目的:看護師の診療看護師(以下,NP)への認知度と期待,NPを志望する看護師の潜在状況を明らかにすることとする.
方法:東京都目黒区内の病院,診療所,介護施設,訪問看護ステーションに勤務する看護師を対象に,NPの認知度,期待,関心に関する横断的調査をWebアンケートにて実施した.
結果:110施設へ計818部の研究資料を配布し72件の回答を得た.多重ロジスティック回帰分析では,所属施設にNPが在籍する看護師は,在籍しない看護師よりNPの認知度(オッズ比61.62,p < 0.01)及び期待(オッズ比9.219,p < 0.05)が高かった.一方で,NPを志望する看護師は13.9%に留まった.
結論:より多くの施設にNPを在籍させることは,NPの認知度と期待を高める.
Objective: The purpose of this study is to identify the recognition and expectation of nurses for Nurse Practitioners (NPs), the potential situation of nurses who want to become NPs, and to examine the issues for the future development of NPs.
Method: A cross-sectional survey on recognition, expectation and interest in becoming NPs was conducted online; its targeted respondents were nurses who worked at hospitals, clinics, nursing homes, and visiting nursing stations in Meguro-ku, Tokyo.
Results: A total of 818 copies of research materials were mailed to 110 facilities; 72 responses were received.
Multiple logistic regression analysis revealed that nurses working in facilities with NPs had higher recognition (odds ratio 61.62, p < 0.01) and higher expectation (odds ratio 9.219, p < 0.05) of the profession than those working in facilities without NPs. On the other hand, only 13.9% of nurses potentially aspired to become NPs.
Conclusion: Recognition and expectation of NPs should be enhanced by enrolling them in as many facilities as possible.
2014年,保健師助産師看護師法(以下保助看法という)が改正された.看護師の業務に踏み込んだ改正は,昭和23年に保助看法が制定されて以来初めてである.日本における診療看護師(以下,NP)の養成は,「特定行為に係る看護師の研修制度」導入に先立って,2008年に開始された.NPは,臨床現場で患者の「症状マネジメント」が効果的,効率的かつタイムリーに実施でき,チーム医療のキーパーソンとしての役割を果たすための能力を習得することを目指し養成されている(草間,2012;藤内・山西,2015).2015年には「特定行為に係る看護師の研修制度」が施行され,限定的ではあるが看護師の役割拡大が制度的に認められた.厚生労働省(2017)が2017年4月に公表した「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」では,「今後のニーズの高まりと実践の蓄積に合わせて,まずは特定行為研修制度の養成数を増やすべく,研修制度の現場の認知度の向上や,より受講しやすいような研修方法・体制の見直しを進めていくべきである.併せて,研修制度の対象となる医行為について,安全性と効率性を踏まえながら拡大し,このような業務を行う能力を持つ人材(例えば「診療看護師」(仮称))を養成していく必要がある.」と提言している.
NPは,養成開始から10年を迎えており,その活動は数々の学会や雑誌などで報告されている.草間(2014)は,活動を通して,実績をつくり,それを国民や患者にわかってもらうことの必要性を述べており,実際に,クリティカル領域とプライマリ領域それぞれにおけるNPの活動実績の報告(塩月,2014;忠,2014)や,患者とその家族からも医師には遠慮して聞くことができない病気や治療についての説明が聞けるといった理由から満足度を向上する可能性が示唆されていること(本田,2017),そして,医師からは,「医師にしかできない治療や処置に集中できる」という意見や,看護師からは,「病態や治療方針などについて聞きやすい」という意見など(石原,2014),患者や多職種からの評価を得られてきている.しかし,川本・山田(2015)は,NPの実践におけるアウトカムは定性的な評価が多く,定量的な評価を社会に提示していく必要性があると述べている.また,NPは法制化されておらず,社会的認知も低い状態である中で,NPの活動が実を結び,他職種から認知されるようになり,期待を持たれるようになったとも述べている(川本・山田,2015).
2009年,関東地方にある1大学病院で働く20歳代,30歳代の看護職者(救急病棟・手術室・ICU/CCU勤務)121名を対象に,NPに関する認識を明らかにすることを目的とした研究が行われている(伊原ら,2010).NPは,米国で1960年頃より誕生しているが,この調査は日本にNPが存在していない時に行われており,日本におけるNP養成開始後の広域な認知度調査は実施されておらず,NPへの期待やNPを志望する看護師の潜在状況についても明らかとなっていない.
