医学検査
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資料
硝子円柱出現・尿比重の組み合わせと推定糸球体ろ過量との関係性の検討
髙橋 俊介, 白井 健太, 金井 響平
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2026 年 75 巻 3 号 p. 627-633

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Abstract

【はじめに】硝子円柱は早期の慢性腎臓病や心腎連関を反映する指標とされるが,日常検査において,尿比重が高い検体で硝子円柱を認めても推定糸球体ろ過量(eGFR)が低下していない症例にしばしば遭遇する。本研究では,尿比重別の硝子円柱出現とeGFRおよび心臓マーカーである脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N末端フラグメント(NT-proBNP)の関係を探索的に検討した。【対象と方法】2022年6月~9月に当院で尿沈渣検査とeGFR測定を行った864検体を対象とした。尿比重1.020を境界とし,硝子円柱出現の有無を組み合わせた4群(①比重低・円柱無,②比重高・円柱無,③比重低・円柱有,④比重高・円柱有)に分類しeGFRおよびNT-proBNP値を比較検討した。【結果】硝子円柱出現群において,尿比重が高い群ほどeGFRは高値を示す傾向があった。4群比較では,③群(比重低・円柱有)のeGFRが他群に比し有意に低値であったが(p < 0.001),④群(比重高・円柱有)は硝子円柱を認めない群と有意差がなかった。一方,NT-proBNPは④群で最も平均値が高く,①群との間に有意差を認めた(p = 0.040)。【結語】尿比重が低値での硝子円柱出現は腎機能低下を強く示唆するが,高比重尿での出現は腎機能低下よりも心負荷を反映している可能性が示唆された。両指標を組み合わせて判断することは,心腎連関の病態把握において有用な指標となることが期待される。

Translated Abstract

Introduction: Hyaline casts are considered indicators of early chronic kidney disease and cardiorenal syndrome (CRS). Specimens with high urine specific gravity (USG) often exhibit hyaline casts despite a preserved estimated glomerular filtration rate (eGFR) in routine clinical settings. The present study explored the relationship of hyaline cast presence, categorized by USG, with eGFR and the cardiac marker N-terminal pro-B-type natriuretic peptide (NT-proBNP). Methods: The study included 849 specimens that underwent urine sediment analysis and eGFR determination at the study setting between June and September 2022. Using a USG threshold of 1.020, the participants were classified into four groups based on the presence of hyaline casts: (1) low USG without casts, (2) high USG without casts, (3) low USG with casts, and (4) high USG with casts. The eGFR and NT-proBNP levels were compared among these groups. Results: In specimens with hyaline casts, a higher USG groups tended to correlate with a higher eGFR. The four-group comparison revealed that the eGFR was significantly lower in Group 3 than the other groups (p < 0.001). However, the eGFR of Group 4 showed no significant differences compared to the groups without casts. Conversely, the mean NT-proBNP level was highest in Group 4, exhibiting a significant difference compared to Group 1 (p = 0.040). Conclusion: The presence of hyaline casts in urine with low USG strongly suggests decreased renal function, whereas their presence in urine with high USG may reflect cardiac load rather than renal impairment. Using these two indicators together should be beneficial for evaluating CRS pathophysiology.

I  はじめに

尿沈渣検査で観察される円柱の基質成分は,尿細管上皮細胞から分泌されるTamm-Horsfallムコ蛋白(ウロモジュリン)と少量の血漿蛋白がゲル状に凝固沈殿したものであり,その出現は尿細管腔が一時的に閉塞されていたことと尿の再灌流があったことを意味するとされる1)。硝子円柱の臨床的意義としては,早期の慢性腎臓病(CKD)の評価として有用である2),腎機能予測因子として有用である3)などの報告がある。一方,服部ら4)は腎機能低下がない循環器科受診患者群において,硝子円柱の出現率とBNP値は正の相関を示したことから,腎臓に障害のない循環器疾患患者においても硝子円柱が出現すると考えられ,硝子円柱の出現数は循環器疾患の重症度を推定するための一項目としての有用性が示唆されたと報告している。つまり,硝子円柱の出現は,心臓の作用と腎臓の機能は密接に相互関連することを示す「心腎連関」と呼ばれる病態を反映できる指標ではないかと考えることができる。

