医学検査
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技術論文
iTACT法を用いたタクロリムスおよびシクロスポリン測定試薬の基礎性能評価および対照2試薬との比較検討
石川 裕介, 有馬 武史, 黒田 烈志, 奥村 由依, 安岐 優伽, 鈴木 敦夫, 徳永 哲士, 松下 正
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2026 年 75 巻 4 号 p. 852-859

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Abstract

タクロリムスならびにシクロスポリンは血中薬物濃度モニタリングが必要な免疫抑制剤であるが,その血球への移行特性から,血中濃度測定は全血を試料とし,用手法による除タンパク処理が必要である。今回,自動検体前処理技術を適用した「ルミパルスプレストiTACTタクロリムス」および「ルミパルスプレストiTACTシクロスポリン」の基礎的性能評価を行うとともに既存試薬2種類(ECLIA法およびCLIA法)との比較検討を行った。基礎的性能評価として併行精度,室内再現精度および検者間差の再現性を評価したところ,精度管理試料ならびに患者プール血液において,いずれの試薬も変動係数(CV)が5%以下と良好な結果を示した。感度試験における定量限界(許容CV10%)は,タクロリムスで0.21 ng/mL,シクロスポリンで13.01 ng/mLであった。また,凍結融解の影響,希釈性能試験においても良好な結果を示した。既存試薬との相関性についてはタクロリムスでECLIA法とは相関係数r = 0.994,CLIA法とは相関係数r = 0.993であった。シクロスポリンでECLIA法とは相関係数r = 0.992,CLIA法とは相関係数r = 0.994であり概ね良好な結果が得られた。iTACT法は既存試薬と同等の性能を有し,前処理業務負担の軽減や業務効率の向上に寄与する可能性が示唆された。

Translated Abstract

Tacrolimus and cyclosporine are immunosuppressive agents that require therapeutic drug monitoring (TDM). Because these drugs have a high affinity for blood cells, measurement of their blood concentrations requires whole blood samples and manual deproteinization procedures. In this study, we evaluated the basic analytical performance of “Lumipulse Presto iTACT Tacrolimus” and “Lumipulse Presto iTACT Cyclosporine,” which employ an automated sample pretreatment technology (iTACT method), and compared them with two conventional reagents based on the electrochemiluminescence immunoassay (ECLIA) and chemiluminescent immunoassay (CLIA) methods. For the basic performance evaluation, repeatability precision, inter-day precision, and inter-operator technique comparison were assessed. Using quality control samples and pooled patient whole blood samples, we found that all reagents showed good precision with coefficients of variation (CVs) of ≤ 5%. The limit of quantification (CV 10%) in the sensitivity test was 0.21 ng/mL for tacrolimus and 13.01 ng/mL for cyclosporine. In addition, the freeze–thaw stability and dilution performance tests also showed favorable results. Regarding the correlation with the conventional reagents, the correlation coefficients for tacrolimus were r = 0.994 with the ECLIA method and r = 0.993 with the CLIA method. For cyclosporine, the correlation coefficients were r = 0.992 with the ECLIA method and r = 0.994 with the CLIA method, indicating generally good correlations. These results suggest that the iTACT method has analytical performance comparable to that of conventional reagents and may contribute to reducing the workload of sample pretreatment and improving laboratory workflow efficiency.

I  序

タクロリムスおよびシクロスポリンは,カルシニューリンの活性化を阻害し,T細胞からのインターロイキン-2(IL-2)の産生を抑制することにより免疫抑制作用を発揮する薬剤である1)。これらの薬剤は微量で強力な薬理効果を示す一方,個体間および個体内における体内動態の変動が大きく,かつ血中濃度の有効域と中毒域の幅が狭いため,血中薬物濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring; TDM)を適切に実施することが必要不可欠である2),3)。タクロリムスは赤血球中に95%以上,シクロスポリンは40~50%が移行するため4),一般的な血中濃度測定には全血を試料とし,用手法による除タンパク処理が必要である。一方で測定法によっても異なる測定結果が得られることも明らかになっている。

