日本看護科学会誌
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原著
高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能(第2報:看護師と協働する医療職の視点から)
坂本 明子, 正木 治恵, 大原 裕子, 黒田 久美子
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2021 年 41 巻 p. 733-742

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Abstract

目的:看護師と協働する医療職の視点から高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能を明らかにする.

方法:看護師と協働する医療職8名を対象に半構成的面接を行い,質的統合法にて分析した.

結果:看護師と協働する医療職からみた看護師のコーディネート機能は,協働する医療職の【専門性発揮の助け】となる「足掛かり」「羅針盤」「初動」機能と,【多職種間連携に向けた働き】として「本質の見極めとシームレスな橋渡し・役割代行」「求めたい専門領域の尊重・役割移譲」「求めたい確かな情報共有・ズレや誤解を生まない伝達の心掛け」及び【間を結ぶ調整の要】として「間に入っての噛み砕いた伝達とズレの修正」機能が示された.

結論:医療職から見た看護師のコーディネート機能として,関係者の間を結ぶ調整,専門性の発揮,多職種間連携に向けた働きが明らかになり,それらはケア継続に向けて調整機能を礎として発揮された.

Translated Abstract

Aim: This study aimed to identify actions that nurses take in acute care hospital settings to continue with care for elderly people from the perspective of other healthcare professionals who work with nurses.

Methods: Eight healthcare professionals who work with nurses participated in semi-structured interviews regarding nursing actions to continue care for elderly people. Interview data were analyzed using a qualitative synthesis method.

Results: The actions that nurses take in acute care hospital settings to continue with care for elderly people from the perspective of other healthcare professionals who work with nurses are “providing a foothold,” “establishing indicators of directionality,” and “taking initial actions” to support the other healthcare professionals to demonstrate their expertise, and “identifying the essence and seamlessly bridging and substituting roles,” “respecting and transferring the roles of the specialized areas that are desired,” and “sharing reliable information and being mindful of communication that does not cause misunderstanding” to work toward multidisciplinary collaboration. In addition, as “the key to coordination between various stakeholders,” the importance of “communicating clearly and correcting misunderstandings” was identified.

Conclusion: Coordinating between various stakeholders, supporting other healthcare professionals to demonstrate their expertise, and working toward multidisciplinary collaboration were clarified as coordinating actions of nurses from the perspective of other healthcare professionals. These actions were based on coordination between various stakeholders and demonstrated for the continuation of care for the elderly in each of the demonstration of expertise and multidisciplinary collaboration.

Ⅰ. はじめに

75歳以上人口の将来推計が2030年にピークを迎えるにあたり,病気や障害をもちながら暮らす高齢者が増加し,医療・介護需要が増大することが予測されている.政府は2025年に目指すべき医療提供体制の具体策として,医療機能の分化・連携を進めるための施設設備や医療従事者の確保・養成,患者の状態にふさわしい場でより良質な医療サービスを受けられる体制構築を進めている(厚生労働省,2015).多くの疾患や障害を併せもつ高齢者は,疾患の増悪に伴って入退院を繰り返し,入院生活を送るなかで介護やリハビリテーション(以下,リハビリとする)が必要な状態となることも多い.ゆえに高齢者は住み慣れた自宅への復帰へ向けて介護施設等で日常生活動作の再獲得や自宅環境を整えることとなる.治療・療養の場が,病院,施設,自宅など様々であることを見据えると,療養場移動の際のケアの継続は,高齢者が望む過ごし方や実情にあわせた安心で安楽な生活の実現にとって不可欠である.Berglun et al.(2015)は,高齢者の状態評価,多職種でのケースマネジメント,家族支援等の包括的ケアの継続によって,身体機能,心理的健康,経済状況に関する高齢者本人の満足度が,通常ケアより改善する可能性が高いと述べている.

高齢者が望む過ごし方や実情にあわせた療養の調整やケアの継続には,高齢者に関わる保健・医療・福祉メンバーの職種間連携が良好かつ効果的に行われる必要がある.さらに,医療者と高齢者との十分な対話の機会確保や職種間コミュニケーションの充足,業務量の調整といった,メンバーの動きや役割を調整するコーディネーションが必須となる(Redwood et al., 2020).看護師によるコーディネーションの有用性は,American Nurses Association(2012)によるとケアの質向上のみでなく,セルフケアにおける患者の自信向上,医療費の削減につながっていることが示されている.

