2021 年 41 巻 p. 763-771
目的:集中治療領域での終末期患者とその家族に対するインフォームドコンセント(Informed Consent: IC)における看護実践の実施程度に関連する要因を明らかにすること.
方法:集中治療領域で働く看護師(96病院955名)を対象に集中治療領域での終末期患者とその家族に対するICにおける看護実践尺度の得点に関連する要因を重回帰分析にて検討した.
結果:尺度合計得点が高いことと有意な関連を示したのは,研修参加経験有(β = .098, p = .010),学生時の学習歴有(β = .103, p = .006),他者への相談頻度が高い(β = –.214~–.034, p < .001),最終学歴(β = .057~.063, p = .010),診療体制:セミクローズド(β = .093, p = .023),フリー看護師がいる頻度が高い(β = –.044~–.141, p = .021),看護提供方式:パートナーシップ(β = .095, p = .007)であった.
結論:ICでの看護実践の充実には,問題対処への積極的な姿勢や学習経験,看護提供体制の重要性が示唆された.
Objective: To clarify the factors of nursing practice related to family conferences (FCs) for terminally ill patients in critical care and their families in Japan.
Methods: A self-administered questionnaire survey was conducted with 955 nurses working in intensive care units (ICUs) or high care units (HCUs) across 96 hospitals in Japan. Scores on characteristics of the participants were compared with scores on the Nursing Practice Scale for End-of-life Family conferences in critical care (NPSEF), and factors related to nursing practice were examined in the multiple regression analysis. High NPSEF scores indicated high degree of implementation of nursing practice.
Results: The independent variables were significantly associated with higher total scores on the NPSEF: ethics and end-of-life training experiences (β = .098, p = .010), ethics and end-of-life learning experience as an undergraduate (β = .103, p = .006), higher frequency of consulting others when in ethical trouble (β = –.034~–.214, p < .001), educational background (β = .057~.063, p = .010), medical treatment system: semi-closed (β = .093, p = .023), frequency of working with nurses who do not take charge of patients (β = –.044~–.141, p = .021), and nursing system: partnership nursing system (β = .095, p = .007).
Conclusion: This study clarified the nursing practice factors related to the NPSEF scores. It is suggested that a positive attitude toward problem-solving, learning experience, and a nursing provision system is important for enhancing nursing practice in FCs.
集中治療室(Intensive Care Unit:以下ICU)に滞在中もしくは退室後の重症成人患者死亡者率は米国で12.4%,本邦では13.5%(Zimmerman et al., 2013;Irie et al., 2019)と比較的高く,ICUでの終末期患者や家族へのケアは重要な課題である.また,ICU入室中の患者の多くが意思決定の際に自己決定能力がなく,家族が代理意思決定を行うことが多い(Cohen et al., 2005).終末期の代理意思決定の過程では,患者の推定意思や家族の意思,医療者の意思間で,決定に対して複雑な葛藤や対立,困難が生じるとされる(高田・平野,2015;瀧・宇都宮,2016).そのため終末期患者の家族は抑うつや不安,心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder:以下PTSD)などの心理的症状を抱えることが多い(Azoulay et al., 2005;Downar et al., 2020;Kentish-Barnes et al., 2015;Needham et al., 2012).こうした終末期を含め,治療方針などの重要な意思決定は,患者・家族と医師間での話し合いの場つまりインフォームドコンセント(Informed Consent:以下IC)において行われ,ICが重要なコミュニケーションの場となっている.集中治療領域において終末期となった患者は人生の残された時間が短く,家族や医療者が十分に納得するまで繰り返し話し合いを行い,決定を下すことは困難となる(高野,2002).よって,集中治療領域での終末期患者やその家族に対するIC中および,その前後を含めた過程における患者や家族への支援は重要性が高く,その充実は喫緊の課題と言える.