富士レビオ株式会社により開発された「ルミパルスプレスト® iTACT®タクロリムス」,「ルミパルスプレスト® iTACT®シクロスポリン」は,独自の検体前処理技術(immunoassay for total antigen including complex via pre-treatment; iTACT)を用いることにより,測定機器上で検体の前処理工程を自動的に実施した上で目的物質の血中濃度を化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)で定量可能な測定法である。今回,富士レビオ株式会社との共同研究として「ルミパルスプレストiTACTタクロリムス」,「ルミパルスプレストiTACTシクロスポリン」について,その性能評価および2種類の既存試薬を対照試薬として比較検討を実施した。

II  対象および方法

1. 試料

2023年9月から2024年11月までの間において,名古屋大学医学部附属病院にてタクロリムスあるいはシクロスポリンの測定が実施された患者の残余検体220例を,−80℃で凍結保存して使用した。本検討は名古屋大学医学部生命倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号2010-1038)。

精度管理用試料には「LPコントロール・TDM B」(富士レビオ株式会社),「エクルーシス プレチコントロールISD」(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社),「Multichem IA Plus」(アボットジャパン合同会社)を使用した。

2. 測定試薬および分析装置

検討試薬は,富士レビオ株式会社の「ルミパルスプレストiTACTタクロリムス」および「ルミパルスプレストiTACTシクロスポリン」とし,機器はルミパルスL2400にて測定した(以下,iTACT法)。対照試薬・機器には「エクルーシス試薬 タクロリムス」および「エクルーシス試薬 シクロスポリン」とcobas pro e801(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)(以下,ECLIA法),また,「タクロリムス・アボット」および「シクロスポリン・アボット」とAlinity i(アボットジャパン合同会社)(以下,CLIA法と記載)を使用した。

3. 測定法別の試料調整法

iTACT法は,日立用サンプルカップを使用し,マイクロピペットを用いたリバース法により試料を300 μL分注後,添付文書に従って測定した。

ECLIA法は,タクロリムスおよびシクロスポリン測定試薬ともに検体量200 μLとし,等量の前処理液と混和した後,添付文書に記載された方法に従って測定した。

CLIA法は,タクロリムス測定試薬およびシクロスポリン測定試薬ともに添付文書に記載された方法に従って測定した。

4. 方法

1) 併行精度

タクロリムスあるいはシクロスポリン投与患者の残余検体のうち5~7検体をプールした血液を試料とした。プール血液は目標濃度がタクロリムスで低濃度を約5 ng/mL,高濃度を約10 ng/mL,シクロスポリンで低濃度を約100 ng/mL,高濃度を約350 ng/mLとなるように調整した。作製したプール血液2濃度試料を用いてそれぞれ6回連続測定を行い,標準偏差(SD)および変動係数(CV)により評価した。

2) 室内再現精度

精度管理試料あるいはプール血液2濃度を試料とした。プール血液は併行精度に用いたものと同じ目標濃度になるよう調整した。検討試薬および対照試薬のそれぞれで項目ごとに1日あたり2回,連続した5日間にわたって測定を行い,試薬ごとにSDおよびCVにより評価した。

3) 検者間再現性の比較

タクロリムスあるいはシクロスポリン投与患者のプール血液試料2濃度を試料とした。プール血液は併行精度と同じ目標濃度になるよう調整した。当院検査部に所属する3年以上の血中薬物検査経験者3名と3年未満の経験者7名の臨床検査技師の合計10名にて,検討試薬および対照試薬の各項目での測定を行い,全自動処理と前処理のSDおよびCVを評価した。

4) 感度試験

・ブランク上限(limit of blank; LoB)

「検体希釈液タクロリムス」あるいは「検体希釈液シクロスポリン」(富士レビオ株式会社)を0濃度試料として用いた。各項目について10回連続測定を5日間実施し,合計50測定値を得た。50回の片側95%パーセンタイル値を用いてLoBを算出した。

・検出限界(limit of detection; LoD)

タクロリムス投与患者のプール血液を約1.2 ng/mL,あるいはシクロスポリン投与患者のプール血液を約35 ng/mLになるように調整した。これらをタクロリムスおよびシクロスポリンを内服していない健常人ボランティアの血液を用いて10段階希釈した10例と,健常人ボランティア血液を加えた計11例を作成した。各検体について2回連続測定を5日間実施し,合計110測定値から日本臨床化学会のバリデーションサポートプログラムに従い(LoB + 1.645 × 合成標準偏差)の式を用いてLoDを算出した。

