北ヨーロッパ研究
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論文
フィンランドにおける年金議論の政治過程
1950ー60年代の国民年金改革および職業年金制度導入に焦点を当てて
柴山 由理子
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 18 巻 p. 67-77

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抄録
フィンランドの年金制度には、国民年金と職業年金の2つがあり、前者は国民年金機構(Kela)によって、後者は民間の年金保険者とそれを調整する年金保障センター(ETK)によって運営される。職業年金は民間保険者を介す仕組みとなっている。年金制度が独特の発展を遂げた背景には、長年の政党政治の駆け引きがある。国民年金法は、社会民主党による所得比例の社会保険導入案を、農民同盟が一律給付の国民年金導入の議論に置き換えて制定された。1950年代に再び社会保険導入の議論が過熱したが、またも国民年金改革が優先された。1960年代はじめに遂に強制加入の職業年金が導入される。国民連合党や社会民主党は職業年金がKelaの管轄になることを拒み、民間保険者が業務を担うことになった。国民年金と職業年金の仕組みは各政党の意向を反映し、政党政治の妥協の結果として発展した。本稿では、各政党のフィンランド年金制度における影響について整理し、国民年金および職業年金と政党政治の関係性からフィンランド社会政策に見られる政治過程の特徴を示す。
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