一方,家族と医療者間のコミュニケーションの改善が家族の抑うつや不安症状の軽減,患者と死別後の家族のPTSDのリスク低下,満足度向上に効果的であったことが示されている(Lautrette et al., 2007;McDonagh et al., 2004).そのため,海外のガイドライン等(Truog et al., 2008;Seaman et al., 2017;Davidson et al., 2017)をはじめ,本邦においてもICにおけるコミュニケーションの質の向上を目指す必要性がガイドラインの中で提言されている(厚生労働省,2018;日本集中治療医学会,2011;日本集中治療医学会ら,2014).ICU看護師のうちICへ同席する方針をとっている割合は85%以上とされる(高田・平野,2015)が,ICに関する看護師の実践は不明であったことから,川島らはエキスパート看護師がICにおいて,どのような実践を重要と考えているのかを明らかにし(Kawashima et al., 2020),看護師の実践の実施程度を測定する尺度を開発し,本邦の看護師の実施程度を示した(Kawashima et al., 2021).しかし,ICにおける看護師の実践の実施程度にどのような要因が関連しているのかは明らかとなっていない.そこで,看護の質向上および患者や家族への心理的負担の軽減に向けた示唆を得るため,本邦の集中治療領域での終末期患者とその家族へのICにおける看護実践の実施程度に関連する要因を明らかにすることを目的とした.
インフォームドコンセント(Informed Consent, IC):患者・家族が病状や治療について十分に理解し,また,医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか,どのような医療を選択するか,患者・家族,医療職,ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し,皆で合意するプロセス(日本看護協会,2019).なお,英語表記では上記の定義と同等と考えられるfamily conferenceを用いた.
自記式質問紙を用いた全国規模横断研究を行った.調査期間は2019年7月から2019年12月であった.なお,本研究は既報の研究と同時に収集されたデータによるものであり,以下に示す調査対象・データ収集・倫理的配慮・結果の一部および集中治療領域での終末期患者とその家族に対するICにおける看護師の実践尺度(Nursing Practice Scale for End-of-life Family conferences in critical care:以下NPSEF)に関する内容は先行研究で報告されているものと同様である(Kawashima et al., 2021).なお,本研究は既報論文とは異なる目的で,分析を実施したものである.
2. 調査内容NPSEFは3ドメイン39項目からなる集中治療領域での終末期患者とその家族に対するICにおける看護師の実践を測定する尺度であり,先行研究において尺度の妥当性および信頼性が確認されている(Kawashima et al., 2021).39項目それぞれについて,5段階リッカートスケール(1.実施していない;2.あまり実施していない;3.どちらとも言えない;4.まあまあ実施している;5.実施している)にて尋ねる構成となっている.3つの各ドメイン(ICの準備:11項目,ICの実施:17項目,IC後の支援:11項目)の合計得点および尺度全体の合計得点をアウトカムとして使用可能な尺度であり,本研究では,これらをアウトカムとして関連要因を探索した.
関連が想定される要因について,先行研究(Nelson et al., 2006;下地ら,2017;水澤,2009)を参考に検討するとともに,4名の研究者間で話し合いを行い,個人背景および施設背景について尋ねる項目を作成した.個人背景としては「性別:男女」,「専門・認定看護師資格の有無(以下,資格)」,「看護師経験年数(以下,看護師経験)」,「集中治療領域経験年数(以下,集中治療経験)」,「勤務帯リーダー経験の有無(以下,リーダー)」,「役職:スタッフ・主任/副師長・師長」,「倫理や終末期に関する研修参加経験の有無(以下,研修参加)」,「看護基礎教育における倫理や終末期に関する学習経験の有無(以下,学習歴)」,「倫理的に困った際の他者への相談頻度:1.全くしていない~4.いつもしている(以下,相談頻度)」,「最終学歴:専門学校・大学・大学院」を尋ねた.施設背景としては,「病院病床数」,「所属ユニット:ICU・高度治療室(high care unit:以下HCU)」,「診療体制:オープン・セミクローズド・クローズド」,「病棟役割:救急・術後・混合」,「主に対象としている患者の診療科:内科,外科,混合(以下,診療科)」,「フリー業務看護師が勤務中にいる頻度:1.全くいない~4.いつもいる(以下,フリー看護師)」,「看護提供方式:プライマリー・チーム・パートナーシップ」,「所属ユニットにおいて終末期となったもしくは亡くなった年間の患者数:0名・ 1~5名・6~10名・11名以上(以下,患者数)」を尋ねた.各項目について該当する選択肢を選択もしくは数字を記載するよう依頼した.
