抄録
本研究は,日本における,女性うつ病患者の認知の特徴と症状との関連を記述することを目的とした.性別による比較分析を行う意図から男女合計10名の対象者に対してインタビューを行い,オープン・コード化,カテゴリー化,さらにカテゴリー精錬のため理論的サンプリングを行った.その結果,中心となるカテゴリーには【依存対象へのしがみつき】が抽出され,女性うつ病患者の場合,《関係性における過剰な役割意識》《世話されることへの浸かりすぎ》《関係性・コミュニケーション上のコントロール喪失》の3つの特性で構成されていた.またそれらはうつ病の症状と相互に関連し,悪循環もみられた.今後,女性うつ病患者へのケア技術の開発の際には,女性の性役割とうつ病との関連を考慮すると同時に,3つの特性と症状との相互関係,悪循環を断ち切るため,認知療法によるアプローチを活用することが有効と示唆された.