオノギ」およびルミパルスプレスト専用のコントロール「LPコントロール・BNP」,AIA専用のコントロール「東ソーコントロールセット(心疾患)」,ARCHITECT専用のコントロール「ARCHITECT BNP-JP・コントロール」を評価試薬(LP-BNP)および対照試薬2種(AIA-BNP, AJ-BNP)にて各々6重測定を行い,相関性試験結果との比較,測定値平均とコントロール参考値範囲との比較,変動係数(CV%)の算出を実施した。

・ルミパルスプレストBNPおよびBNPコントロールシオノギのLOT差確認

LP-BNP3LOTを用い,L2400にて「LPコントロール・BNP」を6重測定し,測定値平均とコントロール参考値範囲との比較,各試薬LOTでの測定値差の確認および変動係数(CV%)の算出を実施した。「BNPコントロールシオノギ」については2 LOTを用い,評価試薬(LP-BNP)および対照試薬2種(AIA-BNP, AJ-BNP)にて各々6重測定を行い,測定値平均とコントロール参考値範囲との比較および変動係数(CV%)の算出を実施した。

3) 検体およびBNPコントロールシオノギの試薬間関係性の評価

検体およびBNPコントロールシオノギの試薬間関係性の評価は,2023年に国際臨床化学連合(IFCC)が提言した「外部精度管理・技能試験に用いるサンプル材料の基準設定およびコミュータビリティ評価に関する推奨事項」を参考に実施した10)。相関性試験で得られた患者検体のBNP測定値を用いてPassing-Bablok回帰を算出し,パラメトリック法により99%予測区間(PI)(z = 2.576)を設定した。具体的には,各患者検体について回帰直線からの残差を求め,残差の二乗をX値に対して平滑化して濃度域に応じた残差分散を推定した。次に,PI幅に測定系の精度を反映させるため,各種測定試薬とコントロールの測定値確認試験にて6重測定したBNPコントロールシオノギの測定値から標準偏差(SD)を算出し,回帰の傾きを用いてX測定系のSDをY方向に換算しY測定系のSDと合わせて測定系由来のばらつきを合成した。最後に,残差分散と測定系由来の分散を合成し得られた総合的な標準偏差に基づきPIを求めた。各種コントロールの評価時に得られた「BNPコントロールシオノギ」の測定値が,このPI内に含まれるかを確認することで,同コントロールが検体と同様の試薬間関係性を示すかを評価した。なお,LOT差確認では,3 LOTのLP-BNPにて同コントロールを測定したが,検討の公平性を保つために同等性の評価ではAIA-BNPおよびAJ-BNPに合わせてLP-BNPもLOT No. 1のみを対象とした。

4. 統計解析

3機種間の有意差の検定にはFriedman検定を用い,多重比較にはノンパラメトリックな方法であるWilcoxon符号付き順位検定(Bonferroni補正付き)を適用し,有意水準α = 0.0001(0.01%)とした。

III  結果

1. 相関性試験

すべての機種間において相関係数r = 0.98以上となり良好な相関を示した。しかしながら,測定値の差を認めL2400(y)とARCHITECT(x)の比較では回帰式がy = 1.644x + 2.965(Figure 1),L2400(y)とAIA(x)の比較では回帰式がy = 1.345x + 0.7591(Figure 2),AIA(y)とARCHITECT(x)の比較では回帰式がy = 1.212x + 1.818となった(Figure 3)。また,ARCHITECTでの測定結果が感度以下であった4例を除いた86例について3機種間の測定値の差を検定した。その結果,Friedman検定により有意差を認めた(p < 0.0001)。さらに,Wilcoxon符号付き順位検定(Bonferroni補正付き)による多重比較を行ったところ,すべての組み合わせで有意差を認めた(p < 0.0001)(Figure 4)。

Figure 1  Assessment for correlation between L2400 and ARCHITECT

Four samples with measurement results below the ARCHITECT system’s detection limit were excluded.

Figure 2  Assessment for correlation between L2400 and AIA
Figure 3  Assessment for correlation between AIA and ARCHITECT

Four samples with measurement results below the ARCHITECT system’s detection limit were excluded.

