医学検査
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原著
最適なクリオシール調製の条件
小林 玄加藤 千秋古村 恵理長井 りさ渡邊 友美
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2026 年 75 巻 3 号 p. 513-519

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Abstract

【はじめに】クリオシールは,クリオシールCS-1を用いて,トロンビンとクリオプレシピテート(クリオ)を自動で調製した製剤である。クリオシールの調製を開始するにあたり,凍結融解の影響,トロンビン活性とフィブリノゲン濃度がクリオシールの品質に与える影響を検討した。【方法】クリオシール調製:クリオシールCS-1(旭化成メディカル(株))。トロンビン活性およびクリオとトロンビン混和後の凝固時間:トロンボトラック・ソロ(三光純薬(株))。フィブリノゲン濃度およびDダイマー:CN-6000(シスメックス(株))。材料は新鮮凍結血漿-LRおよびプール血漿を使用し,凍結融解の回数による変化,段階希釈したトロンビンとクリオを混和した凝固時間および強度への影響を検討した。【結果】原料血漿の凍結融解の回数は,クリオシールの品質に影響を与えなかった。トロンビン活性は30単位/mL以上で品質に影響を与えなかった。フィブリノゲン濃度は,凝固時間への影響は明確ではなかったが,血漿成分に含まれる成分との相互作用により,凝集物の観察で濃度が高い方が収縮し強固であった。【結論】品質の良いクリオシールを調製するためには,トロンビンは取扱説明書に従うことで一定品質の調製が可能であった。クリオはフィブリノゲン濃度が高い製剤を調製するために,クリオ析出後のチャンバーから余剰の血漿成分をしっかり廃棄し,濃縮させることが重要であった。

Translated Abstract

Introduction: Cryoseal is an autologous fibrin glue automatically prepared using CryoSeal CS-1 system, which generates thrombin and cryoprecipitate (cryo) as two separate components. We investigated how freeze-thawing of plasma, thrombin activity, and fibrinogen concentration affected the quality of Cryoseal components. Methods: Cryoseal was prepared using the CryoSeal CS-1 (Asahi Kasei Medical Corporation). ThromboTrack Solo (Sanko Junyaku Co., Ltd.) was used to measure thrombin activity and clotting time after mixing cryo with thrombin. Fibrinogen concentration and D-dimer were measured on the CN-6000 (Sysmex Corporation). Fresh frozen plasma-LR and pooled plasma were used as source materials. The effects of freeze-thaw cycles on Cryoseal components were assessed by measuring thrombin activity and fibrinogen concentration. The effects of serial dilution of thrombin and cryo on clotting time and clot size were evaluated. Results: Repeated freeze-thawing of plasma minimally affected thrombin activity and fibrinogen concentration. Thrombin activity ≥ 30 U/mL did not affect clotting time after mixing cryo with thrombin. Although there was no apparent change in clotting time with varying fibrinogen concentrations, macroscopic observations showed that higher concentrations of fibrinogen were associated with greater clot firmness and more pronounced clot retraction, possibly due to interactions with other plasma components. Conclusion: To ensure consistent quality of Cryoseal components, thrombin can be prepared in accordance with the manufacturer’s instructions. To obtain cryo with a higher fibrinogen concentration, it is important to carefully remove the excess plasma supernatant from the chamber after cryoprecipitation, thereby concentrating the cryo fraction.

I  はじめに

クリオシールは,クリオシールCS-1を用いて,患者の自己血漿から自己生体組織接着剤(自己フィブリン糊)の成分であるクリオプレシピテート(クリオ)とトロンビンを自動で調製した製剤である。クリオはフィブリノゲンなどの血液凝固因子を高濃度に含む血液製剤である。市販の組織接着製剤に比較するとクリオシールで調製されるトロンビン活性,フィブリノゲン濃度とも少ないが,自己血漿を原料とすることから種々の成分を含むこと1),2),非自己のアプロチニンによるアレルギー反応を回避できることから3),4),良好な組織接着製剤として,手術で使用されている。

クリオシールの調製は,機器取扱説明書に従うが,原料血漿について詳細な基準はない。フィブリノゲン製剤の代替として使用される新鮮凍結血漿-LR(Fresh Frozen Plasma, Leukocytes Reduced; FFP-LR)を用いた,日本輸血・細胞治療学会のガイドラインが示すクリオ調製方法では,融解回数は調製に要する時間を考慮し,1回を標準としているが,時間的余裕がある場合は2回としても良いと記載されている5)。実際の調製においては時間的問題により,自己血採取当日に自己FFPの分離のみでクリオシールの調製ができず,凍結保管し,後日クリオシールの調製を行う場合もある。