NPを志望する看護師の潜在状況を明らかにするためには,今後NPを志す可能性が高いと思われる臨床で働く看護師を対象に調査することが適切と考えた.また,看護師が現状のNPをどのように捉えているかを知ることは,NPの今後の発展に向けた課題を検討するにあたり有用である.更に,地域・在宅からのニーズも明らかにするべく,病院のみでなく,診療所や介護施設,訪問看護ステーションも調査の対象とする必要がある.また,様々なタイプの施設が同一地域の中に存在する地域の看護師を対象にアンケート調査を行うことで,NPの認知度と期待を明らかすることを目的とした.
本調査では,NPを「日本 NP 教育大学院協議会が認める大学院修士課程NP教育課程を修了し,同協議会が実施した資格試験に合格し,改正された保助看法に基づく,全ての特定行為を医師の手順書に基づき実施できる看護師」と定義した(日本NP教育大学院協議会,2018).
横断的調査研究
2. 調査期間2018年1月~3月
3. 対象NPを養成している大学院とNPが在籍する施設を併せ持つ東京都目黒区内の看護師が就業する施設(病院,歯科診療所を除く診療所,介護施設,訪問看護ステーション)に勤務する看護師を対象とした.
4. データ収集方法対象が就業する施設は,病院と診療所を「目黒区くらしのガイド」より,介護施設と訪問看護ステーションを「ハートページ目黒区介護保険総合案内・介護サービス事業所リスト」より抽出した.研究責任者が,研究目的・趣旨,倫理的配慮を対象施設の責任者へ電話にて説明し,研究書類郵送の許可が得られた施設へ研究協力依頼書,無記名方式のWebアンケート調査ページへアクセスできるQRコードを添付したリーフレットを郵送した.
5. 質問項目質問紙は,GoogleフォームにてWebアンケート調査ページを作成した.病院若手看護職者を対象とした看護職の裁量権拡大に関するアンケート調査結果(伊原ら,2010)と日本版ナースプラクティショナー(NP)に関する当院外科系看護師の意識調査(山田ら,2010)の調査内容・調査結果を参考に独自にて作成し,妥当性を高めるために,NPに関する看護学研究における専門家の意見を取り入れ加筆修正した.
調査内容は,基本的属性:2項目,所属施設概要:3項目,看護師背景について:4項目,NPの認知について:3項目,NPへの期待とNPへの関心について:6項目,意見(自由記載):1項目の計19項目とした.NPの認知度に関しては,「よく知っている」,「名前は知っているが詳しいことはわからない」,「知っていなかった」の3つの選択肢で質問した.NPへの期待に関しては,日本の医療に「NPは必要である」,「わからない」,「NPは必要ではない」の3つの選択肢で質問した.NPへの関心については,「NPになることに興味がある」,「わからない」,「NPになることに興味がない」の3つの選択肢で質問した.
6. データ分析方法統計解析ソフトSPSS Statistics 23を使用し,NPの認知度・期待・関心の3つの関連要因を単変量解析(カイ2乗検定,Fisherの直接確率検定のいずれか)で分析した.次に,NPの認知度・期待・関心の3つを従属変数,単変量解析にて有意差を認めた所属施設と所属施設におけるNPの在籍有無を2値化した上で独立変数として,JMP Pro 12を使用し,多重ロジスティック回帰分析を実施した.有意水準は5%とした.
7. 倫理的配慮東京医療保健大学のヒトに関する研究倫理委員会の承認(院29-30)を得て実施した.調査は無記名で行い,Webアンケート調査の回答をもって研究協力への同意とみなした.
東京都目黒区内の病院9施設,歯科診療所を除く診療所274施設,介護施設23施設,訪問看護ステーション31施設の計337施設へ電話し,内110施設より研究資料の郵送許可が得られ(図1),計818部(689部/病院6施設,76部/診療所75施設,44部/訪問看護ステーション22施設,9部/介護施設7施設)を郵送した.その結果,72件の回答が得られ,有効回答数は72件(100%)であった.