急性期病院は身体状態とそれに伴う生活状況の変化が急激に生じる場であり,刻々と変化する患者に応じた支援が行われている.大原ら(2019)は本研究の第一報として,看護師の視点から高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能を明らかにした.それによるとコーディネート機能は,看護師の働きかけ先である「高齢者-他職種」を横軸に,また,高齢者が望む生活の継続を支えるための「足固め-動力-調整」機能を縦軸とする座標軸として示された.そして看護師は日常の中から高齢者が必要としている支援内容を捉え,他職種を含めたケア実践の動力となり,医療チーム内で患者の現状を説明し,調整するといった機能へ広がりをみせることが示された.

一方,糖尿病の療養支援,精神科医療の退院支援における連携・継続では,患者の自己管理状況についてのアセスメントを他職種へ伝達し,チーム全体の患者理解を導き調整する役割,情報と人間関係の調整役割,複数の職種から患者が得た知識を生活の場に統合する役割を,協働する医療職は看護師に期待していた(三澤ら,2018;西尾ら,2013).高齢者ケアの連携・継続に関しては,介護老人保健施設の介護職と看護職間の相互理解のための課題を質問紙調査から明らかにしたもの(山田,2015),高齢者ケアを実践するリハビリ職・介護職・栄養士らが捉える多職種連携と自身の専門性についての認識を調査した研究から(袖山ら,2012),看護師は主に医療の視点から全身状態・高齢者の療養生活の状況に関する情報提供を他職種から求められる立場にあることが示された.療養の場が,病院以外の施設や自宅など多岐にわたるため,協働する医療職は高齢者の生活を整えるために必要な,医療的視点の提供を看護師に求めていることがわかる.

しかし第一報のとおり,併存疾患をもつ高齢者が急性期病院から療養の場を移動するにあたっては,個々の生き方や価値観を反映したケアの継続に向けて,看護師と医療職との連携活動とそのコーディネートがあり(大原ら,2019),それによって高齢者が望む過ごし方や実情に合わせた療養調整ができる.だが,協働する医療職から見た場合,コーディネート機能はどのようなものなのかについて示した先行研究は多くはない.したがって多様で複雑な高齢者のニーズを満たすための多岐にわたる働きかけを明らかにするため,看護師と協働している医療職の視点から迫る必要がある.看護職がもつ固定概念や価値観から離れて,各々の専門性や協働する医療職の視点を通して連携の在り方を振り返り再考することは,チーム医療における良質なコーディネート機能を導くことにつながると考える.そこで本研究では,医師,理学療法士,薬剤師,ソーシャルワーカー等,第1報で調査対象とした看護師と協働している医療職の視点から,高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能を明らかにする.

Ⅱ. 用語の定義

コーディネート機能:コーディネーションに関する文献(鈴木ら,2013;日本看護協会,2007)を参考に,「高齢者がよりよく生活を送ることができるようにする為,異なる専門職の立場や役割の特性を引き出し調和させ,それぞれが効果的に機能しつつ,同じ目標に向かって全体の取り組みが有機的,統合的に行えるように,高齢者への働きかけも含んだ環境を整える働き」と定義する.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究対象者

研究対象者は,急性期の高度な医療を提供する地域の中核的医療機関に所属している看護師と協働する医療職とした.多疾患や障害を併せ持つ高齢者が急性期病院の病棟や外来から療養の場を変更(退院,転院等)するにあたり,調査施設の看護師から連携する機会が多かったと紹介をされた医療・福祉関係者を対象とした.協働する医療職から見た 「看護師」は,専門看護師などの資格や職位は問わないが,退院支援・調整の専門部署に所属する看護師は除外した.なお,対象施設は,連携の多様性と地域による偏りを考慮し,首都圏と地方都市にある急性期病院とした.