今回,クリオシールの調製を開始するにあたり,凍結融解の影響,トロンビン活性とフィブリノゲン濃度がクリオシールの品質に与える影響を検討した。

II  方法

1. 機器

クリオシール調製:クリオシールCS-1(旭化成メディカル株式会社),凝固時間(力学的凝血検出):トロンボトラック・ソロ(三光純薬株式会社),フィブリノゲン濃度およびDダイマー:CN-6000(シスメックス株式会社)。

トロンボトラック・ソロは,スチールボールが円を描きながら回転する専用キュベット内で,フィブリンの析出によりスチールボールの動きが阻害されるまでの時間を力学的に検出する。

2. 資材

クリオシールディスポーザブルキット[血漿処理ユニットCP-3(クリオプレシピテートチャンバー,トロンビン処理器(TPD),回収セット],トロンビン用添加液(旭化成メディカル株式会社),カワスミ血液分離用バッグ(SBカワスミ株式会社)。

組成として,血漿処理ユニットCP-3はポリ塩化ビニル,トロンビン用添加液には塩化カルシウム,エタノールが含有される。

3. 材料および試薬

材料:FFP-LR 480および当院検査部で検査に用いた残血漿(クエン酸Na加血漿)。解凍は37℃恒温槽を,凍結は−30℃冷凍庫を使用した。FFPの使用について,日本赤十字社の献血の同意説明書に示す,5.血液の有効利用について「②病気の診断・治療や国民の健康状態の改善を目的とした使用」に沿って病院内にある患者に使用されなかった血液製剤を使用した。

製剤・試薬:ボルヒール組織接着用(3 mL)(KMバイオロジクス株式会社),トロンビン用希釈液(自家調製40 mmol/L塩化カルシウム 片山化学工業株式会社),トロンボチェックFib(L)(シスメックス株式会社)。リアスオート・Dダイマーネオ(シスメックス株式会社)。

4. 調製原理

クリオ:凍結した血漿を解凍させることで凝固因子(主にフィブリノゲン)を沈降させ,上澄みを除去してクリオを濃縮する。

トロンビン:TPD処理器内の陰性荷電に血漿とトロンビン用添加液の塩化カルシウムを作用させ,カルシウム存在下で内因系経路を活性化し,プロトロンビンをトロンビンに変換させる。

5. トロンビン活性定量

トロンビン活性の定量にボルヒールを使用した。ボルヒールの添付文書に従い,フィブリノゲン溶液(8 g/dL)とトロンビン溶液(1,000単位/mL)を調製後,フィブリノゲン溶液は精製水で希釈し1,000 mg/dLを,トロンビン溶液はトロンビン用希釈液で1,2.5,5,10単位/mLを調製した。トロンボトラック・ソロを使用し,調製したフィブリノゲン溶液とトロンビン溶液を各150 μL混和後の凝固時間を測定し片対数グラフで検量線を作製した。

試料のトロンビン活性は,トロンビン用希釈液で10倍に希釈し,1,000 mg/dLフィブリノゲン溶液と,各150 μL混和後の凝固時間を測定し,検量線から算出した。

6. FFP-LR480を材料とするクリオシールの調製

納品された状態の1本のFFP-LR480と,1度解凍後に再凍結した3本のFFP-LR480を,解凍後血液分離用バッグに3分割した。分割したバッグの1つはそのまま原料血漿とし,他の2つは1回および2回の凍結融解を行い,原料血漿とした。調製後のクリオシールは−30℃で保管した。

7. 残余プール血漿を用いたトロンビンの調製

残余プール血漿をシリンジに10 mL分注したものを4本作製し,凍結融解0回から3回の原料血漿を準備した。クリオシールディスポーザブルキットのTPDのみを分離して使用した。クリオシールCS-1の調製と同様に,TPDにトロンビン用添加液を注入後,プール血漿10 mLを注入し,泡立てないようゆっくり上下に反転してビーズで攪拌。その後26℃インキュベーターで50分静置し,ゲル化を確認。TPDを水平方向に液状になるまでよく振って攪拌。再度26℃で10分静置し,TPDのゲル化を確認後,水平方向によく振って液状にし,調製されたトロンビンを回収バッグに回収した。

