医学検査
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資料
内視鏡における臨床検査技師の有用性―病理検体採取の視点より―
池田 卓也, 若杉 ひかる, 末原 有将, 永井 康平, 稲村 真由美
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2026 年 75 巻 3 号 p. 621-626

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Abstract

2021年の臨床検査技師等に関する法律の改正により,医師の指示のもとでの生検介助が法整備され臨床検査技師の内視鏡検査への関与が拡大している。そこで,本研究では大阪府済生会中津病院における2014年から2021年までの内視鏡検査データをもとに,生検および内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術による検体採取率また内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術に用いられる内視鏡的粘膜切除術(以下,EMR),コールドスネアポリペクトミー(以下,CSP),コールドフォーセプスポリペクトミー(以下,CFP),ポリペクトミーの手技別内訳を集計し,現状と今後の傾向について検討した。結果は上部消化管内視鏡検査における生検検体採取率は年間約25%で推移し,下部消化管内視鏡検査では減少傾向にあった。内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術による検体採取率は年々増加し,特に2017年を境にCSPの割合が顕著に増加していた。これはCSPの安全性と有効性が認識され,小型ポリープに対する第一選択となっていることが要因と考えられる。一方で,CSPは病理学的水平断端評価が不明となりやすいため,適切な検体処理が求められる。今後,AI技術の導入や診療報酬改定により,内視鏡検査の検体採取率はさらに増加することが示唆される。増加する病理検体採取に伴い,内視鏡介助にて臨床検査技師の検体処理技術など高い専門性を活かすことは今後の内視鏡医療の発展において重要な要素となる。

Translated Abstract

Following the 2021 revision of the Act on Clinical Laboratory Technologists, which permitted biopsy assistance under physician supervision, the scope of clinical laboratory technologists in endoscopic procedures has expanded. This study aimed to evaluate trends in specimen collection and procedural approaches in endoscopic examinations. We retrospectively reviewed endoscopic data from Osaka Saiseikai Nakatsu Hospital between 2014 and 2021, focusing on biopsy collection rates and specimens obtained through endoscopic colorectal polypectomy and mucosal resection. In addition, the annual distribution of resection techniques including endoscopic mucosal resection (EMR), cold snare polypectomy (CSP), cold forceps polypectomy (CFP), and conventional polypectomy was assessed. The biopsy collection rate in upper gastrointestinal endoscopy remained stable at approximately 25% throughout the study period, whereas the rate in lower gastrointestinal endoscopy showed a gradual decline. In contrast, the specimen collection rate associated with colorectal endoscopic resection increased annually. Notably, the proportion of CSP rose markedly after 2017, reflecting its growing acceptance as a safe and effective technique, particularly for the removal of small polyps. However, CSP may limit the pathological assessment of horizontal margins, underscoring the need for appropriate and standardized specimen processing. These findings suggest that the incorporation of artificial intelligence and future reimbursement changes may further increase specimen collection during endoscopy. In this setting, optimizing specimen handling and leveraging the technical expertise of clinical laboratory technologists will be essential for maintaining high-quality pathological evaluation and supporting the ongoing advancement of endoscopic practice.

I  背景

2021年に臨床検査技師等に関する法律が改正され,内視鏡における生検介助についての法整備が行われた1)。近年,医療現場ではタスク・シフト/シェアの推進により,臨床検査技師が内視鏡検査に参入する機会が増加している2)~4)。

また,生検だけでなく内視鏡的粘膜切除術(以下,EMR)や止血の介助,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD),内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)なども臨床検査技師が介助することについて関係者の理解が進むよう業務指針が策定され2),介助者としての有用性も報告されている5)。

消化器内視鏡技師の資格認定された臨床検査技師は2020年時点で全国に1,108名在籍している。受験資格の条件として,臨床検査技師の免許を保有し,過去5年以内に内視鏡に従事した実務経験が2年以上であることに加え,申請時点で技師会・技師会各支部主催の学会,技師研究会に2回以上出席していること,消化器内視鏡機器取扱い講習会基礎編を1回以上受講していること,各医学講義を合計20時間以上受講していること,消化器内視鏡介助症例数の合計が年間100件以上かつ認定専門医より証明および推薦が得られることで受験資格を得ることができる6)。

