高尿糖・高蛋白尿においては,尿比重測定に影響を与えることが知られており,屈折率法では定量値に基づいた補正が望ましいとされている。今回,重量法と屈折率法,試験紙法の3法の測定を実施し,尿糖陽性時の補正係数に関する検討を主とし,併せて蛋白補正係数に関しても検討を行った。評価内容は,重量法を基準とし,屈折率法との関係をDeming回帰分析およびBland-Altman解析により評価し,試験紙法との比較にはSpearmanの順位相関係数を用いた。その結果,補正前屈折率法は重量法に対し系統誤差を示した。糖補正後,糖および蛋白補正後(以下,糖・蛋白補正後)屈折率法では比例誤差が認められ,高比重域で負の乖離を示した。一方,蛋白補正後屈折率法は重量法との一致性が最も良好であった。Bland-Altman解析では,糖補正後および糖・蛋白補正後屈折率法において95%一致限界の拡大と高比重域での負の乖離が確認され,これらすべては糖4+の症例であった。試験紙法との相関は,糖補正後および糖・蛋白補正後屈折率法で高値を示した。本検討により,屈折率法における補正は一部条件下で有用であるが,高濃度尿糖では過補正による乖離が生じる可能性がある。定量値に即した補正係数の検討が望まれ,尿比重の評価においては,測定法ごとの特性と限界を理解した上で,臨床状況に応じた解釈を行うことが重要であることが示唆された。
In cases of glycosuria and proteinuria, it is known that these conditions affect urine specific gravity measurements. For the refractometer method, correction based on quantitative values is considered desirable. In this study, measurements were performed using three methods: the gravimetric method, the refractometer method, and the test strip method. We verified the correction factor for positive urine glucose and simultaneously verified the protein correction factor. Using the gravimetric method as the reference standard, the relationship with the refractometer method was evaluated using Deming regression analysis and Bland–Altman plots. Spearman’s rank correlation coefficient was used in comparison with the test strip method. The uncorrected refractometer method showed systematic error relative to the gravimetric method. The sugar-corrected and sugar-protein-corrected refractometer methods exhibited proportional error, demonstrating negative deviation in the high specific gravity range. The protein-corrected refractometer showed the best agreement with the gravimetric method. Bland–Altman analysis confirmed widened 95% agreement limits and negative deviations in the high specific gravity range for both sugar-corrected and sugar-protein-corrected refractometers, all occurring in sugar 4+ cases. Correlation with the test strip method showed higher values for the sugar-corrected and sugar-protein-corrected refractometry methods. This validation study indicates that correction in refractometry is useful under certain conditions, but overcorrection may cause deviation in high-concentration of glucose in urine. Development of correction coefficients based on quantitative values is desirable. It is important to understand the characteristics and limitations of each measurement method and interpret urine specific gravity results according to the clinical situation.
