2022 年 21 巻 1+2 号 p. 1-14
本論文は,地域の持続可能な発展を担うソーシャルセクターの現状と課題を明らかにしようとするものである.日本の都市や農村は,様々な社会問題に直面しているが,それらの問題をソーシャルセクターを中心としたソーシャルビジネスによって解決しようとしている.こうしたソーシャルセクターのソーシャルビジネス活動は,持続可能な地域への変革という意味でのソーシャルイノベーションを伴わなければ目的を達成することは難しい.そのため本稿においては,第1に,これまでの地域づくりが持続可能な地域の発展とどのように接合されていくのかを検討する.第2には,持続可能な地域づくりの担い手としてソーシャルセクターを措定し,近隣社会に貢献できるその組織と機能を解明する.第3には,ソーシャルビジネスに焦点を当てて,その可能性を探ることとする.第4には,ソーシャルイノベーションに着目して,地域においてどのように変革を生み出しているのかを分析する.最後に,持続可能な発展のためのコミュニティデザインを考える.そこでは,ソーシャルセクターがソーシャルイノベーション型のソーシャルビジネスを生み出すことが出来る条件としてのエコシステムの要素と構造を検討し,それらを実装できるコミュニティデザインの可能性を考察し,まとめとしている.