II  内視鏡センター

大阪府済生会中津病院内視鏡センター(以下,中津病院)は検査室5室,健診3室と透視室2室を運用し,年間14,000件以上の内視鏡検査・治療を施行している。スタッフ構成は,医師15名,看護師8名,臨床検査技師7名であり,看護師は内視鏡周術期管理,臨床検査技師は業務指針に示される検査治療の介助や内視鏡洗浄また機器の管理を主な業務としている。

III  内視鏡における主な検体採取

1. 生検

病変が疑われる組織に対し,一部を鉗子で採取し組織診断を行う手技である。内視鏡下にて医師が画像診断を行い生検の適応か否かを判断した後,医師の指示のもと介助者が生検鉗子を操作し病変を採取する7)。中津病院では採取した検体を濾紙に直接貼り付け,濾紙ごと10%中性緩衝ホルマリンに入れて固定する濾紙貼り付け法を採用する。

2. ポリペクトミー

ポリペクトミーは消化管のポリープに対し,高周波電流を用いてスネアで切除する手技である。他に高周波電流を用いずスネアの絞り込みのみで切除するコールドスネアポリペクトミー(以下,CSP),鉗子で切除するコールドフォーセプスポリペクトミー(以下,CFP)がある8)。ポリープの大きさや部位により手技が選択され,医師の指示のもと介助者がスネアの絞扼や鉗子操作を行う。

3. EMR

早期がんや有茎性ポリープなどの病変に対し,粘膜下に生理食塩液などを注入し,粘膜層を挙上させ高周波スネアを用い周囲の正常粘膜も含めた病巣を切除する手技である9)。医師の指示のもと介助者が粘膜下層へ局注針を用い生理食塩液などを注入し,挙上された病変を高周波スネアで絞扼し切除する。

IV  目的

内視鏡介助で遭遇頻度の高い生検,EMR,CSP,CFP,ポリペクトミーの内視鏡検査における病理検体採取率を集計し,現状と今後の傾向について調査する。

V  対象および方法

2014年から2021年までに中津病院で内視鏡検査を実施した患者105,365名を対象とした。

方法は院内の内視鏡システムより,上下部消化管内視鏡検査を実施した患者に対する生検検体採取率,下部消化管内視鏡検査を実施した患者に対する内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術を用いた検体採取率,内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の手技別(EMR/CSP/CFP/ポリペクトミー)の割合をそれぞれ集計し算出した。

VI  結果

中津病院で2014年から2021年までに実施された上部消化管内視鏡検査の患者数は9,448/9,783/9,164/8,787/8,681/8,138/6,855/7,193であり,患者に対する生検検体採取率は年間25%前後であった。下部消化管内視鏡検査の患者数は5,304/5,686/5,190/4,570/4,638/4,453/3,685/3,790であり,上部消化管内視鏡検査の生検検体採取率が8年間横ばいに推移しているのに対し,下部消化管内視鏡検査の生検検体採取率は2017年を境に年々減少し2021年には17.4%となった(Figure 1)。一方,下部消化管内視鏡検査を実施した患者に対する内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術を用いた検体採取の割合は年々増加傾向にあり,2021年では44.7%に到達している(Figure 2)。

Figure 1  上下部消化管内視鏡検査を実施した患者に対する生検検体採取率

上部消化管内視鏡検査の生検検体採取率は25%で推移しているのに対し,下部消化管内視鏡検査の生検検体採取率は年々減少し2021年には17.4%となった。

Figure 2  下部消化管内視鏡検査を実施した患者に対する内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術を用いた検体採取率

内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術を用いた検体採取の割合は年々増加傾向にあり,2021年では44.7%に到達している。

下部消化管内視鏡検査における内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(EMR/CSP/CFP/ポリペクトミー)の手技別内訳の割合は2021年で18.5/78.4/2.5/0.6であり,他の切除術に比べCSPの割合が大きく増加し,2017年以降はEMRよりも多く実施されている(Figure 3)。