尿比重は尿中に含まれる溶質の質量(濃度)を表し,腎臓の重要な機能である尿の濃縮能,希釈能を知る上で必須の項目である。尿は塩類・尿素を主成分とし,生体は尿の濃縮・希釈を介して水・電解質の恒常性を保っている。また,尿比重は尿量を反映し,糖尿病では多尿・高比重になる場合もあるが,尿量が多ければ低値になり,少なくなれば高値となる。
近年,糖尿病治療薬としてSGLT2阻害薬の処方頻度が増加している。本剤は近位尿細管に存在するSGLT(ナトリウム・ブドウ糖共輸送担体)type 2受容体を阻害することで尿糖排泄を促進し,血糖値を低下させ,効果的な血糖値コントロールが可能である1)。一方で,本剤の投与患者では血液中の糖が高濃度で尿中に排出されるため,尿糖が3,000 mg/dL以上など高尿糖が高い頻度で生じる2)。高尿糖・高蛋白尿においては,尿比重測定に影響を与えることが知られており,その測定は,主に屈折率法や試験紙法にて行われ,測定方法の違いにより大きな乖離を生じる。また,屈折率法による尿比重は高尿糖・高蛋白尿の場合はプラス誤差となるため,定量値に基づいた補正(糖1%につき0.004,蛋白1%につき0.003を差し引く)を行うことが望ましいとされている3),4)。現在,検査室では試験紙法,屈折率法を利用した自動分析装置,および屈折率法を利用した糖・蛋白補正を行う自動分析装置など様々な方法で尿比重が測定されている。しかし,高尿糖および高蛋白尿における補正の必要性や効果については,近年十分な検討がなされておらず,その検討が必要と考えられる。
そこで,尿比重において現在では日常検査として用いられることは少ないが,最も真の比重値が得られるとされる重量法4)と屈折率法,試験紙法の3法の測定を実施し,尿糖陽性時の補正係数に関する検討を主とし,併せて蛋白補正係数に関しても検討を行うことを本検討の目的とした。
2024年1月30日から2024年2月1日まで当院検査部において日常検査として提出された外来患者尿の残検体のうち,尿糖および尿蛋白の定性結果が+/−以上の63件を対象として検討を行った(Table 1)。なお,本研究は岐阜大学医学系研究科医学研究等倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2022-086)。
| 糖定性 | 蛋白定性 | |
|---|---|---|
| − | 21 | 24 |
| +− | 6 | 10 |
| 1+ | 6 | 12 |
| 2+ | 2 | 13 |
| 3+ | 7 | 4 |
| 4+ | 21 | 0 |
| 総計 | 63 | 63 |
重量法の測定は,10 mLの精製水と尿の重量を電子天秤にて計測し,重量比を算出(比重=尿の重量/精製水の重量)した。屈折率法による測定は全自動尿分析装置US-3500(栄研化学株式会社),試験紙法による測定はウロペーパーαIII‘栄研’9S(栄研化学株式会社)を使用して行った。
また,尿糖の定量測定は全自動糖分析装置GA09II(株式会社エイアンドティー),尿蛋白の定量測定は自動分析装置クリナライザJCA-BM8040GX(日本電子株式会社)を使用して行った。それぞれの定量値から,尿糖においては1 g/dL(1%)あたり0.004,尿蛋白においては1 g/dL(1%)あたり0.003を差し引き,補正後の屈折率法比重値を算出した。
2) 検討内容対象検体の測定結果について,重量法を基準とした屈折率法との関係性は,連続変数であり且つ両測定方法に測定誤差が存在することを考慮してDeming回帰分析を行い,さらにBland-Altman解析による一致性を評価した。また,試験紙法と各測定法との比較は,尿比重の段階値(順序変数)としての特性を考慮し,Spearmanの順位相関係数を用いて評価した。
重量法と補正前屈折率法の比較において回帰直線の傾きは1.116,切片は−0.112であり,回帰直線はy = xの同一直線から乖離していた。補正前屈折率法が重量法より高値を示す傾向が認められ,このことから重量法に対する系統誤差の存在が示唆された。
糖補正後屈折率法では傾きは0.386,切片は0.623であり,尿比重が高くなるほど重量法との乖離が大きくなる比例誤差の傾向がみられた。蛋白補正後屈折率法では傾きは1.119,切片は−0.115であり,補正前屈折率法と同程度の回帰係数を示した。また,糖・蛋白補正後屈折率法では傾きが0.390,切片は0.620と再び比例誤差の傾向がみられた(Figure 1)。

