日本看護科学会誌
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原著
救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度の開発
下地 智之, 豊里 竹彦, 眞榮城 千夏子, 平安名 由美子, 垣花 シゲ
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2017 年 37 巻 p. 437-445

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Abstract

目的:救急・集中治療領域における終末期治療の代理意思決定支援実践尺度を開発し信頼性および妥当性を検証する.

方法:尺度原案は文献検討および内容妥当性を検討し作成した.全国の救命救急センター病床/ICUにて,看護師473名に質問紙調査を実施した.項目分析,IT相関,GP分析,探索的因子分析,基準関連妥当性の検証,既知集団法,および再テスト法を行った.外的基準は看護師の倫理的行動尺度を用いた.

結果:探索的因子分析の結果,4因子18項目が抽出され,第1因子から順に【他職種連携】【代理意思決定の準備】【偏りのない姿勢と説明の確認】【代理意思決定を考える促し】と命名した.尺度全体のクロンバックαは0.89(下位因子0.74~0.84)であった.再テスト法の級内相関係数は0.71で,看護師の倫理的行動尺度との相関係数ρは0.54であった.資格および学習経験のある群が有意に高値であった.

結論:救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度の信頼性および妥当性が確認された.

Ⅰ. 緒言

救命救急センターおよび集中治療室(Intensive Care Unit,以下ICU)では,患者が意思伝達や判断能力が障害された状態にある場合が多い.家族または近親者に,患者の代理として治療についての決断が求められること(以下,代理意思決定)は少なくない.しかし,家族は,患者の突然の危機に動揺し混乱した状態にあり,病状説明を十分に理解している家族はその半数程度とされ(Azoulay et al., 2000),その中で患者の予後にかかわる重要な選択を余儀なくされる.このような状況を受け,米国では事前指示書の法制化が行われているが,日本ではそれについての法律や統一書式はなく(田中・前田,2014),事前指示書を作成している国民も約3%程度である(厚労省,2014).

終末期治療の代理意思決定に関わることは,死別後の家族の精神健康状態の悪化を招く可能性が高く(Azoulay et al., 2005;Pochard et al., 2005),看取りの過程で生じる出来事をどのように感じていたかがその心身の健康状態に影響を及ぼす(Marilyn et al., 2005).フランスでの無作為比較試験では,ICUで終末期治療の代理意思決定を行った家族の67%に不安症状,69%に心的外傷後ストレス障害の症状,56%に抑うつ症状を認め(Lautrette et al., 2007),34%が何らかの精神疾患基準を満たすとの報告がある(Mark et al., 2008).その要因として,医師からの不十分な情報提供や代理意思決定の主な役割を担うことが関与するとの報告がなされており(Pochard et al., 2005;Lautrette & Azoulay, 2010),急な看取りの多い救急・集中治療領域において,終末期治療の代理意思決定に関する家族支援は極めて重要な課題である.

代理意思決定支援の現状について,海外では終末期治療の意思決定モデルであるShared Decision Making(共有意思決定モデル)が注目され,救急・集中治療領域においても支持が得られている(Davidson et al., 2007;White et al., 2007).その支援の効果については,カンファレンス中に家族がより多く話すことで,ICU退出後の家族の罪責感や精神健康状態の悪化が緩和されるという結果が得られている(Lautrette et al., 2007).一方,我が国の救急・集中治療領域では,現在のガイドラインに,終末期治療の代理意思決定を行う家族への説明手順や治療の選択を行う際の具体的な支援方法は示されていない(日集医,2011;日集医,2014).また,救急・集中治療領域の現状として,患者の救命最優先となるため家族に関わる時間が十分に取れない状況や,動揺した家族に関わる困難感が指摘されており(伊勢田・井上,2003;木下・百田,2012),看護師は代理意思決定に関する家族支援の必要性を認識しているものの,限られた時間の中どのように関わるべきか葛藤している(上澤・中村,2013).これは,代理意思決定を行う家族支援について具体的な役割やあり方の明確な指針がないことなどが影響していると考えられ(中村ら,2009),実際,臨床の現場では,家族支援に対する適切な評価がなされないため,看護師の自恃に結びつかない状況にあり(木下・百田,2012),根拠の示された支援方法とその評価方法を確立することが求められている.

そこで本研究では,救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援の実践尺度を開発し,尺度の信頼性および妥当性を検証することを目的とする.

