抄録
本稿では,明確な説明責任を果たす事業委託システムの構築を目指す端緒として,大阪府の提案公募型事業を事例として採り上げ,事業の立案から委託先NPOとの契約締結に至る4段階のプロセスにおいて,その意思決定に影響を与えた「要因」を分析した.また,その要因が委託事業の選定や委託先団体の選定,事業費の積算等の明確な基準として機能する可能性を検討し,説明責任を果たす意思決定のあり方について言及した.意思決定に影響を与えた要因として,明文化されたガイドラインや,事業費の市場価格といった,決定を行うための基準・制度に近いものが確認された.一方,NPOの専門性や,審査員による団体の理解度などの経験に裏づけされた現場感覚に近いものも把握できた.行政が,事業委託における意思決定の説明責任を果たすためには,委託対象として,NPOのみならず,民間営利企業・地方公社などを含めた上で,どの主体が適切なのか,サービス水準や効率性の検討を行うことが求められる.そして,行政課題を解決するのに最適な団体を選定するために,事業実績や組織規模に左右されない審査項目を設置することが必要である.