目的:看護管理者のキーコンピテンシーに関するベンチマークを提示し,個人属性と施設特性の観点から看護管理者のキーコンピテンシーの関連を検証する.
方法:422施設の看護管理者9,010名を対象に質問紙調査を実施した.分析は個人属性と施設特性別に記述集計を算出し,各キーコンピテンシーを従属変数とし個人属性と施設特性を独立変数として重回帰分析を行った.
結果:看護管理者5,093名から回答が得られ,有効回答5,007名について分析した結果,キーコンピテンシーの平均得点は,状況認識17.5点,意思決定16.7点,メタ認知19.2点,キャリア支援16.4点,自己管理17.3点であった.重回帰分析の結果,5つのキーコンピテンシーに看護管理者研修,職位,施設規模,設置主体が関連していたが,キャリア支援を除く4つのキーコンピテンシーでは決定係数が5%以下であった.
結論:看護管理者のキーコンピテンシーのベンチマークを提示した.個人属性と施設特性によるキーコンピテンシーへの関連は乏しいことが示唆された.
Objectives: To examine benchmarks for key competencies of nursing managers and verify the relationship between nursing manager key competencies and individual attributes and facility characteristics.
Methods: A questionnaire survey was conducted on 9,010 nursing managers at 422 facilities regarding the key competency scale of nursing managers, personal attributes, and facility characteristics. In the analysis, descriptive tabulation was calculated for each key competency by individual attributes and facility characteristics, and multiple regression analysis was performed with each key competency as the dependent variable and the individual attributes and facility characteristics as the independent variables.
Results: Responses were obtained from 5,093 nursing managers, and analysis of 5,007 valid responses revealed key competency scores, situational awareness was 17.5 points, decision making 16.7, meta-cognition 19.2, career support 16.4 and self-management 17.3. As a result of multiple regression analysis, nursing manager training, position, organization scale, and establishment entity were related to all five key competencies. Excluding career support, the coefficient of determination for situational awareness, decision making, metacognition, and self-management was 5% or less.
Conclusion: We presented a benchmark of the key competencies of Japanese nursing managers. It was suggested that the relationship between individual attributes and facility characteristics to the key competencies of nursing managers was poor.
医療の高度化,患者の重症化,患者権利や医療安全の重視,医療財源の逼迫と医療費抑制といった医療を取り巻く社会状況の変化を背景に,看護職員の疲弊感の増大や離職といった問題が顕在化している.安全で質の高いケアを提供していくためには看護人的資源の量的確保ならびに質的向上が必須となり,看護管理者のマネジメント能力の向上が欠かせない.看護管理者は「安全かつ質の高い看護を継続的かつ一貫性をもって提供するために,看護管理者は看護実践に必要な資源を管理しながら,看護職員が十分に能力を発揮して働き続けられるように職場環境を整え,看護実践を評価して質の向上に努め,看護職員が看護実践能力を保持していくための教育的環境を整え,各人の成長と職業上の成熟を支援する」役割を担っている(日本看護協会,2016).そして,看護管理者がこの役割を効果的に遂行していくためには看護管理者のマネジメント能力の向上,すなわちコンピテンシーの獲得が必要となる.
これまでも看護管理者のコンピテンシーについては様々な研究成果が報告されている.多くはコンピテンシーを概念化や分類化した質的研究の成果,いわゆる定性的評価であり,看護管理者がコンピテンシーを獲得しているか否かを評価するためには定量的評価が必須であるが,コンピテンシーを数量的に評価できる信頼性や妥当性が確認された研究成果は限られている.米国では看護管理者のコンピテンシー評価尺度がいくつか開発されており,例えば「HCCI: Human Capital Competencies Inventory」(Donaher et al., 2007),「リーダーシップにおけるコンピテンシー」(Sherman et al., 2007)が示されている.わが国では,中規模病院の看護管理者を対象とした「コンピテンシー評価尺度(NACAS: Nursing Administrator’s Competency Assessment Scale)」(本村・川口,2013),大規模病院の看護管理者を対象とした「看護管理者のキーコンピテンシー尺度(NMKCS: Nursing Manager Key Competency Scale)」(金子ら,2020)が示されている.また,認定看護管理者教育課程ファーストレベル研修修了者である看護師長を対象とした「First-Line Nurse Manager Competency Inventory日本語版」(坂本ら,2016)などが示されている.
他方,看護管理者のコンピテンシー評価に関する研究については,認定看護管理者研修による看護管理能力の変化を報告しているもの(鈴木ら,2016;草信ら,2013;八尾ら,2012)が散見されるが,これら検証に用いられている測定指標は信頼性や妥当性が確認されたものではない.また,看護管理者に求められるコンピテンシーレベル,すなわちどの程度のレベル獲得やレベル向上を期待しているのか,その基準については不明である.さらに,看護管理者のコンピテンシーの関連要因について,看護師長経験年数が長いほどコンピテンシーが高くなるという報告(大重ら,2019;鈴木,2021)がある一方で,看護師長経験年数に差がないとする報告(丹野・鄭,2021),また,職位が高いほどコンピテンシーが高くなるという報告(Donaher et al., 2007;本村・川口,2013;金子ら,2020)がある一方で,職位による違いがない(山下ら,2014)とする報告もみられ,一致した見解は得られていない.看護管理者のコンピテンシー獲得や向上について議論する前段階として,まずは個人属性や施設特性との関連を検証する必要があると考える.