3. 調査対象本邦の成人患者を対象とするICUもしくはHCUに勤務している看護師を対象とした.対象者数は重回帰分析および先行研究における尺度開発時の因子分析に投入する独立変数の数から500程度のサンプルサイズが必要と考えた(Kawashima et al., 2021;MacCallum et al., 1999).
4. データ収集各地方厚生局が提供する加算届出一覧から特定集中治療管理料1~4(ICU),ハイケアユニット入院管理料1および2(HCU)の届出をしている施設を全数抽出(全国で934施設:2019年5月時点)し,それぞれの厚生局の管轄施設をナンバリングの上,無作為に対象施設を300施設抽出した.その後,各施設の看護部長宛てに研究協力依頼文書および研究概要書等を郵送し,研究協力への同意の有無と質問紙配布部数(各病棟の全スタッフ数)を確認した.その後,同意が得られた施設に対し,前もって確認した必要部数の研究説明文書および質問票一式を郵送した.なお,返送については返信用封筒を封入し,個別返送とした.
5. データ分析記述統計では,連続変数については平均値および標準偏差で示し,カテゴリカル変数については度数およびパーセンテージで示した.NPSEFの回答に欠損がある場合および全項目同一回答の場合,終末期となったもしくは亡くなった年間の患者数が0名と回答された場合は無効回答とし,分析から除外した.また,本研究ではリストワイズ法により欠損値のあるデータを除去した上で解析を行った.従属変数はNPSEFの各ドメインの合計得点および尺度全体の合計得点とし,以下の分析を行った.二値変数である「性別」,「資格の有無」,「リーダー」,「役職(スタッフもしくは主任・副師長・師長)」,「研修参加」,「学習歴」,「病院病床数(500床未満もしくは500床以上)」,「所属ユニット」に対してはStudent’s t検定を用い,連続変数である「看護師経験」および「集中治療経験」に対しては,相関係数(Person’s相関係数,r)を算出した.3分類以上のカテゴリカル変数である「相談頻度」,「最終学歴」,「診療体制」,「診療科」,「フリー看護師」,「看護提供方式」,「患者数」に対しては,一元配置分散分析(one-way analysis of variance:以下one-way ANOVA)を行った.また,重要な要因の影響を補正した上でそれぞれの要因の影響を把握するため,単回帰分析にて,p < 0.10であった独立変数を強制投入法にて投入し,重回帰分析を行った.そして,各重回帰式の決定係数および調整済み決定係数を算出した.投入されたそれぞれの変数の基準となるカテゴリは表3の「‡:基準カテゴリ」として示している.また,分散拡大係数(variance inflation factor:以下VIF)が10を超える場合,多重共線性ありと判断し,投入変数の除外を検討した.なお,すべての統計学的検定では,両側検定を用い,有意水準は5%とした.すべての分析はSAS OnDemand for Academicsを用いて実施した.
6. 倫理的配慮研究への参加は,参加者の自由意思に基づき,協力しないことによる不利益はないこと,匿名性を保証することなどに関する説明文書を質問紙一式に同封し,研究対象者へ提供した.また,質問紙内に研究参加への同意に関する欄を設け,「同意する」にチェックがあったデータを分析に使用した.なお,本研究は,東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:M2019-045).
300施設に対して研究協力依頼を行い,そのうち96施設から応諾の返答があった(応諾率:32.0%).2,379部の質問紙を配布し,1,018部の返送があった.そのうち欠損等の無効回答63部を除外し,955部を分析対象とした(有効回答率:40.1%).対象者背景を表1に示す.793名(83.5%)が女性であり,平均看護師経験年数は12.1 ± 7.9年であり,平均集中治療経験年数は5.6 ± 4.3年であった.643名(68.3%)がICU所属であった.また,NPSEFの各項目および合計の平均得点と標準偏差およびドメインごとの1項目あたりの得点を表2に示す.なお,表1の一部と表2は既報の研究論文(Kawashima et al., 2021)にて公表済みの内容であり,本論文での掲示について許諾を得ている.
