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小林 幹紘, 小島 ひで子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
11-19
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/10
ジャーナル
フリー
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思春期青年期世代がん患者に対する看護師の困難感と学習ニーズを明らかにすることを目的とし,看護経験5年未満7名,それ以上の看護師8名を対象に,グループインタビューの手法で調査を行った.看護経験5年未満のグループは【捉えどころのない患者との距離感への戸惑い】【将来ある患者への見当もつかないケア】の困難感を抱き,【経験不足を補う他者の実践や体験からの学び】の学習ニーズがあった.看護経験5年以上のグループは【自律過程にある患者との関わりへの憂慮】【希望を見いだせない患者に寄り添う難しさ】の困難感を抱き【患者が利用できる社会的サポート資源の知識】の学習ニーズがあった.看護経験5年未満のグループは,ケア経験を蓄積する難しさから生じる知識不足や看護実践の自信のなさがあり,看護経験5年以上のグループは,過去のケア経験から生じる不安が関わりの憂慮になっていると考えられた.
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田中 雅美
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
20-28
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/10
ジャーナル
フリー
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目的:生存の限界といわれる子どもへの医療選択において,母親が代理意思決定をどのように経験しているのかについて記述する.
方法:母親ひとりに非構造化インタビューを行い,そのデータを現象学的方法で記述した.
結果:母親が語る代理意思決定の経験は,「主体の置き去り」と「主体の取り戻し」の二つのテーマに分けられた.子どもは,医学的所見でカテゴリー化されることにより主体を剥奪され,母親は医療者の望む「お母さん」を演じることにより主体を覆い隠していった.しかし,母親は医療者たちが支援の一環として創る世界に巻き込まれることによって,次第にその世界を基盤とし,子どもと自身の主体を取り戻していった.
結論:母性を絶対視した支援は,母親からの支援要請を断絶させたが,一方でその支援が時間の経過とともに母親の視点を変えるきっかけとなっていった.医療者は時に内観しつつ,支援を必要とする人々の内実に関心を向け続けることの大切さが示唆された.
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大槻 奈緒子, 生田 花澄, 福井 小紀子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
29-36
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/10
ジャーナル
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目的:本研究は,放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所における医療的ケア児の受入有無の関連要因を検討することを目的とした.
方法:2018年12月末日時点で放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所の検索サイトである「放デイどっとこむ」に掲載された,全国15,560か所の放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所のうち約10%に当たる1,556か所の事業所を無作為抽出した郵送質問票調査を実施した.
結果:二項ロジスティック回帰分析の結果,医療的ケア児の受入有無の関連要因は,「訪問看護の併設(オッズ比(OR)=4.55)」,「連携:地域のリソースが具体的にわかる(OR = 1.18)」,「看護師の人数(OR = 14.94)」であった.
結論:放課後等デイサービスおよび児童発達支援における医療的ケア児の受入には,看護師の配置や医療的ケア児を地域で支えるための連携が関連していた.今後,医療福祉連携の推進と適切な職員配置の基準化が重要と示唆された.
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牧野 耕次, 比嘉 勇人
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
37-44
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/16
ジャーナル
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目的:患者-看護師関係における看護師の専心のプロセスを明らかにする.
方法:総合病院に勤務する看護師12名に半構成インタビューを実施し,M-GTAを用いて分析した.
結果:臨床の看護師は《生活者との関係構築》に集中し,《患者の思いへの配慮》に心を注ぎ,《患者の思いへの対応》に専念していた.その過程で《看護師の感情的反応》も経験していたが,《患者-看護師関係の維持》を行い《個別的なケア》に集中していた.以上のように,臨床の看護師は基本的に《患者を中心とすること》に専心しようとしていた.このプロセスを【流動的専心】としてとらえた.
結論:《看護師の感情的反応》をケアではないと個人の問題として抑圧したり,切り捨てたりするのではなく専心に内包し,患者-看護師関係のインボルブメントの概念枠組みでとらえることで,看護師は患者に起こっていることをアセスメントし,自身の感情の中で起こっていることと患者-看護師関係の中で起こっていることを振り返り,再度専心を患者に向け看護ケアを行うことが可能となると考える.
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嵐 弘美
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
52-60
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/29
ジャーナル
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目的:精神科看護師が自身の身体をとおして,どのように統合失調症者を理解して看護を実践しているのかを明らかにする.
研究方法:Merleau-pontyの現象学的身体論に基づいた質的帰納的研究デザインを用い,統合失調症の看護経験が3年以上の看護師15名に半構成的インタビューを行った.
結果:1.精神科看護師の身体をとおした統合失調症者の理解と看護実践には,身体性の次元と言語の次元がみられた.2.統合失調症者の生き辛さは,《自分の身体に馴染めない》,《他者の身体に脅かされる》,《自分らしく生きることに困難を抱える》であった.3.精神科看護師は,【共鳴する】ことと【応じる】ことを通して【関係性によって癒す】という実践をしていた.
考察:精神科看護師は,統合失調症者の「自己性の形成不全」という生き辛さを,間身体性による付き合い方の身体知によって築いた関係性によって癒すことが示唆された.
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清水 崇志, 森 真喜子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
61-70
発行日: 2021年
公開日: 2021/07/14
ジャーナル
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目的:強迫症状をもつ患者のリカバリープロセスを明らかにし看護支援について考察する.
方法:国内で出版された体験記7件を対象にグラウンデッド・セオリー・アプローチ(Strauss & Corbin版)を用いて分析した.