Ⅱ. 用語の定義

「救急・集中治療における終末期」とは,急性重症患者に対し適切な治療を尽くしても救命の見込みがないと判断される時期とした(日集医,2014).

「代理意思決定」とは,意識の低下・消失など何らかの理由により患者自身が意思決定できない場合に,その患者をよく知る家族や近親者が治療選択の意思決定を行うこととした(上澤・中村,2013).

Ⅲ. 研究方法

1. 尺度原案の作成

救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援について,医学中央雑誌(2000~2014年)およびPubMed(2000~2014年)をデータベースとして用いて検索した.構成概念の仮説枠組みとして,代理意思決定促進のための5つの方法(White, 2011)を基に,意思決定モデル(Thompson & Thompson, 2004),我が国のガイドライン(日集医,2011;日集医,2014),と5ステップアプローチVALUE(Lautrette et al., 2007)を参考に,【代理意思決定者の準備調整】【情報提供のための支援】【患者/家族の要望を引き出す支援】【代理意思決定者への精神的支援】【他職種との連携】の5つで構成した.さらにその他の計41の文献から,代理意志決定支援について説明されており解釈が可能な内容を収集し,尺度作成に精通した研究者とともに意味内容の共通しているものをまとめ質問項目を作成した.その後,内容妥当性確保のため,急性重症看護専門看護師および集中ケア/救急看護認定看護師3名に,各質問内容が妥当であるか,その他にも臨床上必須の内容はないか,表現の明確さや回答のしやすさ等について聞き取り調査を行い,さらに,救命救急病棟/ICU看護師52名に質問紙を回答してもらい,質問項目の選定や質問文の修正を行った.それにより,60項目からなる「救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度」の原案を作成した.各質問項目は4件法のリッカートスケールとし,「している:4点」「時々している:3点」「あまりしていない:2点」「していない:1点」でそれぞれ点数化した.

2. 予備調査

全国の日本救急医学会認定の救命救急センターを有する病院275施設から,50施設を無作為に選び,同意が得られた16施設のICU,救命救急病棟,および救命救急ICU看護師に対して質問紙調査を行った.対象は,看護師経験3年以上であり,重症患者の終末期治療の代理意思決定を行った家族と関わった経験がある者とした.243人の有効回答に対する項目分析や因子分析の結果,尺度原案60項目の内,選定した22項目を本調査の質問項目とした.

3. 本調査

1) 対象者

全国の日本救急医学会認定の救命救急センターを有する病院275施設から,予備調査と異なる50施設を無作為に選び19施設から同意が得られた.対象は,ICU,救命救急病棟,および救命救急ICUに所属する看護師で,重症患者の終末期治療の代理意思決定を行った家族と関わった経験があり,看護師経験3年以上の看護師473名である.

2) 調査方法

同意の得られた施設の担当者に,対象看護師への調査方法説明文書と質問紙の配布,回収および郵送の協力を依頼した.調査は,2016年4月に自記式質問紙調査による横断調査を行った.再現性を確認するため,約2週間の期間をあけて再テストを実施した.

3) 調査内容

基本属性として,年齢,性別,看護師経験年数,救急・集中治療領域経験年数,役職や専門・認定看護師資格の有無などについて設問した.また,予備調査で選定した22項目を無作為に配列した.外的基準として,代理意思決定支援のためには倫理的視点が必要と考えられるため「看護師の倫理的行動尺度(大出,2014)」を用いた.倫理的行動尺度は大出によって作成され,信頼性と妥当性が確認されている.内容は「自律尊重」「公正」「無危害善行」のそれぞれ独立した尺度で構成されており,そのうち自律をくみ取り,尊重し,その自律を支援する介入を示す「自律尊重」を使用した.また,既知集団法検証のため,重症患者家族支援や代理意思決定支援の学習経験についても設問した.

4) 分析方法

(1) 有効回答の選定

欠損値のある対象者に対してはリストワイズ法を用いて除外した.同一の選択肢を約90%以上選び,かつ逆転項目の前後で同一の番号を選択し,明らかに偏った回答を認めた対象者は除外した.