研究協力電話依頼施設件数と研究資料郵送施設件数
病院に関しては,病院9施設へ電話し,6施設より研究書類の郵送を許可された.郵送を断られた理由は,「研究協力はお断りしている」等であった.研究書類郵送後に改めて連絡を頂けることになっていた3施設に限りはがきを郵送し,研究協力の諾否を確認した.内2施設より研究協力が得られた.研究書類を郵送した病院から得られた回答は56件であった.
診療所に関しては,歯科診療所を除く診療所287施設へ電話し,内274施設と連絡が取れた.連絡が取れた274施設の内,75施設より研究書類の郵送を許可された.郵送を断られた理由は,「看護師を雇用していない」,「研究協力はお断りしている」等であった.また,「Webアンケートでの回答は困難である」,「診療所にNPは必要ない」との意見も聞かれた.研究資料を郵送した診療所から得られた回答は4件であった.
介護施設に関しては,特別養護老人ホーム6施設,老人保健施設2施設,有料老人ホーム15施設へ電話し,特別養護老人ホーム4施設,老人保健施設1施設,有料老人ホーム2施設より研究書類の郵送を許可された.郵送を断られた理由は,「多忙であり回答する時間的余裕がない」,「看護師が不足している状況であり協力できない」等であった.研究資料を郵送した介護施設から得られた回答は3件であった.
訪問看護ステーションに関しては,訪問看護ステーション32施設へ電話し,内31施設と連絡が取れた.連絡が取れた31施設の内,22施設より研究書類の郵送を許可された.郵送を断られた理由は,「多忙であり回答する時間的余裕がない」が多く,「Webアンケートでの回答は困難である」,「訪問看護ステーションにNPは必要ない」との意見も聞かれた.研究資料を郵送した訪問看護ステーションから得られた回答は9件であった.
2. 基本属性東京都目黒区にある病院,診療所,介護施設,訪問看護ステーションに勤務する20歳代から50歳代の男性看護師5名,女性看護師67名からの回答を得た.そのうち38名(52.8%)はNPが在籍する施設で勤務していた.詳細は表1に示す.
| n(%) | ||
|---|---|---|
| 性別 | 男性 | 5(6.9) |
| 女性 | 67(93.1) | |
| 年齢 | 20歳代 | 18(25) |
| 30歳代 | 29(40.3) | |
| 40歳代 | 18(25) | |
| 50歳代 | 7(9.7) | |
| 所属施設 | 病院 | 56(77.8) |
| 診療所 | 4(5.6) | |
| 介護施設 | 3(4.2) | |
| 訪問看護ステーション | 9(12.5) | |
| 最終学歴 | 専修・各種学校 | 49(68.1) |
| 短期大学 | 1(1.4) | |
| 大学 | 19(26.4) | |
| 大学院 | 3(4.2) | |
| 実務経験年数 | 1~5年 | 16(22.2) |
| 6~10年 | 11(15.3) | |
| 11~15年 | 17(23.6) | |
| 16~20年 | 10(13.9) | |
| 21~25年 | 9(12.5) | |
| 26~30年 | 5(6.9) | |
| 31~35年 | 3(4.2) | |
| 36~40年 | 1(1.4) | |
| 職位 | スタッフ | 51(72.9) |
| 病棟主任 | 2(2.9) | |
| 病棟副師長 | 8(11.4) | |
| 病棟師長 | 6(8.6) | |
| 看護部長 | 1(1.4) | |
| 管理者 | 2(2.9) | |
| 所属施設におけるNPの在籍有無 | NPが在籍する者 | 38(52.8) |
| NPが在籍しない者 | 27(37.5) | |
| わからないと回答した者 | 7(9.7) |
「よく知っている」と回答した者は27名(37.5%),「名前は知っているが詳しいことはわからない」と回答した者は32名(44.4%),「知っていなかった」と回答した者は13名(18.1%)であった.
NPを認知した理由として最も多いものは,「知人・同僚にNPがいる」であった(図2).

NPの認知経緯(複数回答)n = 59
「NPは必要である」と回答した者が41名(56.9%),「わからない」と回答した者が27名(37.5%),「NPは必要ではない」と回答した者は4名(5.6%)であった.
「NPは必要である」と考える最も多い理由は,「看護師が治療や臨床判断ができる状況が日常業務の中で多々あることも事実であるため」であった.「NPは必要でない」と考える最も多い理由は,「看護師は看護師として他にすべきことがあり,制度の導入は医師と看護師の役割がわからなくなるような気がするため」であった(図3).