| 〈個人背景〉 | 平均±標準偏差(年) | |
| 看護師経験(n = 945) | 12.1 ± 7.9(0~38) | |
| 集中治療経験(n = 942) | 5.6 ± 4.3(0~22) | |
| n(%) | ||
| 性別(n = 950) | 女性 | 793(83.5) |
| 男性 | 157(16.5) | |
| 資格(n = 875) | 専門看護師 | 4(0.5) |
| 認定看護師 | 55(6.3) | |
| 無 | 816(93.3) | |
| リーダー(n = 949) | 有 | 725(76.4) |
| 無 | 224(23.6) | |
| 役職(n = 952) | スタッフ | 802(84.2) |
| 主任・副師長 | 127(13.3) | |
| 師長 | 23(2.4) | |
| 研修参加(n = 946) | 有 | 682(72.1) |
| 無 | 264(27.9) | |
| 学習歴(n = 941) | 有 | 798(84.8) |
| 無 | 143(15.2) | |
| 相談頻度(n = 951) | 全くしていない | 31(3.3) |
| ほとんどしていない | 118(12.4) | |
| たまにしている | 547(57.5) | |
| いつもしている | 255(26.8) | |
| 最終学歴(n = 905) | 専門学校 | 627(69.3) |
| 大学 | 263(29.1) | |
| 大学院 | 15(1.7) | |
| 〈施設背景〉 | ||
| 病院病床数(n = 953) | ~299床 | 83(8.7) |
| 300~499床 | 398(41.8) | |
| 500以上 | 472(49.5) | |
| 所属ユニット(n = 942) | ICU | 643(68.3) |
| HCU | 299(31.7) | |
| 診療体制(n = 906) | オープン | 517(57.1) |
| セミクローズド | 249(27.5) | |
| クローズド | 150(16.6) | |
| 病棟役割(n = 938) | 救急 | 130(13.9) |
| 術後 | 63(6.7) | |
| 混合 | 745(79.4) | |
| 診療科(n = 937) | 内科系 | 48(5.1) |
| 外科系 | 153(16.3) | |
| 混合 | 736(78.5) | |
| フリー業務看護師(n = 945) | 全くいない | 146(15.4) |
| ほとんどいない | 210(22.2) | |
| たまにいる | 428(45.3) | |
| いつもいる | 161(17.0) | |
| 看護提供方式(n = 841) | プライマリー | 327(38.9) |
| チーム | 430(51.1) | |
| パートナーシップ | 84(10.0) | |
| 患者数(n = 930) | 1~5名 | 108(11.6) |
| 6~10名 | 249(26.8) | |
| 11名以上 | 573(61.6) | |
CNS:専門看護師,CN:認定看護師,ICU:集中治療室,HCU:高度治療室.
| 平均値±標準偏差 | ||
|---|---|---|
| ICの準備[11~55]1項目あたりの平均得点*=3.57 | 39.26 ± 7.28 | |
| 1 | 患者や家族の思いや考え,現状の受け止め方を事前に確認する | 3.60 ± 1.00 |
| 2 | 急変のリスクや死に至るまでの期間が短い可能性があることを考慮し,より早期にICを実施するために参加者間の迅速な日程調整を行う | 3.88 ± 0.92 |
| 3 | 患者や家族の背景や特性,家族間で影響のある人の情報を得る | 4.12 ± 0.80 |
| 4 | 医療者間で情報共有し,合意形成するために,多職種カンファレンスを設定する | 3.27 ± 1.14 |
| 5 | IC時に医師が患者や家族に伝える内容や医師の目標を事前に確認する | 3.07 ± 1.16 |
| 6 | 看護師間でICに関する情報共有を行うため,話し合いを設定する | 3.55 ± 1.08 |
| 7 | 患者の疾患の状態や現在の治療の選択肢について,自分の足りない知識を補足する | 3.76 ± 0.89 |
| 8 | 患者や家族にとって,ICを行うために最適の場所を検討する | 3.86 ± 1.04 |
| 9 | 患者や家族の特性に合わせて,ICに参加すべき患者や家族,医療者を検討する | 3.63 ± 1.06 |
| 10 | ICを行う医師の思いや考えを事前に確認する | 2.99 ± 1.13 |
| 11 | ICへの同席やIC後の関わりができるように,看護師チーム内での役割・業務分担を行う | 3.53 ± 1.07 |
| ICの実施[17~85]1項目あたりの平均得点*=3.73 | 63.38 ± 10.56 | |
