日本看護科学会誌
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原著
若年女性の月経痛コントロールを目的とした教育プログラムの非ランダム化比較試験による評価
福山 智子
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2017 年 37 巻 p. 161-169

詳細
Abstract

目的:Oremのセルフケア理論を基盤として,若年女性が痛みの程度と緩和の必要性に応じて,意図的に有効な対処法を実施することで,月経痛のコントロールを目指した教育プログラムを開発し評価することである.

方法:8大学を教育プログラムを実施する介入群としない対照群に非ランダムに割り付け,アウトカムについて教育プログラム前後で量的に測定した.アウトカムは月経痛の対応についての考え方,月経痛の知識,月経痛レベル,月経随伴症状,日常生活行動の支障,社会生活への影響,月経痛コントロールの7項目である.

結果:介入群はセッションに参加し全質問紙に回答した49名(45.4%)を,対照群は全質問紙に回答した58名(57.4%)を分析した.介入群は対照群と比較して,有意に月経痛に対処しようという考え方に変化し,月経痛の正しい知識が増え,月経痛レベルと月経随伴症状が軽減し,月経痛コントロールができた.

結論:本プログラムは,若年女性が意図的に月経痛をコントロールするために効果的である可能性が示唆された.

Ⅰ. 緒言

1. 研究の背景

諸外国(Eryilmaz & Ozdemir, 2009Latthe et al., 2006)と同様に我が国も月経痛有訴率は高いが(堤ら,2001),最も高い年代は10代後半から20代前半(以降若年女性)で,80%前後と報告されている(福山,2010平田,2011).若年女性の月経痛レベルをVisual Analogue Scale(以降VAS)0~10で示すと,平均値は4.29(SD2.78)~5.18(SD2.43)(野田,2003a2003b),VAS7.0以上は20.5%あり(野田,2003a2003b),40%前後が我慢できない痛みなど(安達,2007),月経痛は重要な健康課題である.

若年女性の月経痛の多くは原発性月経困難症と考えられ,疼痛誘引物質であり陣痛を引き起すプロスタグランジンの過剰産生で生じる痙攣性,周期性の極めて強い疼痛が,プロスタグランジンの放出期間である月経開始前後から2日程度と短期間なのが特徴である.30歳以降に多い続発性月経困難症と異なり,市販されている非ステロイド系消炎鎮痛剤(以降NSAIDs)の疼痛緩和効果は高く(Marjoribanks et al., 2010),運動療法(Brown & Brown, 2010)もある程度有効でセルフケアが可能であるが,痛みの程度と対処行動に一定の見解は得られていない(野田,2003b).その要因として,月経痛は女性なら誰でも経験することで,我慢するものという月経痛対処への考え方や(服部ら,2001野田,2003b佐藤・斉藤,2010),NSAIDsの副作用,耐性,依存性の不安や緩和効果への不信感があり(服部ら,2001平田,2011),月経痛対処行動の抵抗になっていると考える.

このような背景から,若年女性が月経痛を我慢せず,セルフケアによって痛みのコントロールが可能な教育プログラムの開発が必要だと考えた.セルフケアとは生命維持や人間としての満足,喜び,幸福,自己実現を脅かす要因を調整する必要性が生じた時に,個人が目標を持って妥当性のある有効な手段を主体的および意図的に行う行為である(Orem, 2001b/2005).本研究は,その時々の月経痛緩和の必要性に応じて,主体的および意図的に適切な月経痛対処法を実施して月経痛をコントロールする教育プログラムの開発を目的としているため,Oremのセルフケア理論を基盤とした.国内には,セルフケア理論による月経痛緩和を目的としたランダム化比較試験または非ランダム化試験はなく(福山ら,2009甲斐村・上田,2015),海外にセルフケア理論を用いた研究はあるが月経痛は測定されておらず(Chiou et al., 2007),ピアサポートによるプログラム(Abedian et al., 2011)がわずかに報告される程度であり,本研究の意義は少なくない.