以上のことから,現状の看護管理者自身のコンピテンシー獲得状況を評価していくために,まずはコンピテンシーを数量的に把握すること,そして,全国の看護管理者のベンチマーク(基準)を示すことで全国レベルから個々の看護管理者レベルの位置づけを明確にする必要があると考える.加えて,個人属性や施設特性との関連を検証し,個人属性別のベンチマークを示すことは個々の看護管理者レベルの位置づけをより明確にでき,個々の看護管理者の属性に近い形で目指すべき目標値を設定することが可能になると考える.また,施設特性別のベンチマークを示すことは各施設で行われている看護管理者研修などの教育評価として目指すべき目標値を設定することが可能になると考える.このように,看護管理者のコンピテンシーのベンチマークを示すことによって,個人属性や所属施設の特性に応じた目標値を設定することが可能になり,看護管理者の自己研鑽や看護管理者教育のあり方を見直す契機になると考える.
今回,看護管理者のコンピテンシー獲得状況を示すベンチマークを提示するにあたり,本研究ではキーコンピテンシー尺度(NMKCS)に着目した.看護管理者のコンピテンシーに関する測定尺度については尺度開発の過程で対象や項目内容が限定されていることが多く,看護管理者のコンピテンシーの一部分を反映したものにすぎない.NMKCSのキーコンピテンシーとは「看護管理者の役割を効果的に果たすために鍵となる思考や行動パターン」であり,問題に直面しているときの状況把握や問題と原因を特定する「状況認識」,自己の言動に注意しながら他者への影響を考慮し,相手やその場の状況に応じて冷静にタイミングよく対応する「メタ認知」,自分自身のキャリアビジョンを明確に持ち,その実現に向けて諦めずに状況に応じて行動する「自己管理」,部下のキャリアプランを共有し目標設定や進捗状況を確認して,課題解決や目標達成に向けてサポートする「キャリア支援」,目標達成のための方策について複数検討した中から最適なものを選択しタスク配分する,また,起こりうるリスクを吟味し影響の最小化や代替案を検討する「意思決定」の5つの測定が可能である(金子ら,2020).NMKCSもまた他の尺度と同様に看護管理者のコンピテンシーの一部分を測定するものであるが,看護管理者の役割を効果的に果たすというマネジメント能力の側面を評価できる信頼性と妥当性が検証されている尺度であることから,看護管理者のキーコンピテンシーに関するベンチマークを示すことが適切であると考えた.
したがって,本研究は看護管理者のコンピテンシー獲得状況や関連要因についての基礎資料を得るために,わが国の看護管理者のキーコンピテンシーに関するベンチマークを提示すること,そして個人属性と施設特性の観点から看護管理者のキーコンピテンシーとの関連について検証することを目的とする.
本研究における看護管理者とは「看護師長もしくは看護主任の職位にある看護師」とする.キーコンピテンシーとは「看護管理者の役割を効果的に果たすために鍵となる思考や行動パターン」(金子ら,2020)であり,ベンチマークとは「パフォーマンス比較の参考となる測定基準」(菅田,2012)とする.
2. 調査対象および調査期間全国の特定機能病院,地域医療支援病院,一般病院のうち,研究協力の内諾が得られた422施設に勤務する看護管理者9,010名(看護師長4,505名,看護主任4,505名)を調査対象とした.
調査期間は,特定機能病院および地域医療支援病院への調査は2017年10月から12月,一般病院への調査は2018年6月から8月に実施した.
3. 調査方法全国の病院一覧から,北海道・東北,関東・甲信越,中部・近畿,中国・四国,九州・沖縄の地区ごとに,病院機能別(特定機能病院,地域医療支援病院,一般病院)に,層別ランダム抽出した施設の看護部長宛てに研究協力の依頼を行い,研究協力の内諾が得られた施設に勤務する看護管理者を対象に質問紙調査を実施した.
調査票は,看護師長と看護主任への配布数が同数となるように依頼した上で,研究者から施設担当者に該当人数分を郵送し,施設担当者から調査対象者へ配布した.調査対象者は質問紙を受け取った後,質問紙へ記入し,記入後は各自が返信用封筒を用いてポストへ投函し,郵送法にて回収した.
4. 調査内容 1) 看護管理者のキーコンピテンシーに関する項目金子ら(2020)が開発した「看護管理者のキーコンピテンシー尺度」を用いた.この尺度は5因子30項目からなり,信頼性と妥当性が確認されている.キーコンピテンシーは【状況認識】【意思決定】【メタ認知】【キャリア支援】【自己管理】で構成され,各項目は「大変あてはまる」4点,「ある程度あてはまる」3点,「あまりあてはまらない」2点,「全くあてはまらない」1点の4段階評価とし,各因子の得点範囲は6~24点をとり,得点が高いほどキーコンピテンシーが高いことを示している.この尺度の使用許可は不要とされている.
2) 個人属性と施設特性に関する項目個人属性として,年齢,性別,職位,スタッフおよび管理者の経験年数,資格,学歴,認定看護管理者教育課程の受講について尋ねた.施設特性として,所在地,設置主体,施設規模を尋ねた.