・定量限界(limit of quantification; LoQ)

各測定項目におけるLoQは,LoD算出時の試験結果を用いてprecision profileを作成し,CVが10%となる濃度として求めた。

5) 凍結融解の影響

濃度の異なるタクロリムスおよびシクロスポリン投与患者の血液各5例についてそれぞれ血中濃度を3回連続測定した。その後,−80℃に48時間から72時間静置したのち,室温に45分以上静置して融解した。融解した試料を再度3回連続測定し,凍結前の測定値から凍結融解後の測定値を変化率で評価した。

6) 希釈性能試験

水溶液ベースの専用希釈液による希釈性能を評価するため,タクロリムス投与患者の血液2例,およびシクロスポリン投与患者の血液4例を用いて1.5倍および2倍希釈を行い原液の測定値と比較した。

7) 相関性の比較

相関性の比較には凍結保存前の検体を用いて各測定法により同日測定を行った。タクロリムス投与患者血液についてはiTACT法とECLIA法では116例,CLIA法とiTACT法あるいはECLIA法では104例を対象とした。シクロスポリン投与血液については,iTACT法,ECLIA法およびCLIA法により104例を対象とした。各試薬間の相関性はPassing-Bablok回帰分析を用いて評価した。

III  結果

1. 併行精度

タクロリムスはiTACT法でCVが0.6~1.6%,ECLIA法で0.8~2.2%,CLIA法で2.9~3.2%であった。シクロスポリンはiTACT法でCVが0.6~2.6%,ECLIA法で1.8~2.3%,CLIA法で2.4~6.2%であった(Table 1)。

Table 1 Repeatability precision using pooled blood

Tacrolimus Cyclosporine
iTACT ECLIA CLIA iTACT ECLIA CLIA
L H L H L H L H L H L H
MEAN 4.7 10.0 5.1 10.1 5.1 10.0 102.1 361.6 113.2 396.8 89.3 305.2
SD 0.03 0.16 0.11 0.08 0.15 0.32 2.69 2.08 2.64 7.31 2.11 19.02
CV% 0.6 1.6 2.2 0.8 2.9 3.2 2.6 0.6 2.3 1.8 2.4 6.2

2. 室内再現精度

タクロリムスは管理試料ではiTACT法でCVが1.4~1.6%,ECLIA法で1.7~3.8%,CLIA法で1.7~3.4%であり,プール血液ではiTACT法でCVが1.0~1.1%,ECLIA法で2.5~4.4%,CLIA法で3.4~3.8%であった。また,シクロスポリンは管理試料ではiTACT法でCVが1.3~2.8%,ECLIA法で2.6~2.8%,CLIA法で5.3~7.2%であり,プール血液ではiTACT法でCVが0.7~3.6%,ECLIA法で1.8~2.6%,CLIA法で5.0%であった(Table 2)。

Table 2 Inter-day precision using control materials and pooled blood

Tacrolimus

Control Pooled blood
iTACT ECLIA CLIA iTACT ECLIA CLIA
L (2.06) H (15.44) L (2.47) H (9.93) L (5.23) H (10.4) L H L H L H
MEAN 2.1 15.3 2.4 10.1 4.7 9.6 4.0 11.5 4.1 11.2 3.9 11.6
SD 0.03 0.24 0.09 0.17 0.16 0.16 0.04 0.13 0.18 0.28 0.15 0.40
CV% 1.4 1.6 3.8 1.7 3.4 1.7 1.0 1.1 4.4 2.5 3.8 3.4
Cyclosporine

Control Pooled blood
iTACT ECLIA CLIA iTACT ECLIA CLIA
L (52.7) H (263.2) L (100) H (336) L (103) H (369) L H L H L H
MEAN 55.6 267.8 99.2 340.9 99.0 344.0 104.6 359.0 107.2 381.3 86.1 297.3
SD 1.54 3.54 2.80 8.91 5.21 24.63 3.79 2.63 1.93 9.94 4.34 15.01
CV% 2.8 1.3 2.8 2.6 5.3 7.2 3.6 0.7 1.8 2.6 5.0 5.0

