日本看護科学会誌
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原著
看護職の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢:構成要因の探索
中村 幸代竹内 翔子大久保 菜穂子堀内 成子
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2021 年 41 巻 p. 527-536

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Abstract

目的:看護職の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の構成要因を探索する.

方法:全国の分娩取扱い施設で妊婦健診に3年以上携わっている看護職を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した.

結果:分析対象数は733名である.妊婦健診時での看護職の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の構成要因として27項目4因子が抽出された.抽出された因子は,【1.触れて冷えを確認する】【2.共感的態度で傾聴する】【3.ペースや意向を尊重する】【4.共に冷え症改善行動を考える】であった.冷え症ケア実施の有無の比較では,第1因子の合計得点の差異が最も大きく(4.82点),順に第4因子(2.03),第3因子,第2因子であった.

結論:「触れて冷えを確認する」「共に冷え症改善行動を考える」が冷え症ケアに特化した因子であり,「共感的態度で傾聴する」「ペースや意向を尊重する」が看護全般に共通する因子として示唆された.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to identify the components related to the basic approach of nurses to pregnant women with hiesho.

Methods: Nurses involved in prenatal health examination of pregnant women, conducted at obstetric facilities throughout Japan for at least three years, were asked to anonymously complete self-administered questionnaires.

Results: The responses of 733 nurses were analyzed. Twenty-seven items and four factors were identified as the components of the basic approach of nurses to pregnant women suffering from hiesho during pregnancy health examinations. The factors included “tactile confirmation of hiesho”, “listening carefully with a sympathetic attitude”, “respecting the patient’s pace and intentions”, and “collaborating on how to alleviate hiesho”. In the comparison between patients with and without hiesho care, the difference in the total score was greatest for the first factor (4.82 points), followed by the fourth (2.03), third, and second factors in that order.

Conclusion: It was suggested that “tactile confirmation of hiesho” and “collaborating on how to alleviate hiesho” are factors especially useful for hiesho care, while “listening carefully with compassion” and “respecting the patient’s pace and intention” are factors common to general nursing.

Ⅰ. 緒言

先行研究によると,我が国の女性の70.5%が冷え症であり(渡邊,2017),妊婦においても66%が冷え症である(中村,2008).妊婦の冷え症の問題点の1つとして,冷え症であることで,早産率は3.4倍に高まることがあげられる.(Nakamura & Horiuchi, 2019).冷え症である場合の早産率は,特に妊婦の年齢と関係が深く,冷え症でない場合と比較し,35歳未満では3.1倍であるのに対し,40歳以上では5.1倍と高齢で顕著に増加する(Nakamura & Horiuchi, 2013).このように,出産の高齢化が著しい我が国において,冷え症は改善を要する異常分娩のリスクファクターである.

冷え症とは,駆幹部に比べ四肢が低体温の状態を示し,冷えている自覚を伴う(渡邊,2017).冷え症の病態は,自律神経機能が低下し,交感神経系が優位になることで,末梢の血管が収縮し,四肢の血液循環が悪化することである(尾形ら,2017).自律神経機能は,視床下部でコントロールされており,視床下部は同時に内分泌機能もコントロールしているため,ホルモンバランスが大きく変動する妊娠期では,特に自律神経機能は低下しやすく冷え症を発症しやすい(Yoshino et al., 2013伊藤,2015).そのため,妊娠期を通しての冷え症の診断と妊婦に対する看護職の適切なケアの実施が求められている.

看護職の冷え症の診断と妊婦に対する適切なケアを妊婦健康診査(以下妊婦健診)で行うことは,妊婦健診の目的と合致する.わが国では,妊婦の健康の保持増進を図り,安全・安心な妊娠・出産に資するよう定期的かつ継続的な妊婦健診が推奨されている.妊婦健診の回数は,妊娠12~23週で4週間に1回,妊娠24~35週で2週間に1回,妊娠36週以降は1週間に1回に定められている(厚生労働省,2015).その内容は3本柱で構成されており,①健康状態の把握(妊娠月週数に応じた問診,診査等),②検査,③妊娠中の生活上の注意事項等についての具体的な保健指導である(厚生労働省,2015).国際的には,WHO(世界保健機構)は,安全・安楽な妊娠期を過ごすために,専門家による妊婦ケアを受けることを推奨している(WHO, 2016).イギリスのNational Institute for Health and Care Excellence(以下NICE)の診療ガイドラインでも,専門家による継続的な妊婦健診の重要性を提言している(NICE, 2019).妊婦健診における専門家の継続ケア効果の研究では,Sandall et al.(2016)の15件のシステマティックレビューによると,助産師中心の継続ケアを受けた女性は,受けなかった女性と比較して,早産や胎児死亡・新生児死亡の発生率が有意に低く,満足度が有意に高かった.Downe et al.(2019)の85件のシステマティックレビューでは,妊娠期ケアはマタニティケアの中核を担うものであり,専門家の健康と幸福に関する適切なサポート提供により,妊婦自らが意思決定しセルフケア実施に繋がるとし,その有用性について報告している.

