日本看護科学会誌
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日本の看護系大学院におけるグローバル化の現状
成瀬 和子杉本 敬子柳澤 理子神原 咲子近藤 麻理近藤 暁子田代 順子南 裕子中山 洋子
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2019 年 39 巻 p. 254-260

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Abstract

目的:日本の看護系大学院のグローバル化推進のための基礎資料を作成するため,大学院のグローバル化状況調査をおこなった.

方法:2015年12月に修士課程を持つ156大学に無記名式調査票を郵送した.内容は①外国人教員・留学生の受入れ,②日本人大学院生の留学や海外研修,③教員の国際的研究や教育環境,などである.回答は記述的に分析した.本調査は,高知県立大学看護研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.

結果:回答のあった73校のうち72校を分析の対象とした.留学生受け入れは1~2割が実施,単位互換制度があるのは1校であった.また,海外の大学と積極的に交流しているのは半数にとどまった.教員は語学力や業務多忙のため,共同研究や国際学会参加は進んでいなかった.

結論:日本の看護系大学院ではグローバル化に向けた対応の重要性は認識され様々な試みがなされていたが,語学能力強化や海外研修の推進がさらに求められる.

Translated Abstract

Objectives: The study conducted to reveal the situation of the globalization in nursing graduate school in Japan that may contribute to promote globalization in it.

Methods: An anonymous questionnaire sent to the 156 graduate schools have a master course in December 2015. It contains (1) acceptance of foreign students and teachers, (2) study abroad and overseas training of Japanese students, (3) International research and educational circumstances of teachers, and others. Data were analyzed descriptively. Study approval was given by the Nursing Research Ethics Review Board of University of Kochi.

Result: Seventy-two out of 73 responses were analyzed. About ten to twenty percent of schools accepted foreign students, but only one school had a credit exchange system with overseas universities. In addition, only half were actively communicating with overseas universities. Faculty members did not progress in joint research and international conference participation because of their language skills and heavy workload.

Conclusion: In Japan’s nursing graduate schools, the importance of corresponding to globalization has widely been recognized, and various attempts have been made, but further strategies to enhance the faculty’s language ability and overseas experiences are required.

Ⅰ. 背景

近年の経済・社会の急激なグローバル化は教育にも影響を及ぼし,高等教育では国際社会に通用する人材の育成を求められている.2009年に出された中央教育審議会答申は,大学教育のグローバル化に積極的に取り組み,大学教育の構造転換を求めている(中央教育審議会大学分科会,2009).また,2012年に出された「グローバル人材育成戦略」では,大学教育の課題のひとつとして,「大学が,グローバル化時代に相応しく教育内容や教育方法を改善・充実し,国内外の学生にとって魅力ある国際的に誇れる大学教育システムを確立する」ことをあげている(グローバル人材育成推進会議,2012).これらの流れを受けて,2013年には教育再生実行会議の「これからの大学教育のあり方について(第三次提言)」(教育再生実行会議,2013)をはじめとする「日本再興戦略」(日本経済再生本部,2013),「教育振興基本計画」(文部科学省,2013)などの報告が出され,大学のグローバル化に対応した教育環境作りや人材育成の強化の必要性と取り組みを指し示している.

看護教育における,変動する国際社会に対する学習は,看護基礎教育の国際関係論や国際看護のなかでおこなわれることが多く,報告も学部教育における演習や海外研修,海外大学の視察がほとんどで(野地ら,2016宮津ら,2018Oshida & Sasaki, 2015戸田・丸光,2018),大学院教育におけるグローバル化に関連した報告はわずかである(長松ら,2018野地ら,2018).そこで日本看護科学学会国際活動推進委員会は,看護系大学院教育におけるグローバル化に焦点を当て,現状を明らかにするために調査をおこなった.

Ⅱ. 目的

日本の看護系大学院におけるグローバル化の実情と対応を明らかにし,看護系大学院教育のグローバル化推進のための基礎資料を作ることを目的とした.

