2022 年 26 巻 1 号 p. 140-149
本研究は,新人から一人前の段階にある看護師の職業経験の質と自我同一性,職業的アイデンティティ,レジリエンスとの関連を明らかにすることを目的とした.単純無作為に200病院を抽出し,看護管理者の承諾を得た39施設の入職3年目までの看護師950名を対象に,基本属性,職業経験の質,自我同一性,職業的アイデンティティ,レジリエンスを調査した.回収数341名(回収率35.9%)のうち,有効回答は312名(有効回答率32.8%)であった.分析にはPearsonの相関係数分析と重回帰分析を用いた.その結果,職業経験の質と職業的アイデンティティ(r=.565,p<.01),および職業的アイデンティティとレジリエンス(r=.551,p<.01)の間に有意な相関を認めた.職業経験の質の最も強い影響要因は職業的アイデンティティ(β=.432,p<.001)であり,次にレジリエンス(β=.219,p<.001)であった.自己斉一性・連続性は,「発達課題の達成と職業の経験を両立する経験」(β=-.239,p=.005)と「迷いながらも職業を継続する経験」(β=-.272, p=.001)の負の影響要因であった.職業経験の質向上には職業的アイデンティティの向上とレジリエンスが重要であり,自我の強さと看護師としてのアイデンティティの葛藤が職業経験の質に影響する可能性があることを念頭に置く必要がある.