NPが必要であると思う理由(n = 41複数回答)とNPが必要でないと思う理由(n = 4複数回答)
「NPになることに興味がある」と回答した者は10名(13.9%),「わからない」と回答した者は15名(20.8%),「NPになることに興味がない」と回答した者は47名(65.3%)であった.
「NPになることに興味がある」と回答した理由は,「知識を高めたい」が最も多く,「NPになることに興味がない」と回答した理由は,「責任が重そう」が最も多い結果となった(図4).

NPに関心がある理由(n = 10複数回答)とNPに関心がない理由(n = 47複数回答)
NPの認知度は,単変量解析にて「所属施設(病院かその他の診療所,介護施設,訪問看護ステーションか」と「所属施設におけるNPの在籍有無」の2項目で有意差(p < 0.05)を認めた(表2).
| 変数 | カテゴリー | n(%) | NPの認知度n = 72 | p値 | NPへの期待n = 72 | p値 | NPへの関心n = 72 | p値 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 「よく知っている」 | 「名前は知っているが詳しいことはわからない」または「知っていなかった」 | 「必要である」 | 「必要ではない」または「わからない」 | 「関心がある」 | 「関心がない」または「わからない」 | ||||||
| n(%) | n(%) | n(%) | n(%) | n(%) | n(%) | ||||||
| 性別(n = 72) | 男性(=1) | 5(6.9) | 3(60.0) | 2(40.0) | .3565 | 3(60.0) | 2(40.0) | 1.0000 | 1(20.0) | 4(80.0) | .5375 |
| 女性(=2) | 67(93.1) | 24(35.8) | 43(64.2) | 38(56.7) | 29(43.3) | 9(13.4) | 58(86.6) | ||||
| 年齢(n = 72) | 20歳代(=1) | 18(25.0) | 7(38.9) | 11(61.1) | 1.0000 | 11(61.1) | 7(38.9) | .8907 | 3(16.7) | 15(83.3) | .7031 |
| 30歳代(=2) | 29(40.3) | 13(44.8) | 16(55.2) | .4199 | 16(55.2) | 13(44.8) | .9946 | 4(13.8) | 25(86.2) | 1.0000 | |
| 40歳代(=3) | 18(25.0) | 5(27.8) | 13(72.2) | .4822 | 10(55.6) | 8(44.4) | 1.0000 | 2(11.1) | 16(88.9) | 1.0000 | |
| 50歳代(=4) | 7(9.7) | 2(28.6) | 5(71.4) | .7042 | 4(57.1) | 3(42.9) | 1.0000 | 1(14.3) | 6(85.7) | 1.0000 | |
| 所属施設(n = 72) | 病院(=1) | 56(77.8) | 26(46.4) | 30(53.6) | .0031 | 35(62.5) | 21(37.5) | .1350 | 8(14.3) | 48(85.7) | 1.0000 |
| 診療所(=2) | 4(5.6) | 0(0.0) | 4(100.0) | .2898 | 2(50.0) | 2(50.0) | 1.0000 | 1(25.0) | 3(75.0) | .4578 | |
| 介護施設(=3) | 3(4.2) | 0(0.0) | 3(100.0) | .2870 | 1(33.3) | 2(66.7) | .5738 | 0(0.0) | 3(100.0) | 1.0000 | |
| 訪問看護ステーション(=4) | 9(12.5) | 1(11.1) | 8(88.9) | .1397 | 3(33.3) | 6(66.7) | .1605 | 1(11.1) | 8(88.9) | 1.0000 | |
| 最終学歴(n = 72) | 専修・各種学校(=1) | 49(68.1) | 18(36.7) | 31(63.3) | 1.0000 | 27(55.1) | 22(44.9) | .8371 | 6(12.2) | 43(87.8) | .7163 |
| 短期大学(=2) | 1(1.4) | 0(0.0) | 1(100.0) | 1.0000 | 1(100.0) | 0(0.0) | 1.0000 | 0(0.0) | 1(100.0) | 1.0000 | |
