動物心理学年報
Online ISSN : 1883-6283
Print ISSN : 0003-5130
ISSN-L : 0003-5130
シロネズミの弁別学習に於ける連続性の検討 (I)
渡辺 十四生
著者情報
ジャーナル フリー

1956 年 6 巻 p. 49-56

詳細
抄録

弁別学習の過程が連続的であるか非連続的であるかを決定する為に, 白ネズミを用いて次の二つの実験を行つた。第I実験ではグライス式の弁別箱装置を用い, 白色及び黒色の刺戟カードを呈示して刺戟弁別度を容易にしておき且つ誤つた反応に対しては罰を与えないと言う条件の下で, 動物の弁別学習が観察された。第II実験では修正法がとられ, 他の学習条件は略々第I実験と同じであつた。但し将来の実験との比較を予想してラッシユレイの跳躍装置を改装し, 歩走路をとり附けて一種の高架式迷路を用いた。36匹の白ネズミを二分し, 更に夫々実験群 (N=9) と対照群 (N=9) に分けられた。
実験群の各動物は最初の20試行までの間, 白色又は黒色のカードのいづれか一方をポヂティヴの刺戟ときめ, 之に反応する様に訓練した。この期間に於て動物がチヤンス・スコアで反応すれば1~20試行は解決前期と見なされた。次にこの実験群の動物は第21試行から刺戟価が逆転され, 以前ポヂティヴであつた刺戟はネガティヴに, ネガティヴであつたものはポヂティヴにされる。之に対して, 対照群の動物は最初から一貫して白色又は黒色のカードのいづれか一方をポヂティヴの刺戟として最後まで学習させられる。
その結果, 両群の第21試行から学習完成までの試行数及びその間に生じたエラー数を比較してみると, 第I実験及び第II実験いづれの場合も, 実験群の学習完成が対照群のそれよりも遅れ, 統計的にも有意の差のある事が認められた。尚, 第I, 第II実験とも夫々実験群と対照群の動物が11~20試行間にチヤンス・スコアで反応しており, 課題解決に直接関係のある手がゝりを未だとらえていなかつた事が確められた。これらの事から, 解決前期で動物は元来解決に無関係な刺戟アスペクトに対して反対しているのだがしかしその際に動物に与えられた強化・非強化の効果は, 後の解決期の学習に対し累積的に作用し, 禁止的な結果を生ずる-と言う事が分つた。
以上から次の事が言えよう。弁別学習状況に於て, 刺戟の弁別が容易 (刺戟差が大きく明瞭度が高い) であり, 誤つた反応に対して罰を与えず, 且つ修正法又は非修正法による学習方法がとられた場合, たとえ課題解決前期でその解決に直接関係のないアスペクトに反応がなされたとしても, それは後に解決への正しいアスペクトに対する学習の際に禁止的な効果を与え, 学習を遅らせる。かくして, 上記諸条件の下では弁別学習に於ける連続性が認められる。

著者関連情報
© 日本動物心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top