結果:現象の【中心となるカテゴリー】の【医療機関受診を継続することへの自問】とそれを説明する7つの《サブカテゴリー》,3つのストーリーラインが抽出された.抽出されたプロセスは(1)治療が奏効し回復に至るルート(2)受診に伴う負荷が大きく受診を中断し症状が悪化するルート(3)期待に見合う症状の改善がみられないため受診を中断し自ら症状改善のための方策を模索することで回復に至るルートであった.
結論:3つのプロセスが明らかとなり治療による症状改善と主体性の回復,回復に向けた主体的な行動,価値観の変容が重要と考えられ,看護職は患者の受診継続と主体的な行動を支援する必要性が示唆された.
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―フライトナースにおける熟練者と初心者の比較―
土屋 守克, 伊藤 幸太, 髙橋 誠一, 坂上 貴之, 眞邉 一近
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
71-78
発行日: 2021年
公開日: 2021/07/20
ジャーナル
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目的:フライトナースのプレホスピタル・ケアを対象として,撮影された動画のオプティカルフローから算出した活動量(以下,動画活動量)を測定した上で,熟練者と初心者の相違について比較するとともに,機械学習による分類性能について検討することを目的とした.本研究の結果が明らかとなれば,臨床における教育や業務の省力化,効率化が期待できる.
方法:熟練者および初心者フライトナースのべ30名を対象とした.対象者は,胸部にウェアラブルカメラを装着した上で業務に従事した.熟練者と初心者の分類のために機械学習および線形判別分析を行い,分類性能を検証した.
結果:動画活動量のエントロピーの中央値は,熟練者のフライトナースが有意に低値であった.各分析方法における分類性能(適合率,再現率,F1値)は,サポートベクターマシンとランダムフォレストが高かった.
結論:動画活動量のエントロピーが熟練性の指標となり得ること,エントロピーの経時的変化に対して機械学習を適用することにより,高い分類性能を示すことが明らかとなった.
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神成 真, 澤田 いずみ, 道信 良子, 吉野 淳一
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
88-97
発行日: 2021年
公開日: 2021/07/29
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目的:精神療養病棟の治療構造における病棟規則の機能を明らかにすること.
方法:3施設4か所の精神療養病棟で月1回6か月間のエスノグラフィーを実施し,構造機能主義を理論的パースペクティブとして質的帰納的分析を行った.
結果:病棟規則の機能として,【管理指示型集団従属的規則運用パターン】の規則は,【地域住民・病院職員が安心で入院患者が安全に生活する場としての閉鎖的施設環境】の治療構造の存続を維持するために順機能していた.【対話支持型個人主体的規則運用パターン】の規則は,【急性期の病状を脱した患者や慢性期の患者を地域生活に近づけるための治療】の治療構造の存続を維持するために順機能していた.
結論:精神療養病棟の病棟規則は,患者の医療保護および社会防衛の機能と,患者を社会復帰に向ける機能を有していた.患者個人を支援する規則の内容と対話を用いた運用が,患者を社会復帰に向ける機能を果たすと示唆された.
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山本 弘江, 池田 真理
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
106-113
発行日: 2021年
公開日: 2021/07/29
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目的:産後うつ病をパートナーが評価するスクリーニング尺度EPDS-P日本語版を作成し,産後1か月時点の父親による母親の産後うつ病の兆候を検出しEPDS高得点者の発見につなげることができるか検討した.
方法:EPDS-P日本語版を作成し,1か月児健康診査を受診した健康な児を育てる夫婦147組を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.
結果:母親のEPDSと父親のEPDS-Pの間にrs = 0.27の有意だが弱い相関が認められた(p < 0.01).EPDS-Pのクロンバックα係数は0.83であった.EPDSのカットオフ値(9点)を仮にEPDS-Pのカットオフ値とした時,EPDS陽性者の母親を検出する感度は50%,特異度は83%であった.母親のEPDSと父親のEPDS-Pの対応する項目1,3,7,8,9の5項目と産後うつ病の身体症状3項目(食欲の変化,睡眠の変化,易疲労性)に有意な相関が認められた.
結論:EPDS-Pを活用したパートナーによる産後うつ病の早期発見の可能性が示唆された.
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―信頼性と妥当性の検討―
飯岡 由紀子, 亀井 智子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
114-121
発行日: 2021年
公開日: 2021/08/12
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目的:学際的チームを基盤とし,個人の認識からチームアプローチを評価するチームアプローチ評価尺度(TAAS)の信頼性と妥当性を検討し,TAAS改訂版(TAAS-Revised Edition)を開発する.
方法:A県の総合病院3施設の医療専門職を対象にTAASを用いて無記名質問紙横断調査を行った.信頼性はα係数の算出,妥当性は探索的因子分析にて検討した.研究倫理審査委員会の承認を得て行った.
結果:回収率27.1%,有効回答は789部だった.探索的因子分析は最尤法のプロマックス回転により,22項目となり,TAASの4因子から5因子構造(チームの機能,チームへの貢献,チーム活動の重要性,チームメンバーの役割遂行,目標と役割の明確化)となった.尺度全体のα係数は .93であり,各因子は .68~.91の範囲だった.
結論:TAAS改訂版は,概ね信頼性と妥当性は確保された.
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横断研究
永見 悠加里, 藤﨑 万裕, 野口 麻衣子, 山本 則子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
122-131
発行日: 2021年
公開日: 2021/08/12
ジャーナル
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目的:移動に対する負担感および管理者のサポートと訪問看護師の就業継続意向の関連を明らかにする.
方法:訪問看護管理者と訪問看護師に対し自記式質問紙調査を行い,就業継続意向を従属変数とするマルチレベル二項ロジスティック回帰分析を行った.