(2) 項目分析

項目分析では,天井効果(平均+標準偏差>4)や床効果(平均-標準偏差<1)を認めた質問項目は,歪度,尖度も加味し除外した.また,10%以上の欠損値のある質問項目は除外した.Spearmanの相関係数による項目間相関,IT相関において,それぞれρ = 0.7以上,ρ = 0.4未満の項目を除外した.GP(Good-Poor)分析をt検定にて行い,本尺度得点の25%上位群と25%下位群の平均値の差を比較した.標本妥当性を確認するため,KMO(Kaiser-Meyer-Olkin)0.80以上を指標の判定基準とした.

(3) 妥当性の検証

因子妥当性の検証のために,最尤法,プロマックス回転にて探索的因子分析を行い,因子負荷量0.40以上を示す質問項目を採用した.因子数の決定にはスクリープロットを用いた.基準関連妥当性の確認のため,本尺度との関連が予測される看護師の倫理的行動尺度得点と本尺度得点との相関を,Spearman相関係数にて検証し,判定基準をρ = 0.40以上0.70未満とした.また,「専門・認定看護師資格の有無」,「重症患者家族支援の学習経験」,および「代理意思決定支援の学習経験の有無」が代理意思決定支援の実践に相違をもたらす可能性が高いと考え既知集団法を行った(亀岡・舟島,2015;丸山ら,2011).それぞれの有無の群間差をt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いて検証した.

(4) 信頼性の検証

内的整合性の確認のため,尺度全体と各下位因子のクロンバックα係数を算出し,再テスト法では,級内相関係数を算出した.いずれも判定基準を0.70以上とした.

4. 倫理的配慮

調査は匿名とし,調査の協力と拒否の自由,プライバシー保護のための対策,再テストでの連結可能匿名化,データの取り扱いと破棄,研究成果の学会等での報告などについて書面にて明示し,質問紙の回答をもって同意を得たこととした.本研究は,琉球大学臨床研究倫理審査委員会(承認番号:842)の承認を得て行った.

Ⅳ. 結果

1. 最終分析対象の選定

同意の得られた19施設473人中,269人から回答を得た(回収率56.9%).そのうち,有効な回答でなかった対象者12人を除外し,257人が最終分析対象者となった(有効回答率54.3%).

2. 基本属性(表1)
表1 基本属性(本調査および再テスト) n(%)
本調査 再テスト
性別 男性 50(19.4) 23(17.0)
女性 203(79.0) 110(81.5)
年齢 20代 90(35.0) 39(28.9)
30代 110(42.8) 65(48.1)
40代 52(20.2) 30(22.2)
50代 1(0.4) 0(0)
役職 役職なし 205(79.7) 109(80.7)
師長 3(1.2) 1(0.7)
師長以外の役職(副師長・主任など) 41(16.0) 22(16.3)
資格 認定看護師 11(4.3) 6(4.4)
専門看護師 2(0.8) 1(0.7)
看護経験年数(年)平均±標準偏差 11.3 ± 6.3 11.3 ± 5.8
重症患者家族支援の学習経験 あり 143(57.2)
なし 107(42.8)
代理意思決定家族支援の学習経験 あり 91(36.4)
なし 158(63.5)

(欠損値を除く)

性別は男性50人(19.4%),女性203人(79.0%)であり,年齢は30代が110人(42.8%),職位はスタッフ看護師が205人(79.7%)と最も多かった.資格の有無では,認定看護師が11人(4.3%),専門看護師が2人(0.8%)であった.看護師経験年数は,平均11.3年(標準偏差6.3年)であった.

3. 項目分析(表2)

各質問項目の欠損値は全て10%以下であり,欠損値が最も高い質問でも0.7%であった.天井効果,床効果,歪度,および尖度を検討した結果,22項目中4項目(表中太字で表示)を除外した.残り18項目の項目間相関はρ = 0.08~0.62(Spearman相関係数)で0.70以上を示す項目はなく,IT相関はρ = 0.41~0.68で0.40未満の項目はなかった.GP分析では,尺度得点上位25%群(n = 63)と下位25%群(n = 65)の平均値をt検定にて比較した結果,全質問項目および総得点で上位群の平均点が有意に高値であった.以上の手続きにより計4項目を除外し,選定された18項目を因子分析の対象とした.

