日本看護科学会誌
Online ISSN : 2185-8888
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42 巻
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総説
  • 牛塲 かおり, 林 智子, 井村 香積
    原稿種別: 総説
    2022 年 42 巻 p. 422-428
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/26
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    目的:退院支援における病棟看護師のコーディネーションの概念がどのような文脈で用いられ,どのような特徴をもっているのかを明らかにする.

    方法:英文献13文献,和文献2文献を対象にRodgersの概念分析方法を用いた.

    結果:属性は【ケアにつなぐために患者の意向をくみ取る】【患者・家族・多職種の仲をとりもつ】【関係職種間で目標・情報をつなぐ】【退院後の問題解決方法を捻出する】【退院後の環境を整える】【新たなシステムを取り入れる】が抽出された.本研究結果から,本概念の定義「退院支援チームにおいて,関係者と連携・協働しながら患者の意向をくみ取りその意向に添ったケアが行えるよう,関係職種間の情報や関係性をつなぐことである.そして,退院後に向けた視点をもち問題解決方法を思案し,患者が退院後も継続的に支援を受けられる環境を整え,退院支援システムをより現状にあったものへと調節することである」を導き出した.

  • 菊本 由里, 徳重 あつ子, 岩﨑 幸恵
    原稿種別: 総説
    2022 年 42 巻 p. 468-475
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/26
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    目的:日本における認知症高齢者のアドバンス・ケア・プランニングの概念を概念分析により明らかにすることである.

    方法:42文献を分析対象としRodgersの概念分析の手法を用い分析した.

    結果:分析の結果,【本人・多職種・関係者全員がチームを組み関係構築】,【代理意思決定者の選定】,【倫理的に適切な事前指示書の共有】,【人生の最終段階に向けた家族の準備】,【早期から最期まで継続した本人中心の意思決定】,【望む生き方の最善を考える取り組み】の6属性と,4先行要件,3帰結が抽出された.

    結論:本概念は,「認知症の変化,進行,不安に伴い,将来の意思決定に向けて環境を整備し,認知症早期から本人と関係者全員が関係構築しながら,事前指示書の共有,代理意思決定者の選定,人生の最終段階に向け家族も準備し,最期まで継続した本人中心の意思決定と望む生き方の最善を考える取り組みのプロセス」と定義した.

  • 常盤 文枝, 浅井 宏美, 辻 玲子, 水間 夏子, 上原 美子, 黒田 真由美
    原稿種別: 総説
    2022 年 42 巻 p. 494-500
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/26
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    目的:「日本におけるヤングケアラー」の概念の定義と概念図を示す.

    方法:Rodgersらの概念分析の手法を用いた.和文検索データベースを使用し,関連するキーワード検索を行った結果,35文献が分析対象となった.

    結果:属性は【多様なケア】【過重な役割と責任】【家族を維持する努力】【複雑な感情】【置かれた状況への無自覚】,先行要件は【家族システムとダイナミクス】【未充足のケアニーズ】【隠された存在】,帰結は【自己存在の意味づけ】【家族内の負の円環】【子どもとしての成長発達への影響】【社会的・経済的基盤形成への影響】【社会的損失】【ケアラーの潜在化】を抽出した.

    結論:日本におけるヤングケアラーとは,『家庭で代行的・情緒的ケアなど多様なケアを行い,過重な役割と責任を担っている18歳未満の子ども.彼らは家族を維持する努力をする中で,複雑な感情を抱きつつも,自分が置かれた状況に無自覚な場合がある』と定義した.

  • 紙谷 恵子, 伊東 美佐江, 前田 訓子, 齊田 菜穂子
    原稿種別: 総説
    2022 年 42 巻 p. 501-508
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/07
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    【目的】国内外の文献をレビューし,乳がん女性が薬物療法前に行う妊孕性温存の選択に対する意思決定支援の実態と課題を明らかにする.

    【方法】MEDLINE,CINAHL,医学中央雑誌を用いて,2004年から2021年までの発表論文を対象に,キーワードは和文「乳房腫瘍」「妊孕性温存」,英文「Breast cancer」「Fertility preservation」とした.

    【結果】対象論文は8件で,意思決定に対する支援は「開発されたツールによる支援」と「医療専門職者によるコンサルテーション」に分類された.

    【結論】専門家の連携による支援効果は示されたが,意思決定支援ツールの効果は限定的で,情報提供の量や方法の更なる検討が示唆された.乳がん女性が行う妊孕性温存に関する選択は,様々な背景が関連しその影響は長期に及ぶため,医療者の連携と継続的支援を必要とする.わが国に応じた支援体制の構築が望まれる.

  • 澤田 いずみ, 道信 良子, 石川 幸代, 小川 賢一, 原田 瞳
    原稿種別: 総説
    2022 年 42 巻 p. 652-660
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/16
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    目的:日本の医療分野で健康問題を抱える人へ実践されている応援の概念分析を行い,定義を明らかにする.

    方法:国内文献29件を対象にRodgersの概念分析を行った.

    結果:前提要件3つ,属性4つ,帰結4つのサブカテゴリーから,各一つの【カテゴリー】が抽出され,医療分野の応援は,生き方の模索が続く健康問題を抱える人への【自分らしくあることの困難性への共感】に基づいて,医療者が【その人が自分らしく生きるために味方になり新たな活動を試みる】ことで【その人の主体性の高まりに医療者としての自分らしさが充実していく】過程であった.味方になるとは,医療情報を分かりやすく伝えること,対象者と願いを共に考え支えること,対象者の思いを代弁し共感を周囲に波及させ仲間を作ることにより,その人らしさを支えることだった.

    結論:医療分野での応援は,対象者のその人らしさを大切にしたい医療者の新たな活動の創出を助ける概念と考えられた.

  • 及川 江利奈, 栗林 一人, 栗原 淳子, 高野 歩
    原稿種別: 総説
    2022 年 42 巻 p. 811-818
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
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    目的:精神科における看護師から患者への暴力と虐待に関する文献を包括的にレビューし,その特徴と要因を明らかにする.

