抄録
本稿の目的は、デンマークの青少年教育機関エフタスコーレ(Efterskole)(以下ES)の役割を若者支援の視点から考察することである。ESとは14歳から18歳の若者を対象とした私立の寄宿学校であり、国内の241校のESに約3万人の生徒が在籍する。当初ESは青年期の教育拡充を目的として設立されたが、義務教育修了試験の導入や、福祉的機能を有するESの誕生など、社会のニーズに合わせて内容を柔軟に変化させてきた。現在では、若者の進路選択に良い影響を与え、移民の若者や障がいのある若者を対象に社会的包摂の役割を担っている。ESはノンフォーマル教育のなかでも、制度面及び財政面の正規性と、教育内容の準定型性の両特徴を持ち、それが多様化する若者の困難やニーズに応えている。国際的にも若者問題を解決する手段として、ノンフォーマル教育が注目を集める中、他国にはないデンマーク独自のESのあり様は、若者支援策における示唆に富むと考える。