8. クリオシールの凝固時間の測定

凝固時間の測定にはトロンボトラック・ソロを使用し,クリオとトロンビンを各150 μL混和後に凝固するまでの時間を測定した。キュベット内の凝集物は,スライド法血液型判定用凝集検査板(スライド)に取出しノギスを用いて直径の測定および目視による観察を行った。

III  結果

1. 原料血漿の凍結融解の回数によるトロンビン活性とフィブリノゲン量への影響

ボルヒールで作成した検量線(Figure 1)を用いて試料のトロンビン活性を測定した。凍結融解を繰り返したFFP-LRを原料血漿としたクリオシールのトロンビン活性の結果をFigure 2に,フィブリノゲン総量をFigure 3に示した。凍結融解を1回から4回で比較したところ,凍結融解の回数とトロンビン活性およびフィブリノゲン総量に一定の傾向は確認できなかった。

Figure 1  トロンビン活性の検量線
Figure 2  FFP-LRを原料血漿とした凍結融解回数とトロンビン活性
Figure 3  FFP-LRを原料血漿とした凍結融解回数とフィブリノゲン量

また,プール血漿を用いた凍結融解0回から3回のトロンビン活性は,0回38.6単位/mL,1回27.1単位/mL,2回39.7単位/mL,3回41.9単位/mLであり,原料血漿の凍結融解によるトロンビン活性に一定の傾向は見られなかった。

2. トロンビンと,精製水を用いたクリオの希釈が凝固時間に与える影響

トロンビン用希釈液で50.3単位/mLのトロンビンを希釈した試料と,精製水で835 mg/dLのフィブリノゲンを含むクリオを希釈した試料を混和した凝固時間をTable 1に示した。トロンビン活性が高いほど凝固時間の短縮傾向が見られ,フィブリノゲン濃度が低下するに従い,凝固時間が短縮する傾向が見られた。

Table 1 塩化カルシウム溶液で希釈したトロンビンと,精製水で希釈したクリオの凝固時間

凝固時間(sec) フィブリノゲン濃度(mg/dL)
167 334 501 670 835
トロンビン活性
(単位/mL)
10.1 4.6 5.3 6.6 8.7 12.8
20.1 3.9 4.1 5.1 6.4 9.4
30.2 3.9 3.9 4.2 5.1 6.0
40.2 3.8 3.9 3.9 4.2 4.8
50.3 3.8 3.9 3.8 4.1 4.4

3. フィブリノゲン希釈液が凝固時間に与える影響

クリオを精製水で希釈した場合,クリオに含まれるフィブリノゲン以外の成分も希釈されるため,フィブリノゲン濃度のみの影響を見るため,乏クリオを希釈液として再度検討した結果をTable 2に示した。なお,トロンビンは,凝固時間が機器の測定範囲外となったため,トロンビン用希釈液で5倍に希釈して使用した。その結果,凝固時間に一定の傾向は見られなかった。機器のキュベット内の凝集物をスライドに移し,凝集物の直径をノギスで測定した結果をTable 2に示した。凝集物の直径は,フィブリノゲン濃度が最も低い480 mg/dLでは,凝集物は崩れて辺縁が形成されず,フィブリノゲン濃度が高いほど辺縁は明瞭となり凝集物が盛り上がるに従い直径は小さくなった。

Table 2 乏クリオで希釈したクリオの凝固時間と凝集物直径

クリオのフィブリノゲン濃度(mg/dL)
480 751 1,022 1,293 1,565
凝固時間(sec) 8.4 8.5 7.3 7.8 7.8
凝集物直径(mm) 辺縁不明 11.09 10.30 9.30 8.16

4. 凝集物形成後の時間経過による変化

凝集物形成後の凝集物をスライド上に放置することで血餅退縮様に液状成分が観察された。Figure 4に凝集物形成後4~10分の写真を示す。凝集物形成後の析出液が線溶によるものか否かを確認する目的で,クリオとトロンビンおよび,両者をポリスチレンチューブで反応させ析出した溶液についてDダイマーを測定した。混和前のトロンビンは0.5未満μg/mL,クリオは1.2 μg/mLで,析出物は0.6 μg/mLであった。