    方法:PRISMA-ScRに基づき,スコーピングレビューを実施した.文献検索には,PubMed,CINAHL,医学中央雑誌を用いた.文献選定の包含基準は,(1)精神科病棟や外来における看護師から患者への暴力,虐待行為に関する論文,(2)英語または日本語で書かれた論文とした.

    結果:最終的に,12件の文献がレビュー対象となった.暴力や虐待の内容は,暴行,暴言,無視,身体拘束に関する内容であった.暴力や虐待の要因に関する内容は,自分の行為は,ケアであって暴力ではないという思い込み,精神科における閉鎖的な治療環境に関する内容であった.

    結論:本研究結果から,精神科における看護師から患者への暴力,虐待の特徴や要因には,閉鎖性,密室性,強制性という精神科医療における構造的問題があることが示唆された.

  • 久保田 早苗, 岩渕 和久
    原稿種別: 総説
    2022 年 42 巻 p. 937-945
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/16
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    目的:国外のピアサポーターによるPeople Living with HIV(PLWH)の心理社会的転帰の支援に関する文献を整理,分析し,心理社会的転帰を改善したとされた支援策を抽出する.

    方法:PubMed,MEDLINE,CINAHLを用い(“PLWH” AND (“antiretroviral therapy” OR “quality of life”)) AND (“peer-led intervention” OR “peer support”)で文献検索した.

    結果:先行研究で心理社会的転帰を改善したとされた支援は,カウンセリング,アドヒアランスの障壁の克服等に関する議論や個別介入であった.その結果,社会交流が増加しスティグマの軽減,経験に基づく助言で自己効力感が向上,アドヒアランスや自己管理が促進しQOLの向上を認めた.

    結論:ピアサポーターの経験に基づく支援はPLWHの社会交流の増加,スティグマが軽減し,QOL向上への寄与が示された.

原著
  • 寺岡 貴子, 深堀 浩樹
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 1-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/09
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    目的:認知症専門病院を受診・入院している認知症高齢者の家族介護者が行う行動・心理症状への対応を明らかにする.

    方法:認知症高齢者を介護する家族介護者16名に半構造化面接を実施し,Elo & Kyngäs(2008)の質的内容分析を行った.

    結果:【被介護者への抑えられない叱責】【被介護者に対する行動制限】などの16カテゴリーから構成される《BPSDへの対応の模索》《発展的対応》《抑圧的対応》《孤立をもたらす対応》の4つのテーマが得られた.家族介護者は周囲の人と効果的な対応を共有し,介護のコツを獲得するといった《発展的対応》と,叱責,制限といった《抑圧的対応》の両方を行っていた.【周囲に被介護者のことを隠秘】し,自己犠牲を払って《孤立をもたらす対応》に至る場合もあった.

    結論:被介護者の尊厳を傷つける可能性のある《抑圧的対応》に関して,適切なサポートを行うことで,虐待や孤立を予防できる可能性がある.

  • 金子 さゆり, 松浦 正子, ウィリアムソン 彰子, 井本 英津子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 11-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/18
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    目的:看護管理者のキーコンピテンシーに関するベンチマークを提示し,個人属性と施設特性の観点から看護管理者のキーコンピテンシーの関連を検証する.

    方法:422施設の看護管理者9,010名を対象に質問紙調査を実施した.分析は個人属性と施設特性別に記述集計を算出し,各キーコンピテンシーを従属変数とし個人属性と施設特性を独立変数として重回帰分析を行った.

    結果:看護管理者5,093名から回答が得られ,有効回答5,007名について分析した結果,キーコンピテンシーの平均得点は,状況認識17.5点,意思決定16.7点,メタ認知19.2点,キャリア支援16.4点,自己管理17.3点であった.重回帰分析の結果,5つのキーコンピテンシーに看護管理者研修,職位,施設規模,設置主体が関連していたが,キャリア支援を除く4つのキーコンピテンシーでは決定係数が5%以下であった.

    結論:看護管理者のキーコンピテンシーのベンチマークを提示した.個人属性と施設特性によるキーコンピテンシーへの関連は乏しいことが示唆された.

  • 青木 裕見, 木下 康仁, 瀬戸屋 希, 岩本 操, 船越 明子, 武用 百子, 松枝 美智子, 片岡 三佳, 安保 寛明, 萱間 真美
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 21-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/22
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    目的:COVID-19パンデミックに対応した福祉施設管理者の体験を明らかにすることを目的とした.

    方法:7施設の福祉施設管理者8名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的分析を行った.

    結果:36のカテゴリと109のサブカテゴリが抽出された.研究参加者は,人的・物的な医療資源のない自施設で未曽有の感染症に果敢に対処していた.不安・緊張を抱える中,組織内のスタッフと情報共有を密にし,勤務体制の再編成を行い,支援の優先度を見極めつつ障害特性に応じた対応を工夫しながら,本人・家族への支援を続けていた.そこでは,従前からの組織内の関係性や対策,さらに一般社会との相互作用も影響しており,とくに地域の医療との協力は必須であった.

    結論:緊急時でも支援を継続させるためには,平時から組織内で情報共有を密にし,業務の優先順位を整理しておくことが重要であると示唆された.またパンデミックを乗り越えるには医療との協働は不可欠であり,看護支援のニーズが高いことが示唆された.

  • 深山 華織, 河野 あゆみ
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 31-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/01
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    目的:就労介護者の仕事と家庭役割間との葛藤とケアマネジャーによる就労継続支援の判断および就労介護者の特性との関連を明らかにする.

    方法:対象者は,全国の居宅介護支援事業所を利用する就労介護者とその担当ケアマネジャー各3,000名とした.郵送で無記名自記式調査を実施し,各対象者 696名(有効回答率23.2%)を分析対象とした.就労介護者から,ワーク・ファミリー・コンフリクト(WIF・FIW)等を把握し,ケアマネジャーから,介護者の就労継続のための支援の判断等を把握した.