3. 検者間再現性の比較

タクロリムスはiTACT法でCVが1.9~3.2%,ECLIA法で1.6~2.1%,CLIA法で3.4~3.6%であった。また,シクロスポリンはiTACT法でCVが1.3~2.8%,ECLIA法で1.5~3.0%,CLIA法で4.2~4.7%であった(Table 3)。

Table 3 Inter-operator technique comparison

Tacrolimus Cyclosporine
iTACT ECLIA CLIA iTACT ECLIA CLIA
L H L H L H L H L H L H
MEAN 4.3 11.8 4.3 11.9 4.2 12.2 102.9 357.9 109.7 385.9 87.5 302.2
SD 0.08 0.38 0.07 0.25 0.15 0.41 2.91 4.76 1.70 11.62 4.09 12.69
CV% 1.9 3.2 1.6 2.1 3.6 3.4 2.8 1.3 1.5 3.0 4.7 4.2

4. 感度試験

タクロリムスではLoBが0.09 ng/mL,LoDが0.13 ng/mL,LoQは0.21 ng/mLであった。また,シクロスポリンはLoBが4.00 ng/mL,LoDが6.21 ng/mL,LoQは13.01 ng/mLであった(Figure 1)。

Figure 1  Lower limit of quantification (CV 10%)

5. 凍結融解の影響

対凍結前測定値との変化率はタクロリムスで96.4~101.5%,シクロスポリンで96.0~100.8%であった(Table 4)。

Table 4 Freeze–thaw stability

Tacrolimus Cyclosporine
Sample No. Fresh Frozen Rate % Sample No. Fresh Frozen Rate %
1 19.4 19.7 101.5 6 303.1 305.6 100.8
2 9.2 8.9 96.8 7 198.0 191.3 96.6
3 2.3 2.2 96.4 8 130.9 129.7 99.1
4 9.4 9.5 100.7 9 72.5 69.6 96.0
5 3.7 3.7 99.4 10 351.7 344.0 97.8

6. 希釈性能試験

対原液測定値との変動率はタクロリムスで103.1~106.1%,シクロスポリンで92.8~100.8%であった(Table 5)。

Table 5 Dilution performance tests

Sample No. Ratio Mean Rate %
Tacrolimus A ×1 12.8 —
×1.5 9.1 106.1
×2.0 6.7 104.8
B ×1 19.3 —
×1.5 13.3 103.4
×2.0 10.0 103.1
Cyclosporine C ×1 615.3 —
×1.5 391.2 95.4
×2.0 295.9 96.2
D ×1 335.8 —
×1.5 225.6 100.8
×2.0 165.4 98.5
E ×1 2,432.1 —
×1.5 1,569.7 96.8
×2.0 1,234.1 101.5
F ×1 1,827.1 —
×1.5 1,179.3 96.8
×2.0 847.8 92.8

7. 相関性の比較

・iTACT法とECLIA法の相関性:

タクロリムスは相関係数r = 0.994,回帰式y = 1.02x + 0.09,シクロスポリンは相関係数r = 0.992,回帰式y = 1.00x + 2.64であった。

・iTACT法とCLIA法の相関性:

タクロリムスは相関係数r = 0.994,回帰式y = 1.04x − 0.11,シクロスポリンは相関係数r = 0.994,回帰式y = 1.26x − 5.96であった。

・ECLIA法とCLIA法の相関性:

タクロリムスは相関係数r = 0.995,回帰式y = 1.03x − 0.24,シクロスポリンは相関係数r = 0.995,回帰式y = 1.27x − 9.53であった(Figure 2A, B)。

Figure 2  Correlations between measurements among three methods

A: Tacrolimus, B: Cyclosporine.