冷え症改善のためのケアとして,先行研究での構造方程式モデリングによると,冷え症と日常生活行動とは有意に関連していた.したがって,冷え症改善のためには,規則的な生活や食事の摂取等が妊婦自ら行えるように,具体的で効果的な援助方法を模索していく必要がある(中村,2008).また,RCTデザインでの冷え症ケアの研究では,冷え症改善のセルフケアを実施した群は,実施しなかった群と比較して,四肢の体温は上昇し,冷え症の自覚は有意に低下した(Nakamura & Horiuchi, 2017).以上から,妊婦健診での冷え症の問診や触診,冷え症改善のため妊婦の行動変容を促す適切な保健指導の実施は,冷え症改善に導くことに有効であることが推測できる.

我々は,2017年に全国の看護職を対象として冷え症ケアの実態調査を行った(中村ら,2020).この全国の実態調査から判明したことは,妊婦健診に関わる看護職の冷え症ケアの実施率は44.1%と低く,冷え症を改善するためのケアの具体的な内容は,冷え症の確認・冷え症改善のための保健指導・マッサージや足浴の実施等であった.またHoriuchi et al.(2009)は,周産期における医療者の取るべき基本姿勢として,個人としての女性を尊重し,対等な立場で協働すること,相手を脅かさないケアを行うことが重要と述べている.そこで本研究は,その実態調査で用いた質問項目の中から「妊婦健診時の冷え症妊婦への関わり方」部分の因子分析を行い,「妊婦健診時の関わり方の基本姿勢」の構成要因を探索することを目的にする.本研究の意義として,本研究結果で得られる構成要因を,妊婦健診時の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢として明確に位置づけることで,論理的かつ適切な冷え症ケアの構築が可能となり,冷え症妊婦に対する具体的な冷え症ケア実施につながる.将来的には,本構成要因を基盤とした冷え症ケアプログラムを作成し,看護職の実施する冷え症ケアが妊婦の冷え症を改善するかを検証する実装研究を実施する.さらに,その有用性が確認されれば,冷え症ケア尺度やエビデンスに基づく冷え症ケアガイドライン構築への発展が期待できる.

〈本研究の用語の定義〉

冷え症妊婦:冷え症の自覚がある妊婦のこと(中村ら,2020渡邊,2017

冷え症ケア:冷え症に対する予防・改善のためのケア全般のこと(中村ら,2020

冷え症妊婦に対する関わり方:妊婦健診時の問診や保健指導などの場における,冷え症妊婦の言動に対する看護職の応答

Ⅱ. 研究方法

1. 研究デザイン

無記名自記式質問紙を用いた量的記述的研究である.

2. 研究対象・調査期間

研究対象は,全国の分娩を取り扱う病院・診療所・助産所に勤務しており,妊婦健診に3年以上携わっている看護職である.妊婦健診での保健指導は助産師のみが実施しているとは限らず,助産師が不在の施設も多い.そのため,看護職の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の構成要因を探索することで,汎用性あるプログラム構築につながると考え対象を看護職とした.

調査期間は,2017年10月から11月の約2か月間である.

3. 調査方法

調査方法は,無記名自記式質問紙調査である.対象の選定は,病院・診療所は,日本産婦人科学会のホームページ(日本産婦人科学会,2017),助産所は,日本助産師会のホームページ(日本助産師会,2017)から確認し,全国の分娩を取り扱う施設を対象とした.研究協力の依頼方法は郵送であり,依頼の総数は2,694施設である.依頼宛は,各施設の看護管理者であり,3年以上妊婦健診に携わっている看護職1名(できれば助産師)を選定してもらい,同封の調査用紙一式(研究説明文書・質問紙・返信用封筒)を渡してもらった.また,回答した質問紙は,同封の返信用封筒で無記名のまま投函してもらった.