Ⅲ. 方法

2015年12月に全国の看護学専攻(修士課程)を設置する大学院156校に,無記名自記式調査票を郵送し回答を依頼した.調査票の内容は,大学院における①外国からの教員・留学生の状況,②日本人大学院生の留学や海外研修の推進,③教員の国際的な研究や教育環境,④授業方法や科目におけるグローバル化への対応,および回答者の属性についてである.調査期間は2015年12月~2016年2月であり,回答は記述的に分析をおこなった.本調査は高知県立大学看護研究倫理審査委員会の承認(看研倫15-49号)を得て実施した.

Ⅳ. 結果

1. 回答者の属性

質問票を郵送した156校中73校より回答があり(回収率46.8%),そのうち72校の回答を分析の対象とした(有効回答率98.6%).回答校の基本的属性を表1に示す.設置主体からみると,国立17校,公立23校,私立32校であった.設置年は2001年以降が4/3を占めており,その中で2011年以降に開設したのは16校であった.大学院を担当している看護系専任教員数は,0人(看護学科と兼務)から教授のみ10人,そして教授・准教授・講師・助教を含めて53人まで回答がばらついた.

表1 回答校の基本属性 N = 72
修士課程のみ(n = 34) 修士と博士課程(n = 38)
設置主体 国立 4 13
公立 10 13
私立 20 12
大学院看護系専任教員数(平均人数,n = 68) 教授 9.2
准教授 6.1
講師 3.0
助教 3.0

2. 外国からの留学生・教員の状況

大学院における留学生および外国人教員の受け入れは,表2に示す.修士課程で実際に留学生を受け入れていたのは8校(国立5,公立3),博士課程では7校(国立5,公立1,私立1)にとどまり,多くがアジア諸国からの留学生であった.留学生の入学試験は,留学生に配慮している大学は16校で,英語やスカイプなどによる遠隔による入試などは少なかった.

表2 外国からの留学生・教員の状況 N = 72
留学生数 修士課程(n = 72) 博士課程(n = 37)
1人 7* 6#
2人 0 1#
4人 1* 0
なし 59 28
無回答・その他 5 2
*中国,インドネシア,台湾,イラン #中国,インドネシア,台湾,ブラジル,タンザニア
入試での配慮(複数回答)
英語で実施 10
海外(現地)で実施 0
Skypeなどで実施 1
特別な選抜試験を実施 5
特別なことはなし 26
その他 7
無回答 28
外国からの教員数 常勤 非常勤 海外からの招聘
1–2人 6 6 7
3–4人 0 0 4
5人以上 0 0 1
なし 60 58 40
無回答 6 8 20
外国からの教員の担当科目 必修科目 選択科目
看護研究法(3),看護学方法論,広域看護学実習,Intensive English Study 国際保健医療協力論,国際コミュニケーション,国際看護学特論,看護研究方法論(2),英論文の書き方,英文献購読(2),専門看護師論

外国からの教員は常勤6校(人),非常勤6校(人)しか在籍がなく,そのうち常勤4校,非常勤5校が博士課程を持つ大学院であった.海外からの招聘による特別講演については12校が実施していると答えているが,年間の招聘人数はほとんどが1人であった.

3. 日本人大学院生の留学や海外研修の推進

大学で日本人学生の留学や海外研修は少しずつ広がっているものの,大学や学生間での交流はあまり進んでいなかった(表3).私立大学1校が,海外の大学と単位互換制度があると回答しているが,詳細は不明であった.海外の留学や短期研修への経済的支援があるのは23校(国立8,公立7,私立8)で,金額は1万円から全額までさまざまであった.

表3 日本人大学院生の留学や海外研修の推進 N = 72
あり なし 無回答
海外留学や研修の補助・奨励金 23 46 3
海外研修での単位取得科目  9 61 2
留学生や在日外国人との交流 17 52 3
WANSへの発表や参加の促進 16 54 2
国際的学会への発表者参加の促進 26 45 1
留学・海外研修の補助金額 5万円未満  3
5–10万円未満  5
10万円以上  6
その他  5
無回答  4
交流が盛んな大学数 0 14
1 17
2  8
3校以上  9
無回答 24

協定を結んでいる海外の大学のうち実際に交流を盛んにおこなっている大学の数は1~2校がほとんどであり,最多は7校であった.海外研修等で単位取得が可能であるのは9校のみであり,単位取得科目として国際看護関係科目のほかソーシャルワーク演習,保健学研究・教育実践といった科目があがった.