Figure 4  凝集後の経時変化

IV  考察

クリオシールは,クリオシールCS-1を用いて,患者の自己血漿から自己生体組織接着製剤(自己フィブリン糊)の成分であるクリオとトロンビンを自動かつ約90分で調製可能である。

FFP-LRを用いたクリオの調製では,FFP-LR解凍後に再度凍結して調製する2回の解凍でより多くのフィブリノゲンが回収できるとの報告がある6)。一方でフィブリノゲン量およびトロンビン活性は変わらないとの報告もある7)。そのため,トロンビン活性とフィブリノゲン濃度を測定し,凍結融解による影響を確認した。トロンビン活性は,院内で測定可能な方法として,血漿分画製剤であるボルヒールのトロンビンとフィブリノゲンを混和させ,凝固するまでの時間を測定することで検量線を作成し,同じフィブリノゲン溶液を用いて試料のトロンビンと混和させた凝固時間から,トロンビン活性を求めた。ボルヒールは血漿分画製剤であるため,フィブリノゲン溶液中には,アプロチニンと凝固第XIII因子が,トロンビン溶液には塩化カルシウム水和物が含有されるため,真のトロンビン活性とはならないが活性の高低は評価できると考えた。

材料は,廃棄となったFFP-LRを用いたため,製造過程で1回目の凍結がされている。更に患者への使用予定で融解後使用中止により再凍結したFFP-LRを用いた。凍結融解1回~4回でトロンビン活性の傾向を観察したが,凍結融解の回数とトロンビン活性に一定の傾向は確認できなかった。

実際のクリオシール調製は,採血当日に調製した場合,凍結融解がない状態となるため,採取当日の血漿を材料とする検討を計画した。ただし,クリオシールCS-1を作動させるには最低100 mLの血漿が必要となるため,少量の試料でトロンビン調製が可能となるようTPDユニットのみ取出し,26℃インキュベーターで反応させて代用した。トロンビンの調製方法は,クリオシールの調製方法に従い実施し,原料血漿の凍結融解回数の他は,出来るだけ同一条件となるよう,凍結融解0~3回の4種類を同時に調製した。その結果,クリオシールCS-1で調製するより低い活性となったが,凍結融解の回数とトロンビン活性に一定の傾向はなく,凍結融解の回数は影響しないと考えた。

また,トロンビン活性が20単位/mL以上の場合,止血効果が96%で良好だったとの報告がある8)。今回,調製したクリオをそのまま使用したフィブリノゲン835 mg/dLでは,トロンビン活性が20.1単位/mLと30.2単位/mLで凝固時間の比は1.56であり,30.2単位/mLと40.2単位/mLの比は1.25であることから考えても30単位/mL以上であれば凝固時間の変化は短くなり,一定の凝固時間が得られると考える。トロンビンの調製は,原料血漿の量に関わらず約10 mLと一定であり,取扱説明書に従って調製することで概ね一定のトロンビンが調製できる。今回クリオシールCS-1を用いたトロンビンの調製では約50単位/mLの活性が得られていることから,凍結融解の回数は,多少の活性値に違いがあったとしても,クリオと混合した品質に影響しないと考えた。

フィブリノゲンは,希釈を精製水で行った場合,クリオに含まれるフィブリノゲン以外の成分も希釈することになる。そのためフィブリノゲン濃度が低い方が,凝固時間が短くなる結果となった。そこでフィブリノゲン濃度以外は同一条件となるよう乏クリオを用いた希釈を作成した。その結果,フィブリノゲン濃度による一定の傾向は確認できなかった。この結果から,クリオの血漿成分に含まれる抗トロンビン作用が,精製水で希釈したことで働きが弱くなり凝固時間が短縮したと考えた。

一方で,乏クリオで希釈した凝集物の形状は,凝固時間に関わらず目視上,フィブリノゲン濃度が高い方が盛り上がって収縮しており,凝集物の直径は短くなった。本検討では簡便な評価法として直径測定と目視評価を行ったが,今後はレオロジー的評価などの導入により客観的な評価が必要と考える。過去の論文において,クリオには第II因子,第V因子,第VII因子,第VIII因子,第IX因子,第X因子,第XI因子,第XII因子,第XIII因子,VWFが含まれることが示されている2),6)。各種凝固因子が作用して形成される凝集物の強度は,フィブリノゲンの濃度が高くなるほど強くなり,凝固時間の測定では評価できなかったと考えた。力学的な凝固時間の検出は,弱いフィブリン糸の出現でもスチールボールの動きを阻害することができるため,凝集力の強弱まで評価出来なかったと考える。クリオの品質を評価するために凝固時間で客観的な評価を試みたが,血漿を原料とするため様々な要因の相互作用を総合的に評価する必要があり,結果的には凝固時間だけでは評価できなかった。Shimizuらの論文8)においても,凝固時間が短いにも関わらずクリオシールの有効性が確認できなかった症例があった。また,第V因子および第VIII因子は,凍結融解を繰り返すことで活性の低下が報告されているが,3回の凍結融解で第V因子活性は平均80%であり6),実際のクリオシールの品質に影響はないと考える。