表2 救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度の項目分析の結果
平均 標準偏差 歪度 尖度 IT相関
ρ値
GP分析
t値
1. 代理意思決定についての病状説明は,家族・近親者が複数で聞く必要があることを,前もって家族に説明している 2.6 1.0 0.0 –1.2 0.49*** –8.2***
2. 面会時,何か疑問は無いか家族に尋ねている 3.8 0.4 –2.2 4.3 0.41*** –6.0***
3. 病状説明に同席中,医療者が話すよりも家族の話す時間が増えるよう配慮している 2.7 0.9 0.1 –1.0 0.52*** –8.4***
4. 他職種と,終末期の重症患者家族への支援方法について話し合っている 2.5 0.9 –0.1 –0.7 0.67*** –12.4***
5. 家族が何を質問したいか,考えをまとめる手助けをしている 2.9 0.7 –0.2 –0.4 0.67*** –11.9***
6. 面会時,家族の要望を尋ねている 3.4 0.7 –0.9 0.5 0.53*** –9.6***
7. 代理意思決定を行うキーパーソンの精神的負担について,前もって家族に説明している 2.1 0.9 0.6 –0.4 0.67*** –11.5***
8. 病状説明に同席中,治療の選択肢それぞれのメリット/デメリットについて説明されているか確認している 2.9 0.9 –0.3 –0.9 0.56*** –11.0***
9. 代理意思決定では,キーパーソンのみが責任を負うのではなく,医療者および家族関係者全員で,責任を連帯することを家族に伝えている 2.3 1.0 0.2 –0.9 0.68*** –15.6***
10. 状況によっては,医療者側の考えを家族に提案することを,他職種と相談している 2.4 0.8 0.0 –0.6 0.65*** –11.7***
11. 病状説明に同席中,さらに説明が必要な内容があると考えた場合,医師に質問している 2.7 1.0 –0.3 –1.0 0.61*** –11.7***
12. 面会時,患者の要望について家族に尋ねている 3.3 0.7 –0.7 –0.3 0.66*** –14.1***
13. 代理意思決定の家族支援を行う際,個人的な考えと,看護職としての考えを区別している 3.1 0.9 –0.7 –0.4 0.48*** –8.6***
14. 病状説明に同席中,医療者の説明に強制感はないか確認している 3.1 0.9 –0.7 –0.2 0.56*** –9.6***
15. 代理意思決定の目標を前もって家族に説明している 1.9 0.8 0.6 –0.4 0.61*** –10.8***
16. 他職種と,家族の要望や価値感についての情報を共有している 2.7 0.9 –0.3 –0.6 0.59*** –9.0***
17. 家族自身の体調の変化はないか,家族に尋ねている 3.6 0.6 –1.8 3.7 0.39*** –6.2***
18. 病状説明に同席中,治療の選択肢それぞれの予後について説明されているか確認している 3.1 0.8 –0.6 –0.2 0.52*** –8.7***
19. 家族同士の話し合いの場に,医療者の参加が必要か家族に確認している 2.0 0.9 0.6 –0.6 0.62*** –10.9***
20. 他職種と,患者の要望や価値観についての情報を共有している 2.8 0.9 –0.4 –0.6 0.65*** –11.3***
21. 家族に動揺が見られる時,見守ったりそばに寄り添ったりしている 3.7 0.5 –1.7 3.0 0.37*** –5.3***
22. 他職種と,患者にとって何が最善か話し合っている 3.0 0.9 –0.6 –0.4 0.57*** –9.4***
GP分析尺度総得点 –31.6***

*** P < 0.001

表中の網掛けの項目は除外した項目

4. 妥当性の検証

スクリープロットにより因子数を4つに決定し,最尤法,プロマックス回転による探索的因子分析を行った結果(表3),因子負荷量0.40未満の項目はなく,4因子18項目(累積寄与率:48.4%,KMOの標本妥当性:0.89)から成る尺度を作成した.看護師の倫理行動尺度との相関係数はρ = 0.54であり,外的基準との適度な相関関係を認めた.既知集団法では,本尺度合計得点および下位尺度得点において,専門/認定看護師資格を有する者が有意に高値(Z = –3.12~–1.99, P < 0.05)であり,重症患者家族支援の学習経験および代理意思決定支援の学習経験を有する者が有意に高値(t = 5.4~3.6, P < 0.001)であった.