留学生や在日外国人との交流があるのは17校にすぎず,短期研修の受け入れや,学内や地域での催しへの参加等で交流がおこなわれていた.

国際学会への参加や発表の推進については,一般的なアナウンスのほか,「該当者に個別に勧める」「指導教授により共同研究成果の一部を発表」という大学院生個人への働きかけ,そして費用助成をおこなっており,費用助成をしている4校はすべて博士課程を持つ大学院であった.

4. 大学院に関係する教員の国際的な研究環境

教員の国際的な研究活動の現状は,研究を世界に発信するため国際学会参加は推進されていたが,そのための支援は薄かった.また海外の研究や教育に関与している教員はわずかであった(表4).

表4 大学院教員の国際的な研究環境 N = 72
積極的に進めている 特に進めていない 進めているが思うように進まない
海外の大学・研究機関との共同研究の推進 13 43 16
国際的学会での発表や参加の推進(複数回答) 41 25  8
WANSや他の国際学会での発表や参加の促進方法 メール配信,ポスター掲示,公休,渡航費助成,自由意志尊重,本人次第など
あり なし その他・無回答
海外の大学院の客員教授あるいは授業をしている教員  5 65  2
海外の大学院で論文審査をしている教員  2 69  1
国際的学会参加の補助や奨励金 26 43  3
補助金額n = 26 10万円未満  4
10–20万円未満  5
20–30万円未満  4
30万円以上  2
実費  2
その他  7
無回答  2
研究専念期間を保障する制度(複数回答) あり 29
制度はあるが利用できていない 16
大いに利用している  2
利用している人もいるが少ない  7
その他  2
無回答  2
なし 42
無回答  1
FD推進のなかに国際的な内容が含まれている(複数回答) 学部のFDに含まれている 26
大学院のためのFDに含まれている  6
現在検討中  8
特に含まれていない 37
無回答  1

海外の大学や研究機関との共同研究を積極的に進めているのは13校(国立6,公立3,私立4),特に進めていない43校,進めているが思うように進まない16校であった.思うように進まない原因として教員の語学力不足,業務多忙のほかに,「提携校と安定的につながる窓口」「具体的方略,具体的支援システムがない」という,共同研究推進のためのシステムがないことも指摘された.国際学会での発表や参加については,積極的に進めているのが41校(国立14,公立11,私立16)で特に国立大学で推進されていた.進まない理由として,実習などの時間割や,業務が多忙,語学力不足が出された.国際的な学会で発表や参加をする際の教員への経済的援助は26校でおこなわれていたが,上限を設けている大学が多く,最低額は5万円が2校(国立・私立各1),最大額50万円で大学間の差が大きかった.

海外の大学で客員教授あるいは授業をしている教員がいる大学は5校,論文審査をしている教員がいる大学院は2校と,海外の大学院教育に関与している教員はわずかであった.サバティカルなど,教員が研究に専念できる期間を保障する制度は29校(国立8,公立10,私立11)にあったが,その半数以上が実際に利用できていなかった.

FDを推進するなかで国際的な内容を取り上げていたのは学部が多く,大学院のFDではほとんど取り上げられていなかった.

5. 授業方法や科目におけるグローバル化への対応

大学院教育におけるグローバル化への対処は大学によって大きな差がみられた(表5).英語で受講できる科目があるのは17校(うち修士課程のみ5校)で,科目の内訳は,看護学専門科目であるのが6校,大学院共通科目が7校,その他2校であった.英語の学位論文作成を指導しているのが25校(うち修士課程のみ8校)で,すべての院生が英語で作成しているのは国立大学2校のみで一部の院生が英語で作成しているのが16校,その他として「修士論文は自由だが博士論文は英文で提出」という大学や「主論文は英語原著1本以上必須,学位論文は日本語・英語を問わない」という大学もあった.