5. 分析方法回収された調査票のうち,同意確認欄にチェックがされていないものを除き有効回答とした.
1) 看護管理者のキーコンピテンシーのベンチマーク5つのキーコンピテンシー(状況認識,メタ認知,自己管理,キャリア支援,意思決定)について,本研究のデータを用いてCronbachのα係数を算出し,データの内的整合性を確認した.そして,キーコンピテンシーごとの得点のほかに個人属性と施設特性の変数別に平均値と標準偏差,四分位値の記述統計を算出した.今回,平均値と標準偏差に加えて,四分位値を示した理由は以下の通りである.ベンチマークとは「パフォーマンス比較の参考となる測定基準」であることから,平均値と標準偏差から推定できる値は限られており,四分位値すなわち25パーセントタイル値,50パーセントタイル値,75パーセントタイル値を示すことによって全国の看護管理者のキーコンピテンシー得点のばらつき傾向が把握でき,個々のキーコンピテンシーレベルの位置づけがより明確になり,今後のキーコンピテンシーの目標値を設定する際の参考になると考えたためである.
2) 個人属性と施設特性との関連はじめに,看護管理者のキーコンピテンシーと個人属性・施設特性との関連を検証するにあたり,表1に示すとおり独立変数を設定した.なお,施設規模については,厚生労働省(2020)の受療行動調査の表記区分「大病院:病床規模が500床以上の病院,中病院:100床~499床の病院,小病院:20床~99床の病院」を参考に3区分とした.設置主体については,医療施設(動態)調査・病院報告(厚生労働省,2019)を参考に,国・都道府県・市町村,独立行政法人を「公立病院」,社会保険関係団体(日赤・済生会・厚生連・健康保険組合および連合会)などの公的医療機関を「公的病院」,医療法人・社会福祉法人・学校法人・個人などを「民間病院」とした.
変数名 | 変数設定 |
---|---|
性別 | 男(0),女(1) |
職位 | 看護主任(0),看護師長(1) |
看護管理経験 | 5年未満(1),5年以上10年未満(2),10年以上(3) |
資格 | それぞれの資格について,有(1),無(0) |
学歴 | 専門学校・短期大学(1),大学(2),大学院(3) |
看護管理者研修 | 未受講(0),ファーストレベル(1),セカンドレベル(2),サードレベル(3) |
施設規模 | 100床未満(1),100床以上500未満(2),500床以上(3) |
設置主体 | 公立病院(1)以外(0),公的病院(1)以外(0),民間病院(Reference) |
所在地 | 北海道・東北(1)以外(0),関東・甲信越(1)以外(0),中部・近畿(1)以外(0),中国・四国(1)以外(0),九州・沖縄(Reference) |
つぎに,設定した独立変数について多重共線性(VIF >10)がないことを確認した上で,それぞれのキーコンピテンシーを従属変数,個人属性と施設特性を独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,関連する変数を明らかにした.統計解析にはSPSS Version 27を使用し,統計学的有意水準は5%とした.
なお,本研究は大規模調査によるデータを扱っているため,統計による第一種過誤を回避するため,検定力分析ソフトG powerを用いて,水本・竹内(2008)の推奨条件(効果量.02,検出力.80,有意水準.05)と17変数の条件でサンプルサイズを算定し,適切なサンプル数n = 1467をランダム抽出して重回帰分析を行った.
6. 倫理的配慮本研究は,個人情報保護法および人を対象とした医学系研究に関する倫理指針に従い,長野県看護大学倫理委員会の審査を受け承認を得た(承認番号2017-5).対象者へは個人や施設の匿名性を保証し,調査協力の承諾は調査票の同意欄へのチェックで同意を確認した.調査票は,プライバシーの配慮に留意し,匿名にて行うこと,調査への参加は対象者の意思を尊重し,研究の参加・不参加によって不利益を被らないこと,得られたデータは本研究の目的以外で使用しないこと,データは統計的に処理し,厳重に保管し,分析終了後に確実に廃棄することを文書にて説明した.分析結果については,個人が特定されない形で,学会発表や論文投稿する旨を文書で説明した.
看護管理者5,093名から回答が得られ(回収率56.5%),有効回答5,007名(有効回答率98.3%)を分析対象とした.
対象者の個人属性と施設特性を表2に示した.対象者の平均年齢は48.1歳,女性が4,727名(94.6%)を占めていた.看護師長が2,630名(52.5%),看護主任2,377名が(47.5%)であり,看護管理者としての平均経験年数は12.6年であった.認定看護管理者の資格を有する者は119名(2.4%)であった.学歴は3年課程の専門学校と看護短期大学で4,536名(91.4%)を占めていた.