    結果:就労介護者の平均年齢は57.2(SD8.8)歳で女性が79.3%であった.ロジスティク回帰分析の結果,ケアマネジャーが心理的支援の必要性が高いと判断している就労介護者はWIFが高かった.

    結論:ケアマネジャーが心理的支援の必要性があると判断する就労介護者は,就労により家庭役割を遂行する上で葛藤を抱えていることが明らかになった.

  • 松岡 加純, 河野 あゆみ
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 40-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/01
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    目的:地域医療支援病院の救急・集中治療領域における看護師の代理意思決定支援と終末期ケアに対する困難度と態度の関連を明らかにする.

    方法:救急・集中治療領域の看護師を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,看護師の代理意思決定支援,終末期ケアに対する困難度(DFINE),終末期ケアに対する態度(FATCOD-BJ)を把握した.

    結果:分析対象者120名のうち,代理意思決定支援の高実践群(60名)は低実践群(60名)に比べ,救急・集中治療領域の臨床経験が6年以上の者が多かった.終末期ケアに対する困難度の得点では,代理意思決定支援の高実践群は低実践群より低く,共分散分析においても有意な差がみられた.終末期ケアに対する態度に関しては,代理意思決定支援の高実践群と低実践群では,t検定ならび共分散分析において有意な差はみられなかった.

    結論:救急・集中治療領において代理意思決定支援を積極的に行っている看護師は,終末期ケアに対する困難感が低いことが示された.

  • ―交代制勤務に従事する看護職を対象としたオンライン調査―
    渡邊 龍之介, 木田 亮平, 武村 雪絵
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 63-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/11
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    目的:看護職の労働条件,相対的に偏りのある勤務割り振り(以下,相対的偏り)や勤務日・休暇のコントロール感不足(以下,コントロール感不足)とバーンアウトや身体愁訴との関連を検証する.

    方法:2020年1~2月,交代制勤務に従事する看護職を対象にweb調査を行った.バーンアウトの下位尺度(情緒的消耗感,脱人格化,個人的達成感)と身体愁訴を従属変数とし,基本属性,労働状況,相対的偏りおよびコントロール感不足を順に投入する階層的重回帰分析を行った.

    結果:分析対象者は394名だった.階層的重回帰分析の結果,最終モデルでは労働状況には統計学的有意差を認めず,相対的偏りは情緒的消耗感と脱人格化に,勤務日や休暇の見通しのなさは情緒的消耗感に,急な休暇取得のしにくさは脱人格化と身体愁訴に関連した.

    結論:交代制勤務に従事する看護職にとっては労働状況よりも相対的偏りやコントロール感不足と心身のストレスとの関連が明らかになった.

  • ~感染する前から感染判明後しばらくの間に抱いた思いに焦点をあてて~
    新改 法子, 大西 香代子, 矢野 久子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 72-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/11
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    目的:新型コロナウイルス感染症に院内感染した看護師の支援と感染症看護に携わる看護師への事前・継続教育及び病院の管理体制に関する示唆を得るために,院内感染した看護師の感染前と感染判明後しばらくの間に抱いた思いを明らかにする.

    方法:A病院の感染症病棟で院内感染し,職場復帰できた看護師8名に半構成的面接法によるインタビューを行い質的帰納的に分析した.

    結果:感染する前は[未知の感染症の脅威への認識不足],[感染症病棟で働く不安と不満],判明直後は[感染のショックと不安],[自分を守りたい思い],判明後しばらくしてからは[看護師としての使命感と患者への自責の念],[感染判明のダメージからの立ち直り]の思いが抽出された.

    結論:感染する前は現場の混乱が生じる中で不安と不満があった.判明直後はショックと不安の中看護師の使命感があり,他の陽性者と支え合った.感染拡大の認識を高く持つこと,感染予防教育,病院からの時宜を得た情報提供の重要性が示唆された.

  • 奥井 良子, 白水 眞理子, 間瀬 由記, 安藤 里恵, 中原 慎二, 谷口 綾子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 81-90
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/11
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    目的:健康教育イベント参加者の1か月後の身体活動状況と健康関連QOLの変化を明らかにする.

    方法:成人期の一般市民を対象に,身体指標の測定結果を基に身体活動活発化動機づけツールを用いてアクションプランを立案する健康教育イベントを開催した.評価指標は国際標準化身体活動質問票(IPAQ)日本語版,健康関連QOL(SF-12®)とし,Wilcoxonの符号付順位検定を行った.

    結果:有効回答は202名(73.6%)であった.アクションプランは身体活動と食事に関する内容に大別できた.1か月後のアクションプラン実施者は161名(79.7%)であり,歩行の活動量,1日の活動量が有意に増加した.健康関連QOLは標準値内であり大きな変化は認めなかった.

    結論:動機づけツールを用いた参加型の介入により,個別にアクションプランを立案することが,身体活動活発化のきっかけになることが明らかになった.

  • ~看護実践を語る会を用いたアクションリサーチ~
    東 めぐみ, 河口 てる子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 91-100
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/12
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    目的:看護師が看護実践を語る会に参加し,語り合いからどのような気づきを得て実践で行動するのか,看護師間や周囲の看護師にどのような変化をもたらすか記述する.

    方法:語る会を用いたアクションリサーチである.参加者は急性期病院1病棟の看護師5名と師長1名であり,データは語る会の内容,インタビュー等を用いて質的記述的に分析した.

    結果:〈ケアを受けたくない患者の思いをキャッチした〉語り合いから気づきを得た看護師は,患者の理由を聴く新たな行動をとり症状が改善する変化が生じた.その行動を次の語る会で〈患者が食事をしない原因を捉えた〉と語り合い,「後輩は困りごとを発信していない」とさらなる気づきを得て実践に役立てた.2年後,困りごとを語り合う取り組みとなった.

    結論:看護師は語る会で気づきを得て,これまでの実践とは違う新たな行動を行った.病棟で自発的に語り合いが生起し,語る会は学習の機会であることが示唆された.