Figure 4  Statistical analysis of differences among the three analyzers with multiple comparison test

2. 各種コントロール試料の評価

1) 各種測定試薬とコントロールの測定値確認

各社の専用コントロールを測定した結果,LPコントロール・BNPは各社試薬間で10%以内に測定値が収束し,検体測定値による相関性試験結果とは異なる傾向の結果を得た。東ソーコントロールセット(心疾患)では,L2400とAIAの関係は30%前後となり相関性試験結果とほぼ同等の測定値差であったが,ARCHITECTとL2400の関係は検体測定値による相関性試験結果より小さい測定値差を認めた。ARCHITECT BNP-JP・コントロールでは,L2400が低値傾向,AIA,ARCHITECTの順に高値傾向となり,検体測定値の相関と相反する傾向があった。BNPコントロールシオノギの測定値は,L2400とAIA,L2400とARCHITECTの比較にて概ね検体測定値の相関と同様の傾向があった。また,BNPコントロールシオノギ取扱説明書に記載されている参考値と比較すると,L2400およびAIAは参考値内であったが,ARCHITECTのみ2濃度目が参考値外となった。また変動係数(CV%)に関しては,L2400およびAIAが2%以下であったのに対し,ARCHITECTは1濃度目で4%台であった(Table 1)。

Table 1 Evaluation of various controls: Verification of measurement values for various reagents and controls

測定試薬 LP-BNP
測定試料 BNPコントロール
シオノギLOT No. 3001
LPコントロール・BNP 東ソーコントロールセット(心疾患) ARCHITECT
BNP-JP・コントロール
Level 1 2 1 2 1 2 1 2 3
Mean(pg/mL) 46.0 214.0 39.1 197.1 50.8 525.2 36.7 200.5 1,401.4
CV(%) 1.6 1.1 1.5 1.8 0.5 1.2 1.3 1.1 1.2
測定試薬 AIA-BNP
測定試料 BNPコントロール
シオノギLOT No. 3001
LPコントロール・BNP 東ソーコントロールセット(心疾患) ARCHITECT
BNP-JP・コントロール
Level 1 2 1 2 1 2 1 2 3
Mean(pg/mL) 33.9 168.1 39.5 199.4 37.5 392.3 44.1 241.2 1,702.7
CV(%) 1.2 0.9 1.2 1.0 2.0 0.6 1.8 1.0 0.9
LP-BNP/AIA-BNP(%) 136 127 99 99 135 134 83 83 82
測定試薬 AJ-BNP
測定試料 BNPコントロール
シオノギLOT No. 3001
LPコントロール・BNP 東ソーコントロールセット(心疾患) ARCHITECT
BNP-JP・コントロール
Level 1 2 1 2 1 2 1 2 3
Mean(pg/mL) 31.2 139.8 42.2 202.5 37.6 429.9 49.6 280.7 1,947.9
CV(%) 4.2 2.0 4.0 2.9 4.8 2.0 1.8 4.8 2.0
LP-BNP/AJ-BNP(%) 147 153 93 97 135 122 74 71 72
参考値(pg/mL) BNPコントロールシオノギ
LOT No. 3001
Level 1 29–49
Level 2 159–239

2) ルミパルスプレストBNPおよびBNPコントロールシオノギのLOT差確認

LP-BNP試薬3 LOTを用いて同一のコントロールを測定し,LOT差の有無を確認した。LPコントロール・BNP 1 LOT,およびBNPコントロールシオノギ2 LOTを測定したが,いずれもLOT間の測定値差は10%以内となった。またBNPコントロールシオノギ2 LOTを用いて,L2400・AIA・ARCHITECTの3機種で測定を実施し,BNPコントロールシオノギのLOT差の有無を確認した。いずれのLOTにおいても,L2400およびAIAは参考値内,ARCHITECTのみ2濃度目が参考値外となった。変動係数(CV%)に関しては,L2400およびAIAが2%以下であったのに対し,ARCHITECTは1濃度目で5%台となった(Table 2)。

Table 2 Evaluation of various controls: Verification of lot-to-lot differences in Lumipulse Presto reagents and BNP Control Shionogi

