2026 年 75 巻 3 号 p. 530-537
単球容積の標準偏差である単球サイズ分布幅(monocyte distribution width; MDW)について基礎的・臨床的有用性の検討を行った。測定は自動血球計数装置Unicel DxH900(ベックマン・コールター社)を使用し,当院検査科に依頼のあった検査結果を対象として解析した。MDWの再現性は,同時再現性のCVが2.09–3.61%,日差再現性のCVが1.30–3.79%と良好であった。健常人120名の結果から求めたMDW参考基準範囲は14.5–19.3であった。385例のプロカルシトニン(Pct)測定値で4群に分けて比較した各群のMDWは,Pct高値群ほど優位に上昇した。また,752例の血液培養(血培)結果について行った白血球数,C反応性蛋白およびMDWのROC(receiver operating characteristic)解析のAUC(area under the curve)は,それぞれ0.558,0.603,0.737となった。血培陽性群に対する分別能はMDWが最も優れていたが,陽性群の13.5%はMDWが基準範囲内であり,上昇の発現にはタイムラグが存在することが示唆された。一方,血培陰性群ではMDWが31.7を超える高値例を認め,ウイルス感染や血液疾患など様々な病態が観察されたため,敗血症バイオマーカーとして利用するには注意が必要であると考えられた。
Monocyte distribution width (MDW) is one of the hematological parameters that reflects the changes in the size distribution of circulating monocytes. We evaluated the basic performance of MDW using the automatic hematology analyzer DxH900 (Beckman Coulter. Inc.). We also investigated the association between the MDW values and not only the procalcitonin (Pct) levels but also the blood culture results in our hospital patients. The within-run reproducibility and between –run reproducibility were acceptable. The coefficient variation (CV) values were 2.09–3.61%, 1.30–3.79% respectively. The reference interval of MDW obtained from 114 healthy subjects was 14.5–19.3. The MDW values obtained from the 385 patients were categorized in four groups using their Pct levels and compared with each other. The MDW distributions were showed that the higher group of Pct leves were, significantly higher of MDW increased. The Receiver-Operating Characteristic analysis for the prediction of the blood culture results in 752 subjects were performed about the results of their white cells blood count (WBC), C reactive protein (CRP) and MDW values. The area under the curves of them were 0.558, 0.603, 0.737 respectively. The AUC of MDW was the largest among them. The delayed increase of MDW values in few bacteremia patients were observed. On the other hand, the increase of MDW values in other diseases with negative blood culture results were observed. Our data suggests that the MDW may be one of useful markers for detecting the sepsis, but additional data of patients might be needed for interpretation them.
