論文ID: 24J1-4
臨床検査における「基準値」は,結果の解釈や判断を行う上での重要な指標である。基準値は,一般的に基準範囲や臨床判断値である病態識別値(カットオフ値),治療目標値,予防医学値など,さまざまな指標が含まれるあいまいな用語であることに注意する必要がある。本文では,基準範囲を設定する際の基本的な統計手法について解説する。基準範囲は,健常者の中から選ばれた基準個体の検査値分布の95%信頼区間を基に設定される。「基準個体」とは,健常者からその検査値に明瞭な影響を与える状態(生理的変動因子)や病態を有する個体を可能な限り除外した健常者のことである。一方,血中成分の一部は正規分布に近似するものもあるが,多くは正規分布から対数正規分布の間の分布を示すことから,基準値の設定に際しては,正規分布になるようにべき乗変換を施行し,その後に95%信頼区間を算出する。算出された信頼区間を基に逆変換を行うことによって基準範囲が設定される。