測定試料 LPコントロール・BNP BNPコントロール シオノギ
(LOT No. 3001)
BNPコントロール シオノギ
(LOT No. 4001)
測定試薬 LP-BNP LP-BNP AIA-BNP AJ-BNP LP-BNP AIA-BNP AJ-BNP
LP-BNP LOT No. 1 No. 2 No. 3 No. 1 No. 2 No. 3 No. 1 No. 2 No. 3
測定値(pg/mL) Level 1 38.9 38.9 38.9 46.4 43.6 42.7 32.6 36.4 51.4 50.0 46.1 38.8 38.4
37.5 38.4 38.1 46.4 44.0 41.3 34.4 34.4 51.6 49.8 47.6 38.9 33.6
38.5 37.9 38.1 45.7 44.1 42.6 34.0 32.9 51.9 50.1 47.4 39.6 36.8
37.5 38.0 38.0 45.1 44.4 42.1 34.4 32.5 50.9 50.4 47.2 39.7 37.8
38.4 37.4 37.5 45.2 43.6 41.8 34.1 34.4 50.7 50.3 47.8 38.4 35.5
38.8 38.8 38.2 45.8 42.5 42.0 34.0 31.8 50.8 49.4 47.0 38.5 34.3
Level 2 190.9 196.5 195.5 212.1 202.3 188.8 169.0 141.9 223.0 216.9 207.8 183.1 150.8
193.2 191.5 191.2 207.7 201.0 194.2 167.4 133.1 227.3 224.9 205.9 177.6 144.7
193.2 190.8 193.5 212.5 207.3 195.0 168.7 139.0 228.2 218.3 203.1 180.9 146.4
193.7 187.5 186.6 210.3 197.3 189.8 163.5 138.0 224.5 221.2 208.8 182.2 143.8
192.1 194.4 192.0 203.2 201.3 194.5 163.3 151.9 227.5 224.8 210.2 180.9 153.1
190.5 194.7 185.5 210.1 204.4 192.5 166.1 137.4 226.3 226.2 211.9 184.0 145.5
Mean(pg/mL) Level 1 38.3 38.2 38.1 45.8 43.7 42.1 33.9 33.7 51.2 50.0 47.2 39.0 36.1
Level 2 192.3 192.6 190.7 209.3 202.3 192.5 166.3 140.2 226.1 222.1 208.0 181.5 147.4
CV(%) Level 1 1.6 1.5 1.2 1.2 1.5 1.2 2.0 5.0 1.0 0.7 1.3 1.4 5.3
Level 2 0.7 1.7 2.1 1.6 1.7 1.4 1.5 4.6 0.9 1.7 1.5 1.2 2.5
対No. 1 LOT(%) Level 1 ― 100 99 ― 95 92 ― ― ― 98 92 ― ―
Level 2 100 99 97 92 98 92
参考値(pg/mL) LPコントロール・BNP BNPコントロール シオノギ
LOT No. 3001 LOT No. 4001
Level 1 37.7 29–49 32–53
Level 2 184.3 159–239 164–246

3. 検体およびBNPコントロールシオノギの試薬間関係性の評価

「BNPコントロールシオノギ」のBNP測定値について,L2400(y)とARCHITECT(x)およびL2400(y)とAIA(x)の比較では,36/36件が99%予測区間(PI)内に含まれ,AIA(y)とARCHITECT(x)の比較では35/36件がPI内に含まれることを確認した(Figure 5)。

Figure 5  Evaluation of Equivalence Between Patient Samples and BNP Control Shionogi

To ensure fairness in the evaluation, LP-BNP was limited to LOT No. 1 to match AIA-BNP and AJ-BNP.

IV  考察

本検討の結果,BNP測定においてL2400,AIA,ARCHITECTの3機種間で良好な相関があったが,測定値には乖離が生じ,Friedman検定により有意差を確認した。また,Wilcoxon符号付き順位検定(Bonferroni補正付き)による多重比較の結果,すべての組み合わせで有意な差を認めた(p < 0.0001)。測定値の差は各社20~60%程度であり,特にL2400とARCHITECTの間で最も大きな回帰式の傾きを確認した。

本試験ではルーチン検査で得られた検体を用いたため,測定分布は低濃度域に集中していたが,得られた回帰式の傾きは既報と同等であった。現状,各社が独自の標準品を用いて測定試薬を製造していることが要因となり,測定値差が生じていると考えられる。

各種コントロールの評価では,各社専用コントロールの測定結果に相関とは異なる傾向が見られ,各測定系における反応性の違いが影響している可能性が示唆された。既報においても,リコンビナント抗原の種類によって各測定系の反応性が異なることが指摘されており,各社専用コントロールの組成が公開されていないことから,添加抗原の違いによる測定値の乖離が生じた可能性が考えられる6)。各社専用コントロールは,各社の測定系に適した試料となっており,日常の精度管理において適していると考えられるが抗原による反応性の違いがあることが示唆された。一方,BNPコントロールシオノギを用いた測定では,各機器間の相関傾向と一致する結果を得た。