2. 調査期間

2015年11月~2016年3月

3. データ収集方法

首都圏2施設,地方都市2施設の調査施設の看護部および第1報で調査対象とした看護師へ,看護師と協働する医療職の対象候補者の紹介を依頼した.紹介後は,対象候補者および対象候補者の所属長に対して,研究者より研究協力依頼を行った.面接は,職務遂行に悪影響がないよう対象者の都合のよい時間や場所を確認して,静かで落ち着いた雰囲気の個室を選定し,1名30~60分程度で実施した.内容は,看護師と連携して高齢者に必要な治療・療養支援を継続できた場面について,高齢者の抱える問題の背景,自身が行った治療・援助行為,看護師との連携の様子,看護師からの働きかけについて半構成的にインタビューを行った.その中で自身の役割を果たしやすいまたは果たしづらいと感じた看護師の働きかけがあった場合には,そう思った理由や感じたこと考えたこと,看護師に求める高齢者ケアの連携・継続にむけた役割についても尋ねた.面接内容は同意を得て録音し,逐語録としたものをデータとした.

4. データ分析

多様で複雑なニーズをもつ高齢者のケアにおいて,ニーズを満たすための働きかけは多岐にわたる.本研究は,価値観や教育背景が異なる他の医療職の視点を通して,ケアの継続に向けた看護師のコーディネート機能を見出そうとするため,既存の分類枠を当てはめることなく,一つ一つの語りから現象を構造的に表すことができる質的統合法(KJ法)(山浦,2012)を用いて分析した.分析手順は,逐語録の内容を繰り返し読み,「看護師と協働する医療職から見た高齢者のケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能はどのようなものか」が表現されている部分を取出し単位化した.全体のラベルをよく読んだのち,類似性に着目してラベル集めを行った.ラベルの全体感からそのグループの内容を表す一文を考え,表札として記述した.同様な手順でグループ化を繰り返し,これ以上集まらなくなった段階の表札を最終ラベルとした.最終ラベルの内容を再度よく読み,最終ラベル間の「関係性」に着目して論理的関係を発見する作業(空間配置)を行った.最後に最終ラベルの内容を端的に表す一文,シンボルマークをつけた.分析は看護質的統合法(KJ法)に精通した研究メンバー4名で行い,分析の妥当性の確保に努めた.

Ⅳ. 倫理的配慮

研究の主旨と方法,研究参加の自由意思と途中辞退の保障,匿名性の保持と個人情報の保護について,研究対象候補者に対して書面をもって説明し,研究参加への同意の署名を得た.研究の全過程における倫理的配慮については千葉大学大学院看護学研究科倫理審査委員会(承認番号27-40)の承認を得て実施した.

Ⅴ. 結果

1. 対象者概要(表1)

対象者は,首都圏2か所,地方都市2か所の急性期の高度医療を提供する地域の中核的医療機関に所属している看護師と協働する医療職8名であった.内訳は,医師2名(外科1名,内科1名),理学療法士1名,薬剤師1名,MSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)4名(医療・地域連携室所属)であった.年齢は27歳~45歳(平均37.8歳),経験年数は4年~22年(平均12.1年)であった.インタビュー回数は各対象者1回で,時間は24分~70分間(平均48.5分間)であった.

表1  対象者概要
対象者 職種 年齢 所属施設 急性期病院勤務年数
A 医療ソーシャルワーカー 20代 A:首都圏 大学病院 4年
B 医師(内科) 40代 17年
C 薬剤師 30代 12年
D 医療ソーシャルワーカー 40代 B:地方都市 大学病院 5年
E 理学療法士 30代 11年
F 医師(外科) 40代 C:地方都市 大学病院 17年
G 医療ソーシャルワーカー 20代 4年
H 医療ソーシャルワーカー 40代 D:首都圏 大学病院 22年

2. 分析結果

分析には全対象者のラベル124枚を用い,7段階に渡ってラベル編成を繰り返し,最終的に7つのシンボルマークとなった.以下は,空間配置の全体像および空間配置にある各シンボルマークの内容について説明を行う.なお文中の【 】はシンボルマーク,[ ]は最終ラベル,「イタリック体」はローデータ,『 』はローデータ内で医療職が回想した看護師の発言内容を示す.