表5 授業方法や科目におけるグローバル化への対応 N = 72
英語で受講できる科目 あり 17
看護学専門科目  6 (複数回答)
大学院共通科目  7
その他  2
無回答  2
なし 54
無回答  1
英語での学位論文作成指導 している 25
すべての院生  2 (複数回答)
一部の院生 17
留学生のみ  5
その他  2
していない 46
無回答  1
グローバルな視点を養える科目 あり 34
国際看護学,国際保健学特論,国際協力特論,看護政策論,英書講読,ヘルスサイエンス論,など
なし 35
無回答  3

看護のグローバルな視点を養える科目があるのは34校で,多くが国際看護,国際保健,国際協力や国際関係に関する科目であった.

6. 大学院の現状とグローバル化

大学院教育におけるグローバル化について意見を求めたところ,グローバル化の重要性は認識しているものの,様々な問題に直面し,なかなか推進できない現状がみられた(表6).「日本の看護実践や研究成果を海外に発信していくことが必要」「多様化,高度化,複雑化する看護ニーズを適確に捉え,グローバルに活躍できる人材育成という大学院の使命を果たす必要性」を実感するなど,大学院教育のグローバル化への認識は高まっているものの,実際には教員は大学院専任ではなく業務が多忙であること,看護系教員の英語の能力が低いこと,教員の欠員や院生の定員割れなど大学院教育の質と量の低下など様々な問題を抱えているため,教育のグローバル化にまで手が回らない,という回答も多くみられた.また,看護系大学院では多くの院生が仕事をしながら学んでいるため時間の捻出に苦労し,グローバル化は優先順位が低い,という指摘もあった.

表6 大学院教育におけるグローバル化への意見
・日本の看護実践や研究成果を海外に発信していくことが必要と考えている.
・多様化・高度化・複雑化する看護ニーズを的確に捉え,グローバルに活躍できる人材育成という大学院の使命を果たしていくためには,本学の教育理念・教育目標に照らして,教育課程・教育方法等の更なる充実・改善が必要と考える.
・グローバル化には語学力,特に英語力が必須であるが,看護系教員の平均的英語能力は低い.低い英語力をあげたいが学部教育に時間と労力がかかり,英語を勉強し,研究結果を英語で書く余裕はほとんどない.グローバル化には教員数を増やし一人一人が英語の学習や研究に使える時間を増やすことが必要である.
・グローバル化はとても必要だと感じているが,教員不足や予算が少なく,科目を入れることができない状況である.
・社会人を対象としているので,グローバル化は優先順位が低い.
・グローバル化は設置主体の県からも求められていることであるが,大学の規模も小さく,院生への教育までは行えていないのが現状である.小規模大学,単科大学では,大学間相互の連携や情報交換の場があってもよい.
・中国・台湾からの学生が入学を希望してくる.受験資格に日本の看護師免許を前提としているので,却下しているが,規則改定を考えている.
・国際化に対応できる科目や機会を意図的に設定する必要性を痛感している.現在,現行カリキュラムを検討している.
・文献を読むことは院生は沢山するので,各々の分野で世界の動きを知ることを積極的にすることは努力できる.
・科目でうんぬんというよりは,発展・交流の機会,研修,留学の後押しをし,それを踏まえて各専門領域で推進できればよいのではないかと考える.

Ⅴ. 考察

看護系大学院は,修士課程は1997年以降,博士課程は2003年以降急激に増加し,2019年現在では大学院180校中半数以上の99校が博士課程を設置しており,定員は修士課程2722人,博士課程625人と多くの研究者を養成する体制ができている(文部科学省,2019).しかし,2015年末ではその教育におけるグローバル化はあまり進んでいない実態が明らかになった.留学生や外国の教員が在籍している大学は約1割しかなく,海外からの招聘講演も17%の大学が開催と,国外からの人材の受入れは少ない.国外に出て行くことについては,単位互換制度がある大学院は1校のみ,海外研修で単位取得が可能なのが9校と少ないが,大学間の交流は半数以上の大学が交流相手を持ち,特に博士課程では70%が交流相手をもっていた.このような状況で,大学院生や研究者の国内外の往来は細々とおこなわれており,大学はグローバル化に関する科目や海外研修を設置する,総合大学では他学部の留学生との交流を図るなどして,グローバル化への対応を工夫していた.