結果:管理者38名,看護師221名から有効回答を得た.就業継続意向がある者は151名(68.3%)であった.負担感は,非効率な訪問スケジュール(OR = 0.41, 95%CI: 0.22~0.78),管理者のサポートは,移動しやすい道のりの共有(OR = 2.49, 95%CI: 1.20~5.17),訪問間隔の確保(OR = 2.72, 95%CI: 1.19~6.21),移動時間の目安の提示(OR = 0.43, 95%CI: 0.21~0.92)が就業継続意向と関連した.
結論:移動に関する直接的な支援が就業継続支援に有用であることが示唆された.
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西澤 和義, 大島 弓子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
132-140
発行日: 2021年
公開日: 2021/08/27
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目的:看護職が嚥下障害を臨床判断するための内容妥当性のある診断指標を明らかにし,major指標とminor指標も明らかにする.
方法:本研究はFehringのDCVモデルを使った.嚥下障害の看護診断に精通した専門家672人に質問紙調査を行った.診断指標78項目が,どの程度嚥下障害を表すか,5段階のリッカート尺度で評価をうけた.各診断指標で,回答を点数化してDCV値(平均値)を算出した.DCV値でmajor指標,minor指標,除外する指標に分けた.
結果:有効回答数は327人だった.major指標は11項目(食事中のチアノーゼ,嚥下後の呼吸切迫,嚥下テスト時の咽頭相の異常,嚥下後の湿性の呼吸音,むせる,食事中や食後に濁った声にかわる,喉頭挙上の不良,嚥下の遅延,嚥下前にむせる,嚥下後の嗽音の呼吸音,鼻への逆流)だった.minor指標は52項目,除外する指標は15項目だった.
結論:嚥下障害の看護診断に精通した専門家の意見に基づく,内容妥当性のある嚥下障害の診断指標が明らかとなった.
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高田 由美, 夏原 和美
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
166-174
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/10
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目的:看護職の実務経験を持つ社会人学生が修士論文コースでどのような学びを得ているのか,また仕事にどのように活かしているのかを明らかにすることである.
方法:A看護系大学院を修了した看護職8名を対象に,フォーカスグループインタビューを実施し質的帰納的に分析した.
結果:社会人学生の【在学中の学びや気づき】5カテゴリ,【看護職として仕事に戻ってからの学びの活用と新たな気づき】6カテゴリが得られた.社会人学生は在学中に《物事を考え抜く力の基礎》などを修得し,仕事に戻ってからはスタッフへ疑問点をデータベースで検索するように働きかけるという《物事を考え抜く習慣の定着》した実践を行っていた.一方,時間的制約のある仕事の現状から《臨床に大学院の学びを活用するうえでの課題》もあった.
結論:社会人学生が大学院の学びを基盤として,スタッフに科学的根拠を用いた看護実践を推奨することは看護の質を高めると示唆された.
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阿部 真理, 關戸 啓子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
175-183
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/10
ジャーナル
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目的:本研究の目的は卒後2年目の看護師が,看護実践を通して成長していくプロセスを明らかにすることである.
方法:病院に勤務する卒後2年目の終わりから3年目当初までの看護師8名を研究協力者とし,半構成的面接で得たデータを質的に分析した.
結果:卒後2年目看護師は,2年目当初の【戸惑いと解放の混在する時期】を経て【できる気がする】経験をしていた.その後,【できていない自分と向き合う】ことによって【乗り越える力】を付けていき,【乗り越えた感覚】【乗り越えてチームに入れた感覚】を得ていた.最終的には【3年目への準備】に到達していた.また,この1年間【先輩の承認が成長のベース】となり,2年目看護師の成長を支えていた.
結論:2年目看護師は,2年目当初の不安な時期を経て,数々の課題を乗り越えて成長した自分を実感し,3年目を迎えていた.時期に応じた課題の提供と先輩看護師の支えが重要であることが明らかになった.
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渡辺 真弓, 金井Pak 雅子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
192-200
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/23
ジャーナル
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目的:師長が意図するリーダーシップとスタッフ看護師が認識するリーダーシップがどのように関連するのかを明らかにする.
方法:師長自身及びスタッフ看護師が認識したリーダーシップを尋ねる無記名自記式質問紙を配布し,41部署の師長41人とスタッフ看護師592人のデータをマルチレベル共分散構造分析にて分析した.
結果:師長が意図したリーダーシップとスタッフ看護師が認識するリーダーシップの間には曲線関係があり,師長が意図したリーダーシップが中程度以上に高くなると,師長が認識するリーダーシップ得点が増加するほど,スタッフが認識するリーダーシップ得点は減少していた.
結論:師長が意図するリーダーシップとスタッフ看護師が認識するリーダーシップの間にはずれが存在し,このずれはリーダーシップの認識が中程度以上であると,師長が自分のリーダーシップが優れていると認識すればするほど大きくなる可能性が示唆された.
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内田 香里, 青木 きよ子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
201-210
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/23
ジャーナル
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目的:急性期医療後の療養の場の選択における脳卒中患者と家族の合意形成に向けた支援の実態とその影響要因を明らかにする.
方法:脳卒中看護に携わる看護師を対象に質問紙調査を行った.因子分析にて質問項目の信頼性と妥当性を確認した後,重回帰分析にて影響要因との関連の検討を行った.
結果:有効回答756名を対象とした因子分析の結果,【最善の決定に向かえるように支える】,【具体策の検討を支える】,【状況の理解や問題意識の整理を支える】,【家族の意向や希望を支える】,【強みを活かした決定になるように支える】の5因子20項目が抽出された.重回帰分析の結果,合意形成支援に最も影響が強い要因は「看護師の自律性」であった.