n | % | ||
---|---|---|---|
性別 | |||
男 | 268 | 5.4% | |
女 | 4,727 | 94.6% | |
職位 | |||
看護主任 | 2,377 | 47.5% | |
看護師長 | 2,630 | 52.5% | |
看護管理経験 | |||
5年未満 | 1,718 | 34.3% | |
5年以上10年未満 | 1,421 | 28.4% | |
10年以上 | 1,873 | 37.4% | |
資格(複数回答) | |||
保健師 | 230 | 4.6% | |
助産師 | 257 | 5.1% | |
認定看護師 | 370 | 7.4% | |
専門看護師 | 41 | 0.8% | |
認定看護管理者 | 119 | 2.4% | |
学歴 | |||
専門学校・短期大学 | 4,536 | 91.4% | |
大学 | 188 | 3.8% | |
大学院 | 237 | 4.8% | |
看護管理者研修 | |||
未受講 | 1,789 | 35.7% | |
ファーストレベル | 2,155 | 43.0% | |
セカンドレベル | 1,003 | 20.0% | |
サードレベル | 65 | 1.3% | |
施設規模 | |||
100床未満 | 258 | 5.2% | |
100床以上500未満 | 2,349 | 47.2% | |
500床以上 | 2,371 | 47.6% | |
設置主体 | |||
公立病院 | 1,499 | 30.1% | |
公的病院 | 1,575 | 31.6% | |
民間病院 | 1,912 | 38.3% | |
所在地 | |||
北海道・東北 | 725 | 14.5% | |
関東・甲信越 | 1,155 | 23.1% | |
中部・近畿 | 2,081 | 41.7% | |
中国・四国 | 460 | 9.2% | |
九州・沖縄 | 571 | 11.4% |
無記入を除く
施設特性として,施設規模については100床未満が258名(5.2%),100床以上500未満が2,349名(47.2%),500床以上が2,371名(47.6%)であった.設置主体については公立病院が1,499名(30.1%),公的病院が1,575名(31.6%),民間病院が1,912名(38.3%)であった.
2. 看護管理者のキーコンピテンシー得点看護管理者のキーコンピテンシーの得点(平均±標準偏差)は,【状況認識】17.5 ± 2.7点,【意思決定】16.7 ± 2.8点,【メタ認知】19.2 ± 2.3点,【キャリア支援】16.4 ± 3.2点,【自己管理】17.3 ± 2.6点であった.個人属性・施設特性別の看護管理者のキーコンピテンシー得点の平均値と標準偏差,四分位値を表3に示した.
状況認識 | 意思決定 | メタ認知 | キャリア支援 | 自己管理 | ||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | mean ± SD | Q1 | Q2 | Q3 | n | mean ± SD | Q1 | Q2 | Q3 | n | mean ± SD | Q1 | Q2 | Q3 | n | mean ± SD | Q1 | Q2 | Q3 | n | mean ± SD | Q1 | Q2 | Q3 | ||
全体 | 4,997 | 17.5 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 5,002 | 16.7 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 5,002 | 19.2 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 4,976 | 16.4 ± 3.2 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 5,006 | 17.3 ± 2.6 | 16.0 | 17.0 | 19.0 | |
性別 | ||||||||||||||||||||||||||
男 | 266 | 17.2 ± 2.8 | 15.8 | 18.0 | 18.3 | 267 | 16.5 ± 2.9 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 267 | 18.8 ± 2.4 | 17.0 | 18.0 | 20.0 | 268 | 15.5 ± 3.2 | 13.0 | 16.0 | 18.0 | 267 | 16.7 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | |
女 | 4,720 | 17.5 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 4,724 | 16.7 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 4,723 | 19.3 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 4,696 | 16.5 ± 3.2 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 4,727 | 17.4 ± 2.6 | 16.0 | 17.0 | 19.0 | |
職位 | ||||||||||||||||||||||||||
看護主任 | 2,368 | 17.1 ± 2.6 | 16.0 | 17.0 | 18.0 | 2,376 | 16.3 ± 2.8 | 15.0 | 16.0 | 18.0 | 2,377 | 18.9 ± 2.3 | 18.0 | 18.0 | 20.0 | 2,368 | 15.2 ± 3.1 | 13.0 | 15.0 | 17.0 | 2,376 | 17.0 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | |
看護師長 | 2,629 | 17.9 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 2,626 | 17.1 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 2,625 | 19.5 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 2,608 | 17.5 ± 2.9 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 2,630 | 17.6 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | |
看護管理経験 | ||||||||||||||||||||||||||
5年未満 | 1,707 | 17.1 ± 2.6 | 16.0 | 17.0 | 18.0 | 1,718 | 16.3 ± 2.8 | 15.0 | 16.0 | 18.0 | 1,717 | 19.0 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 20.0 | 1,710 | 15.4 ± 3.2 | 13.0 | 15.0 | 18.0 | 1,714 | 17.0 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | |
5年以上10年未満 | 1,417 | 17.5 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 1,413 | 16.6 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 1,416 | 19.2 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 1,406 | 16.4 ± 3.1 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 1,421 | 17.2 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | |
10年以上 | 1,873 | 17.9 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 1,871 | 17.2 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 1,869 | 19.5 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 1,860 | 17.4 ± 3.0 | 15.0 | 18.0 | 19.0 | 1,871 | 17.7 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | |
資格(複数回答) | ||||||||||||||||||||||||||
保健師 | 229 | 17.2 ± 2.8 | 16.0 | 17.0 | 18.0 | 230 | 16.5 ± 3.1 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 228 | 18.9 ± 2.1 | 18.0 | 18.0 | 20.0 | 230 | 16.0 ± 3.0 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 230 | 17.1 ± 2.7 | 15.8 | 17.0 | 18.0 | |
助産師 | 257 | 17.6 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 253 | 16.7 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 254 | 19.3 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 251 | 17.1 ± 3.1 | 15.0 | 17.0 | 19.0 | 254 | 17.6 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | |
認定看護師 | 369 | 18.0 ± 2.8 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | 370 | 17.2 ± 2.9 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 370 | 19.3 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 370 | 17.0 ± 3.1 | 15.0 | 17.0 | 19.0 | 370 | 18.1 ± 2.8 | 17.0 | 18.0 | 20.0 | |