タクロリムス測定において,測定濃度帯によりばらつきが生じたためBland-Altman解析を行い系統誤差を確認した(Figure 3)。

Figure 3  Bland–Altman plots comparing iTACT and ECLIA, and iTACT and CLIA

シクロスポリン測定において,iTACT法で474 ng/mL,ECLIA法で595 ng/mL,CLIA法で445.6 ng/mLを示し,回帰式から乖離する測定値が認められたが,試料不足によりその原因に関する追加解析は実施できなかった。

IV  考察

タクロリムスの併行精度と室内再現精度は,精度管理試料ならびにプール血液においていずれもCV 1.6%以下と良好であった。対照試薬と比較すると,特に低濃度域における再現性が優れていた。感度試験では,LoQ(CV 10%)で0.21 ng/mLであり,臨床的に要求される濃度域を十分にカバーできる性能を示した。タクロリムスは移植のみならず,関節リウマチなどにも適用がある薬剤であり,低用量投与での管理が行われる場合があることから5),このような低濃度域での高い測定精度は重要であると考えられる。シクロスポリンの併行精度および室内再現精度は,それぞれCV 2.6%以下およびCV 3.6%以下であり,安定した測定性能を示した。対照試薬と比較すると,特に高濃度域における再現性が良好であった。シクロスポリンのTDMでは,トラフ値のみならずピーク値や血中濃度-時間曲線下面積(area under the blood concentration time curve; AUC)も評価することがあるため,低濃度域のみではなく,高濃度域の測定精度が高いことは利点の一つであると考えられる。

凍結融解の影響については,両薬剤ともに凍結前後の変動は5%未満であり,明らかな影響は認められないと判断した。また,凍結融解による影響としては,溶血亢進やタンパク変性が考えられるが,両試薬測定時には溶血処理およびタンパク変性を行うことからも,これらの影響が軽微であったと考えられる。外部委託する場合や外部委託から院内測定へと切り替える際には検体保管条件の変更が起こりうるが,特にその影響を考慮する必要がないことが示唆された。希釈性能の評価では,2倍希釈時の最大変化率は−7.2%であった。希釈により一定のばらつきが生じる可能性もあるものの,水溶液ベースの専用希釈液を用いた場合においても概ね良好な結果を示した。タクロリムスおよびシクロスポリンの測定上限は,2倍希釈時でそれぞれ80 ng/mLおよび4,000 ng/mLである。当院における過去5年間の実績では,2倍希釈時の上限を超える検体は認められておらず,臨床運用上十分な測定範囲を有している可能性が示唆された。

相関性の検討では,タクロリムスにおいて0~10 ng/mLの濃度域で良好な相関性を示した。一方,10 ng/mLを超える検体では測定値に一定のばらつきが認められた。Bland-Altman解析ではECLIA法との差は−2.4~2.4 ng/mL,CLIA法との差は−1.7~2.9 ng/mLであり,明確な系統的誤差は認めらなかったことから,測定法に起因するばらつきの可能性が示唆された(Figure 3)。シクロスポリンでは,ECLIA法との比較で良好な一致を示した一方,CLIA法との比較では,CLIA法が全体的に低値傾向を示した。この差異には中間代謝産物の交差反応性の違いや測定原理の違いが影響を及ぼしている可能性が示唆されている6)。いずれにしても,測定法間で一定の差が生じ得ることを踏まえ,使用している測定法を把握し,他施設の検査結果と比較する際にはその特性を考慮する必要があると考えられる。

当院では現在,前処理を要するECLIA法を採用しており,検査所要時間(turn around time; TAT)の短縮のため検体到着後に順次処理を行っている。しかし,検体が集中する時間帯には前処理作業が業務負担となる場合がある。この点,iTACT法は前処理を要さず,検体の分注操作のみで測定が可能である点が運用上の利点と考えられる。一方,測定時間はECLIA法で18分,iTACT法で25分および31分であり,単純な測定時間ではECLIA法が短いものの,前処理に要する時間や作業負担を考慮して総合的に評価すると,iTACT法は業務効率の向上に寄与する可能性があると考えられる。

V  結語

「ルミパルスプレストiTACTタクロリムス」および「ルミパルスプレストiTACTシクロスポリン」は既存の2法と良好な相関を示し,特に低濃度域および高濃度域において安定した分析性能を有していた。測定法間差の存在を認識した上で運用すれば,測定の簡便さを大きな利点として有用な測定法であると考えられた。

COI開示

本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。

文献
 
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