単球は殺菌,免疫応答,サイトカイン産生など多様な機能を持つが,感染早期から病原微生物の刺激を受けてサイトカイン産生や貪食の活性化,マクロファージへの分化など様々な変化が起こる1)。単球サイズ分布幅(monocyte distribution width; MDW)は単球容積の標準偏差であり,ベックマン・コールター社の自動血球計数装置Unicel DxH 900(以下,DxH 900)では,専用の計算アプリケーション(Early Sepsis Indicator Application)を有効化することで白血球分類と同時に測定可能となる2)。敗血症では,好中球や単球の容積が増大するという報告がある3)。MDWは敗血症発症リスクのバイオマーカーとしての有用性が報告され,米国ではFDAの承認を受けて救急医療の現場で利用されている4),5)。また,Malinovskaら6)は感染症におけるMDWに関する研究のSystem review and Meta-analysisの報告で敗血症および新型コロナウイルス感染症の診断に有用であると結論づけている。一方,日本国内ではResearch Use Onlyであり,MDWに関する報告が少ないため,基礎的検討,参考基準範囲の算出および臨床的有用性に関する検討を行ったので報告する。
2023年1月4日から3月31日の間に当院検査科に依頼のあった血球数算定(complete blood count; CBC),白血球分類,C反応性蛋白(C reactive protein; CRP),プロカルシトニン(procalcitonin; Pct),血液培養を対象として解析を行った。経時的変化の確認は,臨床検査科職員3名から採取した検体を用いて行った。参考基準範囲の算定には同期間に実施された職員検診114例の結果を使用した。なお,健常人の選定基準として,WBCが共用基準範囲である3.3~8.6(109/L)を示し,炎症および感染症の疑いのない臨床検査科職員および職員検診検体を用いた。すべての検体で,採血から2時間以内に測定を実施した。CBCおよび白血球分類はEDTA2K加静脈血,CRPおよびPctは血清,血液培養は全血,MDW再現性の検討には精度管理血球COULTER 6C Plus Cell Control(ベックマン・コールター社)をそれぞれ試料として用いた。
2. 使用機器CBC,白血球分類およびMDWはDxH 900,CRPは臨床化学自動分析装置TBA-FX8(キヤノンメディカルシステムズ社),Pctは全自動化学発光免疫測定装置Alinity i(Abbott社),血液培養は自動血液培養装置BDバクテックFX(日本BD社)を用いて測定した。
3. 方法 1) 同時再現性精度管理血球用いて10回連続測定した結果から平均値,standard deviation(SD),coefficient variation(CV)を算出した。
2) 日差再現性精度管理血球を2回/日,10日間測定した結果から平均値,SD,CVを算出した。
3) 経時的変化臨床検査科職員3名の検体を室温保存にて,採血直後,1時間後,2時間後,4時間後,8時間後,24時間後に測定を行い,経時的変化の確認を行った。
4) 参考基準範囲職員検診114例のMDW値から,ノンパラメトリック法により参考基準範囲を求めた。被検者の年齢は22–66歳(中央値35歳),性別の構成比は男性72例,女性42例であった。
5) PctとMDWの比較PctとCBCを同日に測定した患者385例について,Pct測定値で4群に分類し,各群間のMDWの比較を行った。分類は,測定試薬添付文書BRAHMS PCT・アボットに従って,< 0.05 ng/mLの感度以下群,0.05 ng/mL ≤ Pct ≤ 0.49 ng/mLの低値群,0.50 ng/mL ≤ Pct ≤ 2.00 ng/mLの中等度群,> 2.01 ng/mLの高値群とした。被検者の年齢および男女比は,感度以下群で17~100歳(中央値74歳),男性61名,女性53名,低値群で19~100歳(中央値78歳),男性98名,女性91名,中等度群で42~94歳(中央値77歳),男性27名,女性10名,高値群で18~92歳(中央値74歳),男性34名,女性11名であった。
6) 血液培養と白血球数(white blood cell; WBC),CRP,およびMDWの比較対象患者881例の血液培養のうち,Cumitechの基準7)に従って常在菌のコンタミネーションと考えられた20例を解析から除外し,861例についてWBC,CRP,およびMDWの測定値を抽出した。また,対象の測定値は血液培養採取日 ±1日とし,3項目揃っていない109例についても対象から除外した。以上の患者を除外した752例について,血液培養陰性群648例と陽性群104例に分類して比較を行った。被検者の年齢および男女比は,陰性群で0~100歳(中央値79歳),男性379名,女性269名,陽性群で0~94歳(中央値81歳),男性54名,女性50名であった。ROC解析(receiver oparating characteristic; ROC)によりWBC,CRP,MDWについて血液培養陽性に対するAUC(area under the curve; AUC),カットオフ値,感度,特異度を算出した。また,血液培養陽性群において,検出菌毎にMDWの比較を行った。検出菌の分布は,グラム陽性球菌53例(gram-positive cocci; GPC),グラム陽性桿菌7例(gram-positive rods; GPR),グラム陰性桿菌(gram-negative rods; GNR)41例,酵母3例であった。なお,酵母については件数が少なく,再現性の担保ができないと判断したため,検討から除外した。
7) 血液培養陽性患者におけるWBC,CRP,MDWの経時的変化当院の救急センターを受診した患者で血液培養が陽性となった3症例についてWBC,CRP,MDWの経時的変化を確認した。各症例の診断は結石性腎盂腎炎・敗血症(症例1),下腿蜂窩織炎(症例2),総胆管結石性胆管炎・急性膵炎(症例3)であった。