結論:家族への合意形成支援には看護師の自律性が関与し,自主的・自立的な判断と適切な看護実践能力を高めていくと同時に,倫理的課題にチームで取り組んでいくことの重要性が示唆された.
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~看護師を対象として~
中原 未智, 日髙 未希恵, 酒井 一夫
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
211-219
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/23
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目的:看護師の診療看護師(以下,NP)への認知度と期待,NPを志望する看護師の潜在状況を明らかにすることとする.
方法:東京都目黒区内の病院,診療所,介護施設,訪問看護ステーションに勤務する看護師を対象に,NPの認知度,期待,関心に関する横断的調査をWebアンケートにて実施した.
結果:110施設へ計818部の研究資料を配布し72件の回答を得た.多重ロジスティック回帰分析では,所属施設にNPが在籍する看護師は,在籍しない看護師よりNPの認知度(オッズ比61.62,p < 0.01)及び期待(オッズ比9.219,p < 0.05)が高かった.一方で,NPを志望する看護師は13.9%に留まった.
結論:より多くの施設にNPを在籍させることは,NPの認知度と期待を高める.
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原 あずみ
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
220-229
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/23
ジャーナル
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目的:尺度開発の第一段階として,Siu et al.(2005)が開発したCLEQ(The Conditions for Learning Effectiveness Questionnaire)尺度を参照に,臨地実習における看護学生のエンパワーメントの構成概念を明らかにする.
方法:4年次の看護系大学生6名に半構造化面接を実施し,内容分析によりカテゴリ化した.
結果:CLEQ尺度の構成概念との比較により,下位尺度である【支援】,【機会】,【資源】,【情報】に加え,新たに【安心できる環境】,【患者との関わり】が重要な要素として明らかとなった.
結論:臨地実習で日本の看護学生がエンパワーメントを発揮するためには,【安心できる環境】や【患者との関わり】が特徴であり,今後の尺度開発ではこれらの側面を看護学生のエンパワーメントの構成概念に含むことが必要であると示唆された.
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坂井 志麻
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
241-249
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/06
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目的:外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度を開発し,その妥当性と信頼性を検討する.
方法:文献検討とインタビューより抽出したデータを基に,外来看護師の在宅療養移行支援実践評価尺度原案を作成した.全国805施設の外来看護師を対象に質問紙調査を行い,妥当性・信頼性の検証を行った.
結果:分析対象は360名で(有効回答率22.3%),探索的因子分析の結果,25項目4下位尺度を作成した.モデルの適合度は,GFI = .845,AGFI = .812,CFI = .904,RMSEA = .073であった.収束的妥当性はr = .741(p < .001)で,弁別的妥当性はr = –.471(p < .001)であった.尺度全体のクロンバックαが.945で,下位尺度は.771~.915であった.
結論:本尺度の妥当性,信頼性は,統計量的に許容範囲であることが確認された.地域包括ケアシステムにおいて,外来看護師が実践する在宅療養移行支援の標準的指標となり,教育研修の効果測定に活用できる.
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~訪問看護ステーションへの全国調査から~
富田 真佐子, 佐藤 千津代, 鈴木 浩子, 村田 加奈子, 渡部 光恵
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
250-258
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/19
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目的:訪問看護師が特定行為研修制度に対してどのように認識し,それらが研修受講希望に関連するかを明らかにする.
方法:全国訪問看護事業協会の正会員リストに登録している訪問看護ステーションに従事する看護師を対象に郵送による質問紙調査を行った.質問紙は,訪問看護ステーション1,000カ所に3,000名分を送付した.
結果:質問紙に回答した459名は,制度に対しある程度の関心はあるが,内容を理解している割合は高いとは言えず,受講希望は低かった.特定行為への期待と制度への関心が高いと必要性の認知が高く,懸念と抵抗感が高いと認知が低かった.また,必要性の認知の高さは受講希望の持ちやすさに関連が見られた.制度を導入する上での課題や受講する上での妨げがあるとする割合は高いが,それらと制度の必要性や受講希望との直接的な関連は認められなかった.
結論:在宅領域での特定行為研修受講者を増やすためには,本制度に関するさらなる啓蒙活動により制度の関心と必要性の認知を高め,懸念を出来る限り払拭し,同時に多くの訪問看護師が認識している課題に対する対応策を講じる必要性が示された.
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有賀 美恵子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
259-268
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/19
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目的:精神疾患が疑われる高校生への養護教諭による支援の工夫を明らかにする.
方法:高等学校養護教諭8名を対象に半構造化面接を行った.
結果:養護教諭は,[本人と家族が安心し苦しさを表出できるように支える][本人と家族が専門機関への相談を決断できるように支える][本人と家族が専門職に相談しやすくなるように調整する]の『直接的な支援の工夫』と,それらの支援を効果的にすすめるために,[中学校時代の情報や普段の様子を把握し支援に活用する][教職員と情報や支援方針を共有しチームで支援をすすめる][専門多職種からのコンサルテーションを支援に活かす]の『間接的な支援の工夫』を行っていた.
結論:家族の思いに寄り添い続け,関係性を構築することで本人を支えること,専門機関と事前に情報を共有し,本人や家族のタイミングに合わせつつ陰で支えること,保健室での支援を教職員に伝えて他の生徒への支援につなげるとともに,関係性に配慮しながら支援チームをマネジメントすることの必要性が示唆された.
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高比良 祥子, 小林 裕美
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
269-278
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/19
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目的:熟練看護師が外来で行う肝疾患患者への療養支援のあり様を明らかにする.