専門看護師 | 41 | 17.7 ± 3.3 | 17.0 | 18.0 | 19.0 | 41 | 16.9 ± 2.9 | 15.0 | 16.0 | 18.0 | 41 | 19.4 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.5 | 41 | 16.8 ± 3.0 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 41 | 18.2 ± 3.2 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | |
認定看護管理者 | 119 | 18.0 ± 2.9 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | 119 | 17.1 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 118 | 19.7 ± 2.6 | 18.0 | 20.0 | 22.0 | 118 | 17.6 ± 2.8 | 15.0 | 18.0 | 19.0 | 118 | 18.0 ± 3.0 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | |
学歴 | ||||||||||||||||||||||||||
専門学校・短期大学 | 4,528 | 17.5 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 4,534 | 16.7 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 4,532 | 19.3 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 4,506 | 16.4 ± 3.2 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 4,536 | 17.3 ± 2.6 | 16.0 | 17.0 | 19.0 | |
大学 | 186 | 17.4 ± 2.8 | 16.0 | 18.0 | 18.0 | 188 | 16.6 ± 3.1 | 15.0 | 16.5 | 18.0 | 187 | 18.9 ± 2.2 | 17.0 | 18.0 | 20.0 | 188 | 16.1 ± 3.0 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 188 | 17.4 ± 2.8 | 16.0 | 17.5 | 18.8 | |
大学院 | 237 | 17.9 ± 2.9 | 17.0 | 18.0 | 20.0 | 236 | 17.3 ± 3.0 | 16.0 | 17.0 | 18.8 | 237 | 19.4 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 237 | 17.4 ± 3.1 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 237 | 18.1 ± 2.8 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | |
看護管理者研修 | ||||||||||||||||||||||||||
未受講 | 1,780 | 17.2 ± 2.8 | 16.0 | 17.0 | 18.0 | 1,789 | 16.3 ± 2.8 | 15.0 | 16.0 | 18.0 | 1,787 | 19.0 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 1,778 | 15.3 ± 3.2 | 13.0 | 15.0 | 18.0 | 1,783 | 17.0 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | |
ファーストレベル | 2,151 | 17.5 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 18.0 | 2,146 | 16.6 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 2,152 | 19.2 ± 2.2 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 2,143 | 16.5 ± 3.0 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 2,155 | 17.3 ± 2.5 | 16.0 | 17.0 | 18.0 | |
セカンドレベル | 1,001 | 18.2 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | 1,002 | 17.6 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 998 | 19.6 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 991 | 18.1 ± 2.9 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | 1,003 | 17.9 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | |
サードレベル | 65 | 19.2 ± 2.6 | 18.0 | 18.0 | 21.0 | 65 | 18.4 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.5 | 65 | 20.2 ± 2.6 | 18.0 | 20.0 | 22.5 | 64 | 18.9 ± 2.9 | 17.0 | 19.0 | 21.0 | 65 | 19.1 ± 3.0 | 17.0 | 18.0 | 22.0 | |
施設規模 | ||||||||||||||||||||||||||
100床未満 | 254 | 17.4 ± 2.5 | 16.0 | 17.0 | 19.0 | 256 | 16.2 ± 2.8 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 257 | 19.3 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 255 | 15.2 ± 3.7 | 13.0 | 15.0 | 18.0 | 258 | 17.0 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 19.0 | |
100床以上500未満 | 2,349 | 17.7 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 2,349 | 16.5 ± 2.9 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 2,345 | 19.5 ± 2.2 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 2,332 | 16.0 ± 3.3 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 2,345 | 17.1 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 19.0 | |
500床以上 | 2,363 | 17.4 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 18.0 | 2,365 | 16.9 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 2,368 | 19.0 ± 2.4 | 18.0 | 18.0 | 21.0 | 2,357 | 17.1 ± 3.0 | 15.0 | 17.0 | 19.0 | 2,371 | 17.6 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | |
設置主体 | ||||||||||||||||||||||||||
公立病院 | 1,496 | 17.3 ± 2.7 | 16.0 | 17.0 | 18.0 | 1,491 | 16.5 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 1,496 | 19.0 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 1,490 | 16.5 ± 3.1 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 1,499 | 17.1 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | |
公的病院 | 1,566 | 17.6 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 1,575 | 17.0 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 1,566 | 19.2 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 1,564 | 17.1 ± 3.0 | 15.0 | 17.0 | 19.0 | 1,569 | 17.5 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | |
民間病院 | 1,908 | 17.7 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 1,904 | 16.7 ± 2.9 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 1,908 | 19.5 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 1,896 | 15.9 ± 3.4 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 1,912 | 17.3 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 19.0 | |