| 12 | 患者と家族,家族同士,患者家族と医師間の認識や意向のズレおよび対立を調整,仲裁する | 3.44 ± 0.90 |
| 13 | 話し合いの中で患者の推定意思が尊重されるようにする | 3.65 ± 0.90 |
| 14 | 患者や家族の判断・行動・対応を擁護し,自責の念を軽減するように声かけする | 3.87 ± 0.85 |
| 15 | 患者や家族の感情を受け止める | 4.29 ± 0.67 |
| 16 | 患者や家族と医療者が対等に話し合えるように,コミュニケーションや情報の伝え方を工夫する | 3.92 ± 0.83 |
| 17 | 患者や家族の選択や価値観,希望について参加者間で話し合えるように促す | 3.70 ± 0.93 |
| 18 | 専門職の立場から患者や家族,他職種と話をする | 3.74 ± 0.89 |
| 19 | 治療の選択肢とそれぞれのメリットやデメリットについて説明しているか確認する | 3.53 ± 0.97 |
| 20 | 患者や家族が懸念や考えについて話す時間を設け,患者や家族の意見や話しを十分に聞く | 4.04 ± 0.86 |
| 21 | 患者や家族が医療者にうまく質問ができていない場合に,質問を促す | 3.72 ± 0.97 |
| 22 | 今後,患者に対する治療やケアが提供される場所を伝えているか確認する(ICUに滞在するか,一般病棟や緩和ケア病棟などに移動するかなど) | 3.68 ± 1.01 |
| 23 | 今後どのように患者の苦痛を緩和していき,どのような薬剤を使用していくのかなどを説明しているか確認する | 3.57 ± 0.99 |
| 24 | 患者や家族の選択・決定を支持する | 4.14 ± 0.78 |
| 25 | 患者や家族の希望を叶えたいと思っていることを伝える | 4.01 ± 0.88 |
| 26 | 患者や家族に積極的な治療が行われなくなったとしても医療者は患者のケアを放棄しないことを明確に伝える | 3.57 ± 1.15 |
| 27 | 説明内容に不足があると感じた場合,看護師から医師に質問する | 3.37 ± 1.17 |
| 28 | 患者や家族,医療者を支援するための資源(リエゾンチームや緩和チームの介入など)を説明,提案する | 3.15 ± 1.14 |
| IC後の支援[11~55]1項目あたりの平均得点*=3.75 | 41.22 ± 7.63 | |
| 29 | 場を改めて,ICでの情報や話し合いに関する患者や家族の理解を確認する | 3.91 ± 0.93 |
| 30 | 患者や家族が看護師に話しかけやすい雰囲気を意図的に作る | 4.05 ± 0.78 |
| 31 | IC時またはIC後の患者や家族の様子や理解,追加説明した内容を他職種と共有する | 3.74 ± 0.97 |
| 32 | 必要と判断された場合,看護師が患者や家族と追加の面談を行う | 3.18 ± 1.20 |
| 33 | 場を改めて,ICの内容や話し合いの結果について,患者や家族の思い(IC中に言えなかった思いも含め)や受け止め方を確認する | 3.85 ± 0.93 |
| 34 | 再度ICを行う必要性を判断し,必要時医師に報告・相談する | 3.98 ± 0.84 |
| 35 | 患者や家族にICでの情報や話し合いに関する疑問や質問がある場合,追加説明を行う | 3.98 ± 0.85 |
| 36 | 患者や家族に対して,ICやこれまでの状況に対する労いの声掛けを行う | 4.15 ± 0.82 |
| 37 | ICに参加した医療者の気持ちや思い,考えを確認し,支援する | 3.52 ± 1.14 |
| 38 | 必要時,IC後に家族のみで十分に話し合える場所を提供する | 3.52 ± 1.13 |
| 39 | 患者や家族を個別に捉え,ICでの情報や話し合いに関する1人1人の思いや考えを確認する | 3.34 ± 1.11 |
| 尺度合計得点[39~195] | 143.86 ± 23.23 | |
IC:インフォームドコンセント,ICU:集中治療室,[ ]:得点範囲,1項目あたりの平均得点*:因子合計得点の平均値÷各因子の項目数
| 独立変数 | 分類 | NPSEF合計(39項目)n = 696 | ICの準備(11項目)n = 696 | ICの実施(17項目)n = 696 | IC後の支援(11項目)n = 696 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| β | p | β | p | β | p | β | p | |||||
| 〈個人背景〉 | ||||||||||||
| 集中治療経験 | .055 | .202 | .047 | .287 | .041 | .308 | .060 | .169 | ||||
| 資格 | 無‡ | .100 | .541 | .080 | .045* | |||||||