今回の調査であげられた日本の看護系大学院におけるグローバル化の推進の課題を,大学,大学院生・教員の別で考えてみると,大学側の要因には,外国の教員の採用,海外研究者の招聘や海外研修への補助など,教育研究活動のグローバル化にかかわる経済的困難,教育・指導する教員の語学力の問題,開設から間もない,あるいは博士課程開設が優先事項などの組織体制の問題,があった.これらの課題に対しては,大学の教育理念や方針に大学院のグローバル化の位置づけを明確にして,推進していくことが必要である.

大学院生・教員側の要因として,看護基礎教育やそれ以前の基礎教育における語学教育の不足,パートタイムの大学院生が多いため海外研修や国際学会への参加が容易ではないこと,またそれにかかる経済的問題を抱えていること,があげられる.大学院において英語能力を強化するような科目の設定や,大学院生の国際学会参加などへの経済的支援も求められるが,加えて海外研修時の休暇取得などの所属先から職務免除が得やすい環境づくりも必要である.

日本在住外国人が195か国273万人(法務省,2019)にのぼる現在,看護も多文化社会に合わせたサービスが必要であり,多文化に適応した理論やケアの開発も求められる.日本語で高等教育が実施され,看護の役割に生活援助が含まれる日本は,多文化社会に合わせた看護教育のグローバル化やケアのグローバル化の必要性(Baumann & Blythe, 2008Ergin & Akin, 2017)について,もっと認識する必要がある.たとえば,社会のスピリチュアルへルスやエンドオブライフケアなどに焦点を当てた研究の推進や発信,IT機器を使用した遠隔授業などをとおして知識の伝達や多文化から価値を学ぶ(Ergin & Akin, 2017)ことは,これからの日本にとっても重要である.さらに,海外からの留学生に加え,外国で看護基礎教育を受け日本で働く看護師が,日本の看護系大学院に進学するケースも今後増えてくると予測され,グローバルなリーダーを育てる役割の重要性も増してくる.しかしながら,単科や小規模大学が多い看護系大学院では,グローバル化を推進することは困難が伴う.Turale et al.(2009)は,博士号を持つ看護教員に調査を実施し,日本の看護の教育組織では,教員組織の安定した調和を保つために,新しい試みに取り組むことは敬遠されがちであること,また総合大学では,看護教員が独自に看護教育の方針を決定できる立場に置かれていないことなど,日本の看護教育の現状の問題を述べている.

このような状況で,大学院のグローバル化を推進するには,教員のみならず大学院生も含めた語学能力の強化や海外研修の機会を持つことを,もっと推進することが必要であろう.Ali Zeilani et al.(2011)は,教員自身の海外経験が,グローバルリーダーシップの教育に有効であることを述べている.経済的なハードルや教員の語学力の問題だけでなく,看護教員の海外研修を推進するなど,教員自身へのグローバルリーダーシップ教育を含めたファカルティデベロプメントへの対策も必要であろう.加えて,大学の特性を踏まえた海外研修の単位換算などの柔軟なカリキュラムと英語力のある教員配置,教員の研究活動の経済的・時間的保証制度の導入が望まれる.

同時に,日本看護科学学会や看護系大学協議会などの組織が,看護系大学院の連携や情報交換,さらなる教員の能力強化の支援を継続していくことが大切である.

Ⅵ. 結論

本研究の結果より,日本の看護系大学院では,グローバル化に向けた対応の重要性は認識され様々な試みがなされているが,大学,教員,大学院生それぞれの要因によってなかなか推進が難しいという現状が確認された.今後,語学力のある教員や財政的確保を含めた,研究・教育環境の充実が,看護系大学院に求められる.

付記:本研究は,日本看護科学学会国際活動推進委員会の活動の一環として実施された.

謝辞:本研究実施にあたり,調査にご協力頂きました看護系大学院の教職員の皆様に深謝致します.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:HMは研究の着想への助言:AKおよびとJTは研究の着想およびデザインに貢献:MKは調査のデザインに貢献:SKおよびSYは結果の確認:KSは草稿作成発表:KNは結果の確認と論文執筆をおこなった.YNは研究プロセス全体への助言および原稿への示唆をおこなった.すべての著者は最終原稿を読み承認した.

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