1) 看護師と協働する医療職から見た高齢者のケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能の空間配置図(図1)

看護師と協働する医療職から見た高齢者ケアの継続に向けた看護師のコーディネート機能は【専門性発揮の助け】となる機能と【多職種間連携に向けた働き】,および【間を結ぶ調整の要】の3機能から示された.「自分(他職種)たちでは気づかないニーズや思いの収集と情報提供が足掛かりとなる」「介入時の羅針盤となる退院後の生活変化に関するアセスメント・ケア方針の提供」「病状悪化・療養場の移動にともなう不適応の予測と先手の初動・必要職種への結び付け」が協働する各医療職の【専門性発揮の助け】となり,円滑で安心感のあるケアの提供につながっていた.また【多職種間連携に向けた働き】として,「問題解決のための本質の見極めとシームレスな最適職種への橋渡し・役割代行」が高齢者の望みやよりよい療養生活を叶えることに寄与した一方で,「専門領域の尊重・役割移譲」や「確かな情報共有・情報解釈のズレや誤解を生まない伝達の心掛け」が求められていた.2つの機能をつなぐ中心には,「よりよい療養に向けて患者・家族・看護師と協働する医療職との間に入っての噛み砕いた伝達とズレの修正」といった【間を結ぶ調整の要】としての機能があった.

図1 

看護師と協働する医療職から見た高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能

2) 各シンボルマークについて

(1) 【専門性発揮の助け:自分(他職種)たちでは気づかないニーズや思いの収集と情報提供が足掛かりとなる】

これは[いかなる病期の患者でも,生活習慣への強い固執や介護問題を持っている高齢者であっても,看護師が高齢者のそばにいることで問題を抱えていそうな様子を感じとり,心を開いて話ができる雰囲気を作り,些細な情報や本人・家族の理解度,思い,ニーズをしっかり受け止め,心の内を掘り下げてくれることによって,自分(各医療職)たちでは到達できない高齢者の心の内の思い・情報が顕在化され助かる]というものである.協働する医療職が治療・援助を行う際,受傷後や告知後で配慮を要する患者,自尊心や生活習慣への固執が強い高齢患者など,タイミングや援助の入り口に注意を払わなければならない場合も多い.看護師が患者の日常生活援助での心身の微細な変化,家族構成とその関係性,今後の療養生活への意向と問題点について気づき,最良なタイミングでコミュニケーションを図ってニーズを引き出し,医療職へ提供することが,患者・家族へケア提供のための大事な糸口となっている様子が抽出された.「私たち(MSW)呼ばれないとなかなか行けないところ(時)もあります.昨日まで当たり前のように生活ができていた人がいきなり四肢麻痺とか,重症熱傷とか,(中略)受け入れもできません.私たちちょっとまだ早いかなという(段階に),看護師さんたちに患者さんの思いとか受け止めてもらうって,ものすごく大きい(D氏)」「娘がネグレクトしていると思うような状況で,通報を考えるぐらいだったが,ナースが聞けば聞く程,いかに(介護)大変かがわかり,ネグレクトじゃなくて疲れていると(わかった)(B氏)」

(2) 【専門性発揮の助け:介入時の羅針盤となる退院後の生活変化に関するアセスメント・ケア方針の提供】

これは[それぞれの専門性に基づいて退院へのアプローチを考える際,職種によって得られる患者の言動が異なるため,それらを共有すると話がすれ違わなくて済むことから,看護師が考える,入院前の高齢者の生活・ADL・介護内容と治療による身体機能低下を比較した上での退院後の生活の見通し,看護師のケア方針を聞くことで,自分たち(各医療職)もそれをふまえて患者が安心する環境づくりがしやすくなる]というものである.脳梗塞,誤嚥性肺炎,疾病や安静によって生じた筋力低下など,様々な理由で新たな療養法の習得が必要となった患者に対して,治療・支援目標を各々の専門職の視点から考える際,看護師が把握している自宅環境や家族関係,療養に対しての患者・家族の意向とそれらに基づいたアセスメントは,高齢者の現実に即した支援となるための重要な情報となっていた.さらに看護師がアセスメントした退院後の見通しや退院支援計画を共有できると患者にとって安心できる環境につながると考えていた.「トイレ動作1つにしても,例えばおむつは大変だけど,ポータブルならなんとかできそうっていうような情報が得られるようでしたら,(中略)ベッドサイドでなんとか掴まって立っていられるよう頑張っていくとか具体的な目標設定ができるから,自宅の状況や家族の支援具合などを評価して教えてもらえる.それは非常に助かるなと思います.(E氏)」「(MSWが看護師に)伝えたことを看護師さんが考えて,どうやろうと(考えているか)伝えてくれると,ソーシャルワーカーとして(中略)転院先に不安に思ってることを伝えて対処してもらうっていうふうに,より安心する環境につなげやすいっていう印象(H氏)」