調査項目は,対象者の属性,冷え症妊婦に対する妊婦健診時の関わり方の基本姿勢30項目,冷え症ケア実施の有無である.妊婦健診時の関わり方の基本姿勢の質問項目では,「冷え症の妊婦に対する妊婦健診時の関わりとしてどの程度実施していますか」と質問し,「5.いつも実施している」~「1.全く実施していない」の5段階のリッカート尺度で回答してもらった.得点が高いほどよく実施していることを示す.また冷え症ケアの実施の有無の質問では,「妊婦健診時に冷え症に対する予防・改善のためのケアの実施をしているか」と質問し,「実施している」「実施していない」の2択で回答を得た.なお,看護職の冷え症妊婦に対する妊婦健診時の関わり方の基本姿勢に関する項目内容の作成にあたり,冷え症妊婦に対する行動変容を促す保健指導や妊婦と関わる上での看護職の基本姿勢に関する国内外の文献レビューを基に項目を抽出した.抽出した項目は,冷え症ケアを実施している看護職に特徴的なもののみではなく,冷え症妊婦に対する関わり方として適切であると考えられる項目を抽出した.そして,妊婦健診に携わっている助産師経験10年以上の専門家4名を対象に,項目内容1つひとつが,妊婦健診時の冷え症妊婦の関わり方の基本姿勢に関する構成要素や構成概念と合致しているか,追加・削除項目がないかを,「当てはまる」「当てはまらない」の2段階で評価し論理的妥当性の検討を行った.最終的には妊婦健診時の冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢の項目は30項目となった.表面妥当性については,4名の看護者に依頼し,質問内容の回答時間,回答のしやすさ,理解しやすさ,負担感について4段階で評価し,問題が指摘された内容を修正した.

4. 分析方法

統計的分析には統計ソフトIBM SPSS Statistics 25.0を使用した.冷え症ケア実施の有無での属性の比較では,Fisherの正確確率検定とt検定を用いた.妊婦健診時の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の分析には,妊婦健診に携わっている看護職一般に当てはまる冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢について,共通の構成要因(因子構造)を探索するため探索的因子分析を実施した.因子分析の因子数は,スクリープロット基準結果から判断し,因子負荷量の推定は,重み付き最小2乗法,因子の回転は,直接オブリミン法を選択し,因子負荷量0.4以上の項目を採用した.項目間での信頼性は,信頼性係数Cronbach αで,妥当性はKaiser-Meyer-OlkinとBartlettの球面性検定で確保されているかを評価し,各因子間の相関は因子相関行列で分析した.そして,t検定にて,冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢の構成要因(因子構造)が冷え症ケアの特徴であるといえるか,冷え症ケア実施の有無での因子の各項目得点を比較し,p < 0.05(95%CIは1をまたがない)を有意に差があると評価した.

5. 倫理的配慮

本研究の同意の承認をもって分析の対象とした.本研究は横浜市立大学ヒトゲノム・遺伝子研究等倫理委員会での承認を得て実施した(承認番号:A170900006).

Ⅲ. 結果

質問紙は742部回収し,そのうち属性が無回答であったものや回答に矛盾があったものを除く733部を分析対象とした(回収率27.5%,有効回答率98.8%).その内訳は,助産師677名(92.3%),看護師42名(5.7%),准看護師・その他14名(2.0%)であった.

1. 冷え症ケア実施の有無による対象の属性(表1

冷え症ケア実施の有無により,次の2群に分けて分析した.なお,冷え症ケア実施群は323名(44.1%),実施なし群は410名(55.9%)である.妊婦健診経験年数では,冷え症ケア実施群は15.1 ± 9.5年,実施なし群は13.3 ± 8.4年であり,実施群の方が長かった(p = 0.007).現在の就労機関では,助産所の冷え症ケア実施群は95名(96.9%)であり,病院112名(38.6%),診療所115名(33.7%)と比較して,冷え症ケア実施群が有意に多かった(p < 0.001,調整済み残差11.3).助産師外来の有無では,助産師外来がない場合の冷え症ケア実施群は101名(27.7%)であるのに対し,実施なし群は264名(72.3%)であり,冷え症ケア実施なし群は助産師外来がないと回答した割合が有意に多かった(p < 0.001,調整済み残差8.9).また,妊婦健診の回数別では,冷え症ケア実施群は毎回保健指導を行っている場合が146名(71.2%)であり,他の回数と比較して有意に多かった(p < 0.001,調整済み残差9.5).