  • 三枝 享, 宮村 季浩
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 101-110
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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    目的:病院に勤務する女性看護師の腰痛・肩こりとワーク・ファミリー・コンフリクト(WFC)および職業性ストレスの関連を明らかにする.

    方法:病院に勤務する女性看護師118名に,基本的属性,腰痛・肩こりの程度(0~10点のNumerical Rating Scale;NRS),WFC尺度日本語版,新職業性ストレス簡易調査票を用いて調査した.分析では,腰痛・肩こりのNRS得点7点以上を高度群,7点未満を非高度群として2群に分け,単変量解析で有意となった項目を説明変数,腰痛または肩こりの程度を目的変数として多重ロジスティック回帰分析を実施した.

    結果:腰痛には「時間に基づく仕事から家庭への葛藤(WIF)」と「役割明確さ」が有意に関連し,肩こりには「時間に基づくWIF」が有意に関連した.

    結論:女性看護師の腰痛・肩こり対策には,WFCへの対策を個人と組織とが双方で行うことや,個人が責任を過度に負わない職場の協力体制を構築することが重要であると示唆された.

  • 渡邉 惠, 飯岡 由紀子, 常盤 文枝, 朝日 雅也
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 111-120
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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    目的:本研究の目的は多様な臨床の場面にも対応可能な「バイタルサインの正確な測定 実践能力チェックリスト(VSAMチェックリスト)」を開発し,その内容妥当性・信頼性を検証することである.

    方法:VSAMチェックリストの素案は「バイタルサインの正確な測定」の概念分析の結果を主軸に全18項目を抽出し,内容妥当性検証には看護教員8名による修正デルファイ法を用いた.信頼性の検証は看護学生(3年次)24名に客観的臨床能力試験(OSCE)を行い,kappa係数0.61以上の評価者間一致率を用いた.

    結果:内容妥当性指数及び評価者間一致率は概ね基準値を示し,全体のCVI(S-CVI/Ave)は0.88となった.活用可能性をより高めるためOSCEを通して各項目の表現を洗練し,最終的に全15項目となった.

    結論:VSAMチェックリスト全15項目の内容妥当性・信頼性は概ね確保された.本チェックリストは,多様な臨床の場面にも対応可能な評価ツールとして看護教育で活用ができると考える.

  • ―自律に焦点を当てて―
    深山 つかさ
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 121-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/30
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    目的:急性期病棟に入院する認知症高齢者への日常生活援助における自律に焦点を当てて看護実践のプロセスを明らかにすること.

    研究方法:急性期病棟にて認知症高齢者への日常生活援助場面の参加観察と看護師への半構成的面接を実施し,修正版グランデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した.

    結果:研究参加者は2施設3病棟の看護師21名であった.急性期病棟における認知症高齢者の日常生活援助において自律の尊重に繋がる看護実践のプロセスとして【自律尊重への足掛かり】から【自律を保持する支援】へと向かうプロセスが捉えられた.一方で対極となる自律の尊重に繋がらない看護実践のプロセスとして,【認知症高齢者の意思軽視】から【置き去りになる自律】へと向かうプロセスが捉えられた.

    結論:自律の尊重に繋がる看護実践のプロセスは,認知症高齢者の尊厳を保った看護実践として急性期病棟でも活かせるものである.

  • 岡本 綾子, 平谷 優子, 時政 定雄
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 131-139
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
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    目的:小児がんの病児をもつ家族が,看護師に希望する家族支援を明らかにすることを目的とした.

    方法:入院中の小児がんの病児をもつ12家族14名の親を対象に半構造化面接を行い,質的帰納的内容分析の手法を用いて分析した.

    結果:小児がんの病児をもつ家族が看護師に希望する家族支援として,【家族への思いやりのある支援】【家族に配慮のある声掛けをする支援】【病児への十分な支援の提供により家族が安心できるようにする支援】【家族の負担を軽減する支援】【家族の相談に乗る支援】【家族に必要な情報を提供する支援】【家族と多職種を調整する支援】の7カテゴリー,23サブカテゴリーが明らかになった.

    結論:看護師は,家族の希望に添う支援を行うために,7つの家族支援について深く熟思する必要がある.これらの家族支援を組み合わせ,適切に提供することは,家族の抱える心理・社会的な問題や,不安,負担の軽減に繋がるであろう.

  • ペタス(赤羽) 裕子, 緒形 明美, 會田 信子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 140-149
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    目的:継続的な就業を維持・促進するための人的マネジメントのあり方への示唆を得るために,長野県内の介護老人保健施設で働く女性の介護・看護職員の感情労働と自己効力感および職務継続意向の関係を明らかにした.

    方法:郵送自記式質問紙法で実施した.分析対象は554名(介護職333名,看護職221名)で,共分散構造分析を行った.

    結果:介護職では,『感情労働尺度日本語版』の「強度」と「感情への敏感さ」が職務継続意向と関係していた(GFI = .883, AGFI = .414).しかし看護職では,感情労働,自己効力感ともに職務継続意向との関係性は確認できず,両職種間で相違がみられた.

    結論:結果をもとに人的マネジメントのあり方を検討した結果,介護職に対しては,若い職員が周囲に相談しやすい人的環境と教育システムを整備すること,看護職に対しては,ケア・就労環境や介護・看護職との協働体制の整備・強化の必要性が示唆された.

  • 山中 政子, 鈴木 久美, 山本 桂子, 柳井 瑞乃, 吹田 智子, 加藤 理香, 藤田 美佐緒, 江藤 美和子, 神山 智秋
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 150-159
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    目的:通院患者のがん疼痛セルフマネジメントを促進する看護介入プログラムを臨床適用し有用性を評価した.

    方法:通院患者10名に本プログラムを用いた対面式個別介入を実施し,介入前後の疼痛強度,日常生活への支障,QOL,自己効力感,不安・抑うつを比較した.