| CNS/CN | .064 | .024 | .069 | .079 | ||||||||
| 役職 | スタッフ‡ | .084 | .163 | .054 | .191 | |||||||
| 師長/副師長・主任 | .067 | .055 | .076 | .051 | ||||||||
| リーダー | 無‡ | .540 | .645 | .200 | ||||||||
| 有 | .025 | .019 | .053 | |||||||||
| 研修参加 | 無‡ | .010* | .039* | .017* | .012* | |||||||
| 有 | .098 | .079 | .091 | .096 | ||||||||
| 学習歴 | 無‡ | .006** | .008** | .004** | .076 | |||||||
| 有 | .103 | .101 | .109 | .067 | ||||||||
| 相談頻度 | いつもしている‡ | .000**† | .000**† | .000**† | .000**† | |||||||
| たまにしている | –.160 | .000** | –.135 | .001** | –.150 | .000** | –.151 | .000** | ||||
| ほとんどしていない | –.214 | .000** | –.200 | .000** | –.191 | .000** | –.200 | .000** | ||||
| 全くしていない | –.034 | .380 | –.057 | .141 | –.034 | .383 | –.006 | .871 | ||||
| 最終学歴 | 専門学校‡ | .010*† | .024*† | .016*† | .034*† | |||||||
| 大学 | .057 | .128 | .055 | .149 | .040 | .276 | .053 | .156 | ||||
| 大学院 | .063 | .089 | .047 | .205 | .068 | .069 | .052 | .162 | ||||
| 〈施設背景〉 | ||||||||||||
| 病院病床数 | <500‡ | .497 | .920 | |||||||||
| 500≤ | .026 | .004 | ||||||||||
| 所属ユニット | HCU‡ | .289 | .067 | .623 | .540 | |||||||
| ICU | .042 | .073 | .019 | .024 | ||||||||
| 診療体制 | オープン‡ | .010*† | .030*† | .006**† | .019*† | |||||||
| セミクローズド | .093 | .023* | .059 | .158 | .108 | .008** | .066 | .107 | ||||
| クローズド | .015 | .702 | –.052 | .201 | .011 | .781 | .064 | .104 | ||||
| フリー看護師 | いつもいる‡ | .021*† | .020*† | .124† | .008**† | |||||||
| たまにいる | –.055 | .292 | –.031 | .553 | –.040 | .442 | –.081 | .121 | ||||
| ほとんどいない | –.044 | .369 | –.059 | .239 | –.007 | .889 | –.074 | .136 | ||||
| 全くいない | –.141 | .003** | –.137 | .005** | –.100 | .037* | –.163 | .001** | ||||
| 看護提供方式 | プライマリー‡ | .062† | .131† | .048*† | .133† | |||||||
| チーム | –.009 | .932 | .004 | .918 | –.020 | .607 | –.011 | .787 | ||||
| パートナーシップ | .095 | .007** | .087 | .027* | .091 | .020* | .079 | .044* | ||||
| R2 | .147 | .124 | .130 | .132 | ||||||||
| Adjusted R2 | .121 | .098 | .107 | .108 | ||||||||
* p < 0.05,** p < 0.01,†:各変数におけるp値,‡:基準カテゴリ,β:標準化偏回帰係数,NPSEF:Nursing Practice Scale for End-of-life Family conferences
in critical care,CNS:専門看護師,CN:認定看護師,ICU:集中治療室,HCU:高度治療室.
