本研究は、看護が行うアドボカシーに関して、臨床で働いている看護師がアドボカシーと患者の権利についてどのように考え実践しているのかを明らかにすることを目的とした。それによりadvocacyの言葉の意味するもの、構成している要素を見出し、アドボカシーの概念化を試みた。調査対象は、近畿圏内の緩和ケア病棟を持っている300床以上の病院で働いている臨床経験5年以上の看護師365名である。調査方法は、Davisらが開発し、看護師24名にパイロットスタディーを行った質問票を一部改変および追加した質問票を用いたアンケート調査である。
アドボカシー実践は、「患者が苦しんでいるとき」「患者や家族への病状説明が不十分」な時に、[医師に再説明の依頼][不明点/疑問点の医師への確認]などを7割の看護師が行っていた。アドボカシー実践を行うためには、「ゆとりある業務」「医師はあくまで同僚」という職場環境が実践の場で欠如していた。患者の権利については、看護師の意識は高いが、現実に看護師が係わっている状況とは差があった。患者・看護師・医師との係わりのなかで様々な矛盾を感じながら看護師はアドボカシー活動を行っているようだが、その活動を日常の看護業務のなかの一部であると考えている。