クリオのフィブリノゲン濃度は,FFP-LR 480 mLを原料として調製した場合500~1,000 mg/dLであり6),9),今回は150 mLからの調製で約800 mg/dLとほぼ同程度であった。自己血400 mLを採血した場合,約260 mLの原料血漿が得られるため,クリオの調製には,約250 mLが使用できる。フィブリノゲン濃度が高い方が凝集物の形成が良いことを考えると,フィブリノゲン濃度はクリオの最終的な量で調製可能なため,クリオ析出後のチャンバーから余剰血漿をしっかり排出し,クリオを5 mL程度に濃縮することで,計算上1,900 mg/dLまで上げることができ,取扱説明書には2,000 mg/dL以上が調製可能と記載されている。原料血漿のフィブリノゲン量にも依存するが,作業の影響も大きい部分である。実際に,原料血漿としてFFP 240 mLを使用した場合,フィブリノゲン濃度2,000 mg/dLを超えるクリオを調製することができた。

クリオには,凝固因子以外に,創傷治癒に関係するTGF-β1とVEGF,細胞接着に関係するフィブロネクチンとビトロネクチン,感染防御に関係するTNF-α,イムノグロブリン,補体を含み,市販の組織接着製剤に比較し接着の他にも有効である2)。一方で,市販の製剤には,異種蛋白のアプロチニンが含まれ,初回投与で0.1%,再投与で3%の発症頻度ではあるが,アレルギー反応の原因となっているとの報告もあり3),4),自己血漿のみで調製可能なクリオシールは有用である。

スライドに移した凝集物を観察すると,時間の経過に従い,析出液が出現した。血餅退縮様のものか,線溶によるものかを判断するため,クリオシールのトロンビン,クリオおよび両者の混和物の析出液のDダイマーを測定した。その結果,全てのDダイマーは低値であり,線溶系が活性化したとは考えられず,血餅退縮様の現象で強固な凝集物が形成された結果と考えた。

V  結語

クリオシールCS-1では10 mLの血漿をトロンビン調製用に使用し,残りの全量をクリオ調製に使用する。今回の検討は原料血漿としては160 mL程度であり,400 mL採血で得られる血漿量の約6割であるため,フィブリノゲン濃度が低いレベルでの検討が多く,400 mL採血で得られる血漿を想定しての検証とはならなかった。今回,凍結融解の回数が,トロンビン活性と,フィブリノゲン量に与える影響は明確でなかった。トロンビン活性は規程の方法に従い調製することで一定の品質が得られた。また,フィブリノゲン濃度は市販製剤が8,000 mg/dLであり,今回の検討においてもフィブリノゲン濃度は凝集物の強度に影響するため,高い方が良いと考えられた。例えば,上澄みを除去し4 mLとなったクリオのフィブリノゲン濃度が2,000 mg/dLで,上澄み(乏クリオ)のフィブリノゲン濃度が200 mg/dLと仮定した場合,上澄みの除去が不十分で6 mLのクリオとなった場合フィブリノゲン濃度は,計算上1,400 mg/dL,8 mLのクリオとなった場合のフィブリノゲン濃度は,計算上1,100 mg/dLとなり,それぞれ70%と55%にまで低下することになる。そのため,クリオ析出後の上澄み除去をしっかり行うことが高濃度のフィブリノゲン製剤を調製する上で重要と考えた。

クリオシールは,組織接着製剤として働くだけでなく,創傷治癒,細胞接着,感染防御にも役立つ一方,異種蛋白を含まないためアレルギー反応の回避にも役立つことから,良質なクリオシールを調製することで,臨床に貢献したい。

本検討は,名古屋大学医学部倫理委員会の承認(2010-1038-9)を得て実施した。

COI開示

本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。

文献
 
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