所在地 | ||||||||||||||||||||||||||
北海道・東北 | 722 | 17.4 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 18.0 | 720 | 16.7 ± 2.7 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 722 | 19.0 ± 2.4 | 18.0 | 18.0 | 21.0 | 718 | 16.5 ± 3.1 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 725 | 17.1 ± 2.5 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | |
関東・甲信越 | 1,148 | 17.8 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 1,153 | 16.9 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 1,155 | 19.5 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 1,149 | 16.6 ± 3.3 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 1,155 | 17.6 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | |
中部・近畿 | 2,076 | 17.3 ± 2.7 | 16.0 | 18.0 | 18.0 | 2,081 | 16.5 ± 2.9 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 2,080 | 19.2 ± 2.3 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 2,071 | 16.3 ± 3.2 | 14.0 | 17.0 | 18.0 | 2,079 | 17.3 ± 2.7 | 16.0 | 17.0 | 19.0 | |
中国・四国 | 458 | 17.5 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 459 | 16.5 ± 2.8 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 460 | 19.2 ± 2.2 | 18.0 | 19.0 | 20.0 | 458 | 16.1 ± 3.3 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 458 | 17.2 ± 2.6 | 16.0 | 17.0 | 19.0 | |
九州・沖縄 | 571 | 17.9 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 | 567 | 17.1 ± 2.6 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 563 | 19.4 ± 2.2 | 18.0 | 19.0 | 21.0 | 558 | 16.7 ± 3.2 | 15.0 | 17.0 | 18.0 | 567 | 17.4 ± 2.6 | 16.0 | 18.0 | 19.0 |
mean;平均値,SD;標準偏差,Q1;25パーセンタイル,Q2;50パーセンタイル,Q3;75パーセンタイル
看護管理者のキーコンピテンシーの内的整合性(Cronbachのα係数)は,【状況認識】α = .850,【意思決定】α = .854,【メタ認知】α = .849,【キャリア支援】α = .873,【自己管理】α = .811であった.
3. 看護管理者のキーコンピテンシーと個人属性・施設特性との関連キーコンピテンシーと個人属性・施設特性との関連を表4に示した.【状況認識】は職位(β = .062, p < .001),看護管理経験(β = .063, p < .001),認定看護師の資格(β = .052, p < .001),看護管理者研修(β = .102, p < .001),施設規模(β = –.087, p = .001),公立病院(β = –.050, p < .001)が関連していた(R2 = .041, p < .001).【意思決定】は,職位(β = .053, p = .002),看護管理経験(β = .047, p = .004),認定看護師の資格(β = .067, p < .001),看護管理者研修(β = .126, p < .001),施設規模(β = .050, p < .001),公立病院(β = –.048, p < .001)が関連していた(R2 = .047, p < .001).【メタ認知】は,性別(β = .034, p < .001),職位(β = .110, p < .001),看護管理者研修(β = .058, p < .001),施設規模(β = –.096, p = .001),公立病院(β = –.057, p < .001)が関連していた(R2 = .034, p < .001).【キャリア支援】は,性別(β = .043, p = .001),職位(β = .252, p < .001),看護管理経験(β = .052, p = .001),認定看護師の資格(β = .068, p < .001),看護管理者研修(β = .143, p < .001),施設規模(β = .142, p < .001),公立病院(β = .036, p = .014)と公的病院(β = .033, p = .001)が関連していた(R2 = .199, p < .001).【自己管理】は,性別(β = .055, p < .001),職位(β = .051, p = .001),認定看護師の資格(β = .084, p < .001),学歴(β = .043, p = .002),看護管理者研修(β = .101, p < .001),施設規模(β = .046, p = .001),公立病院(β = –.043, p < .001)が関連していた(R2 = .040, p < .001).
状況認識 | 意思決定 | メタ認知 | キャリア支援 | 自己管理 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
β | p | β | p | β | p | β | p | β | p | ||
性別 | ― | ― | ― | ― | .034 | <.001 | .043 | .001 | .055 | <.001 | |
職位 | .062 | <.001 | .053 | .002 | .110 | <.001 | .252 | <.001 | .051 | .001 | |
看護管理経験 | .063 | <.001 | .047 | .004 | ― | ― | .052 | .001 | ― | ― | |
資格 | 保健師 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
助産師 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
認定看護師 | .052 | <.001 | .067 | <.001 | ― | ― | .068 | <.001 | .084 | <.001 | |
専門看護師 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
認定看護管理者 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
学歴 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | .043 | .002 | |
看護管理者研修 | .102 | <.001 | .126 | <.001 | .058 | <.001 | .143 | <.001 | .101 | <.001 | |
施設規模 | –.087 | .001 | .050 | <.001 | –.096 | .001 | .142 | <.001 | .046 | .001 | |
設置主体 | 公立病院 | –.050 | <.001 | –.048 | <.001 | –.057 | <.001 | .036 | .014 | –.043 | <.001 |
公的病院 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | .033 | .001 | ― | ― | |
民間病院(Reference) | |||||||||||
所在地 | 北海道・東北 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
関東・甲信越 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
中部・近畿 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
中国・四国 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
九州・沖縄(Reference) | |||||||||||
n | 1,467 | 1,467 | 1,467 | 1,467 | 1,467 | ||||||
R | .202 | .216 | .184 | .446 | .200 | ||||||
R2 | .041 | .047 | .034 | .199 | .040 |
重回帰分析(ステップワイズ法),―は変数が選択されなかったことを意味する
本研究は,看護管理者のコンピテンシー獲得状況に関する基礎資料を得るために,個人属性と施設特性の観点からわが国の看護管理者のキーコンピテンシーに関するベンチマークを提示した.本研究の対象は,全国から抽出した大規模サンプリングによって得られたものである.本調査の回収率は56.5%であるが,看護管理者の属性について既存の全国規模の調査結果(日本看護協会,2014;手島ら,2016)と比べて看護管理者となった年齢,看護管理経験年数などにおいて大差はみられなかった.また,一般に看護管理者の配置は,看護師20名から30名につき約2名(看護師長1名,看護主任1名)であることから,施設の所在地,設置主体,施設規模についても概ね母集団を反映した結果であると考える.