    結果:対象者は平均年齢59.9歳(SD 8.3)であった.介入前後で効果量が大きかったのは不安(r = .63)と抑うつ(r = .67)で有意に低下した(p < .05).有意差はないが効果量が中程度であった最も強い痛み(r = .36),平均の痛み(r = .33),日常生活への支障合計(r = .31)は介入後に低下し,鎮痛治療への満足感(r = .36)は介入後に上昇した.

    結論:患者の不安・抑うつが有意に改善し,疼痛強度と日常生活への支障合計,鎮痛治療への満足感において効果量が中程度であったことから,本プログラムは臨床的に有用であると示唆された.

  • 南山 愛子, 小松 浩子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 160-167
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    目的:大学病院一般病棟看護師の共感疲労の実態,共感疲労と労働遂行能力の関連を明らかにする.

    方法:都内の大学病院一般病棟看護師301名に,自記式質問紙調査を実施した.

    結果:192名を分析対象とした(有効回答率63.8%).共感疲労と労働遂行能力に有意な関連はなかった.サブグループ解析では共感疲労と労働遂行能力の間に負の相関のある個人および職場の特性は,35から44歳,看護師経験年数10年以上,トラウマティックな経験をした患者家族のケア経験有り,理不尽な患者家族のクレーム対処経験有り,非常に混乱した患者家族のケア経験有り,急変時の看取り経験有りの群(p < .05)であった.

    結論:共感疲労は継続性,蓄積性のある複雑な現象で,その把握のためには年齢や経験年数,ケア内容等個人が置かれている状況を丁寧に分析する必要がある.

  • 髙谷 新, 安保 寛明
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 168-175
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    目的:看護職員のワーク・エンゲイジメントと看護師長および同僚からのソーシャルサポートとの関連を明らかにする.

    方法:16医療機関の看護師長37名,看護職員529名を対象にワーク・エンゲイジメント,ソーシャルサポートについて調査し,マルチレベル相関分析を行った.

    結果:個人レベルで,看護職員のワーク・エンゲイジメントとソーシャルサポートの認識のすべての下位尺度に有意な正の相関を認めた.また集団レベルでは,ソーシャルサポートの認識の下位尺度である看護師長からの動機づけと裁量権に関するサポート,同僚の職務の3因子への肯定的認識とワーク・エンゲイジメントに有意な正の相関を認めた.ワーク・エンゲイジメントと看護師長のソーシャルサポートの自己評価に有意な相関は認めなかった.

    結論:看護師長,同僚からのソーシャルサポートに肯定的な認識がある職員は,ワーク・エンゲイジメントが高い傾向があった.

  • 小山 晶子, 小山 智史, 伊東 美緒, 紫村 明弘, 福嶋 若菜, 山﨑 恒夫, 内田 陽子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 176-185
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    目的:地域在住高齢者の服薬支援の在り方を検討するために,服薬アドヒアランス良群・不良群別に対象者の属性を検討し,2群の服薬管理の工夫の特徴を示した.

    方法:地域在住高齢者55名を対象に,属性と服薬アドヒアランスに関する質問紙調査と,服薬管理の工夫に関する聞き取りおよび観察を行った.

    結果:服薬アドヒアランス良群は19名(34.5%),不良群は36名(65.5%)であり,全対象者が何らかの服薬管理の工夫を行っていた.【服薬指示理解と服薬の段取り】は〈服薬指示を記憶する〉など13の工夫,【薬の保管】は〈1週間分程の薬を手元に置く〉など10の工夫,【薬の飲み忘れ対策】は〈食事から服薬までを一連の流れで行う〉など9の工夫がされていた.

    結論:服薬管理の工夫は,個人の生活に合わせて調整されていた.したがって,看護師は対象者の生活と服薬管理の工夫を把握した上で,服薬支援を行うことが必要である.

  • ―デルファイ法を用いた調査―
    野口 京子, 落合 亮太, 大橋 伸英, 渡部 節子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 186-195
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    目的:訪問看護を利用する要介護高齢在宅療養者の認知機能や家族の負担感に配慮した口腔衛生状態の向上に向けた口腔ケア方法を検討すること.

    方法:要介護高齢在宅療養者の口腔内の治療およびケアに携わる歯科医師(口腔外科を含む),歯科衛生士,訪問看護師の計32人を研究協力者とし,全3ラウンドから構成されるデルファイ法を用いた質問紙調査を行った.

    結果:全ラウンドを通じ,31人(参加率96.8%)以上から回答を得た.最終ラウンドで同意率80%以上だったのは8領域59項目であった.うち,コンセンサスレベル「最高」は誤嚥性肺炎の再燃リスクに関する1項目,「高」は手技や口腔内症状への対応,ケアへの拒否があり認知機能が低下する者への対応など,58項目であった.

    結論:口腔ケアの事前準備や手技,出血など症状への対応,拒否など認知機能が低下した対象者への対応,誤嚥性肺炎予防に関する支援の必要性が示唆された.

  • 川北 敬美, 細田 泰子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 196-203
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    目的:子育て期にある女性看護師(以下,子育て期看護師)におけるワーク・ファミリー・エンリッチメントの資源を明らかにする.

    方法:日本病院機能評価機構の認定病院に勤める未就学児を養育する女性看護師16名に半構成インタビューを実施し,質的記述的に分析をした.

    結果:子育て期看護師の仕事役割から得られる資源は,【ケア能力】【指導力】【効率性】【充実した感情】【社会性育成の環境】【経済的な安定】であり,家族役割から得られる資源は,【共感力】【受容力】【視野の広がり】【調整力】【ヘルプシーキング行動】【充実した感情】であった.

    結論:すべての子育て期看護師は,実感の差はあるものの,仕事の経験が家族役割に,母親等家族役割の経験が仕事役割の質を向上させる資源を獲得していた.それぞれの役割で得られる資源は,相互に影響し合っており,一つの資源を得ることが他の資源獲得のトリガーになることが示唆された.