2. 研究目的

本研究の目的は,若年女性が月経痛の程度と緩和の必要性に応じて,個人が望む状態を目標に(以降調整目標),複数の有効な対処法の中から意図的にケアを選択して実施することで,月経痛コントロールを目指した教育プログラムを開発し評価することである.

3. 仮説

本教育プログラムを受けることで,月経痛に対処しようという考え方に変化し,月経痛の正しい知識が高まる.月経痛時に調整目標に応じたセルフケアが行われ,月経痛の軽減によって,日常生活行動の支障や社会生活への影響が軽減し,月経痛をコントロールできる.

Ⅱ. 研究の概念枠組み

1. 用語の定義

本研究の若年女性は,18歳以上25歳未満の女性を指す.月経痛コントロールとは,月経痛時の調整目標に向かって調整すべき行為が何か,調整したらどのような影響があるかを主体的に考え,学習によって得られたセルフケア方策を意図的に実践することで,個人が望む月経痛への効果を得ることと定義した.

2. 本研究の理論的基盤

意図的行為とは,本能的行動や痛みなどの生理学的反応とは明らかに異なる後天的学習によって得られる目標指向的行為であり,何をなすべきかについての思慮深い意図的選択によって,予測される結果を達成する行為であり,セルフケアである(Orem, 1991/1995).本研究はセルフケアを促すため,Oremの看護のための概念枠組みを基盤モデルとした(Orem, 2001a)(図1).

図1

A conceptual framework for nursing(Orem)を基盤モデルとした研究の枠組み

1) Self-care セルフケア要件

セルフケア要件とはセルフケアの明確な目的であり,意図した結果あるいは望しい結果である(Orem, 2001b/2005).本研究では月経痛コントロールをセルフケア要件とした.

2) Self-care demands 治療的セルフケア・デマンド

治療的セルフケア・デマンドとは,セルフケア要件を充足するために選ばれた一連の実際的で妥当性のある手段である(Orem, 2001b/2005).本研究では先行研究をレビューして,若年女性が日常生活で活用可能な対処法を選択した.

3) Self-care agency セルフケア・エージェンシー

セルフケア・エージェンシーとは,治療的セルフケア・デマンドを充足する力であり,学習や文化的影響,日常生活経験によって後天的に変化・発展していく力である(Orem, 2001b/2005).

4) セルフケア不足

治療的セルフケア・デマンドを充足するために必要なセルフケア・エージェンシーが,十分発達していない関係である.

5) Nursing agency 看護エージェンシー

看護エージェンシーとは,対象者が治療的セルフケア・デマンドを充足できるように援助する看護の専門家の力である(Orem, 2001b/2005).本研究では若年女性が月経痛に適切に対処できるように,セルフケア・エージェンシーの発達を促す支持・教育的システムとして教育プログラムを開発して介入した.

6) 条件付け要因

看護のための概念枠組みを構成する個々のあるいは相互の関係性に影響を及ぼす要因である(Orem, 2001b/2005).母親の考え方はセルフケア・エージェンシーに最も影響を与える条件付け要因と考える.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究デザイン

大学単位で教育プログラムを実施する介入群と実施しない対照群の2群に割り付け,教育プログラムの効果を検討する非ランダム化比較試験である.

2. 研究対象者

研究対象施設は学校教育法に定められている我が国の修業年限4年または6年の大学とし,研究対象者は研究対象施設の女子大学生であり,調査開始前6か月間に少なくとも2回以上の月経痛を経験していること,健康で年齢18歳以上25歳未満であることを選定条件とした.除外条件は,調査開始前6か月間に子宮内膜症などでホルモン療法や生殖器系の手術療法を受けていないこととした.先行研究がほとんどないため,サンプルサイズは先行研究(Cohen, 1988Polit & Beck, 2004/2010)から効果サイズを0.40,両側有意水準α = 0.05,検出力0.80で算出し,先行研究(福山ら,2009)から脱落率を1割と見込んで算出し,各群110名を研究対象者とした.