方法:肝疾患外来の経験と実績のある熟練看護師8名に半構造化面接を実施し,質的統合法(KJ法)を用いて分析した.
結果:熟練看護師は肝疾患患者に対し,【介入の焦点化と協力体制づくり】を前提条件として,【安心できる丁寧な関わりにより患者を根底から支える】【リスクを予測した受診勧奨と集中支援】【重荷を引き受け患者本来の力を引き出す】ことを行っていた.また,肝炎治療の【副作用減少に伴うケア機会の減少】や,【肝硬変終末期を急性期病院で対応せざるを得ない現状】があるゆえに,患者との関係の形成や悪化の予防を一層重視していた.【社会と向き合う力の獲得】は全ての実践に影響を及ぼしていた.
結論:肝疾患患者への療養支援のあり様の特徴が明らかになった.肝疾患外来看護は,社会と向き合う力が問われることが示唆された.
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新庄 すみれ, 矢富 有見子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
286-295
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/19
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目的:ICUの勤務帯リーダー看護師の臨床判断に基づく実践を明らかにすること.
方法:観察法と半構造化面接法を用い,ICUでの勤務帯リーダー経験が1年以上の者を対象とした.
結果:研究参加者は15名で,リーダー経験は平均4.5年であった.分析の結果,8つのカテゴリが抽出され,【患者情報獲得の必要性に応じた情報収集手段の見極めと駆使】,【治療・看護における不測の事態を想定した目配り】,【患者の危機状態の迅速な判断に基づいた危機管理体制の立ち上げ】,【患者の重症度と看護師の能力のバランスを評価して繰り返す看護チームの再編】,【患者に生じる問題の変化に応じた医療チーム全体への対策の主導】,【医療職間での共通認識の形成状況に応じたチームの協働の促進】,【治療・看護の提供状況の適切性の判断に基づく資源の差配】,【看護師の力量判断に基づく重症患者看護についての教育の提供】が明らかになった.
結論:ICUの勤務帯リーダー看護師の実践は,患者の生命維持から看護師の教育に関わるものまで多岐に渡っていた.
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永山 弘子, 小笠原 知枝, 對中 百合
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
296-304
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/19
ジャーナル
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目的:一般病棟に勤務する看護師の死生観に基づく死生観尺度を開発・検証し,死生観の構成要素を明らかにすること.
方法:システマティックレビューに基づく質的データを概念分析により得られたデータより,看護師の死生観尺度原案35項目から成る質問紙を作成した.看護師630名を対象に質問紙調査を実施し,尺度の信頼性と妥当性を検証した.
結果:有効回答率は54.4%であった.主因子解法による因子分析の結果,18項目5因子が抽出された.尺度の信頼性の検討では,Cronbach’s α係数.801,再テスト法による信頼性係数は.681であった.妥当性については,基準関連妥当性と構成概念妥当性で確認された.
結論:【家族が期待するQODD】【死に逝く人の教え】【死に対するネガティブな感情】【死は自然の摂理】【End-of-Lifeの生き方への示唆】などの5つの構成要素が抽出された.
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―指標を記録しなかったある1名の語りから
細野 知子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
305-312
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/19
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目的:糖尿病の指標を記録しなかった1名の語りから,糖尿病とともに暮らす経験を現象学的に記述することである.
方法:その人に現われている世界を記述する現象学的アプローチである.本稿では,糖尿病手帳開発プロジェクトで出会った指標をつけない研究参加者の経験を非構造化面接の語りを通じて記述した.
結果:Aさんは大震災に被災し,周りへの様々な気がかりに時間を割いて糖尿病であることが曖昧な様相を呈していた中で注射導入となり,医師に毎回打ってもらうことで自分を労わるようになった.この変化は,時間の経験のされ方と自分へのケアの仕方から生起していた.
結論:定期受診から生まれる自分へのケアが創出したリズミカルな時間の経験は大惨事からの快復も含意していた.医師に委ねて自分を労わるという方法を選択したAさんには自分で指標をつける必要性が生じなかった可能性がある.セルフモニタリングとは異なった方法でのセルフケアの新たなあり方が示唆された.
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吉岡 詠美, 金子 さゆり
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
313-323
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/29
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目的:看護倫理に関する教育的支援が看護学生のケアの倫理的行動に与える影響を明らかにし,科学的かつ効果的な看護倫理教育の示唆を得る.
方法:全国の最終学年の看護学生4,930名に質問紙調査を実施した.はじめに,ケアの倫理的行動に関する教育的支援の因子分析を行い,妥当性と信頼性を確認した.次に,教育的支援を独立変数,ケアの倫理的行動に関する因子を従属変数とした重回帰分析を行った.
結果:ケアの倫理的行動に関する教育的支援として4因子が抽出された.「看護学生版ケアの倫理的行動尺度」の5因子に共通して影響が認められた教育的支援の因子は,F1「講義で学生間による倫理的問題に対応できた成功体験の共有」とF3「実習で指導者による倫理的問題の分析過程でのアドバイス」とF4「患者の権利憲章」であった.
結論:教員は,効果的な看護倫理教育を提供する上で,影響が認められた教育的支援の項目を授業設計に役立てていく必要がある.
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~日常的に治療決定の看護支援を行う看護師に着目して~
尾形 裕子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
324-333
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/29
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目的:日常的に治療決定の看護支援を行う看護師を対象とした患者の治療決定における看護支援の振り返り尺度の信頼性と妥当性を検討する.