NPSEFの各ドメインもしくは尺度得点全体をアウトカムとした際のそれぞれの独立変数における単回帰分析の結果,いずれかのアウトカムにおいてp < 0.10を示した変数を記載する.なお,p < 0.10を示したアウトカムは尺度得点全体を[全],ICの準備ドメインを[準],ICの実施ドメインを[実],IC後の支援ドメインを[後]と記し,すべてのアウトカムでp < 0.10であった変数は未記載とする.個人背景では集中治療経験(r = .086~.118, p = .001~.008),資格(p < .001~.010),リーダー(p = .006~.151[全・準・後]),役職(p = .001~.008),研修参加(p < .001),学習歴(p = .001~.012),相談頻度(p < .001),最終学歴(p = .006~.032)であった.また,施設背景では病院病床数(p = .009~.467[全・準]),所属ユニット(p < .001~.009),診療体制(p = .012~.027),フリー看護師(p = .026~.095),看護提供方式(p = .024~.075)であった.
NPSEFの尺度合計得点および各ドメインの合計得点をアウトカムとした重回帰分析の結果を表3に示す.すべてのアウトカムに影響を与えていたのは,相談頻度が高い(標準偏回帰係数β = –.006~–.214,p < .001),研修参加有(β = .079~.098, p = .010~.039),最終学歴(β = .040~.068, p = .010~.034),診療体制(β = –.052~.108, p = .006~.030),看護提供方式:パートナーシップ(β = .079~.095, p = .007~.044)であった.その他,尺度合計得点では,学習歴有(β = .103, p = .006),フリー看護師がいる頻度が高い(β = –.044~–.141, p = .021)が影響要因として挙がった.ICの準備ドメインでは,学習歴有(β = .101, p = .008),フリー看護師がいる頻度が高い(β = –.031~–.137, p = .020)が挙がり,ICの実施ドメインでは,学習歴有(β = .109, p = .004)が影響要因として挙がった.IC後の支援ドメインでは,資格有(β = .079, p = .045),フリー看護師がいる頻度が高い(β = –.074~–.163, p = .008)が影響要因として挙がった.各重回帰モデルの調整済み決定係数(Adjusted R2)は.098~.121であった.
本研究は集中治療領域での終末期患者とその家族に対するICにおける看護実践の実施程度に関連する要因を明らかにした.
困難を感じた際に他者へ相談している頻度は,NPSEFのすべてのドメインおよび合計得点に関連する変数であった.看護師個人のコミュニケーション能力が高い場合や組織内に気軽に相談できる風土がある場合には,患者や家族に必要な実践やより良い実践をチームで検討することができ,ICにおける実践の実施程度やICの質向上に繋がることが示唆される.
研修参加経験や最終学歴もすべてのドメインと合計得点に関連する変数であり,看護基礎教育もIC後の支援ドメイン以外の得点に有意に影響していた.養成課程の教育や就職後の研修の充実が実践の質向上に効果的である可能性が考えられる.研修に参加することは,養成課程の頃よりも記憶が鮮明でかつ,臨床を体験した上で学ぶことができるため,より実践に繋がる学びが得られている可能性がある.養成課程の教育としても,倫理や終末期に関する内容を取り入れる大学が増えてきている(田村・佐々木,2020).看護師としての価値観や考え方を学ぶ上で,養成課程など早い段階から学びを開始することが有用であり,卒業後の看護実践にも十分に活かせる能力として定着している可能性が示唆される.一方で患者や家族,医療者に寄り添う姿勢の具体的内容や追加面談や追加説明などは,養成課程の学習よりも経験の影響が大きい可能性が考えられた.経験や体験を基にした学びとして,臨床をイメージしながら行うシミュレーション教育が有用である可能性がある(田村・佐々木,2020).意思決定支援に関するスキルにおいては,シミュレーション教育の有効性が示されており(Murray et al., 2018),集中治療領域での終末期に関するICにおいても,患者や家族,医療者の状況や経過とそれら経過に合わせた判断や実践を想定したシミュレーション教育を適切に取り入れることで看護師のスキル向上の一助となる可能性がある.また,教育や研修を十分に受けている認定・専門看護師の得点がIC後の支援ドメイン以外では有意に高値とならなかった.これらの資格を持っている看護師の割合が低かったことの影響も考えられるが,本結果では看護師経験年数や集中治療経験年数でも得点に有意な差が見られなかったことからも,知識や経験,スキルを積み重ねていくことで理想の実践の基準が上昇し,回答に影響を与えた可能性が考えられた.IC後の支援ドメインは患者や家族を支援するため,追加説明を行う専門的知識や家族と看護師間での追加面談の実施など,卓越した実践能力と支援のための時間を確保することなど,認定・専門看護師だからこそできる関わりが存在する可能性が示唆される.