| 大学(=3) | 19(26.4) | 7(36.8) | 12(63.2) | 1.0000 | 12(63.2) | 7(36.8) | .7132 | 4(21.1) | 15(78.9) | .4388 | |
| 大学院(=4) | 3(4.2) | 2(66.7) | 1(33.3) | .5518 | 1(33.3) | 2(66.7) | .5738 | 0(0.0) | 3(100.0) | 1.0000 | |
| 実務経験年数 (n = 72) |
1~5年(=1) | 16(22.2) | 6(37.5) | 10(62.5) | 1.0000 | 11(68.8) | 5(31.2) | .4265 | 3(18.8) | 13(81.2) | .6821 |
| 6~10年(=2) | 11(15.3) | 7(63.6) | 4(36.4) | .0877 | 8(72.7) | 3(27.3) | .3306 | 2(18.2) | 9(81.8) | .6442 | |
| 11~15年(=3) | 17(23.6) | 5(29.4) | 12(70.6) | .6160 | 10(58.8) | 7(41.2) | 1.0000 | 3(17.6) | 14(82.4) | .6912 | |
| 16~20年(=4) | 10(13.9) | 5(50.0) | 5(50.0) | .5975 | 3(30.0) | 7(70.0) | .0883 | 1(10.0) | 9(90.0) | 1.0000 | |
| 21~25年(=5) | 9(12.5) | 1(11.1) | 8(88.9) | .1397 | 5(55.6) | 4(44.4) | 1.0000 | 0(0.0) | 9(100.0) | .3427 | |
| 26~30年(=6) | 5(6.9) | 3(60.0) | 2(40.0) | .3565 | 2(40.0) | 3(60.0) | .6457 | 1(20.0) | 4(80.0) | .5375 | |
| 31~35年(=7) | 3(4.2) | 0(0.0) | 3(100.0) | .2870 | 2(66.7) | 1(33.3) | 1.0000 | 0(0.0) | 3(100.0) | 1.0000 | |
| 36~40年(=8) | 1(1.4) | 0(0.0) | 1(100.0) | 1.0000 | 0(0.0) | 1(100.0) | .4306 | 0(0.0) | 1(100.0) | 1.0000 | |
| 所属施設におけるNPの在籍有無(n = 65) | NPが在籍する者(=1) | 38(58.5) | 25(65.8) | 13(34.2) | .0000 | 29(76.3) | 9(23.7) | .0034 | 7(18.4) | 31(81.6) | .2854 |
| NPが在籍しない者(=2) | 27(41.5) | 2(7.4) | 25(92.6) | 10(37.0) | 17(63.0) | 2(7.4) | 25(92.6) | ||||
| NPへの期待 (n = 72) |
「NPは必要である」と回答した者(=1) | 41(57.0) | 19(46.3) | 22(53.7) | .1245 | ||||||
| 「わからない」と回答した者(=2)または「NPは必要ではない」と回答した者(=3) | 31(43.0) | 8(25.8) | 23(74.2) | ||||||||
| NPへの関心 (n = 72) |
「NPになることに興味がある」と回答した者(=1) | 10(13.9) | 6(60.0) | 4(40.0) | .1608 | 8(80.0) | 2(20.0) | .1712 | |||
| 「わからない」と回答した者(=2)または「NPになることに興味がない」と回答した者(=3) | 62(86.1) | 21(33.9) | 41(66.1) | 33(53.2) | 29(46.8) | ||||||
p値を斜字で示したものはカイ2乗検定,それ以外はFisherの直接確率検定を用いた.従属変数は,NPの認知度については,「よく知っている」・「名前は知っているが詳しいことはわからない」または「知っていなかった」で2値化した.NPへの期待については,「必要である」・「必要ではない」または「わからない」で2値化した.NPへの関心については,「関心がある」・「関心がない」または「わからない」で2値化した.独立変数は,性別は,男性と女性で2値化し,年齢,所属施設,最終学歴,実務経験年数については,ダミー変数に置き換えXとその他で2値化し用いた.なお,所属施設におけるNPの在籍有無については,「わからない」と回答した者を除いた「NPが在籍する者」と「NPが在籍しない者」で2値化した.