  • 牛尾 陽子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 204-211
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/22
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    目的:本研究は,クリティカルケア領域の看護場面における看護師-患者間の触れる現象に着目し,日々の看護実践の中で看護師がどのような状況で,どのように患者に触れるのかという観点から,Intensive Care Unitにおける看護師の触れることの特徴を明らかにすることを目的とした.

    方法:看護師10名とその受け持ち患者13名に参加観察を行い,看護師に対しては半構造的面接を実施することで,看護師の行動と認識の側面からデータを収集し,テーマ的コード化(Flick, 2007/2011)を参考に分析を行った.

    結果・結論:43場面の分析から7つの触れることの特徴が明らかとなった.7つの特徴は,看護師が状況をどのように知覚したのかに応じて現れる看護師の触れる行為であり,7つの特徴には,触れることが常に「手を通した患者の状況把握」として働いていることと,「状況に応じて不断に変化する」という2つの通底している特徴が示された.

  • 橋本 茜, 黒澤 昌洋
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 212-221
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/22
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    目的:三次救急初療に従事する救急看護師の急性心筋梗塞患者に対するヒューマンケアリングを基盤とした看護実践を明らかにする.

    方法:質的記述的研究デザインを用いた.救急看護師5名に対し,Watson(2012/2014)のカリタスプロセスとTorres(1986/1992)が示したWatsonの解釈モデルの5つのグループを枠組みとした半構造化面接を実施した.

    結果:救急看護師のヒューマンケアリングを基盤とした看護実践は60項目抽出され,21のカテゴリに分類された.救急看護師は,【ケアリングの科学を支える哲学的基盤】によって患者を全人的に捉え,人間的尊厳を守り,最大限の【ニーズの支援】をするヒューマンケアリングを実践していた.三次救急初療の特徴から,その実践には【患者との関係構築】,【看護過程の展開】,【形而上学的アプローチ】という工夫があった.

    結論:救急看護師のケアリングは,一期一会の出会いの中で信頼関係を構築しながら,全人的ニーズを満たす実践であった.

  • ―正統的周辺参加の視点から―
    小野 加奈子, 山波 真理, 加納 尚美
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 222-230
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/22
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    目的:本研究は,母性看護学実習における看護学生の学びについて正統的周辺参加の視点から明らかにすることを目的とした.

    方法:母性看護学実習を履修した大学4年次の看護学生9名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析した.

    結果:母性看護学実習において看護学生は,看護者と【段階的な看護実践】を行ない,正統的周辺参加の過程の中にいた.しかし,学生として実践できることには限りがあり,母子二人を受け持つことへの重みを感じていた.一方で,褥婦や看護者とのコミュニケーションの難しさを痛感し,【他者との関わりの中での成長】を実感していた.さらに,実習での体験から母性看護を捉え,【現場で経験して得る感覚】から学んでいた.

    結論:看護学生は,看護者と共に看護を実践していく中で段階的に実践力を高め,学内では直接関わることのできない妊産褥婦や新生児,看護者などとの相互交流を通して,自己の成長を感じ母性看護学実習でしか学べないことを現場の経験から学んでいた.

  • 古田 敏之, 上野 恭子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 231-239
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/22
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    目的:意思疎通の図りにくいうつ病患者に接近を続ける精神科看護師の認知,思考,行動のプロセスを明らかにする.

    方法:精神科経験3年以上の看護師17名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    結果:看護師は,患者の醸し出す【バリアとの対峙】に至ったとしても,【バリアの内側に届く方法を探す】ことをしていた.看護師はうつ病看護への信念を持ち,患者を【ひとりぼっちにさせたくない】という思いを抱いていたため,患者の【語られない本音に思いを巡らす】ことが出来,【閉ざされた心に続けるノック】をし続けていた.

    結論:うつ病患者に対して看護師は困難感を抱きやすいが,看護師は患者の孤独な心情を捉え,自分の声がきっと患者に届くと信じることで自身の感情をコントロールし,患者に接近をし続けることが出来ていた.

  • 川勝 和子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 246-253
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/22
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    目的:小児がんの子ども・家族に関わる看護師が看護実践する上でのストレッサーを測定する尺度を開発する.

    方法:表面・内容妥当性を検討し,59項目の尺度原案を作成し,信頼性・妥当性を検証した.対象は看護師1,246名で質問紙調査である.分析は,内的一貫性の検証にクロンバックα係数を算出した.構成概念妥当性の検証に探索的因子分析を行い,その因子構造確認に確認的因子分析を行った.

    結果:有効回答469部であった.項目分析,探索的因子分析より5下位尺度20項目の尺度を作成した.クロンバックα係数は高く,外部基準は職務満足尺度との相関はなかったが,日本版バーンアウト尺度は正の相関を認めた.モデル適合はCFI = .925,GFI = .882,AGFI = .844,RMSEA = .075であった.

    結論:信頼性・妥当性は良好だったが,基準関連妥当性は課題が残った.

  • 大日方 裕紀, 矢ヶ崎 香, 浜本 康夫, 平田 賢郎, 須河 恭敬, 小松 浩子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 254-262
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/22
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    目的:抗がん剤変更時における高齢消化器がん患者のフレイルの実態とQOL の関連を明らかにすることである.

    方法:抗がん剤変更時の65歳以上の消化器がん患者を対象に横断的観察研究を行った.フレイル及びQOLの測定は,G8とEQ-5D-5Lを用いた.

    結果:51名が研究参加を同意し,データ収集と分析を行った.フレイルに該当する高齢消化器がん患者は,40名(78.4%)であった.フレイルには,BMI(p < .001),下腿三頭筋周囲径(p = .023)が関連していた.また,フレイル群は非フレイル群に比べQOLが低かった(p = .04).

    結論:抗がん剤変更時における高齢消化器がんのフレイル患者の特徴とフレイルサイクルへ陥りやすい集団が明らかになった.治療変更時における高齢がん患者に対するフレイルの評価は,QOLを考慮した個別的な支援の重要な要素になり得る.

  • 安藤 亮, 名越 恵美, 實金 栄
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 263-270
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
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    目的:終末期維持血液透析患者の医療・ケア方針の検討に関わる看護実践尺度の妥当性・信頼性を検証する.