表3 救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度の探索的因子分析の結果
第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 共通性
第1因子【他職種連携】,クロンバックα = 0.84
22. 他職種と,患者にとって何が最善か話し合っている 0.82 0.01 0.04 –0.17 0.54
20. 他職種と,患者の要望や価値観についての情報を共有している 0.81 –0.12 –0.01 0.11 0.64
16. 他職種と,家族の要望や価値感についての情報を共有している 0.79 –0.06 –0.03 0.01 0.56
4. 他職種と,終末期の重症患者家族への支援方法について話し合っている 0.45 0.34 –0.07 0.04 0.50
10. 状況によっては,医療者側の考えを家族に提案することを,他職種と相談している 0.45 0.25 0.11 –0.01 0.47
第2因子【代理意思決定の準備】,クロンバックα = 0.79
7. 代理意思決定を行うキーパーソンの精神的負担について,前もって家族に説明している –0.04 0.90 –0.06 0.01 0.72
9. 代理意思決定では,キーパーソンのみが責任を負うのではなく,医療者および家族関係者全員で,責任を連帯することを家族に伝えている –0.02 0.72 0.09 0.02 0.59
15. 代理意思決定の目標を前もって家族に説明している 0.10 0.58 –0.02 0.08 0.48
1. 代理意思決定についての病状説明は,家族・近親者が複数で聞く必要があることを,前もって家族に説明している –0.06 0.58 0.05 –0.02 0.29
第3因子【偏りのない姿勢と説明の確認】,クロンバックα = 0.74
14. 病状説明に同席中,医療者の説明に強制感はないか確認している 0.05 –0.04 0.77 –0.03 0.58
13. 代理意思決定の家族支援を行う際,個人的な考えと,看護職としての考えを区別している 0.02 0.07 0.74 –0.18 0.46
8. 病状説明に同席中,治療の選択肢それぞれのメリット/デメリットについて説明されているか確認している –0.15 0.21 0.48 0.10 0.37
18. 病状説明に同席中,治療の選択肢それぞれの予後について説明されているか確認している 0.04 –0.13 0.48 0.26 0.37
第4因子【代理意思決定を考える促し】,クロンバックα = 0.76
3. 病状説明に同席中,医療者が話すよりも家族の話す時間が増えるよう配慮している –0.13 0.07 –0.12 0.70 0.36
11. 病状説明に同席中,さらに説明が必要な内容があると考えた場合,医師に質問している –0.05 –0.08 0.16 0.68 0.49
19. 家族同士の話し合いの場に,医療者の参加が必要か家族に確認している 0.18 0.04 –0.13 0.59 0.45
12. 面会時,患者の要望について家族に尋ねている 0.09 0.04 0.17 0.42 0.40
5. 家族が何を質問したいか,考えをまとめる手助けをしている 0.10 0.16 0.08 0.41 0.42
因子寄与率(%) 34.75 5.26 5.23 3.10
累積寄与率(%) 34.75 40.01 45.25 48.35
因子間相関 第1因子 0.61 0.49 0.64
第2因子 0.51 0.67
第3因子 0.60
尺度全体の信頼性係数クロンバックα 0.89

※最尤法,スクリープロット,プロマックス回転を用いた

5. 信頼性の検証

尺度全体および各下位因子のクロンバックα係数は,α = 0.74~0.89であり,高い内的整合性が確認された(表3).本尺度の再現性を確認するため,本調査で回答の得られた269人に再テストを行った結果,148人から回答が得られた(回収率55%),その内,有効な回答でなかった13人を除外し,135人が最終分析対象者となった(有効回答率50.2%).級内相関係数は0.71であり,再現性が確認された.

6. 因子の命名

第1因子は5項目から構成されており,他職種との情報共有や相談を表していることから【他職種連携】と命名した.第2因子は4項目から構成されており,主たる代理意思決定を担う家族への精神的負担の緩和を図るため,前もって代理意思決定のための準備を行う支援で構成されていることから【代理意思決定の準備】と命名した.第3因子は4項目から構成されており,看護職としての考えと個人的な考えを明確にし,強制感をあたえず偏りのない説明について確認する支援を表していることから,【偏りのない姿勢と説明の確認】と命名した.第4因子は5項目から構成されており,患者の要望を伺い,病状説明中の家族・医療者間のコミュニケーションの促進に努め,家族の考えをまとめる手助けをするなど,家族が代理意思決定について考え進めていけるような支援を表している.このことから【代理意思決定を考える促し】と命名した.尺度全体得点の平均は48.4(標準偏差9.6),各下位因子得点の平均は8.9~13.8(標準偏差2.6~3.4)であった(表4).