尿比重については,尿定性検査で一般的に測定されており,全溶質の濃度を示す。腎における尿の希釈や濃縮能を反映しており,低比重尿では腎不全,高比重尿では脱水などと関係があるとされている5)。脱水は心負荷が増大するとされ,循環器とも関係があると考えられる。このように,似たような臨床的意義が含まれる硝子円柱と尿比重であるが,著者らは,日常の尿沈渣検査で尿比重を含む尿定性検査値および,生化学検査データと比較を行っていた中で,高比重尿の患者検体に硝子円柱が出現していた場合において,腎機能低下を示す簡便な指標である推定糸球体ろ過量(eGFR)の数値に低下がみられない患者が多いことが気になっていた。しかし,硝子円柱出現の有無と尿比重の値とを組み合わせた指標について,腎機能低下との関係性を検討した報告は管見の限りでは見当たらなかった。今回,尿比重と硝子円柱の出現を組み合わせた指標を用いて,eGFRとの関係を探索的に検討した。また,循環器疾患との関係も探索的に検討するために,当院で測定している心臓マーカーである脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N末端フラグメント(NT-proBNP)についても,測定があった対象について調査した。

II  目的

尿比重が低値の時の硝子円柱出現と,尿比重が高値での硝子円柱の出現を比較した時に,簡便な腎機能の指標であるeGFR,および副次的な検討項目として,循環器疾患の指標であるNT-proBNPに差が出るのかについて探索的に検討することを目的とする。

III  対象と方法

1. 対象

星ら6)が発表した「硝子円柱フローチャート」に基づき,硝子円柱判定の目合わせを行った当院の技師3名が,2022年6月1日~2022年9月30日までに尿沈渣検査を担当し,さらに尿沈渣検査と同日にeGFRの測定があった患者検体を対象とした。

2. 方法

1) 検討項目,測定方法について

対象の年齢,性別,尿比重,各種円柱の出現の有無,eGFR,NT-proBNP値を収集した。硝子円柱を含む各種円柱の出現数は,尿沈渣染色液ラボステインSG(武藤化学株式会社)を用いてSternheimer染色した尿沈渣を顕微鏡で観察した。また,解析では純粋に硝子円柱のみの影響を評価するため,腎機能との関係が尿沈渣検査法などで示されている顆粒円柱,ろう様円柱,空胞変性円柱,フィブリン円柱が同時に報告されていた対象は除外した。尿比重は反射型屈折率測定法を用いて,全自動尿分析装置AX-4060(アークレイ)で測定した。eGFRはシグナスオートCRE(酵素法:シノテスト)を用いて,生化学分析装置コバスc702(ロシュ・ダイアグノスティックス)で測定した血清クレアチニン値から計算で求めた。NT-proBNPはエクルーシス試薬NT-proBNPII(ECLIA法:ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いて,免疫分析装置コバスe801(ロシュ・ダイアグノスティックス)で測定した。

2) 尿比重,硝子円柱,eGFRの分布について

尿比重,硝子円柱,eGFRについて,それぞれ単独での分布状況について確認した。

3) 硝子円柱出現があった対象の尿比重別のeGFRの比較

< 1/10LPF以上を硝子円柱の出現ありとして,硝子円柱の出現があった対象について,尿比重① < 1.010,②1.010~1.014,③1.015~1.019,④1.020~1.024,⑤1.025~1.029,⑥ ≥ 1.030の6群にわけて,それぞれのeGFRの平均値や分布を比較した。

4) 尿比重と硝子円柱の出現有無の組み合わせとeGFRの関係

2)で得られた結果を加味して,尿比重1.020を境に,硝子円柱の出現の有無と組み合わせて,①尿比重 < 1.020 and硝子円柱無(比重低・円柱無)②尿比重 ≥ 1.020 and硝子円柱無(比重高・円柱無)③尿比重 < 1.020 and硝子円柱有(比重低・円柱有)④尿比重 ≥ 1.020 and硝子円柱有(比重高・円柱有)の4群についてeGFRとの関係を調べ,各群に有意な差があるのかを検討した。なお,硝子円柱は2)同様に < 1/10LPF以上はすべて出現ありとした。

5) 尿比重と硝子円柱の出現有無の組み合わせとNT-proBNPの関係

対象中,eGFRと同日にNT-proBNPの測定があった検体について,3)と同様に,尿比重1.020を境に,硝子円柱の出現の有無と組み合わせ,①比重低・円柱無,②比重高・円柱無,③比重低・円柱有,④比重高・円柱有の4群についてNT-proBNPとの関係を調べ,各群に有意な差があるのかを検討した。