3. 若年女性の月経痛コントロールを目的とした教育プログラム

本教育プログラムは,対象者のセルフケア・エージェンシーの発達を促し,治療的セルフケア・デマンドを充足できるように,看護エージェンシーとして開発したものである.セルフケア学習には動機づけ,知識の学習と活用,技能の維持と開発が必要であり(Orem, 2001b/2005),2回のセッションに分けてこの中心要素を学習できるように構成し,研究者が単独で全セッションを実施して内容を掌握するために,1回のセッション人数を25名以下に設定した.

1) 1回目セッション 80分

はじめに,我慢せずに月経痛に対処してもよいと考えられるように,我慢の実態と歴史的経緯,弊害を説明し動機づけを行った.次に,調整目標について説明した.試験,試合,旅行など特別なイベント日と予定のない日とでは,月経痛緩和の目標値は異なると考えられ,その時々の状況下で使用できる道具や経費などを考慮して目標を決定するため,どの方法を選ぶかは個々で異なる.セルフチェックシートに月経時にどう過ごしたいかを記入することで,調整目標について考える時間を設けた.その後,根拠に裏付けられた対処方法を理解することは,セルフケアにチャレンジする意識を高められるため,月経と月経痛のメカニズムを説明した.続いて,根拠ごとに冷えの予防の「温める」,体を締め付けない服装や月経痛体操の「ゆるめる」,スケジュール管理などの「休む」,NSAIDs服用に関する「やわらげる」の4キーワードに分けて対処法を説明した.その方略は,クイズを取り入れた参加型講義や体験,演習を中心とし,理解を促す工夫をした.最後に,研究者が作成した月経記録ノートを配布し,月経痛のセルフモニタリングの緩和効果と記録方法を説明した.記録を負担と感じてセルフケアに消極的にならないように,記録は自由とした.

2) 2回目セッション 50分

月経痛のセルフケアを1回経験できるように,2回目セッションを5週間後に設定した.セッションの初めに,直前の月経痛をコントロールできたかセルフチェックシートを用いて,セルフケアに必要な内省の時間を設けた(Orem, 2001b/2005).次に5名未満のスモールグループを作り,共通の話題である月経についてアイスブレイク後,直前の対処法と効果およびセルフケア成功の秘訣をディスカッションし,発表で全体共有した.最後に,セルフチェックシートでセルフケアに関する未解決の課題について考え,課題がある場合は研究者が解決方法を示唆した.

4. アウトカムの評価項目

アウトカムの評価項目は以下の7項目とし,看護エージェンシーでどのように変化したのかを自記式質問紙にて測定した.月経痛の知識尺度は先行研究(福山ら,2009)の尺度を使用した.月経痛の知識尺度は10項目から構成され,正誤で回答し得点範囲は0点から10点で,合計得点が高いほど月経痛への対処に関する知識があると判定する.月経痛の知識尺度のCronbach α係数は0.77と報告されている(福山ら,2009).月経痛の対応についての考え方尺度は,先行研究(福山ら,2009)を一部修正して用いた.月経痛の対応についての考え方尺度は,10項目で構成され,「全くそう思わない」から「全くそう思う」の4件法で回答し,合計得点(得点範囲は10点から40点)が高いほど月経痛の対応に消極的であると判定する.本研究のプログラム終了時に測定したデータで算出したCronbach α係数は0.81であった.月経痛レベルは子宮内膜症などの治療成績評価(澤田・澤田,2009)で用いられているVisual Analogue Scale(VAS)を用い,0から100の範囲で数値が大きいほど激痛と判定する.月経随伴症状は,Menstrual Distress Questionnaire邦訳版(以降MDQ)を用いた.MDQは8下位尺度(痛み,集中力,行動の変化,自律神経失調症,水分貯留,否定的感情,気分の高揚,コントロール)で計46の質問項目があり,下位尺度ごとの内的一貫性が示されている5件法(野田,2001)にて平均得点を算出し,得点(得点範囲は1点から5点)が高いほど症状が強いと評価する.日常生活行動の支障尺度は,先行研究(福山ら,2009)から一部修正して用いた.日常生活行動の支障尺度は,月経痛による日常生活行動の支障の程度を測定するために5項目で構成され,「まったくない」から「よくある」の4件法で回答し,合計得点(得点範囲は5点から20点)が高いほど日常生活行動の支障が大きいと判定する.本研究のプログラム終了時に測定したデータで算出したCronbach α係数は0.87であった.社会生活への影響は,月経困難症のQOL評価として用いられているVerbal Rating Scale(以降VRS)の一部に(金丸,2003),勉強に集中できないなどの説明を加筆し,得点(得点範囲は1点から4点)が高いほど社会生活への影響が大きいと判定する.最後に,セルフケアのプロセスと結果を測定する月経痛コントロールは,主観的な因子を測る時に使用され,痛みのある患者の痛みのコントロールに関する満足感でも使用されているVASを用いた(吉田,1997).「月経痛に対して自分の意思で,できる範囲の対処を行なえ,コントロールできたと思いますか」と問い,VAS0の「思わない」から100の「思う」の範囲で数値が大きいほど月経痛をコントロールできていると判定する.