表4 救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度の尺度全体得点および各下位尺度得点の平均と標準偏差
平均 標準偏差
尺度全体 (18項目:range 18~72) 48.4 9.6
第1因子 他職種連携(5項目:range 5~20) 13.4 3.4
第2因子 代理意思決定の準備(4項目:range 4~16) 8.9 3.0
第3因子 偏りのない姿勢と説明の確認(4項目:range 4~16) 12.2 2.6
第4因子 代理意思決定を考える促し(5項目:range 5~20) 13.8 3.0

Ⅴ. 考察

1. 本尺度の妥当性と信頼性

因子負荷量や共通性の基準値を満たす4因子18項目が抽出され,既知集団法で,資格や学習経験を有する者の得点が有意に高値であることから一定の構成概念妥当性があると考える.また,外的基準である「看護師の倫理的行動尺度」との有意な相関が得られたことから基準関連妥当性の一つである併存的妥当性を確認した.ICUにおいて看護師がより良い代理意思決定を促進するための5つの方法(White, 2011)である,①代理人の役割についての家族への準備,②家族と多職種チームとの定期的会合の調整,③家族会合前の家族への準備,④会合中の促しと情緒的支援の実施,⑤会合後の話し合いへの参加,が挙げられている.これらを概観すると,項目内容,構成因子,およびその解釈など多くの部分で合致しており,代理意思決定の家族支援に対する本尺度の妥当性を支持するものであると考える.内的整合性および再現性においては,基準値以上の信頼性係数を認めたことから,本尺度の信頼性が確認された.

2. 本尺度の構成要素

第1因子の【他職種連携】は,集中治療領域の終末期患者の家族支援において,医療者の主観的偏りを減らし患者ニーズに焦点を当てるために重要視されており(Ho et al., 2005;Rose, 2011),先行研究でも家族支援の要素として取り上げられている(Davidson et al., 2007;木下,2011;Kryworuchko et al., 2013;吉田・中村,2014).我が国のガイドラインでも(日集医,2011;日集医,2014),救急・集中治療の終末期の対応は,主治医を含む複数の医師や看護師らからなる医療チームの総意が推奨されていることから,本尺度で抽出された【他職種連携】に属する内容は妥当であると考える.本尺度において【他職種連携】が最も高い因子寄与率を示した理由として,看護師は代理意思決定の場面で他職種の関わりが家族に与える影響を大きく捉え,高い価値を置いていることの表れと考える.現状では医師と看護師のみで関わることが多いなか,臨床心理士,医療社会福祉士およびスピリチュアルペインへの介入ができるスピリチュアルケアワーカーなど,状況に応じてそれぞれの職種が家族支援に関わることができるシステム構築への期待感の表れともいえる.第2因子の【代理意思決定の準備】は,家族の精神的負担の緩和を図り,家族内協力を促進させることにつながるため,終末期における代理意思決定支援を構成する因子として妥当であると考える.主たる代理意思決定者は,自らに委ねられた決断の是非を自問自答するとともに,その決断に対する他者の非難を懸念している(中村ら,2007).代理意思決定での家族内の意見の相違や主な役割を担うことは精神健康障害のリスク因子であり(立野ら,2011),医療者が家族に代理意思決定の目標,連帯責任および精神的負担について説明し,代理人としての役割に備えさせることや(Curtis & White, 2008;White, 2011),複数人の家族の参加を促すなど意見の相違を防ぐための調整行うこと(Clarke et al., 2003;山勢ら,2013)が推奨されている.第3因子の【偏りのない姿勢と説明の確認】は,看護師もしくは医療者としての代理意思決定支援に対する倫理的な考え方がその基となっている.日本看護協会の倫理綱領(日本看護協会,2003)では「あらゆる人がもつ健康で幸福でありたいというニーズに応え,健康の保持増進,疾病の予防,健康の回復,苦痛の緩和を行い,その人らしく生を全うできること」を看護の目的として挙げており,看護師はこの専門的価値観が無意識に働くほどに身に付けている.一方で「もし自分が,患者や家族と同じ状態ならどうしたいだろうか?」など患者・家族の立場になって考え,自らの個人的価値観に問うことも,看護師もしくは医療者なら無意識に行っている.この専門的価値観と個人的価値観を明確にし,自分が何に重きを置いているのか明確にすることは,医療者自身の安心,倫理的探究,および無意識下にある価値観を意識化させ,理にかなった専門的実践に繋げるために必要な要素とされている(Thompson & Thompson, 2004).また,治療選択の提示と,そのメリット/デメリットや予後について,強制感を与えず説明することは,家族が理解し判断できるために必要な支援であり(Clarke et al., 2003;Davidson et al., 2007;日集医,2011;Robert et al., 2008;White et al., 2007),不足または矛盾した説明による家族の不安やうつ,心的外傷後ストレス障害の兆候(Lautrette & Azoulay, 2010;Pochard et al., 2005)を防ぐ一助となる.以上のことから,第3因子に属する【偏りのない姿勢と説明の確認】に努める支援は,終末期における代理意思決定支援を構成する因子として妥当であると考える.第4因子の【代理意思決定を考える促し】は,家族が代理意思決定を集約できるように支援し,精神的ケアや満足の得られるケアを授受するために不可欠である.患者の要望や価値観に焦点を当てることが代理意思決定の目標であり原則だが(Curtis & White, 2008;清水,2016;White et al., 2007),重症患者を目の前にして動揺した家族は,無意識に自らの感情や価値観に流される恐れがある.家族に,患者自身が終末期治療に望むことや日々の生活で大切だと考えていたことなどを引き出し,家族が代理意思決定の目標に焦点を当てる機会をつくり,患者自身の要望が見逃されるリスクを防ぐ必要がある.また,病状説明中に,家族の話す時間が増えるよう支援すること,説明がさらに必要な内容について医師に質問することは不十分な情報提供を防ぎ(Pochard et al., 2005;Lautrette & Azoulay, 2010),家族満足度の増加や精神健康悪化の緩和につながる(Lautrette et al., 2007).