統計解析は,JMPを用いてSteel-Dwass検定を行い,p < 0.050を有意差ありとした。

IV  結果

1. 対象について

対象は864検体(男性:505名,女性:359名),年齢69.2歳 ± 14.6(mean ± SD)であった。また,外来患者772名,入院患者92名であり,同一患者の重複検体は71検体(8.2%)であった。対象のうち顆粒円柱,ろう様円柱の出現が15検体でみられたため解析から除外し,空胞変性円柱,フィブリン円柱出現はみられなかった。よって,統計解析は849検体を用いた(Table 1)。

Table 1 対象者背景(n = 864)

性別(男:女) 505名:359名
年齢(歳) 69.2 ± 14.6(mean ± SD)
外来患者:入院患者 772名:92名
重複患者の検体数 71検体(8.2%)
各円柱出現の除外数 顆粒・ろう様円柱 15検体

2. 尿比重,硝子円柱,eGFRの分布について

尿比重,eGFRの分布については,それぞれのmean ± SDが,尿比重:1.015.5 ± 0.0073,eGFR:58.2 ± 22.7であり,GFRは正規分布,尿比重は若干右側に裾野の長い分布であった。硝子円柱については,多くが出現無しであったが,尿沈渣で観察される数が増えるにつれて,検体数は減少する傾向がみられた(Figure 1–3)。

Figure 1  尿比重の分布
Figure 2  硝子円柱の分布
Figure 3  eGFRの分布

3. 硝子円柱出現があった対象の尿比重別のeGFRの比較

硝子円柱の出現がみられた対象について,尿比重別に6群に分類し,eGFRを比較した結果は,各群のmean ± SD(mL/min/1.73 m2)が① < 1.010:38.3 ± 6.7,②1.010~1.014:38.4 ± 3.1,③1.015~1.019:47.6 ± 3.0,④1.020~1.024:57.8 ± 4.2,⑤1.025~1.029:55.5 ± 5.0,⑥ ≥ 1.030:80.3 ± 10.6であった。また,各群の中央値(mL/min/1.73 m2)は,① < 1.010:34.5,②1.010~1.014:36.5,③1.015~1.019:43.0,④1.020~1.024:55.0,⑤1.025~1.029:47.5,⑥ ≥ 1.030:76.5であり,MEANと大きな乖離はなかった。硝子円柱が出現していても,尿比重が高値になるにつれてeGFRが高値になる傾向がみられた(Figure 4)。

Figure 4  硝子円柱出現有の尿比重別eGFRの比較

4. 尿比重と硝子円柱の出現有無の組み合わせとeGFRの関係

尿比重1.020を境に,硝子円柱の出現の有無と組み合わせて4群に分類し,eGFRを比較した結果は,各群のmean ± SD(mL/min/1.73 m2)が①比重低・円柱無:58.6 ± 21.9,②比重高・円柱無:66.1 ± 18.3,③比重低・円柱有:42.7 ± 23.4,④比重高・円柱有:58.8 ± 20.5であった。また,各群の中央値は,①比重低・円柱無:58.0,②比重高・円柱無:64.0,③比重低・円柱有:41.0,④比重高・円柱有:55.0であり,MEANと大きな乖離はなかった。③比重低・円柱有の群はその他の群すべてと比較して,eGFRが有意に低値であった(すべてp < 0.001)。また,④比重高・円柱有の群については,硝子円柱がみられない群である①(p = 0.999),②(p = 0.080)と有意な差はみられなかった(Figure 5)。

Figure 5  尿比重と硝子円柱の組み合わせとeGFRとの関係

5. 尿比重と硝子円柱の出現有無の組み合わせとNT-proBNPの関係

107検体でNT-proBNPの測定があり,4.と同様に,4群に分類し,NT-proBNPを比較した結果は,mean ± SD(pg/mL)が①比重低・円柱無:636.1 ± 996.6,②比重高・円柱無:1,338.2 ± 1,493.8,③比重低・円柱有:846.3 ± 1,922.7,④比重高・円柱有:2,241.7 ± 2,279.8であった。また,各群の中央値(pg/mL)は,①比重低・円柱無:240.0,②比重高・円柱無:456.0,③比重低・円柱有:199.0,④比重高・円柱有:1,839.0であり,すべての群でMEANと大きな乖離がみられた。④比重高・円柱有の群と①比重低・円柱無の群の間にのみ有意な差がみられた(p = 0.040)(Figure 6)。