有意差を認めた「所属施設(病院かその他の診療所,介護施設,訪問看護ステーションか」と「所属施設におけるNPの在籍有無」の2項目を独立変数とし多重ロジスティック回帰分析を行った結果,「所属施設にNPが在籍する看護師は,所属施設にNPが在籍しない看護師と比較し,NPの認知度が高い」傾向にあった(オッズ比61.62,95%信頼区間:3.2424~1171.075,p < 0.01)(表3).
| NPの認知度 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 要因 | オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 | |
| 下限 | 上限 | |||
| 所属施設におけるNPの在籍有無(n = 65) | 61.6200 | 3.2424 | 1171.0750 | .0061 |
| 所属施設(n = 72) | 1.0629 | .0349 | 32.4159 | .9721 |
| R2乗(U):0.4469 | ||||
| NPへの期待 | ||||
| 要因 | オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 | |
| 下限 | 上限 | |||
| 所属施設におけるNPの在籍有無(n = 65) | 9.2190 | 1.4080 | 60.3628 | .0205 |
| R2乗(U):0.1913 | ||||
独立変数は次の通り数値化して投入した:所属施設(病院=1,病院以外:診療所・介護施設・訪問看護ステーション=2),所属施設におけるNPの在籍有無(在籍する=1,在籍しない=2).なお,NPの認知度については,「よく知っている」・「名前は知っているが詳しいことはわからない」または「知っていなかった」で2値化した.NPへの期待については,「必要である」・「必要ではない」または「わからない」で2値化した.
NPへの期待は,単変量解析にて「所属施設におけるNPの在籍有無」の1項目で有意差(p < 0.05)を認めた(表2).
有意差を認めた「所属施設におけるNPの在籍有無」の1項目を独立変数とし多重ロジスティック回帰分析を行った結果,「所属施設にNPが在籍する看護師は,所属施設にNPが在籍しない看護師と比較し,NPへの期待が高い」と考える傾向にあった(オッズ比9.219,95%信頼区間:1.408~60.3628,p < 0.05)(表3).
8. 関心と関連要因NPへの関心については,有意差を認める関連要因はなかった.
本調査では,2009年に行われた調査(伊原ら,2010)と比較し,「よく知っている」が34.2%増加,「名前は知っているが詳しいことはわからない」が3.9%増加,「知らなかった」が38.2%減少の結果となった.伊原ら(2010)の研究対象とは異なる集団で行なった調査ではあるものの,臨床で働く看護師からの認知度は上昇していた.その理由として,NPの養成開始から10年が経ち350名以上のNPが養成されたことにより,所属施設や知人・同僚にNPが存在するようになってきていることが考えられた.また,本調査の結果では,「所属施設におけるNPの在籍有無」が認知度に強く影響していることが明らかとなった.しかし,山之内(2012)は,NP/PA制度が確立して長い米国であっても,地域によって認知度はさまざまであると述べている.本調査の場合,NPを養成している大学院とNPが在籍する施設を併せ持った地域に限定した調査であり,本調査結果が,わが国全体におけるNPの認知度を示しているわけではない.しかし,110施設に対し研究資料を郵送し行なった調査結果であり,NPが身近に存在しない施設が大半を占めている現状や,そもそもNPに対する認識が低いことも,回答数の少なさに影響を及ぼした可能性が考えられる.
また,NPは診療所や介護施設,訪問看護ステーションには関係ないという理由から調査協力に至らなかったケースも認めており,今後のNPの認知度上昇には,NPが活躍する施設,地域を拡大していくことが重要であると示唆された.
2. NPへの期待「NPは日本の医療に必要だと思うか」の問いについては,2009年に行われた調査(伊原ら,2010)と比較し,本調査では,「必要である」が25%増加,「必要ではない」が1%減少,「わからない」が23.8%減少していた.上述から半数以上の者がNPを「名前は知っているが詳しいことはわからない」,「知らなかった」と回答しているため,回答の判断ができなかった可能性は考えられる.一方で必要ではないと考える者は,9年前と変わらず一定割合を占めている.本調査の結果から,所属施設にNPが在籍する看護師は,所属施設にNPが在籍しない看護師と比較し,NPへの期待が高いと考える傾向にあることがわかり,より多くの施設にNPを在籍させることが,NPへの期待を高めることに繋がることが明らかとなった.理由として,NPの役割や各施設における存在意義を理解する者が増えることが考えられる.NPは必要ではないと考えられる理由は,「看護師は看護師として他にすべきことがあり,制度の導入は医師と看護師の役割がわからなくなるような気がするため」が最も多い結果となっている.大釜(2016)は,「看護の専門性をどのように捉えるかによって,高度実践看護師の医行為に対する賛否に少なくとも影響を及ぼすのではないか」と述べている.NPが行う特定行為に関して,診療補助業務の範疇を超えているという認識や特定行為に伴うリスクの懸念から,NPに抵抗を感じる看護師が一定数存在し続けていることが考えられる.
