抄録
NPOによる情報の蓄積と発信は,情報社会において世論形成やオルタナティブな政策提言を構成する重要な要素となりうる.が,NPOが積極的に情報を発信するこの行為の意義が「アドボカシー」の語に関係が深いとされながら置き換えうる適切な日本語がないために,日本のNPO活動のなかで理解と定着が進まない.NPOの積極的なアドボカシーが社会変革にもつながっているアメリカでは,古くからこの行為にあたる集団の活動が研究されているが,本論では,古典的文献でもあるクーリー(1909)『社会組織論』の「第一次集団」のコミュニケーション分析を先行研究から援用し,多領域にわたるアドボカシーに関する先行研究と突き合わせて論考することと合わせ,カリフォルニア北部NPOの実際のアドボカシー活動の調査を踏まえ,アドボカシーの語義を明らかにしてゆく.