2. 看護管理者のキーコンピテンシーのベンチマークはじめに,本研究で用いたNMKCSは大病院で働く看護管理者を対象にその信頼性と妥当性が検証されたものである.本研究の対象者は中小規模病院の看護管理者も含まれるため,あらためてデータの内的整合性を確認した結果,Cronbach のα係数が.800以上であることが確認され,データの信頼性については問題ないと考える.
その上で,5つのキーコンピテンシーの得点分布をみてみると,平均値や中央値に違いがあるが,【状況認識】【メタ認知】【意思決定】【自己管理】の標準偏差は3.0未満,四分位範囲は3.0である一方,【キャリア支援】の標準偏差は3.2,四分位範囲は4.0であり,【キャリア支援】は4つのキーコンピテンシーに比べてばらつきが大きいことが示された.すなわち,【キャリア支援】の場合はそのパフォーマンスが高い人と低い人の違いが大きいということであり,他の4つに比べて改善の余地があることを意味していると考える.
今回,それぞれのキーコンピテンシーについて全体の平均値と標準偏差,四分位範囲を示すことによって,全国の看護管理者のキーコンピテンシーのベンチマークを提示することができたと考える.本研究ではベンチマークを「パフォーマンス比較の参考となる測定基準」としており,ベンチマークは現状把握のための基準値でもあり,目標となる基準値としても活用できると考える.すわなち,今後,NMKCSを用いて看護管理者自身のキーコンピテンシーを測定し,今回提示したベンチマークを参考にしながら,個々のキーコンピテンシー獲得状況を全国の看護管理者レベルから現状の位置づけを評価することが可能になる.そして,個人属性別のベンチマークを参考にすることで個々の属性に近い形で目指すべき目標値を設定することが可能になり,また施設特性別のベンチマークを参考にすることで各施設で行われている看護管理者研修などの教育評価として目指すべき目標値を設定することが可能になると考える.
3. 看護管理者のキーコンピテンシーと個人属性・施設特性との関連キーコンピテンシー【状況認識】【意思決定】【メタ認知】【キャリア支援】【自己管理】の5つに共通して,個人属性のうち「看護管理者研修」と「職位」が関連していた.鈴木(2021)は看護師のWLB実現に向けた看護師長のコンピテンシー評価尺度を用いて認定看護管理者研究受講歴(セカンドレベル以上)でコンピテンシーが高いことを示している.本村・川口(2013)はNACASを用いて職位(看護師長,副看護部長,看護部長)が高いほどコンピテンシーが高いこと,また,金子ら(2020)はNMKCSを用いて,職位(看護主任,看護師長)が高いほどコンピテンシーが高いことを示している.これらの先行研究は,本結果と同様の見解を示しており,キーコンピテンシーへの看護管理者研修と職位の関連を支持するものであった.
「認定看護師」の有資格は【状況認識】【意思決定】【キャリア支援】【自己管理】の4つで関連がみられた.丹野・鄭(2021)はTコンピテンシー尺度を用いて認定・専門看護師の有無で検討し,資格がある場合はない場合に比べてコンピテンシーが高いことを示している.本結果は専門看護師の資格の影響については示されなかったが,認定看護師の資格の影響については示された.本結果と先行研究の知見が異なるのは分析方法の違いに起因すると考える.すわなち,丹野・鄭(2021)は認定看護師と専門看護師の有資格者をまとめて分析しているが,本研究では認定看護師と専門看護師それぞれに分けて分析しており,このことが異なる結果を示した理由と考える.
「看護管理経験」は【状況認識】【意思決定】【キャリア支援】の3つで関連がみられた.大重ら(2019)はNACASを用いて看護師長の経験年数が長いほどコンピテンシー(問題対処行動CPと目標設定CP)が高くなることを示している.一方,丹野・鄭(2021)はTコンピテンシー尺度を用いて看護師長経験年数で差がないことを示している.このように,これまでの研究成果では看護管理経験を積むほどコンピテンシーが高くなるという仮説に対して一致した見解は示されていない.本研究はNMKCSを用いており,NACASの構成概念とは異なるが,NMKCSの【状況認識】と【意思決定】はNACASの問題対処行動CPに類似する概念であり,また【キャリア支援】は目標設定CPと類似する概念であり,本結果は,看護管理経験が長いほど3つのキーコンピテンシーが高くなるということを示しており,大重ら(2019)の見解を支持するものであった.