表1  冷え症ケア実施の有無による対象の属性 N = 733
属性 全体(人数)
733(100)
冷え症ケア実施
あり人数(%)
323(44.1)
冷え症ケア実施
なし人数(%)
410(55.9)
p
年齢(歳) 20歳代後半 33 12(36.4) 21(63.6) .200
30歳代 162 62(38.3) 100(61.7)
40歳代 264 118(44.7) 146(55.3)
50歳代 274 131(47.8) 143(52.2)
現在の職業 助産師 677 315(46.5) 362(53.5) <.001
看護師 42 6(14.3) 36(85.7)
准看護師 14 2(15.4) 12(84.6)
妊婦健診経験年数* (Mean + SD) 15.1 ± 9.5 13.3 ± 8.4 .007
現在の就労機関(n = 729) 病院 290 112(38.6) 178(61.4) <.001
診療所 341 115(33.7) 226(66.3)
助産所 98 95(96.9) 3(3.1)
助産師外来の有無(n = 732) あり 269 127(47.2) 142(52.8) <.001
なし 365 101(27.7) 264(72.3)
非該当 98 95(96.9) 3(3.1)
妊婦健診での保健指導の実施状況(n = 690) 毎回実施 205 146(71.2) 59(28.8) <.001
妊娠時期に応じて実施 312 104(33.3) 208(66.7)
必要と判断した場合のみ実施 124 27(21.8) 97(78.2)
助産師外来時のみ実施 42 23(54.8) 19(45.2)
全く実施していない 7 1(14.3) 6(85.7)

Fisher正確確率検定 *:t検定 n(%) *:Mean ± SD

2. 妊婦健診時における冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢を構成する因子(表2表3

看護職による冷え症妊婦に対する妊婦健診時の関わり方の基本姿勢に関する30項目で探索的因子分析を実施した.その結果,27項目4因子が抽出された.なお,因子分析の妥当性の評価は,Kaiser-Meyer-Olkin:0.91,Bartlettの球面性検定:p < 0.001であり,妥当性は十分に確保できた.

表2  冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢:探索的因子分析 N = 733
項目 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 信頼性係数Cronbach α
触れて冷えを
確認する
共感的態度で
傾聴する
ペースや意向を尊重する 共に冷え症改善行動を考える
第1因子:触れて冷えを確認する .86
腰部に触れる .79
臀部に触れる .76
妊婦と一緒に妊婦の身体に触れる .60
上肢に触れる .59
腹部に触れる .53
下肢に触れる .52
妊婦にも自分の腹部を触ってもらう .47
温かい手で触れる .44
第2因子:共感的態度で傾聴する .86
あいづちをうちながら話を聴く .93
うなずきながら話を聴く .90
妊婦の目を見ながら話を聴く .65
状況に応じて声のトーンを調整する .51
第3因子:ペースや意向を尊重する .89
自分の考えを押し付けない .86
話を遮らない .82
相手の考えを先読みしない .77
相手の話の内容や考えを否定しない .71
先入観を持たずに接する .68
リラックスした態度で接する .56
穏やかな表情で接する .52
話をするよりも聞くことに時間を割く .49
状況に応じて表情を変えて接する .40
第4因子:共に冷え症改善行動を考える .87
改善が必要な行動の原因を妊婦と共に考える .98
改善が必要な行動の対処法を妊婦とともに考える .97
行動が改善したか確認する .63
家族をケアに参加させる .49
妊婦が望ましい行動をした場合にはほめる .45
妊婦の生活状況に合わせた指導をする .44
累積寄与率(%) 28.91 36.80 44.25 49.97

重み付き最小2乗法 斜交回転:直接オブリミン法

Kaiser-Meyer-Olkin .91 Bartlett の球面性検定:p < .001

表3  冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢:因子間相関
第1因子 第2因子 第3因子 第4因子
因子名 触れて冷えを確認する 共感的態度で傾聴する ペースや意向を
尊重する
共に冷え症改善行動を
考える
第1因子 触れて冷えを確認する 1.00 .18 .27 .38
第2因子 共感的態度で傾聴する .18 1.00 .46 .31
第3因子 ペースや意向を尊重する .27 .46 1.00 .52
第4因子 共に冷え症改善行動を考える .38 .31 .52 1.00