(3) 【専門性発揮の助け:病状悪化・療養場の移動にともなう不適応の予測と先手の初動・必要職種への結び付け】

これは[普段と異なる少し気になる患者の言動,新しい介護支援サービスや療養先に不安や抵抗を示す高齢者・家族の様子から,看護師が早期に問題発生を予期して支援の必要性を判断し,患者へ対応や声掛けを行うと同時に必要な職種に情報を伝えてくれるので,病状悪化の予防や,円滑かつ安心感のある治療・援助につながり,本人や家族も療養生活について過不足なく想像できる]というものである.看護師が日常生活援助を行うなかで,患者・家族が発する些細な異変や不穏な雰囲気を違和感として気づいたり,異変へ対処しなかった場合に予測される不具合な状態に陥らないよう一歩早い段階で医療職や患者への対応を開始するなどは,医療職の早期対応への手助けになり,スムーズなケアに繋がっていた.「高齢者も今までの生活をすごく大事にされる方がほとんどで,介護保険サービスとか訪問看護師さんだとか新しい人が加わってくるっていうことに対して,非常に抵抗感を抱く方も多い,常日頃見ている看護師さんが『ここはうまくいかないでしょう?』『ちょっと心配じゃない?』みたいに(中略)(看護師さんが早めに入ると)支援が必要かどうか(患者・家族に)実感を伴ってわかってもらえ,捉え方が変わり,ソーシャルワーカーが導入説明してもスムーズで助かる(A氏)」

(4) 【間を結ぶ調整の要:よりよい療養に向けて患者・家族・看護師と協働する医療職との間に入っての噛み砕いた伝達とズレの修正】

これは[看護師が医師にも患者・家族にも協働する医療職にも近い立ち位置にいるからこそ,時には医師とそれらの人々との間に入り,共有すべき話題や転院先の実現可能性に合わせた医療条件にするための情報を整理して,タイミングよく医師に伝え,時には医師-患者家族間に入り,患者がもつ退院後の療養イメージのズレ,不満や戸惑いをキャッチしてズレを熱心に埋め,時には患者-多方面の職種間に入り,患者が療養できる方策を,しっかりものを言える看護師が一生懸命方々に働きかけることで,高齢者の望みやよりよい療養が叶えられる]というものである.回復期病院もしくは在宅サービス,高齢者ケア施設への移動時には,受け入れ先にあわせて価格の高い医薬品・医療材料を変更する必要がある場合や,患者・家族が転院目的に腑に落ちていない場合等,治療方針を定める医師を巻き込んで調整をはかる必要性が高まる.その時,各所に関係性が強く,総合的な判断ができる看護師が間に入ることで,発生している認識・解釈のズレが修正され,円滑かつ満足度の高い調整が進む様子が抽出された.「受け入れ先の条件に合わせることも必要.(点滴)『24時間ポンプじゃなくても大丈夫?』とか,『1回やめてみる?』とか,上手に先生に伝達してもらって,(その)情報をバックしてもらう.私たち(MSW),なぜ使っているのかとか,外すことによってどういう影響があるか分からないですから(D氏))「忙しいドクターにどうしてもお願いしたい内容を伝える際,(看護師さんに)間に上手に入ってもらう.先生にしっかりものを言えるのもやっぱり看護師さんの強みだと.(D氏)」「(治ってないのに退院しても大丈夫か不安に思う家族と医師の間のズレに対して)看護師が,先生と家族が話す場を何回か作ってくれたので,奥さんも(病状)大丈夫なんだとか,何となく退院しても大丈夫なんだって思い始めて,主体的に退院を考えられるようになった.だからちょっと看護師さんの力量って大きい(H氏))