Figure 3  下部消化管内視鏡検査における内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の手技別内訳

他の切除術に比べCSPの割合が大きく増加し,2017年以降はEMRよりも多く実施されている。

VII  考察

内視鏡における主な検体採取は,上下部消化管内視鏡検査で実施される生検,下部消化管内視鏡検査で実施される内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術である。内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の手技として,EMR,CSP,CFP,ポリペクトミーが挙げられ,病変の部位や性状により医師が切除方法を決定する。

中津病院での上部消化管生検検体採取率は約25%前後で推移していた。健診センターで行われる内視鏡検査での生検数は10~15%と報告されている10)。一方,外来での上部消化管内視鏡検査は治療の方針を決定することを目的とした生検も実施されるため11),生検検体採取率が高い傾向にあると考える。

内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の手技別の検体採取率について,2017年を境にCSPがEMRよりも多く実施されるようになった。これは,小型の大腸ポリープを内視鏡的に切除する方法として,以前は高周波を用いた通電により摘除するEMRやポリペクトミーなどの手技が一般的であったが,近年では通電をすることなく機械的に摘除するCSPの安全性,有効性12),13)が示され,国内でも一般的に行われるようになったためと考える。また,2017年を境に下部消化管内視鏡検査の生検検体採取率は年々減少し2021年には17.4%となった。これは,通電を行わないCFPはより小型の大腸ポリープに有効なため,生検よりも積極的に選択された可能性が示唆される。

下部消化管内視鏡検査における内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の検体採取率は,EMRと比べて短時間で安全に施行できるCSPが小型のポリープに対し積極的に行われるようになったため8),13),CSPの検体採取率上昇に伴い年々増加傾向にあると考える。

さらに,令和4年度診療報酬改定より短期滞在手術等基本料14)が見直され「K721内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術1長径二センチメートル未満」も日帰り手術加算の算定対象となったことにより,今後も外来での積極的な検体採取の増加が予想される。また,令和6年度診療報酬改定より内視鏡大腸ポリープ・粘膜切除術においてAI搭載機器を用いて実施した場合,病変検出支援プログラム加算が算定可能となった15)。AI搭載機器では腺腫発見率(adenoma detection rate; ADR)が12%上昇することが報告されており16),AIでポリープを検出することは,内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術のさらなる検体採取率の上昇に寄与すると考える。中津病院はAI未搭載下で内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術を用いた検体採取の割合が44.7%であった。今後,当院においてもAIの導入が行われた場合さらなる検体採取率の上昇が示唆される。

VIII  展望

内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術は術者と介助者を必要とする手技のため,CSPやAIによる検体採取率の上昇に伴い,従来の医師や看護師のみで行う検査体制では人員配置の限界を迎える可能性が高く,タスク・シフトとして中津病院のように臨床検査技師が検査介助を担う体制は有効な手段と考える。

また,増加するCSPは簡易である一方で,以前より病理学的水平断端評価の30~60%が不明となる問題が報告されていた17),18)。そこで中津病院では,それらの断端評価に対して臨床検査技師目線で病理検体固定方法を工夫し,約15%まで病理学的水平断端不明率を減少させる方法を考案し報告した19)。このような検体処理に対する病理学的な介入は,今後も臨床検査技師の強みとして内視鏡に貢献できると考える。

さらに,臨床検査技師等に関する法律が改正され,2022年4月入学の学生から臨地実習において消化器内視鏡検査が「必ず見学させる行為」に追加された20)。制度改正に伴う教育内容の充実と臨床現場での実践機会の拡大により,内視鏡における臨床検査技師の認知と専門性はさらに高まり,内視鏡検査の質向上に寄与すると考える。

IX  結語

増加する内視鏡検体採取において,臨床検査技師は医師や看護師の業務負担軽減のみならず,病理学的介入による内視鏡検査の質向上など重要な役割を担う。

倫理的配慮/承認番号:当院の倫理委員会において承認を得た(2025-73)。

COI開示

本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。

文献
 
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