前述したように,NPは診療所や介護施設,訪問看護ステーションには関係ないという理由から調査協力に至らなかったケースを認めている.病院以外の施設においてNPがどのような活動をすることができるのか想像するに至っていないことも,NPへの期待を感じていない看護師が一定数存在し続けている誘因になっていると考える.
3. NPへの関心NPの認知度と期待は,施設にNPが在籍することにより高まることが明らかになった.そのためには,NPを増やす必要がある.しかし,「NPになることに興味があるか」に関しては,2009年の調査結果(伊原ら,2010)と比較し,本調査では,潜在的にNPを志望する看護師数が明らかに減少していた.「NPになることに興味がない」と回答した理由は,「責任が重そう」が最も多く,伊原ら(2010)の調査でも,責任や業務量が増えることへの不安が挙げられていた.畠山・増満(2015)が訪問看護師を対象に行った調査においても,「特定行為に係る看護師の研修制度」導入に関する不要理由について,危険性を伴う,責任が重すぎる,負担が大きくなり過ぎると言った「慎重な対応が必要である」との認識が強い事が窺われていることが示されている.
大釜(2016)は,山田らの調査結果を踏まえ,「高度実践看護師を養成するための教育課程に入学を希望するか」を尋ねたところ,希望者は19%弱であったが,入学を希望しながら,「経済的あるいは家庭の事情で入学できない」と認識する看護師が25%弱存在した結果から,経済的・時間的支援体制が無い状況下では,高度実践看護師を志望する者の増加が見込めない点を感じていると述べている.本調査でも,「更に修士号を取得する時間やお金がない」という理由を選択した者が7割近く存在した.
川本・山田(2015)は,NPは法制化されておらず,社会的認知も低い状態であると述べている.NPの法制化は,NPの認知度や期待が高める可能性が考えられる.また,経済的・時間的支援体制が整備されることも予測され,NPを志望する看護師の増加が期待できるのではないかと考える.
本調査ではNPへの関心について有意差を認める関連要因は明らかにならなかった.理由として,回答数が少なく必要十分な分析が困難であったことが考えられ,今後調査を継続することで関連要因を明確にできるのではないかと考える.
郵送した研究書類が何名の看護師の手元に行き届いたのか詳細は不明であり,回答率を示すことはできない.また,NPは診療所や介護施設,訪問看護ステーションには関係ないという理由から調査協力に至らなかったケースを認めた結果,72件と非常に少ない回答数となり,必要十分な分析が困難であった.ただし,本調査は,東京都目黒区内に限るものの,研究バイアスを最小限にするため,多くの施設を対象とし,対象者の判断と同意のもと得られた調査結果であり,現状は明らかになったと言える.発展途上であるNPの法制化に寄与すべく,今後も調査を継続しデータの質を高めていく必要がある.
9年前と比較し,NPの認知度と期待は上昇していた.また,NPが在籍する施設の増加は,認知度の向上だけでなく,NPへの期待を高めることも示唆された.一方で,潜在的にNPを志望する看護師数は減少していた.
NPの法制化は,NPの認知度や期待を高める可能性や,経済的・時間的支援体制が整備されることによりNPを志望する看護師の増加が期待できることから,今後のNPの発展において意義は大きいと言える.
付記:本研究は,東京医療保険大学大学院看護学研究科に提出した修士論文の一部に加筆・修正を加えたものである.
謝辞:本調査を実施するにあたり,東京都目黒区内の病院,診療所,介護施設,訪問看護ステーションに多大なご協力を頂きました.日々ご多忙な勤務の中,本研究にご協力頂き,貴重なご意見を頂きました東京都目黒区内で勤務されている看護師の皆様に厚くお礼申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:MNは研究の着想およびデザイン貢献,統計解析の実施および原稿作成;MH,KSは原稿への示唆および研究全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.