(5) 【多職種間連携に向けた働き:問題解決のための本質の見極めとシームレスな最適職種への橋渡し・役割代行】

これは[患者が福祉的かつ医療的に複合した,一見問題の焦点もわからないような困難な問題を持っている場合では,特に,患者の様子や理解度等を見ながら問題の本質を見極め,治療目標の見通しを含めて,患者が抱えている状況にあわせて無駄なく必要な職種へつないでくれたり,時には看護師と協働する医療職の仕事を肩代わりしてくれるなど,職種の垣根を越えて活動してくれる]というものである.退院にあたり問題の核さえもわかりにくく,介入の突破口が見えない状態であっても,看護師が行う意図的なコミュニケーションによって絡まった現状が解きほぐれ,看護師が医療知識や福祉制度を熟知して,最短で最適な担当者につながるよう導く様子,時には専門領域を超えて,可能な限りの職務を肩代わりする働きによって,協働する医療職の負担が軽くなる現状を高く評価している様子が抽出された.「独居,行き倒れ,自殺未遂とかそこから立て直しは,(福祉)プラス医療がくっつきますので一個一個のケースが非常に難渋して調整しています.ゴールは私たち(MSW)にはわかりません(D氏))「医療的な判断もある程度できて,かつ何でもできるっていうのはやっぱりナースだと思う.方針立てのレベルまで交通整理ができるのはとても重要な立ち位置でしょうね(B氏)」「こっち(Dr)でやろうかなってことを同じように発想してくれて,できれば先にやっていてくれる,こっちの思考や段取りの手間を持って行ってくれるのでスキルフルだと思う(B氏))

(6) 【多職種間連携に向けた働き:求めたい専門領域の尊重・役割移譲】

これは[正確な情報を得るための傾聴の時間・精神力・最適なプランを提案するためのアイディア等を看護師と分け合うなかで,看護師には,それぞれの専門領域を尊重してもらい,チームの一員としてメンバーシップを発揮してほしい]というものである.チーム医療のなかで中心的に動くイメージが強い看護師であるが,協働する医療職から見ると,それぞれの専門領域に関わる部分に関して退院支援を行う場合には,看護師は持ち合わせた知識や制度での判断のもとに対応を急ぐのではなく,中心役割を協働する医療職へ移譲し,チームの一片として在ってもらいたいと考えている様子が抽出された.「患者さん・家族のためにっていう話ではあるけど,お金の件なんとかなんないですかねって,いつも一本調子で下りてくる.同じ(経済面)情報一つ取っても,看護師さんが(制度を)ご存じでも,あんまり私たち(看護師)で判断しない方がいいんだなって次に生かしてくれる人と,割と一生懸命でいつも自分の援助パターンの人は居るかなと.(H氏)」「車椅子のサイズだったり,調節に関してとか,看護師さんやっぱり情報としてはお持ちではない方がほとんどですので,(中略)看護師さんサイドで運動能力に合わせて適した車椅子を選ぶのは難しい部分があると思いますので,少し理解して頂けるとやりやすくなる部分もある(E氏)」

(7) 【多職種間連携に向けた働き:求めたい確かな情報共有・情報解釈のズレや誤解を生まない伝達の心掛け】

これは[情報を看護師と協働する医療職間で共有する際に,少しでもニュアンスや理解のズレや情報伝達ミスが少なくなるよう,カンファレンス・主治医の病状説明など直接顔を合わせる場に積極的に出る人や職種間を埋める共通言語を探してくれる人がいい]というものである.看護師と協働する医療職は,各々の場所で活動する環境で発生してしまう認識のズレ,患者の言動に関する細かいニュアンスの誤解,職種内で使われる略語の解釈違いを憂慮していた.ズレが少なくなるよう意識して行動するか否かは,看護師個々の技量やコミュニケーション能力にバラつきがあることも感じており,役割代行や職種間の結び付け機能を担う看護師には正確な情報伝達機能を強く求めている様子が抽出された.また,電話や電子カルテ上で情報共有を行うことが多いなか,詳細な支援内容を相談する場合には解釈を取り違えないよう,顔をあわせて確認しあうコミニュケーション方法を求めている様子も抽出された.「日勤夜勤あるから.情報伝達がやっぱり伝わっていなかったりする.申し送りとかあるけどニュアンスってなかなか伝わらないじゃないですか.(F氏)」「他職種を埋める共通言語って探してくれる人がいいですよね.これじゃワーカーさんに伝わってないんだなとか,これって看護師の言葉なんだなとか,何か計ってくれるっていうか.(H氏)」「(電子カルテ上で共有すること)非常に良いことなんですけれども,踏み込んで話をするときって,やっぱりたぶん顔を合わせるかして,ゴール設定をしていかないといけないんだろうなと思いますので.(E氏)」