診療体制について,クローズドICUがオープンICUと比較して患者死亡率が低いなどのアウトカムが示されているが(Yang et al., 2019),終末期のICにおける看護実践に関しては,セミクローズドの場合に得点が高くなる傾向がみられた.セミクローズドの体制において,集中治療医や麻酔科医などの専門医とそれぞれの診療科の主治医の連携が図れている場合,看護師とのコミュニケーションも円滑であり,医師や看護師が共同して関わるICにおいても,実践ができている傾向にあると考えられる.一方,医師間での意見の対立やコミュニケーションが円滑でない場合も,一貫した支援を提供すべく,看護師が橋渡し役としてより積極的に介入し,医師間および患者や家族,医療者間の関係性の調整を行うため,看護師の実践の質が高くなるという可能性が考えられる.
看護提供方式のパートナーシップナーシングシステムは,他の看護提供方式と比較して,尺度得点が高い傾向にあり,フリー業務の看護師がいる頻度が高いことも尺度得点が高くなることに関連していた.これらより,人的資源や一人の患者へのケア時間が実践に影響していることが示唆される.フリー業務の看護師がいる頻度はICの実施ドメインでは有意差が見られなかったことから,ICの実施ドメインにおける実践は,話し合いが行われている間の看護師個人のコミュニケーションスキルに依存するため,人的資源やマンパワーの影響を受けにくいことが示唆される.パートナーシップナーシングシステムの導入には人員確保の課題などデメリットも挙げられる(竹島・成富,2017)が,導入によって,ペアを組むことで1名がICに関連する実践を行い,もう1名が患者ケアを行うという役割分担や看護師としての能力のバランスを考慮しながらペアを組むことが可能となる.また,パートナーシップナーシングシステムの導入によって,スタッフ間のコミュニケーションが促進されるなどの肯定的な報告があることからも(竹島・成富,2017;高田ら,2019),ICにおける看護実践の質向上に資する可能性がある.
本研究ではいくつかの限界がある.1点目として,セレクションバイアスの可能性が考えられる.今回の有効回答率は40.1%であり,より高度な実践をしている看護師や研究テーマに興味を持っている看護師に回答が偏っている可能性が考えられる.しかし,本研究では全国からバランスよく対象者を選定する工夫をしたため,本邦の代表性をある程度確保していると言える.2点目として,重回帰モデルの調整済み決定係数の低さである.本調査における独立変数の他に,患者や家族,医療者間の関係性や患者や家族,医療者が共に過ごした時間などが想定変数として考えられ,今後はそれらの変数との関連も検討する必要がある.また,自記式質問紙で実践を評価しているため客観的な評価とは必ずしも一致しない可能性がある.しかし,集中治療領域での終末期患者とその家族に対するICにおける看護実践を評価しうる尺度として,一定の妥当性を有するNPSEFを用いた本調査は意義があると考えている.3点目として,本調査から研修や基礎教育などと実践との関連が示されたが,研修や教育の詳細な内容については本研究では明らかとなっておらず,各ドメインのどのような実践により影響を与えているのか,どのような研修や教育が求められるのかについては,今後追加調査をしていく必要がある.
本研究では,集中治療領域での終末期患者とその家族に対するICにおける看護実践の実施程度に影響する要因を明らかにした.困った際の他者への相談頻度が高いことや研修参加経験があること,看護基礎教育における学習歴があること,最終学歴,診療体制(セミクローズド),フリー業務の看護師がいる頻度が高いこと,看護提供方式(パートナーシップナーシングシステム)が尺度の高得点に影響していた.ICにおける看護実践の充実には,問題対処への積極的な姿勢や学習する姿勢,組織内の良好な人間関係の構築,ICに関わる時間や人手を確保するための組織体制の構築が重要であることが示唆された.
謝辞:本研究は,公益信託山路ふみ子専門看護教育研究助成基金より助成を受けて実施した.本調査にご協力いただきました皆様に心より感謝申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:TK,AK,MTは研究の着想およびデザインに貢献;TK,KAはデータ収集および分析に貢献;TKは統計解析の実施および草稿の作成;AK,KA,MTは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言.すべての著者は原稿の最終版を確認し,承認した.