重み付き最小2乗法 斜交回転:直接オブリミン法

第1因子は,〈腰部に触れる〉,〈臀部に触れる〉等の8項目であるため【触れて冷えを確認する】と命名した.項目間での信頼性係数Cronbach αは,0.86であった.第2因子は,〈あいづちをうちながら話を聴く〉,〈うなずきながら話を聴く〉等の4項目であるため【共感的態度で傾聴する】と命名した.項目間での信頼性係数Cronbach αは,0.86であった.第3因子は,〈自分の考えを押し付けない〉,〈話を遮らない〉等の9項目であるため【ペースや意向を尊重する】と命名した.項目間での信頼性係数Cronbach αは,0.89であった.第4因子は,〈改善が必要な行動の原因を妊婦と共に考える〉,〈改善が必要な対処法を妊婦と共に考える〉等の6項目であるため【共に冷え症改善行動を考える】と命名した.なお,項目間での信頼性係数Cronbach αは,0.87であった.なお,すべての因子において内的整合性は高かった.

また,第2因子【共感的態度で傾聴する】と第3因子【ペースや意向を尊重する】との間(相関係数:0.52),第3因子【ペースや意向を尊重する】と第4因子【共に冷え症改善行動を考える】との間に正の相関がみられた(相関係数:0.46).

3. 冷え症ケア実施の有無による妊婦健診時の冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢(表4

上記4因子の因子得点および各項目得点について,冷え症ケア実施の有無による比較を行った.その結果,すべての因子で冷え症ケア実施群のほうが実施なし群と比較して有意に因子得点が高かった(p < 0.05).次に,各項目得点について,冷え症ケア実施の有無による妊婦健診時の冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢について比較した.その結果,第1因子【触れて冷えを確認する】では,8項目すべてにおいて,冷え症ケア実施群の方が実施なし群と比較して実施していた(p < 0.001).

表4  冷え症ケア実施の有無による冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢 N = 733
冷え症ケア
実施あり
Mean ± SD
冷え症ケア
実施なし
Mean ± SD
t値 p 95%信頼区間
下限 上限
第1因子 触れて冷えを確認する 因子合計得点 30.62 ± 5.8 25.80 ± 5.3 11.7 <.001 4.04 5.67
腰部に触れる 3.55 ± 1.2 2.67 ± 1.2 9.8 <.001 .70 1.05
臀部に触れる 3.02 ± 1.4 2.21 ± 1.0 8.9 <.001 .63 .98
妊婦と一緒に妊婦の身体に触れる 3.43 ± 1.3 2.65 ± 1.3 8.3 <.001 .60 .97
上肢に触れる 3.62 ± 1.3 2.95 ± 1.2 7.2 <.001 .49 .90
腹部に触れる 4.67 ± .6 4.46 ± .9 3.9 <.001 .11 .33
下肢に触れる 4.63 ± .7 4.25 ± 1.0 6.1 <.001 .26 .50
妊婦にも自分の腹部を触ってもらう 3.10 ± 1.5 2.35 ± 1.4 6.7 <.001 .53 .96
温かい手で触れる 4.59 ± .7 4.21 ± 1.0 6.2 <.001 .26 .50
第2因子 共感的態度で傾聴する 因子合計得点 19.22 ± 1.6 18.90 ± 1.8 2.5 .01 .07 .56
あいづちをうちながら話を聴く 4.83 ± .4 4.75 ± .5 2.3 .02 .13 .15
うなずきながら話を聴く 4.83 ± .4 4.73 ± .5 2.6 .01 .03 .17
妊婦の目を見ながら話を聴く 4.83 ± .4 4.77 ± .5 1.8 .07 –.01 .13
状況に応じて声のトーンを調整する 4.72 ± .6 4.65 ± .6 1.8 .08 –.08 .16
第3因子 ペースや意向を
尊重する
因子合計得点 39.61 ± 4.7 38.57 ± 4.9 2.9 .003 .35 1.75
自分の考えを押し付けない 4.37 ± .7 4.23 ± .8 2.4 .02 .03 .25
話を遮らない 4.33 ± .8 4.28 ± .8 .8 .40 –.07 .17
相手の考えを先読みしない 3.98 ± .8 3.93 ± .9 .8 .41 –.07 .18
相手の話の内容や考えを否定しない 4.54 ± .7 4.43 ± .7 2.1 .03 .01 .21
先入観を持たずに接する 4.36 ± .7 4.12 ± .8 4.2 <.001 .13 .35
リラックスした態度で接する 4.60 ± .6 4.51 ± .6 2.0 .048 .01 .18
穏やかな表情で接する 4.71 ± .5 4.61 ± .6 2.4 .02 .02 .18
話をするよりも聞くことに時間を割く 4.29 ± .7 4.18 ± .8 2.0 .048 .01 .23
状況に応じて表情を変えて接する 4.43 ± .7 4.27 ± .7 2.9 .004 .05 .26
第4因子 共に冷え症改善行動を
考える
因子合計得点 26.63 ± 3.2 24.60 ± 3.6 8.0 <.001 1.54 2.54
改善が必要な行動の原因を妊婦と共に考える 4.42 ± .7 4.07 ± .8 6.6 <.001 .25 .47
改善が必要な行動の対処法を妊婦とともに考える 4.46 ± .6 4.10 ± .7 7.1 <.001 .27 .47
行動が改善したか確認する 4.33 ± .8 3.90 ± .8 7.1 <.001 .31 .54
家族をケアに参加させる 4.0 ± .9 3.6 ± .9 6.0 <.001 .29 .56
妊婦が望ましい行動をした場合にはほめる 4.71 ± .5 4.48 ± .7 5.1 <.001 .14 .32
妊婦の生活状況に合わせた指導をする 4.67 ± .5 4.43 ± .7 5.3 <.001 .15 .32

