日本看護管理学会誌
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精神科専門病院に勤務する看護師が直面する倫理的ジレンマの実態と精神的ストレスとの関連
久冨 和子戸ヶ里 泰典
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2022 年 26 巻 1 号 p. 115-128

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抄録

目的:精神科専門病院に勤務する看護師(以下,精神科看護師)が直面する倫理的ジレンマの実態を調査し,倫理的ジレンマと精神的ストレスとの関連を明らかにすることである.

方法:6つの精神科専門病院(以下,精神科病院)の看護職員486人を対象とし,2019年7月に無記名自記式質問紙調査を実施した.有効回答数418部を分析対象とした.倫理的ジレンマを評価するインデックスは「臨床場面」「看護師Xの倫理的価値」「看護師X以外の人間」の3つのファセットからなるファセットデザインにより構築した.各項目の心理的負担度の平均とケースの頻度得点の積で倫理的ジレンマストレッサースコアを求め,内的整合性とモデルの適合度の確認をした.各々の項目は頻度と負担感の二つの側面について評価し,ファセットで設定した6つの臨床場面における倫理的ジレンマが精神的ストレスに与える影響を重回帰分析で分析した.

結果・考察:重回帰分析の結果,臨床場面の「患者以外の人間関係」において生じる倫理的ジレンマが,精神的ストレスに与える影響が強いことが示された.倫理的ジレンマを解決するためには,他の医療スタッフと適切に連携を行い,患者の意思決定において,患者にとって必要なことを見極めていくことである.また,倫理的ジレンマに対して,構えることなく声をあげられる組織風土の醸成が必要であることが示唆された.

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