8) 統計学的解析統計解析ソフトIBM SPSS Statisticsを用いてノンパラメトリック法による参考基準範囲の算出,Wilcoxonの順位和検定による有意差検定,ROC解析を行った。
MDWの再現性をTable 1A, Bに示した。同時再現性のCVは2.09–3.61%,日差再現性のCVは1.30–3.79%と良好であった。
| 試料 | Level 1 | Level 2 | Level 3 |
|---|---|---|---|
| 平均値 | 34.6 | 34.9 | 34.7 |
| SD | 1.25 | 0.73 | 1.01 |
| CV(%) | 3.61 | 2.09 | 2.90 |
| 試料 | Level 1 | Level 2 | Level 3 |
|---|---|---|---|
| 平均値 | 34.4 | 34.9 | 35.2 |
| SD | 1.27 | 0.45 | 0.79 |
| CV(%) | 3.79 | 1.30 | 2.25 |
3名のMDW推移をFigure 1に示した。いずれの試料も採血後4時間までは採血直後と比較してMDWの変化は±1.0以内で安定していた。8時間後から上昇傾向を示し,24時間後には著明に上昇した。

職員検診114例のMDWヒストグラムと性差をFigure 2に示した。参考基準範囲は14.5–19.3,中央値は16.7で性差は認められなかった。

Pct測定値各群のMDWをFigure 3に示した。各々の例数は感度以下群から順に114,189,37,45,MDWの中央値は19.2,20.9,22.9,24.8で性差は認められなかった。Pctが高値になるに従ってMDWも高値となる傾向が見られ,すべての群間で有意差を認めた(ρ < 0.05)。

Pctと血液像検査を同日に実施した385例について,Pct測定値で4群に分けて各群間のMDWを比較した。感度以下:Pct < 0.05 ng/mL,低値:0.05 ng/mL ≤ Pct ≤ 0.49 ng/mL,中等度:0.50 ng/mL ≤ Pct ≤ 2.00 ng/mL,高値:Pct > 2.01 ng/mL
血液培養陽性群104例および陰性群648例のMDW分布をFigure 4,ROC解析をFigure 5に示した。各群の中央値は陰性群が22.0,陽性群は26.4と陽性群が有意に高値を示した(ρ < 0.05)。性差は認められなかった。各項目のAUC,カットオフ値,感度,特異度はWBCで各々0.558,10.7 × 109/L,59%,55%,CRPで各々0.603,4.71 mg/dL,75%,40%,MDWで各々0.737,23.9,77%,63%であった。血液培養陽性に対する分別能はMDWが最も優れていることが示唆された。検出菌毎の比較では,いずれの菌群の組み合わせにおいても有意差は認められなかった。


陽性群の中で4例(3.8%)はMDWが前述した参考基準範囲内となった。このうち血液培養採取日から5日以内にCBC再依頼のあった3例についてMDWの推移をFigure 6に示した。全例で参考基準範囲を超える上昇を認めた。

血液培養陽性者のうちMDWが基準範囲内の3例における経時的変化。後日採血は血液培養採血から5日未満のMDW。
一方,陰性群では31.7(既報8)のPct高値群のMDWの75パーセンタイル上限)を超えた症例が49例(7.6%)認められた。これらの患者背景は,細菌感染症21例,新型コロナウイルス感染8例,血液疾患7例,悪性腫瘍多発リンパ節転移2例,伝染性単核球症1例,自己免疫疾患1例,ウイルス感染症1例,その他熱源の特定に至らず解熱をした例が8例であった。伝染性単核球症例のMDWは49.3と本検討中最も高値を示す結果となった。MDWは単球サイズの変動幅を反映しているが,血液培養陽性患者において高値化するまでにタイムラグがあることや,陰性患者では,多種多様の要因で高値化することが示唆された。
7. 血液培養陽性例のWBC,CRP,MDWの経時的変化陽性例の中から3症例のWBC,CRP,MDWの経時的変化をFigure 7A–Cに示した。初診日を第1病日とした。

A.症例1におけるWBC,CRP,MDW経時的変化(症例1 結石性腎盂腎炎)。
B.症例2におけるWBC,CRP,MDW経時的変化(症例2 左下腿蜂窩織炎)。
C.症例3におけるWBC,CRP,MDW経時的変化(症例3 総胆管結石性胆管炎・急性膵炎)。
発熱,左腰の痛みにより救急搬送された。初診時のバイタルは呼吸数24/min,心拍数138/min,血圧88/72 mmHgであり,quick Sequential Organ Failure Assessment(qSOFA)9) 2項目の条件を満たしていた。computed tomography(CT)および各種検体検査により,結石性腎盂腎炎と診断され抗菌薬治療が行われた。初診時に採取した血液培養2セットからStreptcoccus pyogenesが分離された。WBCは第2病日,CRPおよびMDWは第1病日でピークを示し以後低下した。いずれの感染症マーカーも治療により低下し,第7病日にはWBCおよびMDWはほぼ基準範囲まで低下したが,CRPは軽度上昇で遷延していた。血液培養および尿培養からは,Streptococcus agalactiae(GBS)が分離された。