    方法:面接調査と文献検討を基に,終末期維持血液透析患者の医療・ケア方針の検討に関わる看護実践尺度原案を作成した.全国の維持血液透析を実施している 250施設の透析部門に勤務する看護師を対象に質問紙調査を実施し,尺度の妥当性・信頼性を検証した.

    結果:分析対象は280部(有効回答率83.3%),探索的因子分析により5因子19項目からなる尺度を作成した.モデルの適合度はRMSEA = .081,CFI = .966であった.併存的妥当性,収束的妥当性と弁別的妥当性も,十分な値を示した.Cronbach’s α係数は,下位因子は.793~.912,尺度全体では.940であった.

    結論:5因子19項目からなる終末期維持血液透析患者の医療・ケア方針の検討に関わる看護実践尺度の妥当性,信頼性が確認された.

  • 内田 香里, 青木 きよ子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 271-280
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
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    目的:壮年期の軽症脳卒中患者のセルフマネジメント自己評価尺度案を作成し,信頼性・妥当性を検討する.

    方法:先行調査および文献レビューを基に【知識の獲得】,【悪化予防の実施】,【資源の活用】の3概念からなる37項目の尺度案を作成し,外来に通院中の40~65歳の軽症脳卒中患者に質問紙調査を行い,回答のあった93名を分析対象とした.

    結果:尺度案は,確証的因子分析の結果,【知識の獲得】1因子構造7項目,【悪化予防の実施】3因子構造12項目,【資源の活用】1因子構造9項目からなる28項目で構成された.これらは,内的一貫性,基準関連妥当性,既知集団を用いた検討において,信頼性・妥当性が確認できた.

    結論:尺度の信頼性・妥当性は概ね確保された.本尺度は,壮年期にある軽症脳卒中患者が悪化予防に向けた疾患管理に加え,心理社会的状況を包括して自己評価し得る尺度であると考えられた.

  • 今井 芳枝, 雄西 智恵美, 川端 泰枝, 町田 美佳, 徳永 亜希子, 榎本 葵, 荒堀 広美, 上田 伊佐子, 板東 孝枝, 井上 勇太 ...
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 281-290
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    目的:患者が納得してがん治療を受けることは,治療完遂に向けて重要な視点である.本研究ではがん治療に対する納得の尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討した.

    方法:がん治療を受けているがん患者294名を対象に質問紙調査を実施し,内容的,本質的,構造的,一般化可能性,外的側面からの証拠を検討した.

    結果:235名から回答が得られ(回収率79.9%),有効回答の210名を分析対象とした.開発した尺度の信頼性と妥当性の検証において,項目分析を行い最終的に28項目で因子分析を行った.その結果,【治療する価値】【治療への前向きな気持ち】の2因子18項目が抽出された.モデルの適合度はGFI = .901,AGFI = .853,CFI = .919,RMSE = .049であり,Decisional Conflict Scaleとの相関はr = –.589~–.667であり,各因子のクロンバックα係数は.915~.945であった.

    結論:がん治療に対する納得の尺度18項目2因子構造を開発し,信頼性と妥当性が確保できた.

  • 檜山 明子, 川村 三希子, 小島 悦子, 山田 律子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 291-300
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/11
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    目的:認知症高齢がん患者の疼痛マネジメントにおける看護実践自己評価尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討した.

    方法:質的研究と文献検討,エキスパートパネルを基に,中等度から重度の認知症がある高齢がん患者の疼痛マネジメントにおける看護実践を測定するための尺度原案を作成した.認知症高齢がん患者へのケア経験がある臨床看護経験3年以上の病棟看護師889人を対象にした質問紙調査を行った.

    結果:項目分析から,32項目の尺度とした.探索的因子分析により「認知症高齢者に関心を寄せ,本人の持つ力やペースを尊重し安楽を目指す」「痛みの可能性を踏まえ,認知症高齢者が示す複数のサインを照合し,推論しながら観察を続ける」などの6因子が抽出された.尺度全体のCronbach’s α信頼性係数は.95,再テストの級内相関係数は.58,併存妥当性を示す相関係数は.64であった.

    結論:認知症高齢がん患者の疼痛マネジメントにおける看護実践自己評価尺度は,信頼性と妥当性を概ね確保していることを確認した.

  • 岩屋 早苗, 長野 俊彦, 川口 正晃, 佐藤 一樹
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 301-309
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/11
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    目的:コロナ禍におけるCOPD患者の健康管理に関する情報ニーズの有無およびPHQ-4の現状とその関連要因を明らかにする.

    方法:2020年12月COPD患者を対象にWeb調査を行った.情報ニーズとPHQ-4の関連要因について多変量解析を行った.

    結果:コロナ禍では,情報ニーズありは57.0%,心理的苦痛ありは34.8%であった.情報ニーズの関連要因はCAT(オッズ比(OR)=2.63),ソーシャルサポート(OR = 4.42),身体活動(OR = 3.48)であった.PHQ-4の関連要因は,40~64歳未満(OR = 3.11),CAT(OR = 4.28),手洗い(OR = 1.90),孤独感(OR = 3.48)であった.

    結論:コロナ禍におけるCOPD患者には情報ニーズがあり,抑うつや不安を感じていた.関連要因を有する患者では,症状ケアやソーシャルサポート,孤独感などに注目した支援が必要である.

  • 前田 直宏, 河原 加代子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 310-320
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/25
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    目的:訪問看護師の視点から,COPD療養者の身体活動性を改善した訪問看護師の看護実践を明らかにすること.

    方法:訪問看護師4名にCOPD療養者の身体活動性が改善した1例の経験について半構造化面接を実施した.Steps for Coding and Theorizationを用いて,協働的パートナーシップ螺旋モデルを分析的枠組みに適用し,質的に分析した.