Ⅵ. 考察

1. 看護師と協働する医療職から見た高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能

本研究において,看護師と協働する医療職から見た高齢者ケアの継続に向けた看護師のコーディネート機能は【専門性発揮の助け】となる機能と【多職種間連携に向けた働き】,および前者2機能をつなぐ【間を結ぶ調整の要】の3つに構造化された.先行文献で示されたチーム医療推進や退院支援連携において他職種が期待する看護師の役割は(三澤ら,2018;西尾ら,2013;袖山ら,2012;山田,2015),「自己管理状況についてのアセスメントを他職種へ伝達し,チーム全体がより患者を理解できるように導き調整する役割」「高齢者の生活を整えるために必要な医療的視点の提供」「患者が複数の職種から得る知識の生活の場への統合役割」「情報と人間関係の調整役割」であった.本結果でも【専門性発揮の助け】となる機能の「足掛かり」「羅針盤」「初動」の働きかけ,構造の中央に位置する【間を結ぶ調整の要】機能がこれにあたる.このコーディネート機能に内包される看護師の行動自体は,既存文献での看護師の役割と同様な結果を示す部分もある.しかし【専門性発揮の助け:病状悪化・療養場の移動にともなう不適応の予測と先手の初動・必要職種への結び付け】における,高齢者の歩行の様子,呂律,表情や佇まいなどの些細な病状変化への気づきや,起こりうる不適応を見通す行動は,高齢者ケアの継続の視点では重要な意味を持つ.高齢者の症状発現は,非定型かつ加齢性変化等により気づきにくく,些細な変化でも重大な状態を示していることもまれではない.また,高齢者の次の生活の場を見据えて入念に関わらなければ,望まない場での療養や過ごし方を選択せざるを得ない状況に陥る(渡邊・野嶋,2018).したがって,気づきや先を見据えた行動は高齢者の現在および未来の暮らしをいかに守るかといった高齢者ケアの継続を支えるものである.

また,【間を結ぶ調整の要】機能も高齢者ケアの継続では欠かせない.なぜなら介護サービス導入や療養施設に移動する場合,患者と家族が描く療養のイメージと現実の間で食い違いが生じやすく,療養場の移動によって生じる孤独,悲しみ,ストレスからリハビリ意欲や生活行動意欲の発動が遅れる恐れがある(渡邊・野嶋,2018).これに対して,本結果の医療職からみた看護師は,医療・福祉的知識を持ち,受け入れ先の医療・介護提供体制が病状や高齢者の希望に対して適しているか,家族の介護力・経済的状況は充足しているかなど,複合的な視点で食い違いの修正を行い,調整者として役割を発揮している.そして空間配置図の構造では,各医療職の【専門性発揮の助け】となる機能と【多職種間連携に向けた働き】との間,かつ中心に関係者各々の【間を結ぶ調整の要】が位置づいた.つまり,医療職から見た看護師のコーディネート機能として,専門性の発揮,多職種間の連携に向けた働きの各々において,患者・家族,医療職へ寄せる細やかな関心と調和にむけた働きかけが礎となっていることが明らかとなった.そして,その調整機能が発揮されることで,高齢者ケアの継続にむけた各コーディネート機能が,より促進されることが示された.

2. 高齢者ケアの継続における急性期病院病棟・外来看護師がもつ特性

ケアの継続についてのコーディネート機能は,退院支援看護師や専門看護師の役割の1つとして位置づけられている.しかし,本研究では,病棟・外来にいる一般看護師においても,高齢者ケアの継続において,その特性を生かして機能を発揮していることが示唆された.

急性期病院のMSWは,常に多くの患者を担当し,独居や医療ケアが必要な退院支援困難事例に多くの時間を費やしているため,患者の人となりを理解する十分な時間がないと精神的負担を感じている(岡野ら,2021).本研究では,協働する医療職は,自身が仕事に着手する前に看護師によって行われる【多職種間連携に向けた働き:問題解決のための本質の見極めとシームレスな最適職種への橋渡しや役割代行】機能によって,患者の状況に合わせた無駄のないケアが実施でき,時には自身の仕事を肩代わりしてくれると捉えていた.多職種連携に向かう他の医療職の負担を軽くし,問題解決の本質にすぐに取り掛かれる素地をつくる役割発揮といえる.