2) 症例2(Figure 7B)発熱,体動困難で救急搬送された。左下腿に腫脹・発赤・圧痛などを認め蜂窩織炎と診断され,抗菌薬治療が行われた。初診時に採取した血液培養2セットから,Streptcoccus pyogenesが分離された。第1病日は,WBC 7.9 × 109/L,CRP 0.68 mg/dLと,2項目は基準範囲付近の数値を示しているが,MDWは29.1と本検討血液培養陽性カットオフ値よりも高値を示していた。すべての項目が第2病日でピークを示し以後漸減,第15病日には基準範囲内となった。
3) 症例3(Figure 7C)上腹部痛で救急外来へ独歩来院した。CTおよび血液検査により,総胆管結石性胆管炎・急性膵炎と診断され抗菌薬治療,経皮的肝胆嚢ドレナージ,第13病日には内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography; ERCP)が施行された。血液培養からEnterococcus aerogens,胆汁からEnterococcus aerogens,Clostridium perfringensが分離された。ERCP後,一過性にWBCの上昇が見られたが,CRP,MDWに目立った変動は見られなかった。第16病日にすべての項目が基準範囲内となった。
MDWの再現性は,CVが1.30–3.79%と良好であり,既報と近似していた2),8)。また,採血後の安定性や参考基準範囲についても,既報と近似した結果が得られた2),8),10)。
臨床的有用性については敗血症のバイオマーカーであるPctとMDWの関係性および血液培養とWBC,CRP,MDWの関係性について検討した。Pct測定値で分類した各群のMDWは,Pctが高値になるにつれてMDWも高値となり,各群間で有意差が見られたことからMDWは敗血症マーカーおよびその重症度の目安として利用可能であることが示唆された。Pctは通常カルシトニンの前駆体として甲状腺C細胞で合成されるが,細菌や真菌による感染症においてTNF-αなどの炎症性サイトカインの刺激を受けて肺・腎臓・肝臓など全身の臓器で産生される11)。単球は感染において病原微生物の貪食,抗原提示,サイトカイン放出など様々な反応を引き起こす1)。いずれも病原微生物からの刺激が測定値に反映されるが,MDWは白血球分画から算出される数値のため,追加の採血が不要であり,早期治療が重要である敗血症のスクリーニングを短時間で可能にすることができるメリットがある。
血液培養結果で分類した陽性群と陰性群の2群の比較では,陰性群の中央値は22.0,陽性群の中央値は26.4と陽性群が有意に高値を示した。また,ROC解析による分別能比較では,AUC,感度,特異度すべてがWBC,CRPに比べ分別能が高く,Crouserら4)による敗血症とその他の疾患を対象としたROC解析で得られたAUC 0.79と近似していた。このことから,敗血症のバイオマーカーとしての有用性が示唆された。ただし,陽性群ではMDWが基準値内にとどまる例が見られたが,5日以内に全例基準範囲を超える上昇を示し,MDWの上昇にはタイムラグが存在することが考えられた。Figure 6で示した3例は該当していないが,単球の絶対数が少量の場合もばらつきの評価に信頼がおけないため,結果の評価には注意が必要であると考えられた。また,陰性群においてもMDW高値症例が見られ,血液培養が陽性とならない細菌感染,コロナウイルス感染,血液疾患などでも単球サイズに大小不同が生じることが観察された。検出菌ごとに行った比較では,いずれの菌群においても有意差を認めず,MDWは菌種による影響を受けないことが示唆された。MDWが最も高値を示した伝染性単核球症例は,ウイルス感染による免疫応答により単球が活性化していたことが考えられたが,原因の特定には至らなかった。新型コロナウイルス感染は,MDWがバイオマーカーになるという報告があり,同様の結果が観察された6),12)。血液疾患や転移性腫瘍,自己免疫性疾患においても,免疫抑制剤や抗がん剤の使用や化学療法による骨髄抑制の影響で易感染性になることから,感染症を引き起こしていた可能性が考えられる。MDWの経時的変化を追跡した症例の中で,症例1,症例3はWBC,CRPと共に病態を反映した数値の変化が見られた。症例2については,第1病日において,MDWのみ参考基準範囲を超える数値となっていた。当症例は第1病日早朝に40℃の発熱を認め,12時頃当院に搬送,採血を行っていた。CRPやWBCは単球や好中球の産生するサイトカインなどによって産生,動員されるため単球の活性化よりも遅れて上昇することが知られている13)。第2病日において,CRPおよびWBCが上昇していることから第1病日の検査値は感染初期の数値を反映していたと考えられる。
本検討は,血液培養の陽性・陰性の分別能を比較したため,敗血症に至っていない菌血症の被検者が陽性群に含まれていたと考えられるが,敗血症もしくは菌血症のバイオマーカーとしての有用性が示唆された。また,MDWとWBCを組み合わせると分別能が向上するとの報告もあり,今後組み合わせによる分別能について検討することで臨床的有用性が高まるのではないかと考えられる6)。MDWは適切な感染症治療下において,他の炎症マーカーと共に漸減し,その治療効果を反映することも確認された。各マーカーは病原微生物に反応して血中濃度が上昇するが,その機序や血中半減期がそれぞれ異なるため,ピークの時期や正常化の時期は異なっていた。それぞれの項目を組み合わせて評価することにより,早期に治療評価や病態変化の把握が出来る可能性があり,今後の課題としたい。
本検討は横浜南共済病院臨床研究委員会の承認を得て行った(承認番号;1_24_1_1)。
本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。