「性別」は【メタ認知】【キャリア支援】【自己管理】の3つで関連がみられた.既存の研究では女性の看護管理者を分析対象としたものが多く,性別でコンピテンシーを比較検証した報告は少ない.鈴木(2021)は看護師のWLB実現に向けた看護師長のコンピテンシー評価尺度を用いて性別の違いを検証しているがすべてのコンピテンシーで女性が男性に比べて高いという傾向が示されているわけではない.よって今回示された3つのキーコンピテンシーについて女性が男性に比べて高いという結果については,今後その背景要因について検討していく必要がある.
「学歴」は【自己管理】で関連がみられた.丹野・鄭(2021)はTコンピテンシー尺度を用いて看護学修士の学位が関連することを示しており,本結果も大学院修了者のキーコンピテンシーは高い傾向にあることから,同様の結果を確認することができた.
他方,5つのキーコンピテンシーに共通して,施設特性である「施設規模」と「設置主体」が関連していた.施設規模については,既存研究では病床規模別にコンピテンシーを比較検証した報告は少なく,丹野・鄭(2021)は病床規模の違いによってコンピテンシーに差はなかったとしている.今回,5つのキーコンピテンシーのうち,病床規模が大きいほど【意思決定】【キャリア支援】【自己管理】が高くなり,逆に【状況認識】と【メタ認知】が低くなる傾向が示された.また,既存研究では設置主体別にコンピテンシーを比較した報告はみられないが,本結果は設置主体の違い,すなわち「公的病院」であるか否かによってキーコンピテンシーが高い場合とそうでない場合が示された.この背景には施設特性による管理上の経験や環境の違いが起因していると考える.すなわち,病床規模が大きいということは施設内の看護管理者の人数も多くなり,看護人材育成や目標管理に関する院内教育や研修を実施しやすく学習の機会が確保されている可能性があると考えられる.現に,中小規模病院では人手不足や研修費用の負担等から学習する機会が少ないことが報告されている(大島・福島,2015).また,中小規模病院では内部環境として他部門や職員間の距離が近く看護管理者は大病院とは違った意思決定が求められ(手島ら,2016),地域とのかかわりなど外部環境をより意識しながら管理している可能性が考えられ,設置主体による違いは施設の内部環境と外部環境による影響が起因していると考える.
看護管理者のキーコンピテンシーへの関連について個人属性と施設特性の観点から検証した結果,それぞれのキーコンピテンシーについて有意な関連がみとめられたが,【キャリア支援】を除く,4つのキーコンピテンシー【状況認識】【意思決定】【メタ認知】【自己管理】では決定係数が5%に満たないことから,今回投入した独立変数(個人属性と施設特性)で従属変数(キーコンピテンシー)を説明するには,これらの変数のみでの寄与率は低く,今回投入した独立変数以外の要因が関連していると考えられる.
4. 本研究の限界と今後の課題本研究の限界として3つ考えられる.1つは,本研究は病院に勤務する看護管理者に限定しており,介護福祉施設や訪問看護事業所などの看護管理者への適応可能性についてはさらなる検証が必要である.2つ目は,本研究は全国の看護管理者のキーコンピテンシーに関する現状,個人属性および施設特性による関連の検証を目的とした横断調査であるため,今後は縦断調査により看護管理者のキーコンピテンシー獲得の推移を明らかにしていく必要がある.3つ目は,本研究において看護管理者のキーコンピテンシーと個人属性および施設特性の関連の検証に用いた変数が限局的であるという点である.今回,まずは先行研究で一致した見解が示されていない基本的な個人属性や施設特性の観点から関連を検証する必要があると考えたが,看護管理者のキーコンピテンシーは個人の内的要因である問題意識と挑戦意欲,リフレクションの質,また,外的要因である上司や同僚によるフィードバックと機会の提供が関係している可能性があることから(金子ら,2021),今後は個人の内的要因や施設の外的要因などの変数による関連を検証していく必要がある.
本研究は,全国の約5,000名を対象とした看護管理者のキーコンピテンシーに関するベンチマークを提示した.また,看護管理者のキーコンピテンシーについて個人属性と施設特性の観点から関連を検討した結果,5つのキーコンピテンシーに共通して看護管理者研修,職位,施設規模,設置主体が有意な関連を示したが,【キャリア支援】を除く【状況認識】【意思決定】【メタ認知】【自己管理】で決定係数は5%以下であり,個人属性と施設特性によるキーコンピテンシーへの関連は乏しいことが示唆された.
謝辞:本研究の実施にあたり,ご協力いただいた各施設の看護部長ならびに看護管理者の皆様に深く感謝申し上げます.本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)1 9 H 0 3 9 2 4の研究成果の一部である.
利益相反:本研究に関する利益相反は存在しない.
著者資格:SKおよびMM,AWは研究の着想およびデザインへの貢献,SKおよびEIはデータ収集および分析,SKおよびMM,AW,EIは分析解釈への貢献,SKおよびMM,AW,EIは原稿への示唆および研究プロセス全体への助言を行い,すべての著者は最終原稿を読み,承認した.