5. データ収集方法

関西3府県の大学を便宜的に抽出し,教育プログラムを実施する介入群としない対照群の対象特性が均等になり,アウトカムに影響しないように大学単位で2群に割り付け,学部長等に依頼書と口頭で研究協力を求め,担当者にも同様に説明した.対象者の募集方法は,研究説明会の案内と研究の概要をチラシにして研究室や食堂等に留め置き配布,担当者と一緒に直接配布,ポスター掲示の3通りで行い,研究説明会で研究依頼書を配布して口頭で説明した.研究同意が得られた女子大学生を研究対象者とし,介入群には教育プログラムの日程を案内し,各群110名になるまで募集を継続した.

介入群は1回目セッションの直前(以降,開始前),2回目セッションの直前(以降,中間),2回目セッション終了から12週間後(以降,終了後)の計3回,質問紙に回答を依頼し,留め置き法または郵送法にて回収した.対照群は介入群と同様の質問紙を用い,介入群と同間隔になるように1回目(以降,開始前),1回目から5週間後(以降,中間),1回目から17週間後(以降,終了後)の計3回,質問紙に回答を依頼し介入群と同様の方法で回収した(図2).本研究のデータ収集期間は2013年4月から2014年5月であった.

図2

研究のフローチャート

6. 分析方法

2群のベースラインはFisherの直接法,χ2検定,対応のないt検定で比較し,2群間で対象者の特性が異なる場合は,その要因を独立変数に加え,アウトカム評価7項目の介入前後の変化量への影響を重回帰分析にて検討した.アウトカム評価7項目の判定は,一要因対応のある二元配置分散で交互作用を確認した.中間調査を行った月経痛の対応についての考え方と月経痛の知識の2項目は,変化のパターンを確認するため群内でBonferroni法の多重比較を行い,他の5項目は群内で対応のあるt検定を行った.有意水準は両側検定で5%未満とし,統計分析にはSPSS Statistics 20.0と22.0を用いた.介入群において1回目セッション後に実施したセルフケアを抽出するために,2回目セッションのスモールグループディスカッションの内容を録音して逐語録を作成し,内容分析法でセルフケアを数値化した.

7. 倫理的配慮

研究目的,方法,内容,自由意思の尊重と拒否する権利,負担と利益,プライバシー保護,データ管理に関して書面と口頭で説明し同意書を2通交わした.本研究は,兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所研究倫理委員会(平成25年2月承認番号:博士4)の承認を得ている.