t検定

第2因子【共感的態度で傾聴する】では,4項目のうち,〈あいづちをうちながら話を聴く〉,〈うなずきながら話を聴く〉の2項目で,冷え症ケア実施あり群の方が実施なし群と比較して実施していた(p < 0.05).第3因子【ペースや意向を尊重する】では,9項目のうち,〈自分の考えを押し付けない〉,〈相手の話の内容や考えを否定しない〉,〈先入観を持たずに接する〉,〈リラックスした態度で接する〉,〈穏やかな表情で接する〉,〈話をするよりも聞くことに時間を割く〉,〈状況に応じて表情を変えて接する〉の7項目で,冷え症ケア実施あり群の方が実施なし群と比較して実施していた(p < 0.05).第4因子【共に冷え症改善行動を考える】では,6項目すべてにおいて,冷え症ケア実施あり群の方が実施なし群と比較して実施していた(p < 0.001).

結果の表4において,第1因子の合計得点の「冷え症ケア実施群」30.62に対して,「冷え症ケア実施なし群」25.80とその差異が,4.82認められたのに対して,第2因子の差異は0.32,第3因子の差異は1.04,第4因子の差異は2.03と,第1因子の合計得点の差異が最も大きく,次は第4因子であった.

Ⅳ. 考察

1. 冷え症ケア実施の有無による妊婦健診時の冷え症妊婦への関わり方の基本姿勢

冷え症妊婦の健康維持・向上のためには,助産師の継続ケアのみならず,冷え症妊婦自身によるセルフケアの実施とそれを支援する看護職の役割は大きい.冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の構成要因として,【触れて冷えを確認する】【共感的態度で傾聴する】【ペースや意向を尊重する】【共に冷え症改善行動を考える】の4因子構造を有し,冷え症ケア実施群と実施なし群の比較で,4因子すべてにおいて冷え症ケア実施群の因子得点が有意に高かった.以下,第1因子から順に考察する.

1) 触れて冷えを確認する

結果表4において,因子の合計得点の「冷え症ケア実施群」と「冷え症ケア実施なし群」との差異は,第1因子が4.82点認められるのに対して,第2位因子の差異0.32,第3因子の差異1.04,第4因子の差異2.03と,第1因子の差異が最も大きいことから,第1因子が最も冷え症妊婦に対する特徴的な関わり方の構成要因であると推察される.