方法:対象者に,自記式質問紙を配布し郵送法にて回収した.調査内容は,対象者の属性,患者の治療決定における看護支援の背景,患者の治療決定における看護支援の振り返り,社会的クリティカルシンキング志向性,臨床看護師の道徳的感性である.
結果:有効回答は539部(39.7%)であった.項目分析と探索的因子分析により21項目5因子構造を確認した.確認的因子分析によるモデル適合を行い,外的基準との相関が認められ,Cronbachのα係数は項目全体では.935,因子別では.875~.696であった.
考察:本尺度は一定の信頼性と妥当性があることが確認されたため,看護師が臨床で治療決定の支援をする場面での判断力の自己評価として用いることが可能である.
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峰松 恵里, 赤星 琴美, 村嶋 幸代
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
334-343
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/29
ジャーナル
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目的:運転免許の自主返納者を対象に,返納理由や現在の外出状況と車の代替手段,健康状態,車のない生活の受け止めを明らかにする.
方法:公共交通の少ない地域に居住する75歳以上の返納者13名に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.
結果:免許返納理由は,《認知症・認知機能低下》,《身体機能低下》,《事故予防》の3タイプにわけられた.車の代替手段は,〈買い物〉〈通院〉は確保されていたが,〈農業〉〈娯楽〉〈交友〉では,確保できない者もいた.車のない生活を受け入れて満足している者もいれば,身体機能低下や閉じこもりという健康課題が生じた者もいた.
結論:解決策として,個人レジリエンスを高めるためには,〈農業〉への移動手段として限定条件付免許の導入等が必要だと考えられる.また地域レジリエンス強化の観点から,移動支援サービス等の在り方を検討する必要があろう.
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五十嵐 貴大, 荒木田 美香子, 佐藤 みつ子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
344-353
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/29
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目的:看護大学生の臨地実習指導者に対する援助要請に関する尺度(以下,援助要請尺度)を開発し,その信頼性と妥当性を検証する.
方法:11都道府県の看護系大学の3,4年次生2,120名を対象とし,質問紙調査を2020年2月に実施した.質問項目は援助要請尺度案(40質問項目),属性,援助要請スタイル尺度であった.また,2大学の375名に再テストを実施した.
結果:808名(有効回答率38.1%)を分析対象とした.項目分析と因子分析により,2因子「非要請コストの自覚」と「被援助利益の自覚」8質問項目を抽出し,モデルの適合度を確認した.尺度全体と援助要請スタイル尺度との相関は回避型(r = –.257),自立型(r = .311)であった.クロンバックαはα = .836であった.また,再テストでは116名(有効回答率30.9%)を分析した.級内相関はr = .860であった.
結論:2因子の内容に基づき,尺度名を「看護大学生の臨地実習指導者に対する援助要請の意思決定尺度」に修正した.
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河田 美那子, 嶋津 多恵子, 綿貫 成明
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
354-362
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/03
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目的:パーキンソン病療養者の家族介護者におけるファミリーレジリエンスを明らかにすることである.
方法:家族介護者11名を対象に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.
結果:家族介護者は,逆境の中でも希望を持ち,【揺れ動く症状に左右されない前向きさ】を原動力として困難に対処していた.そして,生活を共にする中で培った【家族の力の柔軟な発揮】をし,理解されにくい難病でも【心の壁を作らない家族の理解者とのつながり】を構築していった.家族員各々が無理のない対処方法を見極め【症状と共に揺れ動く状況の日頃からの共有】により長期の療養生活にも対処していた.次第に家族は自信を深め,【揺れ動く症状に左右されない前向きさ】に立ち戻っていた.
結論:本研究で示したファミリーレジリエンスが,家族介護者の負担軽減や家族の相互理解の促進に寄与する可能性が示唆された.
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―死別サポートを実施した地域包括支援センターの特徴に焦点をあてて―
小野 若菜子, 永井 智子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
363-372
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/03
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目的:本研究では,地域包括支援センターへの質問紙調査を通して,死別サポートの実施状況,死別サポートを実施した地域包括支援センターの特徴を明らかにし,実施上の課題について考察することを目的とした.
方法:地域包括支援センターに対して郵送による全国質問紙調査を実施した.分析方法は,記述統計量算出,X2検定を用いた.
結果:質問紙の有効回答は,738人(29.5%)であった.死別に関する相談を受けたことが「ある」は,地域包括支援センター472ヵ所(64.0%)であった.X2検定の結果,死別相談を受けたことがある地域包括支援センターの特徴は,市区町村人口が多く,終末期患者のケースカンファレンスやデスカンファレンス,市民向けの看取り・死別に関する事業を実施している傾向があった.
結論:地域包括支援センターでは,死別サポートの取り組みが見られ,今後,地域の死別サポートの社会資源としても貢献する可能性が示唆された.
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宇佐美 しおり, 増野 園惠
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
373-381
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/06
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目的:本研究は熊本地震後の看護職のうつ/PTSR悪化予防介入プログラムを評価した.
方法:介入群230名と質問紙調査の対照群270名を対象とした.介入群に2時間のセルフケア強化に関する心理教育と3時間の力動的集団精神療法,合計5時間を実施し,介入前後,介入1・3・6か月後に評価を行った.評価はうつ,PTSD陽性率,災害後反応,SF-8で行った.
結果:熊本地震1年7か月後の介入群のうつ,PTSD陽性率は高かった.しかしうつ/PTSR悪化予防介入プログラムでうつ,PTSD陽性率,震災後反応に変化がみられた.
考察:今回介入群のうつとPTSD陽性率は対照群と比較すると高かったが,プログラムの実施で,介入3か月後にうつは最も下がり,PTSD陽性率も6か月後に下がっていた.しかしうつは依然として強く,介入群はストレスを受けて震災後の生活を送っていた.