Ⅳ. 結果

介入群は5大学12学部19学科で108名,対照群は3大学3学部5学科で101名の協力が得られた.各群国公立大学が1校ずつあり,文系と理系学部を含み,看護学,リハビリテーション学,薬学の医療系学部に所属する学生が介入群は33名(30.6%),対照群は38名(37.6%)で2群に有意差はなかった(P = 0.281).教育プログラムは合計11か所で実施した.1回目セッションに参加した108名の介入群のうち,2回目セッションに参加し質問紙を回収できたのは81名(75.0%)で,さらに終了後まで回収できたのは49名(45.4%)であった.対照群は101名であったが,中間で63名(62.4%),終了後は58名(57.4%)となった.2群とも終了後まですべて回収できた質問紙を分析対象とした(図2).

1. 対象者の概要とベースラインにおけるアウトカム評価項目の比較(表1

介入群の平均年齢は20.1歳(SD1.6),対照群の平均年齢は21.0歳(SD1.7)で,対照群の平均年齢が有意に高かったため(P = 0.006),重回帰分析で年齢がアウトカム評価項目に及ぼす影響を検討したが有意差はなかった.また,MDQ気分の高揚は介入群が有意に高く(P = 0.001),月経痛コントロールは介入群が有意に低い(P = 0.016)という2群間の相違がみられた.

表1 対象の概要とベースラインにおける2群の比較 n = 107
対象特性 介入群n = 49 対照群n = 58 t値 χ2 P
平均年齢 (歳) mean(SD) 20.1(1.6) 21.0(1.7) 2.803 i.006*
平均初経年齢 (歳) mean(SD) 12.1(1.3) 12.1(1.3) –.016 i.987
出産経験 n(%) 48(98.0) 57(98.3) j<1.000
喫煙 n(%) 49(100.0) 54(94.7) j.247
月経痛による婦人科受診経験 n(%) 48(98.0) 58(100.0) j.458
月経痛による低用量ピル服用経験 n(%) 46(93.9) 51(89.5) j.500
a正常月経周期 n(%) 35(72.9) 46(79.3) .596 k.440
月経痛の頻度 毎月 n(%) 38(77.6) 36(62.1) 2.985 k.084
2~6か月毎 n(%) 11(22.4) 22(37.9)
過去最大の月経痛 (VAS) mean(SD) 72.3(18.4) 74.3(21.9) –.494 i.622
アウトカム評価項目 介入群n = 49 対照群n = 58 t値 iP
mean(SD) mean(SD)
b月経痛の対応についての考え方 22.0(3.1) 22.5(4.0) –.652 .516
c月経痛の知識 6.8(1.6) 6.3(1.8) 1.392 .167
d月経痛レベル(VAS) 62.7(20.9) 61.7(22.0) .224 .823
e月経随伴症状(MDQ) 2.5(0.7) 2.3(0.8) 1.220 .225
 痛み 3.5(0.8) 3.2(0.9) 1.711 .090
 集中力 2.5(1.0) 2.3(1.0) .851 .397
 行動の変化 3.2(1.0) 3.1(1.1) .164 .870
 自律神経失調 2.2(0.9) 2.1(1.0) .575 .566
 水分貯留 2.7(0.8) 2.7(1.0) .021 .983
 否定的感情 2.8(1.0) 2.6(1.1) .633 .528
 気分の高揚 1.6(0.5) 1.3(0.3) 3.585 .001*
 コントロール 1.6(0.8) 1.3(0.6) .051 .053
f日常生活行動の支障 10.8(3.9) 10.7(4.0) .089 .929
g社会生活への影響(VRS) 2.9(0.7) 2.7(0.8) .895 .373
h月経痛コントロール(VAS) 45.3(29.2) 58.6(27.0) –2.439 .016*

a正常月経周期は25日以上38日以下.b得点範囲は10~40点,得点が高いほど月経痛対処に消極的である.c得点範囲は0~10点,得点が高いほど月経痛対処の知識がある.dVisual Analogue Scale(VAS)は0~100の範囲,数値が大きいほど耐えられない激痛である.eMenstrual Distress Questionnaire(MDQ)の得点範囲は1~5点,得点が高いほど月経随伴症状が大きい.f得点範囲は5~20点,得点が高いほど日常生活行動に支障がある.gVerbal Rating Scale(VRS)の得点範囲は1~4点,得点が高いほど社会生活への影響が大きい.hVisual Analogue Scale(VAS)は0~100の範囲,数値が大きいほど月経痛コントロールができる.i対応のないt検定.jFisherの直接法.kχ2検定.*P < .05