a.補正前 b.糖補正後 c.蛋白補正後 d.糖・蛋白補正後。
各図中にDeming回帰式(傾きおよび切片)を示す。
重量法と補正前屈折率法において平均差は0.006と正の平均差が認められ,補正前屈折率法が重量法より高値を示す傾向がみられた。
糖補正後屈折率法では平均差が0.001と補正前屈折率法との比較より縮小したが,95%一致限界(limits of agreement;以下,LoA)は拡大する傾向がみられ,高比重域において負の乖離が認められた。蛋白補正後屈折率法では平均差が0.006となり補正前屈折率法と同様の傾向がみられた。また,糖・蛋白補正後屈折率法では平均差が0.000となったが95%LoAは拡大し,高比重域において負の乖離が認められた(Figure 2)。

a.補正前 b.糖補正後 c.蛋白補正後 d.糖・蛋白補正後。
実線は平均差を示し,破線は95%一致限界(limits of agreement:平均差±1.96 SD)の上限および下限を示す。
糖補正後屈折率法と糖・蛋白補正後屈折率法にて高比重域(1.015以上)においての負の乖離が認められたことから,Bland-Altmanのプロット図において糖4+以外と糖4+で色分けを行い確認した。その結果平均1.015以上,差が負の乖離を示した16件は,すべて糖4+であった(Figure 2)。またその16件の糖定量値は1件を除いてすべて2,000 mg/dL以上であった(Table 2)。
| 糖定量値(mg/dL) | |
|---|---|
| 1 | 2,228 |
| 2 | 2,487 |
| 3 | 6,262 |
| 4 | 4,219 |
| 5 | 3,828 |
| 6 | 2,652 |
| 7 | 1,907 |
| 8 | 5,074 |
| 9 | 7,352 |
| 10 | 5,108 |
| 11 | 3,052 |
| 12 | 5,720 |
| 13 | 4,743 |
| 14 | 3,534 |
| 15 | 4,988 |
| 16 | 4,472 |
16件中1件を除いてすべて2,000 mg/dL以上であった。
試験紙法と重量法,補正前屈折率法,糖補正後屈折率法,蛋白補正後屈折率法,糖・蛋白補正後屈折率法との関係をSpearmanの順位相関係数により評価した。
試験紙法と重量法との相関は弱く(ρ = 0.39),補正前屈折率法との相関も中等度であった(ρ = 0.50)。一方,糖補正後屈折率法においては試験紙法との相関は明らかに上昇し(ρ = 0.81),糖・蛋白補正後屈折率法においても同様に高い相関が認められた(ρ = 0.81)。しかし蛋白補正のみの屈折率法においては,相関係数の改善は認められなかった(ρ = 0.49)(Figure 3)。

a.重量法 b.補正前屈折率法 c.糖補正後屈折率法 d.蛋白補正後屈折率法 e.糖・蛋白補正後屈折率法。
各図中にSpearman相関係数ρを示す。
今回,重量法と屈折率法,試験紙法の3法の測定を行い,特に尿糖陽性時における補正係数に関する検討,併せて蛋白補正係数に関しての検討を行った。その結果,重量法を基準とした場合,屈折率法は補正の有無や補正内容によって重量法との一致性や誤差の傾向が大きく異なることが明らかとなった。
Deming回帰分析において,補正前屈折率法は重量法に対して傾き1.116,切片−0.112を示し,回帰直線はy = xから乖離していた。これは屈折率法が重量法よりも高値を示す系統誤差を有することを示唆しており,従来から指摘されているように,屈折率法が溶質全体の屈折率変化を反映する測定法であることに起因すると考えられる3)。一方,糖補正後屈折率法では傾き0.386,切片0.623と,明らかな比例誤差が認められた。これは尿比重が高くなるにつれて重量法との乖離が増大することを示しており,特に1.015以上の高比重域において過補正が生じている可能性が考えられる。これに対し,蛋白補正後屈折率法では傾き1.119,切片−0.115と,補正前屈折率法と類似した回帰係数を示しつつも,重量法との一致性は比較的良好であった。この結果は,今回の対象検体にて一番高値であった蛋白定量値は467 mg/dL(定性3+)であり高濃度域のものがなかったことも一つの要因かと考えられる。また,これは蛋白定性3+までは補正をする必要がないとも示唆される。糖・蛋白補正後屈折率法では再び傾きが0.390,切片0.620となり,糖補正単独の場合と同様に比例誤差が認められたことから,糖補正が全体の一致性に与える影響が大きいことが示唆された。