結論:被災後,被災者兼支援者のうつ/PTSR悪化予防を行うことでPTSD陽性率は軽減し,震災反応が変化した.
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西名 諒平, 戈木クレイグヒル 滋子, 岩田 真幸
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
395-404
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
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目的:きょうだいが小児集中治療室(以下PICU)に入院中の子どもに面会する場で,医療者はきょうだいと両親の状況をどのように捉え,きょうだいをどう支援しようとするのかを明らかにする.
方法:PICU入院児ときょうだいの面会場面,15場面の観察と,看護師9名,Child Life Specialist 5名,PICU専従保育士1名の計15名へのインタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.
結果:医療者による【きょうだいの居場所をつくる】《きょうだいと入院児をつなぐ》《きょうだいと両親をつなぐ》という働きかけが適切に行われ,《両親によるきょうだいとの体験の共有》が行われることで,《きょうだいと入院児を含めた家族の一体感》が生じていた.
結論:面会の場が,《きょうだいと入院児を含めた家族の一体感》のある場となることが望ましく,そのためには,医療者が【きょうだいの居場所をつくる】という働きかけを行った上で,両親が適切にきょうだいと体験を共有できるように支援することが重要である.
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清水 史恵
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
405-413
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
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目的:特別支援学校で学ぶ医療的ケア児への,口鼻腔内吸引や気管内吸引の実施に至るまでに,学校看護師が吸引の必要性をどのように判断しているのかを明らかにする.
方法:学校看護師18名に個別に半構造化インタビューを実施し,質的帰納的に分析した.
結果:学校看護師は,その場で医療的ケア児を観察して得た情報だけでなく,その子にとっての効果的な排痰パターン,その子の呼吸維持力の程度,吸引によるその子の変化といった経験を通して得た情報もあわせて,その子が吸引を待てる状況にあるかどうかを判断していた.吸引を待てると判断すると,教育活動を妨げないよう,その子の吸引の希望のサイン,保護者の判断や思い,教員や同僚看護師の判断をすり合わせ,吸引を実施する最適なタイミングを見つけていた.
結論:吸引実施の必要性を適切に判断するには,その子のことをよく知り,判断を他者と共有し,互いに学びあうことが重要である.
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岩谷 美貴子, 伊藤 真理, 足羽 孝子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
414-422
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/13
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目的:ICUに入室した患者のICU退室3ヵ月後の精神的問題の実態および集中治療体験と精神的問題の関連を明らかにすること
方法:ICUに48時間以上在室し,人工呼吸療法を行った成人患者201名に縦断調査を行った.ICU退室早期に集中治療体験,ICU退室3ヵ月後にpost-traumatic stress disorder(PTSD),不安,抑うつ症状を測定した.
結果:141名が調査を完了した.ICU退室3ヵ月後の臨床上問題となるPTSD,不安,抑うつ症状の有病割合は17.0,19.9,36.9%で,43.3%がいずれかに該当した.集中治療体験は精神的問題との関連を示さず,ICU入室中の不穏,ICU退室早期の不安,抑うつが関連した.
結論:ICU退室3ヵ月後に40%を超える患者が精神的問題を有する現状が明らかになった.今後は,不穏および鎮静管理と精神的問題の関連の検討が必要である.
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矢野 真理, 小林 裕美
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
431-440
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/20
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目的:本研究は,エンド・オブ・ライフケアにおける超高齢者の療養場所選択に対する意思決定支援を行うために,急性期病院の熟練看護師が超高齢者と家族の意思をどのようにくみ取り,意思決定支援を実践しているかについての構造を明らかにする.
方法:研究参加者10名に半構造化面接を行い質的統合法(KJ法)にて分析した.
結果:熟練看護師は,【超高齢者への理解の追求】と【家族への理解の追求】の両面から【療養場所決定の中にある本人の尊厳】を尊重していた.さらに,【超高齢者側から見た最適医療】のために超高齢者の価値観や体験の理解をし,【医療者側から見た最適医療】を見定める調整をして【病院医療依存の中にある本人の尊厳】を守り【希望療養場所の実現可能性支援】を行っている構造が明らかとなった.
結論:熟練看護師は,超高齢者の尊厳の追求を中心に据え,超高齢者医療のあり方への挑戦を実践していることが示唆された.
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上國料 美香, 舟島 なをみ
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
441-448
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/20
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目的:患者安全のための医療事故防止行動自己評価尺度―看護師長用―を開発する.
方法:質的帰納的研究成果を基に質問項目の作成と尺度化を行った.尺度の検討会とパイロットスタディにより再構成した29項目の尺度を用いて全国調査を行った.尺度の信頼性と妥当性は,収集したデータを用いた項目分析,信頼性係数の算出など統計学的手法を用いて検証した.
結果:看護師長1,154名に尺度を配布した.回収数672(回収率58.2%)のうち有効回答580を分析した.I-T(項目-全体)相関係数は.39から.64,尺度全体のクロンバックα係数は.91であった.既知グループ技法により,2仮説はそれぞれ支持された.再テスト法の相関係数は.85であった.主成分分析の結果は,第1成分に.37以上の負荷量を示した.寄与率は,28.3%であった.
結論:患者安全のための医療事故防止行動自己評価尺度―看護師長用―29項目は,一定の信頼性と妥当性を有する.
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園田 希, 髙畑 香織, 堀内 成子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
449-457
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/20
ジャーナル
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目的:乳児とふれ合う経験がない初産婦を対象に,乳児と対面で接触する効果を検証する.