2. 教育プログラムのアウトカム評価(表2

1) 月経痛の対応についての考え方

二元配置分散分析の結果,群と時間(開始前,中間,終了後)の交互作用が有意であり(F(2, 210) = 17.29, P < 0.001),主効果は時間および群間においても有意差が認められた.介入群においては開始前22.0(SD3.1),中間19.6(SD3.7),終了後18.1(SD4.6)と低下しており,開始前と中間(P < 0.001),中間と終了後(P = 0.010),開始前と終了後(P < 0.001)で有意な差があった.

表2

教育プログラムのアウトカム評価 

n = 107

2) 月経痛の知識

二元配置分散分析の結果,群と時間(開始前,中間,終了後)の交互作用が有意であり(F(2, 210) = 16.74, P < 0.001),主効果は時間および群間においても有意差が認められた.介入群においては開始前の6.7(SD1.7)が中間の9.1(SD1.1)に有意に増加したが(P < 0.001),中間と終了後に有意差はなかった.つまり,月経痛対処の知識は1回目セッション後に有意に増加した後,調査終了まで高いレベルに保たれ定着した.一方の対照群も6.3(SD1.8),7.0(SD1.5),7.8(SD1.2)と増加し,開始前と中間(P = 0.0169),中間と終了後(P < 0.001),開始前と終了後(P < 0.001)で有意差があった.

3) 月経痛レベル(VAS)と月経随伴症状(MDQ)

二元配置分散分析の結果,群と時間の交互作用が月経痛レベルVAS(F(1, 105) = 4.31, P = 0.040)および月経随伴症状MDQ(F(1, 105) = 5.98, P < 0.016)において有意であった.介入群のVASは開始前62.7(SD20.9)から終了後53.4(SD20.3)に有意に低下し(P < 0.004),MDQは開始前2.5(SD0.7)から終了後2.3(SD0.7)に有意に低下したが(P < 0.001),対照群に有意差はなかった.MDQ下位項目では,痛み(P < 0.001),集中力(P = 0.002),コントロール(P = 0.015)で交互作用が有意であった.

4) 日常生活行動の支障と社会生活への影響(VRS)

日常生活行動の支障と社会生活への影響は二元配置分散分析で交互作用を認めなかった.

5) 月経痛コントロール(VAS)

二元配置分散分析の結果,群と時間の有意な交互作用を認めた(F(1, 105) = 22.82, P < 0.001).介入群は開始前45.3(SD29.2)から終了後69.9(SD18.9)に有意に上昇したが(P < 0.001),対照群に有意差はなかった.

3. 教育プログラムによって実施された月経痛のセルフケア

1回目セッション直後に行なわれたセルフケアは,入浴や冷えの予防などの「温める」が65件(80.2%)で最も好まれ,NSAIDsの服用に関する「やわらげる」が46件(56.8%),「ゆるめる」44件(54.3%),「休む」6件(7.4%)であった.NSAIDsを月経開始時に服用するが22件(27.2%),月経痛に備えてNSAIDsを携行するが6件(7.4%)みられた.

Ⅴ. 考察

1. 教育プログラムの評価

Oremのセルフケア理論を基盤とした本教育プログラムは,動機づけ,知識の学習と活用,技能の維持と開発といったセルフケア学習(Orem, 2001b/2005)を通してセルフケア・エージェンシーの発達を促すもので,月経痛を我慢する必要がなく,その時々の月経痛時に望む状態(調整目標)を明確にするような動機づけを行ない,参加型講義や体験,演習で学んだ対処法の中から,安価で簡便な「保温」を中心に,NSAIDsも必要時服用するというセルフケアを促すことができた.さらに,2回目のセッションで直前のそのセルフケアを内省し,仲間とのディスカッションを通して修正および発展させるというセルフケア学習によってセルフケア・エージェンシーが発達し,治療的セルフケア・デマンドを充足でき,月経痛をコントロールできたと考える.