Bland-Altman解析においても,Deming回帰と整合する結果が得られた。補正前屈折率法では平均差が正であり,屈折率法が重量法より高値を示す傾向が確認された。糖補正後屈折率法および糖・蛋白補正後屈折率法では平均差は縮小したものの,95%LoAは拡大し,高比重域において負の乖離が認められた。これは平均値のみでは補正の有用性を評価できず,個々の測定値のばらつきや特定条件下での挙動を考慮する必要があることを示している。特に注目すべき点として,糖補正後屈折率法および糖・蛋白補正後屈折率法において,高比重域(1.015以上)で負の乖離を示した症例16件がすべて糖4+症例であったことが挙げられる。さらに,それらの大部分で尿糖定量値が2,000 mg/dL以上であったことから,高濃度尿糖においては補正アルゴリズムが過剰に作用し,結果として重量法との差が拡大した可能性が示唆される。また,今回の対象検体において63件中11件はSGLT2を使用していたが,そのうち7件は高比重域(1.015以上)で負の乖離を示した症例であった。このことから,糖補正が必ずしも「真の尿比重」に近づくとは限らず,条件によっては逆に乖離を生じさせる可能性があることを示す重要な知見であると考える。
試験紙法との比較においては,尿比重の段階値としての特性を考慮し,Spearmanの順位相関係数を用いて評価を行った。その結果,補正前屈折率法および重量法との相関は弱~中等度であったのに対し,糖補正後屈折率法および糖・蛋白補正後屈折率法では高い相関が認められた。これは,試験紙法が糖や蛋白の影響を受けにくい測定原理を有することから,糖補正を施した屈折率法が試験紙法の測定特性に近づいた結果と考えられる。ただし,相関が高いことは必ずしも測定値の一致を意味するものではなく,実際の測定値の妥当性については重量法との一致性と併せて評価する必要があると考える。また,蛋白補正単独の屈折率法では補正前と同程度の相関性であることから,Deming回帰分析結果と同様に蛋白高濃度域のものがなかったこと,もしくは蛋白定性3+までは補正をする必要がないとも考えられる。
本検討にはいくつかの限界が存在する。第一に,重量法は比重測定の基準となる方法とされているが,重量法自体が真の尿比重を反映しているかについては議論の余地がある。重量法は溶質の総量に基づく測定法であるものの,糖や蛋白などの高分子溶質の影響を完全に排除できているかについては明確ではない5)。第二に,屈折率法は,1979年に多数の実測値を基に作成されたJSCPノモグラム規格に基づいて統一されている6),7)。しかし,尿の主成分は塩類や尿素である一方,近年の食生活の欧米化や疾病構造などの変化により尿組成が当時とは異なっている可能性がある。このことから,現在の尿性状に対して同ノモグラムが最適であるかについては必ずしも明確ではない。第三に,本検討の症例数や尿組成の分布が特定の条件に偏っている可能性があり,得られた結果を一般化するには慎重な解釈が必要である。特に尿糖が2,000 mg/dLを超えるような高濃度尿糖検体においては,屈折率法の補正により重量法との差が拡大し,過補正が生じている可能性が示唆された。近年,使用頻度が増加しているSGLT2阻害薬は,糖をはじめ複数の尿検査項目に影響を与える可能性が言われており8),薬剤の影響による補正への影響も考えられる。今後は,より多様な尿性状を含む検討を行うとともに,高濃度尿糖検体における補正アルゴリズムの最適化についてさらなる検討が必要であると考えられる。
尿糖陽性時の補正係数ならびに蛋白補正係数について,定量値に基づいた屈折率法における補正は一部の条件下では有用であるものの,特に高濃度尿糖においては過補正による乖離が生じる可能性があることが示された。このことから,定量値に即した補正係数の検討が望まれ,尿比重の評価においては,測定法ごとの特性と限界を理解した上で,臨床状況に応じた解釈を行うことが重要である。
本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。