触れて冷えを確認するでは,冷え症ケア実施群は,〈腰部に触れる〉,〈臀部に触れる〉等の関わり方を実施していた.岡本らは,妊婦に触れることは,助産師の判断基準になると述べている(岡本ら,2017).本研究でも,【触れて冷えを確認する】ことを通し,妊婦の冷え症の状態を正確にアセスメントしていた.本研究でも,冷え症ケアを実施している看護職の背景要因として,妊婦健診経験年数が長い,助産師外来の実施や妊婦健診での保健指導の実施回数が多いといった専門性の高さが明らかとなった.さらに,先行研究で,「妊婦自身の身体感覚が高まり自分の体を知る,助産師がその気づきの手立てになる(岡本ら,2017)」と述べられているように,冷え症の診断だけでなく,妊婦自身が自己に触れて冷えを確認することで,冷え症の有無を自己診断できるようにサポートすることも,冷え症妊婦のセルフケアを促すうえで重要である.妊婦に触れることの効果は,冷え症の診断ばかりではない.患者に触れることの効果について,Kerr et al.(2019)の64件のシステマティックレビューでは,患者-看護師の信頼関係を促し,患者に肯定的なケアを受けたという経験と癒しをもたらすことが報告されている.妊婦に触れることの効果についても,温かい手で触れることは診断以前に大切なものであり,触れることを重ね妊婦との距離感が縮まり,信頼関係が深まり,ひいては,効果的な冷え症診断につながるものと考える.

以上から,本因子は,冷え症妊婦に対する特徴的な関わり方の因子であり,冷え症ケアを実施している看護職は,冷え症妊婦との信頼関係を構築し,冷え症妊婦の身体に触れ,妊婦自身も自分に触れて冷え症の有無を的確に診断していると考える.

2) 共感的態度で傾聴する

共感的態度で傾聴するでは,冷え症ケア実施群は,〈うなずきながら話を聴く〉等の関わり方をしていた.長尾(2013)の40件による「看護における傾聴」の概念分析によると,看護における傾聴は,患者に対する共感や受容,肯定的関心をもとに患者と同調しながら話に耳を傾けることであり,患者と看護師の間で行われる専門的なコミュニケーションであると述べている.また,傾聴の帰結では,共感的態度で傾聴することにより,患者と看護師の間に信頼関係が構築され,患者は精神面の安定が図られ,自分自身を振り返り,感情を言語化し,最終的に問題解決に向けた行動がもたらされることが示されている.Nicoloro-SantaBarbara et al.(2017)も妊婦と助産師のコミュニケーションについて,助産師からの共感的態度で傾聴する等のコミュニケーションは,妊婦の適切な健康行動に関連していたと述べている.三ツ谷ら(2018)もセルフケア促進のためには,妊婦の主体性を育むことを重要視しており,主体性とは,妊婦が自分の問題を発見し,自身の行動を決定し実施・評価していくことであり,その主体性を育むためには,妊婦の発言に対する助産師の受容や共感が重要であると述べている.

本研究でも,冷え症ケアを実施している看護職は,〈うなずきながら話を聴く〉等を通して,冷え症妊婦と同調しながら冷え症ケアに関する専門的なコミュニケーションを実施している.そして,【共感的態度で傾聴する】関わりを通して,冷え症妊婦との信頼関係を構築し,妊婦との専門的なコミュニケーションから,妊婦自身が主体的に問題解決に向けた健康行動に至るようにしていると考える.

3) ペースや意向を尊重する

ペースや意向を尊重するでは,冷え症ケア実施群は,〈自分の考えを押し付けない〉,〈相手の話の内容や考えを否定しない〉,〈先入観を持たずに接する〉等の関わりをしていた.Women-Centered Careは,周産期ケアの基盤となる概念である.Iida et al.(2014)は,Women-Centered Careの第1の特徴は,女性の尊重であり,女性の意思決定を促し,その決定を尊重するということであり,女性が自ら健康増進行動の方法を学ぶことにつながると述べている.英国のNICEのガイドラインでも,看護者は,妊婦が自らのケアに関する情報に基づいた意思決定を行えるように情報とサポートを提供する必要があり,妊婦の信念と価値観は常に尊重されるべきであると述べている(NICE, 2019).本研究においても,冷え症ケアを実施している看護職は,自分の考えを押し付けず,妊婦の話の内容や考えを否定せず,妊婦の意思決定を促し,その決定を尊重する関わりをしており,冷え症改善のための看護職の関わりの基盤には,Women-Centered Careの概念があることが示唆された.また,【ペースや意向を尊重する】は,第2因子【共感的態度で傾聴する】や第4因子【共に冷え症改善行動を考える】との間に正の相関がみられたことから,妊婦を尊重する関わりが,妊婦への信頼関係の構築や継続的な行動変容を支えるケア,つまり冷え症妊婦のセルフケアを促す看護ケアにつながっていると考える.