Figure 6  尿比重と硝子円柱の組み合わせとNT-proBNPとの関係

V  考察

心腎連関と呼ばれるように,心不全と腎不全は高率に合併し,本検討でも使用したeGFRが心不全で入院した症例の独立した予後規定因子であることも証明されている7)。よって,心機能を反映する検査値と腎機能を反映する検査値については,相互チェックすることが重要であると思われる。前述したように,硝子円柱と尿比重は共に心機能と腎機能と関係があると考えられ,さらに尿検査において両者はほとんどの場合同時に依頼されることから,結果値を一緒に確認することは意義があると考える。

本検討の結果より,硝子円柱が出現していた対象検体については,尿比重が高い群ほどeGFRが高値となる傾向があり,硝子円柱の出現は尿比重が低値の場合に,より腎機能低下との関係が強いことが示唆された。逆に尿比重が高い場合には腎機能低下以外の要因が硝子円柱の出現に関係している可能性がある。

CKD診療ガイド20248)では,糸球体濾過量(GFR) < 60 mL/min/1.73 m2が3ヶ月以上続く場合CKDと診断される。そのため,結果3.より,MEANにSDの幅を加味して明らかにeGFRが < 60 mL/min/1.73 m2となる,尿比重 < 1.020を区切りとして,硝子円柱の出現の有無と組み合わせて4群で比較を行った。結果,硝子円柱の出現がみられ,かつ尿比重 < 1.020の③群でのみeGFRのMEANが有意に低値となることから,硝子円柱の出現ありと尿比重低値のどちらか単独で満たす場合には必ずしも腎機能低下を反映せず,両者を満たす場合に,より強く腎機能低下を反映しやすいと考えられた。

同様に4群に分類し,NT-proBNP値を比較した結果,硝子円柱の出現がみられ,かつ尿比重 ≥ 1.020の④群において,NT-proBNP値のMEANが最も高値となったことから,尿比重が高値での硝子円柱の出現は心機能低下との関連が示唆された。NT-proBNPはBNPと比較して,eGFRの低下によって,より高値になりやすいことを著者も報告しているが9),本検討では最もeGFRの低下がみられた③比重低・円柱有の群と比較しても,MEANおよび中央値がより高値になっている点は興味深い。服部ら4)の腎障害のない循環器疾患患者においても硝子円柱が出現するという報告では,尿比重は検討項目に含まれておらず,服部らの検討ではBNPを用い,本検討ではNT-proBNPを用いているという違いもあるが,本検討結果から,あくまで仮定として,服部らの対象も尿比重が高値の検体が多かったのではないかと推察できる。

星ら10)は尿の濃縮が硝子円柱の生成数増加の一因であるとし,さらに硝子円柱の生成機序について,硝子円柱は試験管内であっても,形成する過程で鋳型となることを示し,円柱の鋳型形成は,尿細管腔における構造的な形成だけではなく,ウロモジュリンと蛋白が重合する過程でも形成されることを報告している。これは,従来から言われていた,硝子円柱は尿細管腔を鋳型として形成されるという機序以外にも硝子円柱が形成される場合がある可能性を示唆しており,本検討において,濃縮尿と考えられる尿比重高値での硝子円柱出現群が腎機能低下ではなく,心負荷の増大をより反映している可能性があったことは,尿比重が低値と高値の時では硝子円柱の生成機序に違いがあるのではと疑うこともできる。

尿比重と硝子円柱の結果を組み合わせて判断していくことで,硝子円柱の出現が腎と心機能どちらの低下をより反映しているかを推測できる可能性があり,さらに研究が進めば心腎連関を反映する検査値として,有用となるかもしれない。しかし,本検討はあくまで探索的であるため,後ろ向き検討のバイアスがかかり,NT-proBNP値の比較に用いた対象が少ないこと,外れ値も多いこと,重複患者検体が8.2%含まれること,などの限界があり,さらなる検討が必要である。加えて,屈折率法による尿比重には造影剤のほか蛋白や糖の影響(特にSGLT2阻害薬使用例)があり得るため,試験紙法など他法による尿比重でも同様の結果を示すか否かについては今後の検討課題である。また,本検討の硝子円柱は一部の円柱が同時出現した検体を除いた硝子円柱であることを再掲する。

VI  結語

一般的な検査項目であり,ほぼ同時に検査依頼される尿比重と尿沈渣での硝子円柱の結果を組み合わせて判断することで,合併することが多いとされる心不全と腎不全の病態の推測ができる可能性がある。今後の検討によって,特に循環器疾患の患者にとって心腎連関を反映する指標として有用となることを期待したい。

本研究は当院の臨床研究審査委員会の承認(管理番号:R201806-02)を得て行った。

COI開示

本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。

文献
 
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