北ヨーロッパ研究
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研究ノート
ノルウェーにおける先住民族サーミの言語復興
ノルウェー・サーミ大学における言語教育実践を事例に
田辺 陽子
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 14 巻 p. 27-36

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抄録

本稿の目的は、ノルウェーの先住民高等教育機関・サーミ大学において成人向けに開講されている「北サーミ語初心者実践コース」に注目し、受講生の学習動機、言語復興に関する学習の成果や課題を提示することである。インタビュー調査の分析によって明らかになったのは、主に次の事項である。①学習動機に関しては、サーミ以外の受講生に「道具的志向」と「統合的志向」が目立ったのに対し、サーミの受講生には「連続的志向」がみられた。②学習成果としては、地域社会や自然・文化資源を学習環境の一部として取り入れたプログラムに対する生徒からの評価は高く、特に会話力の向上を指摘する声が多かった。その一方で、辞書や補助教材については課題が幾つくか残っている。次世代への言語継承には親世代の取組みが重要となるが、サーミ語を学ぶ成人向け教育プログラムが言語復興に果たす役割は大きく、今後の重要な研究課題の一つとなるだろう。

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2018 『北ヨーロッパ研究』に掲載された著作物の著作権は,著者に帰属するものとします.
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