4) 共に冷え症改善行動を考える

【共に冷え症改善行動を考える】では,冷え症ケア実施群は,改善が必要な行動の原因やその対処法を冷え症妊婦とともに考えていた.結果表4に示された因子得点の差異も,「冷え症ケア実施群」と「冷え症ケア実施なし群」との差異は,第1因子に次いで大きく,冷え症妊婦に対する特徴的な関わり方の構成要因であると考えられる.津田・石橋(2019)は,健康行動の促進のためには,個人の行動変容が必要であると述べている.また,Prochaska & Velicer(1997)は,行動変容のステージモデルにおいて,行動変容は5つのステージを通る必要があるため時間を要することを示唆している.冷え症の改善においても,身体をあたためる食事の摂取や良質な睡眠,身体をあたためる衣類の着用などが必要であり,これらは日常生活の中での時間をかけた冷え症妊婦のセルフケアにおける行動変容が要となる(中村,2008Nakamura & Horiuchi, 2017).しかし,妊婦のみでの行動変容の継続は困難を要するため,専門家のサポートの重要性が示唆されている(Nakamura & Horiuchi, 2017).眞鍋ら(2001)は,妊婦のセルフケア行動動機づけ評定尺度の外的動機づけとして「医師や助産師によくやっていることを認められたい」という専門家からの承認や賞賛を期待している項目ならびに「医師や助産師が勧める」という専門的な意見が妊婦のセルフケア行動を促進すると報告している.本研究においても,冷え症ケアを実施している看護職は,冷え症妊婦と共に改善が必要な行動の原因や対処法を考え,相手を褒めるなどの肯定的なコミュニケーションをとりながら,妊婦の生活状況に合わせて専門的な指導を実施しており,冷え症ケア改善にむけて,このような専門家としての関わりは効果的であると考える.

以上から,本因子は,冷え症妊婦に対する特徴的な関わり方の因子であり,冷え症ケアを実施している看護師は,冷え症妊婦への頻回な関わりを通して,【共に冷え症改善行動を考える】ことで,冷え症妊婦の日常生活での冷え症改善が継続できるようにサポートしていることが示唆された.

最後に上記をまとめると,看護職の妊婦健診時における冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の構成要因の中で,冷え症ケアに特化しており,冷え症ケア実施に直接的につながる因子は,第1因子「触れて冷えを確認する」と第4因子「共に冷え症改善行動を考える」であると考える.また,第2・3因子は,看護全般に共通する因子であり,冷え症ケアにおいてもこのような看護の基本が適応できることが示唆された.

2. 今後の研究への示唆

本研究により,今後の研究として,本研究結果を冷え症ケアの関わり方の基本姿勢と位置づけ,行動レベルでの継続性の高い冷え症ケアプログラムを開発することや,看護職が実施する冷え症ケアの評価尺度の開発へと進むことが期待できるものである.

Ⅴ. 結論

看護職の妊婦健診時の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の構成要因は,「触れて冷えを確認する」,「共感的態度で傾聴する」,「ペースや意向を尊重する」,「共に冷え症改善行動を考える」であった.その中で,「触れて冷えを確認する」「共に冷え症改善行動を考える」が冷え症ケアに特化した因子であり,「共感的態度で傾聴する」「ペースや意向を尊重する」が看護全般に共通する因子であった.

付記:本研究は,「妊婦のアドヒアランスを促進する冷え症改善支援モデルの開発」の一部であり,看護職の冷え症妊婦に対する関わり方の基本姿勢の構成要因を探索することに焦点を当てて分析したものである.

謝辞:本研究にご協力いただきました皆さまに心から感謝いたします.

本研究は,JSPS科研費25463520の助成を受けて実施したものである.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:NSは研究の着想およびデザインの立案,統計解析および草稿の作成,研究全体の総括;TSは統計解析の実施および草稿の作成;ONは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言;HSは統計解析と草稿の作成および研究プロセス全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み承認した.

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