検体およびBNPコントロールシオノギの試薬間関係性の評価は,2023年に国際臨床化学連合(IFCC)が提言した「外部精度管理・技能試験に用いるサンプル材料の基準設定およびコミュータビリティ評価に関する推奨事項」を参考に実施した10)。結果としては,L2400とARCHITECT,L2400とAIAの間では36/36件が予測区間(PI)内に含まれ,AIAとARCHITECT間でも35/36件がPI内に含まれていた。本検討では検体の多重測定を行えておらず,IFCCの推奨事項に厳密に準拠した評価は実施できていない。そのため今後さらなる検討が必要ではあるが,当該コントロールが検体と同様の試薬間関係性を示す可能性が示唆された。BNPコントロールシオノギはヒト血漿ベースの試料であり,proBNPとBNP1-32を検体中の存在比率に近づけて添加調製されているため,実際の検体に近い挙動を示しやすいと考えられる。

また,BNPはかつて塩野義が特許を有していた経緯があり,各社が塩野義の測定系に合わせた試薬を開発・販売していた背景がある。そのため,過去のエビデンスを活用する上でも,現在も塩野義の測定系との整合性を維持することが重要である。「シオノリアBNP」自体はすでに発売終了しているものの,BNP測定の歴史的背景および過去エビデンスの活用という観点から塩野義の測定系との整合性を維持することは依然として重要であり,かつBNPコントロールシオノギは製品各LOTにおいて「シオノリアBNP」と同一の製造処方で作製された試薬に基づいて参考値幅が設定されていることから,本研究では同参考値幅を基準として用いている7)。

本検討では各種測定試薬とコントロールの測定値確認後に追加試験として,LP-BNPおよびBNPコントロールシオノギのLOT差確認を実施したが,LP-BNPおよびBNPコントロールシオノギにおいては一貫した傾向の結果が得られ,LOT間差は認めなかった。測定値平均とコントロール参考値範囲との比較においては,LP-BNPでは3 LOTすべて,AIA-BNPでは1 LOTが参考値内に収まり,AJ-BNPでは2濃度目が参考値外となった。LP-BNPおよびAIA-BNPの測定値が参考値内に収まる傾向は既報でも確認されており,本試験でも同様の結果が再現された8)。

これらの結果より,評価試薬(LP-BNP)はLOT間差がなく,BNPコントロールシオノギに対しても既報および本試験における2回の測定傾向が一致した上で,参考値内の結果を示したことから,塩野義の測定系との整合性が示唆された。AIA-BNPについては今回1 LOTのみの検討に留まったが,LP-BNPと同様に本試験における2回の測定結果が同じ傾向を示し,いずれも参考値内であった。このことから,AIA-BNPも塩野義の測定系との整合性を有していると考えられる。

なお,各種測定試薬とコントロールの測定値確認時およびLP-BNPおよびBNPコントロールシオノギのLOT差確認時の2回の測定で各社の測定値傾向や変動係数(CV%)に大きな差は認められなかったが,AJ-BNPにおける1濃度目の変動係数(CV%)は約5%とLP-BNPやAIA-BNPと比較して一貫して高い傾向があった。BNPは2023年に改訂された血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメントにも示されているように,臨床判断値が設定されている項目であり,高い精度が求められる。特にARCHITECTを使用する場合,他の測定系と比較して低濃度域での精度が低い傾向があるため,測定結果の解釈には注意が必要であると考えられる。

本検討では,3機種間の測定値の差に関する統計解析および回帰式の結果から,各社の測定値は一致せず,測定値に差があることを確認した。また,各社専用コントロールでは抗原の違いによる反応性の差が示唆された一方,BNPコントロールシオノギは検体を用いた相関結果と同様の傾向および試薬間関係性を示す可能性が示唆された。これらの結果より,測定系の差異を確認する上でBNPコントロールシオノギの使用は有用であり,ハーモナイゼーションへの活用が期待される。更に,ISO 15189:2022の7.3.7.2内部精度管理(IQC)において,「試薬又は装置の製造業者が供給する管理物質に対する代替又はそれへの追加として第三者のIQC物質の使用を考慮することが望ましい」と記載されていることから,BNPコントロールシオノギはISO認定における活用も期待される。

V  結語

本検討では,ルミパルスプレストBNPを含む3社のBNP測定試薬間に良好な相関を認めた一方,測定値には有意な差が存在することを確認した。また,各社専用コントロールでは測定系による反応性の違いが示唆されたのに対し,BNPコントロールシオノギは患者検体と同様の試薬間関係性を示し,精度管理用試料としての有用性が示された。BNPは心不全診療における重要なバイオマーカーであることから,各施設が試薬特性を十分に理解し,各社専用コントロールに加えてBNPコントロールシオノギを活用することで,精度管理の適正化と臨床への貢献が期待される。さらに,外部精度管理調査において当該コントロールを用いて施設間差の把握を進めることは,ハーモナイゼーションの推進に重要である。

COI開示

本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。

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