抄録
本研究は,看護職におけるキャリアを,家庭生活・職業生活全般のさまざまな立場や役割を通して培われた成人としての成熟性を基に看護職を継続できることと定義し,キャリア形成の仮説の検証,およびそれに影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした.方法は,病院に勤務する看護師1000名を対象に,先行研究および看護師へのインタビューを基に作成した質問紙を用いて,「個人としての確立」「職業人としての確立」「家族との関わり」「職場・同僚との関わり」に関する調査を行い,併せて基本属性,勤務状況,職場環境,労働条件に対する満足度,職業継続意思について調査し,共分散構造分析により探索した.結果,「個人としての確立」「職業人としての確立」「家族との関わり」「職場・同僚との関わり」から構成された成人としての成熟性が職業継続につながるという仮説が検証された.キャリア形成に影響を及ぼす要因は,経験年数,労働条件に対する満足度,職場におけるモデルやメンターの存在であった.また,労働条件に対する満足度は職業継続意思に直接の影響を与えた.