日本看護科学会誌
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原著
がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復
天野(小粥) 薫谷本 真理子正木 治恵
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キーワード: 回復, 自己, 下降期, がん治療
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2012 年 32 巻 4 号 p. 4_3-4_11

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抄録

目的:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復について明らかにすることである.
方法:ステージIII期あるいはIV期の消化器がんに対するがん治療を受ける5名を対象に看護援助を実施し,その援助経過を記録したデータを質的統合法(KJ法)を用いて個別分析と全体分析を行った.
結果:自己の回復は【悪化してゆく今ここにある身体の感受】【環境にゆるがされる現実の厳しさの認知】【安らぎを得るための方策の探求】【つながりをもつ他者との応答】【意味ある体験の確認】【今ここにいる自分の在り方の表明】の6つの性質から成り立つことが明らかになった.これは,悪化してゆく身体の感受を基盤に,対人関係に影響を受けるものであった.
結論:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復は,他者と共に生きる人としての在り方を表すものであり,その人にとって意味ある時を生きてゆく可能性を内包したものである.本研究の結果は,人々が苦難の状況に置かれていても,その人らしく在ることを支援するケアの視点を示した.

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© 2012 公益社団法人 日本看護科学学会
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