3. 本尺度の意義・実用性

救急・集中治療領域において,終末期治療の代理意思決定支援は十分に実践・評価されていない現状にある.救急・集中治療以外の領域では,臨床倫理検討システム開発プロジェクト(清水,2016)や生命維持治療に関する医師による指示書(Physician Orders for Life-sustaining. Treatment: POLST)(日倫学,2015)などで,終末期の代理意思決定を行う家族への説明,確認すべきことや関わり方などがより具体的に挙げられている.終末期における家族支援についての尺度(吉岡ら,2009)も存在するが,緩和ケア領域の内容であり代理意思決定に特化したものではなく,救急・集中治療領域での活用は難しい.本尺度は,その概念を測定するための新しい尺度であり,4因子18項目から成る汎用性の高い尺度であると考える.本尺度の活用としては,今回の調査で得られた尺度全体や各下位尺度の平均(表4)を全国基準として比較することで,自己評価ツールとしての使用や教育的介入効果検証として用いることができる.加えて,教育的介入前後それぞれで患者死別後の家族の変化も調査できるならば,代理意思決定支援が死別後の家族に与える影響についても検証できると考える.また,組織風土やソーシャルキャピタルなど,心理,社会や環境要因との関連を検討することで,代理意思決定支援の促進因子や阻害因子について検証できると考える.

4. 本研究の限界と今後の課題

本研究は,同意の得られた対象者に対し行われ,無作為選出ではないため,対象施設の偏りの影響は否めない.課題として,家族支援の効果についての検証や,支援の成果の評価方法について検討していく必要がある.また,代理意思決定支援に関連する因子を明らかにし,支援の向上に繋げる必要がある.

Ⅵ. 結語

今回,救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援の実践尺度の開発を行った.その結果【他職種連携】【代理意思決定の準備】【偏りのない姿勢と説明の確認】【代理意思決定を考える促し】の4因子18項目が抽出され,信頼性と妥当性が確認された.

謝辞:お忙しい中,本研究のアンケートにご協力してくださった施設の看護部長をはじめ,対象看護師の皆様,また,尺度の質問項目を作成するにあたり快くご協力頂いた看護師ならびに認定・専門看護師の皆様へ厚く感謝の意を申し上げます.

付記:本論文は,2016年度琉球大学大学院保健学研究科に提出した修士論文を加筆・修正したものである.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:TSは研究の着想から原稿作成のプロセス全体に貢献;TTは統計の解析および原稿への示唆;TM,YHは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言;SKは研究の着想およびデザインに貢献.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
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