また,【間を結ぶ調整の要:よりよい療養に向けて患者・家族・看護師と協働する医療職との間に入っての噛み砕いた伝達とズレの修正】の機能には,患者がもつ療養等のイメージのズレ,不満や戸惑いをキャッチして,タイミングよく多職種に働きかけ,ズレを埋めることができる看護師の役割が示されていた.これらを可能にするのは,それぞれの看護実践の場での日常的なケアに携わり,患者・家族の意向を理解し,日々の変化や,関わるタイミングをとらえている病棟看護師・外来看護師ならではの特性および強みが活かされている.

このような機能を活かしたシームレスな調整や役割代行,および継続的な観察を活かした役割発揮は,その現状に対応した機能であり,看護師自身は,あまり意識的に実施していない可能性もある.

今後,高齢者の増加と在宅医療・介護の推進にともない,退院調整の需要も増えることが予測される.その時,退院支援看護師だけでなく,高齢者の近くに存在する病棟・外来看護師がコーディネート機能を最大限発揮できると,ケアの継続によって質の担保につながるであろう.そのためには,病棟・外来にいる一般看護師が,自らが担う高齢者ケアの継続に向けたコーディネート機能を意識し,実践していく必要があると考えられる.

3. 看護職に求められるコーディネート機能

第一報の看護師の視点から見たコーディネート機能(大原ら,2019)と対比しても,本研究結果の【専門性発揮の助け】となる機能と【多職種間連携に向けた働き】は,方向性や内容で同様なものが示された.その一方で,各医療職が看護職へ求める機能は,各々の専門的視点や判断・価値観への理解などの「専門領域を尊重した働きかけ」や「解釈のズレや誤解を生まない確かな情報共有」であったと示されたことが本結果の新しい知見である.迅速な対応が求められていない場面で,看護師がもつ知識や自職種の価値観での対応に偏ると,医療職は専門性が発揮しづらいと感じていること,情報伝達や共有においても,職種ごとで価値観・教育背景・常識・得意とする援助内容が異なり,同じ現象を見ても解釈が異なるということの再認識が求められている.これをふまえて,看護職は時に,高齢者を中心とした多職種の関わりを一歩引いたところから俯瞰し,チームの連携の様相やケア継続の経過を見守ることが必要で,そうすることで専門性の高い職種が提案する新たなケアをチームで共有できる.そして職種間の互いの考えや方向性を了解することを尊重したコーディネート機能の充実のために,顔をあわせての対話や電話といった双方向性の確保された状態でよく話し,それを他職種にも提案することで,協働する医療職にとって看護師とのケア継続や連携が安心かつ豊かな関係へ向かうと考えられる.

Ⅶ. 本研究の限界と今後の課題

本研究では,対象者が看護師と密に協働してケアの継続ができている医療職であったため,看護職の働きかけの意図や経緯や人柄もよく理解しており,長けたコーディネート機能が結果として表現されたと考えられる.また,対象はすべて大学病院であり,職種間連携の様子や,困難事例の複雑さが市中病院と異なるため,医療職からみた急性期病院看護師全体を反映しているとはいえない.今後,対象施設を広げ,協働する医療職からみた急性期病院看護師のコーディネート機能の豊かで新たな知見を得ていく必要がある.また,病棟・外来等の一般看護師が高齢者ケアの継続に向けたコーディネート機能を意識し実践していくため,本研究で得られた,医療職からみたコーディネート機能の特性・看護職に求めるコーディネートと,第1報の分析結果を合わせ,多職種の視点が反映されたコーディネート実践ツールの開発につなげることが課題である.

付記:本稿は,第36回日本看護科学学会学術集会にて発表し,これに一部加筆修正を加えたものである.

謝辞:本研究にご協力いただきました皆様に心より感謝申し上げます.本研究はJPJS科研費15H05284(研究代表者 正木治恵)の助成を受けて実施した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:ASは研究データ収集・分析,草稿の作成;HM は研究の着想・計画,研究フィールドの調整,データ分析,草稿全体への助言;YO は研究フィールドの調整,データ収集・分析および草稿全体への助言;KK は研究フィールドの調整,データ収集・分析,草稿全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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