方法:2群比較のランダム化比較試験.2群は1)30分間乳児と接触する対面接触群と,2)30分間,乳児の遊び,直接授乳,眠る様子の映像を視聴する映像群である.アウトカムは対児感情評定尺度の接近得点と回避得点,状態不安得点の介入前後の変化量である.
結果:接近得点は両群で介入後に上昇し,変化量は対面接触群3.5 ± 3.5,映像群1.2 ± 3.6で対面接触群の方が有意に増大し,効果量は中だった(t = 2.896, p = 0.01, d = 0.66).回避得点と状態不安得点の変化量は,両群に有意な差はなかった(t = –1.530, p = 0.13, d = 0.34; t = –1.243, p = 0.22, d = 0.29).
結論:2群比較の結果,接近得点の変化量は対面接触群の方が有意に上昇した.両群で介入後の接近得点は上昇,回避得点と状態不安得点は減少した.本結果より,初めて母親になる妊婦と乳児との接触やケアを創る必要がある.
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林 由佳, 高木 二郎, 齋藤 信也
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
458-466
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/25
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目的:看護師における健康アウトカムに対する,職域ストレス要因とジョブ・クラフティング(JC)との交互作用を調べることを目的とした.
方法:5団体148名の看護師を対象に自記式質問紙調査を行い,健康アウトカム,職域ストレス要因,JCの4つの下位尺度を測定した.線形回帰分析にて交互作用を評価した.
結果:心理的ストレス反応に対する仕事のストレインと「構造的な資源の向上」,ワーク・エンゲイジメントに対する個人的ないじめと「妨害的な要求度の低減」,疲労に対する個人的ないじめと「対人関係における資源の向上」,心理的ストレス反応に対する個人的ないじめと「挑戦的な要求度の向上」のそれぞれの交互作用が有意(p < 0.05)であった.人口統計学的因子で調整すると,最後の交互作用のみ有意(p < 0.05)であった.
結論:目的に記した交互作用を認めた.「挑戦的な要求度の向上」は,個人的ないじめによるストレスを緩和することが示唆された.
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―看護師長の視点から―
倉岡 有美子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
467-475
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/26
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目的:看護師長の視点で,病院における新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)患者受け入れ体制の構築・運用プロセスを明らかにすることである.
方法:九州地方にあるCOVID-19患者を受け入れた病院に所属し,患者受け入れ体制の構築・運用に携わった,看護師長8名に半構成的面接を実施し,得られたデータを質的記述的に分析した.
結果:COVID-19感染流行期・第1波の際,看護師長は,病院の方針を受けて〔自部署での患者受け入れを受諾〕し,〔急ピッチでの患者受け入れ体制作り〕をした.第1波の沈静後は,〔COVID-19患者に提供する治療・看護の安定化〕を図り,第2波到来から2021年1月にかけて,〔感染再拡大から長期化への対応〕をしていた.
結論:今後の新興感染症流行時の医療提供体制の構築・運用に向けての示唆が得られた.
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―アクションリサーチによる取り組み―
新井 里美, 中田 ゆかり, 比嘉 勇人
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
476-485
発行日: 2021年
公開日: 2021/11/27
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目的:2017年に実施した入退院を繰り返す保存期慢性腎臓病患者11名の療養体験に関するインタビュー結果報告会とコンコーダンス概念の勉強会を通して,看護師の療養指導時の認識や実践にどのような変化がおこるのかを記述し,そのプロセスを考察することである.
方法:2018年5月~2020年3月にアクションリサーチにより腎臓内科病棟看護師に報告会および勉強会を3回実施後,看護師4名に2回面談を行い,質的記述的に分析した.
結果:報告会および勉強会で現状の療養指導の問題点が明確化され,病棟看護師は療養指導の視点を自ら再考することができた.その後の療養指導時【一方的な指導が問題だと思う】ことから【患者の言葉で語ってもらうことを意識した】等の認識により,【先入観をもたずに患者自身の状況を意識して話をきいた】ことで【患者の生活に合わせた代替案を話し合った】等の実践の変化がみられた.
結論:患者の療養体験を知りコンコーダンス概念を意識することで,患者の療養における行動変容に効果的な療養援助への示唆を得た.
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福井 幸子, 安岡 砂織, 中原 純, 矢野 久子, 大西 香代子
原稿種別: 原著
2021 年 41 巻 p.
486-493
発行日: 2021年
公開日: 2021/12/04
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目的:感染症患者の視点で医療者の倫理的行動を探索し,診断時と最近の受診時の体験から医療者に求められる倫理的行動を検討する.
方法:HBVキャリアを対象に5段階のリッカート法で質問紙調査を実施し,探索的因子分析後,対応のあるt検定で比較した.
結果:医療者の倫理的行動に関する尺度は4因子18項目で構成され,全項目におけるCronbach’s α係数は.902であった.「不安な心に寄り添う看護」の診断時(中央値1990年)と最近の受診時(2018年)の平均±標準偏差は2.0 ± 1.1,2.2 ± 1.1(p < .05)で,「病気を理解し,受容できる説明」3.0 ± 1.3,3.6 ± 1.2(p < .01),「公平な対応」4.3 ± 1.0,4.7 ± 0.6(p < .01),「前を向いて生きていくための支援」2.9 ± 0.9,3.2 ± 1.0(p < .01)であった.
結論:感染症患者に対する医療者の倫理的行動に関する質問項目は,信頼性・妥当性が検証された.「第I因子:不安な心に寄り添う看護」に有意差はみられたが,得点数は低かった.
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