一方の対照群も,調査を重ねるごとに月経痛の知識は有意に増加した.一般に,同一質問紙を用いた調査は,テスティングなど変数に影響を与えると言われている(Polit & Beck, 2004/2010).月経痛の知識尺度は正誤を問う試験を連想させる質問紙で,3回分の質問紙をあらかじめ配布しているため調べることが可能であり,対照群も月経痛の知識得点が徐々に増加したと考えられる.しかし,対照群の月経痛対処の考え方は変化せず,月経痛の軽減や月経痛のコントロールはできなかった.月経痛は女性の知識不足や社会の理解不足で適切な処置が行われていないために生じる健康問題であり(厚生省児童家庭局母子保健課,1999),教育プログラムに知識提供は必要であるが(Chiou et al., 2007),セルフケアに必要な目標の指向性となる動機づけがなければセルフケアに至らないと考える(Orem, 2001b/2005).

MDQ痛みだけではなくMDQ集中力とコントロールが有意に低下したのは,月経痛が軽減したことで痛みに随伴する症状のいくつかが軽減したと推測できる.しかし,他のMDQ下位領域に有意差がみられず,MDQコントロールについては有意に低下しても対照群の得点より高いことから,MDQ集中力とMDQコントロールを軽減できると断定するには,新たな研究が必要である.

一方で,介入群の月経痛レベルは有意に軽減したが消失しなかったため,日常生活行動の支障や社会生活への影響を軽減できなかった.62.1%の女子大生が過去1か月以内に,頭痛や腹痛等で月経痛以外にも日常的にVAS58.7(SD18.2)の痛みを経験している(今井ら,2007).介入群の終了時のVAS53.4(SD20.3)がこの日常経験する痛みと同レベルであることから,月経痛緩和レベルの目標値になっていると推測でき,調整目標の決定プロセスについては今後の課題である.

Ⅵ. 研究の限界と課題

大学をランダム割り付けできなかったため,年齢などの2群のベースラインに有意差が生じた.さらに,介入群においては月経痛のコントロールが難しい女子大生がプログラムの参加を希望したことも2群の相違の要因と考えられる.また,大学行事の変更などが理由で脱落者が想定以上であったこと,一般化されている測定用具が少なかったこと,有効回答率が低かったことが結果に影響を与える可能性が否めない.今後,本研究で得たデータを基盤にさらに教育プログラムを洗練し,十分な対象者数を確保し,ランダム化比較試験にて効果の検証を行う必要がある.

Ⅶ. 結論

Oremのセルフケア理論を基盤とした本教育プログラムは,動機づけ,知識の学習と活用,技能の維持と開発といったセルフケア学習(Orem, 2001b/2005)を通してセルフケア・エージェンシーの発達を促した.その結果,積極的に月経痛に対処しようという考え方に変化し,月経痛の正しい知識が増加し,セルフケアによって月経痛が軽減することで,セルフケア要件である月経痛をコントロールすることに関与した.したがって,本教育プログラムは,若年女性の月経痛コントロールを促進する可能性が示唆された.

謝辞:長期間の研究調査にご協力頂きました大学生の皆様に心より感謝申し上げます.研究許可ならびに調査への協力にご尽力くださいました大学の諸先生方,事務職員や関係者の皆様に感謝申し上げます.本研究において専門的なご指導を賜りました兵庫県立大学大学院看護学研究科工藤美子教授,山本あい子教授,片田範子教授,東邦大学大学院看護学研究科高木廣文教授,大阪大学大学院医学系研究科大橋一友教授に深謝申し上げます.本論文は兵庫県立大学大学院看護学研究科に提出した博士論文の一部を加筆・修正したもので,第4回世界看護科学学会(2015年10月)で発表した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

文献
 
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