    結果:すべての事例から,COPD療養者と訪問看護師の相互作用を示す62個の理論記述が得られた.さらに,各事例の理論記述の共通性と差異性を検討した結果,【動機付けを高める信頼の獲得】や【安楽な生活動作スキルの協働構築】等,26個の訪問看護師の看護実践が立ち現れた.

    結論:終末期であっても,身体活動や栄養障害の改善に向かう看護の視点が重要であり,特定の訪問看護師によってCOPD療養者の思いが打ち明けられるような関係性を構築しながら,医療的な課題を解決していくことが身体活動性の改善を導くキーポイントであると考えられた.

  • 栗谷 美希, 田淵 紀子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 321-329
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/25
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    目的:MFICUから産科病棟に転棟したハイリスク妊婦の入院体験を明らかにする.

    方法:MFICUに入室し産科病棟への転棟を経験した母親9名に半構成的面接を行ない質的記述的に分析した.

    結果:MFICUから産科病棟に転棟したハイリスク妊婦の入院体験は,転棟前は【重症な状況に気持ちを整理できず気が休まらない】【カーテン越しに重症な同室妊婦を感じひっそりと過ごす】【看護スタッフに傍で見守られる安心感】【いつかくる転棟を念頭に置く】【病状改善の実感がないまま転棟に向けた感情の揺れ】【新しい環境へ身を置き順応できるかという不安】,転棟後は【看護スタッフを独占しないようにする遠慮】【MFICUと産科病棟の違いによる戸惑いと不安】【妊婦仲間の交流から生まれた仲間意識と支え合い】【看護スタッフとの信頼関係形成による気持ちの安定】で表された.

    結論:MFICUから産科病棟への転棟を経験したハイリスク妊婦は,ストレスを増幅する体験をする一方で転棟を契機とし他者と関わることでの肯定的体験をしていた.

  • 水口 誠子, 吾妻 知美
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 337-345
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/02
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    目的:看護師長を対象としたワーク・ライフ・バランス実現度尺度を開発し,尺度の妥当性と信頼性を検討する.

    方法:国内の100床以上の病院に勤務する看護師長786名を対象に,尺度原案43項目の質問紙調査を実施し,尺度の妥当性と信頼性を検討した.

    結果:回収数571名(回収率72.6%)のうち有効回答479名(有効回答率83.9%)を分析の対象とした.探索的因子分析の結果,6因子27項目が抽出された.確認的因子分析の結果,仮説モデルの適合度が確認された.基準関連妥当性は,看護職の仕事と生活の調和実現度尺度との相関により確認された.尺度全体のCronbachのα係数は.911,各因子で.710~.902であった.再テスト法による尺度全体の信頼性係数.862であった.

    結論:看護師長を対象としたワーク・ライフ・バランス実現度尺度の妥当性と信頼性が確認された.

  • 米澤 かおり, 戸瀬 知実, 春名 めぐみ, 笹川 恵美, 臼井 由利子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 346-355
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    目的:COVID-19感染拡大期に,0歳児を抱えた母親たちが子育てにどのような影響が受けたのか明らかにする.

    対象と方法:2020年11~12月に,東京都A区在住で2019年12月以降に出産した母親5名と,同区で家庭訪問を行う助産師6名を対象に半構造化インタビューを行った.

    結果:【家庭外の支援を得ることのハードル】【感染への不安による育児支援・ケア選択への影響】によって支援が不足し,【育児支援中止による不安と落胆】【育児支援中止による育児技術や新生児への影響】や【地元の母親同士のつながりの不足】が生じていた.家庭外からの対面の支援が難しい中で【パートナーの在宅勤務によるメリットと困難】や【オンライン支援によるメリットと難しさ】が浮かび上がっていた.

    結論:場や機会の不足,感染を不安に感じることで支援を受けるハードルが高くなっていた.今後,在宅勤務を行うパートナーへの支援や,目的に応じたオンラインと対面での支援の併用,さらに支援につながるためのハードルを低くする方法を検討する必要がある.

  • 中山 綾子, 宇佐美 利佳, 佐伯 香織, 古川 直美, 川畑 美果, 滝川 満理奈, 星野 純子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 356-364
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    目的:地域に在住する中高年者が自己の認知症発症に抱く感情を解明し,その特徴を考察する.

    方法:研究デザインには,質的記述研究デザインを採用した.半構造化面接法を用いて,地域のサークルや老人クラブに所属する中高年者13名からデータを収集し,分析した.

    結果:対象者は,男性6名,女性7名であり,年齢は60歳から91歳の範囲であった.また,認知症者と接したことのある者は12名(92.3%)であった.分析の結果,40コードを導出した.これらのコードは,24サブカテゴリ,13カテゴリを形成し,最終的に,自己の認知症発症に抱く感情を表す6コアカテゴリが明らかになった.それらは,【恐怖】【懸念】【脅威】【否認】【諦め】【安心感】であった.

    結論:認知症に関する否定的な知識および見解が,地域に在住する中高年者に自己の認知症発症への否定的な感情を抱かせる可能性が示唆された.認知症に関する正確な知識の普及と専門職による良質なケアの提供が求められる.

  • 種村 智香, 布谷 麻耶, 師岡 友紀, 川端 京子, 鶴田 大輔, 橋本 隆
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 365-374
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    目的:天疱瘡・類天疱瘡患者が発症初期から現在に至るまでに体験した日常生活における困難感を明らかにする.

    方法:13名の患者を対象に半構造化インタビューを行い,質的記述的に分析した.

    結果:身体症状の強い時期は,【症状により日常生活行動に支障を来す】【患部の必要な処置に伴い痛みや負担を感じる】が,治療によりこれらの大部分は軽快し,【ステロイド療法の副作用により日常生活行動に制約がある】といった治療により軽快しない困難感を生じていた.また,【希少疾患であること,他者に理解されないことで不安,孤独を感じる】【病気や治療,再燃に対する不安,恐れを感じる】【症状や治療の副作用による影響で人付き合いが難しい】【病気により学業,就職,仕事が思うようにいかない】心理的・社会的な困難を感じていた.

    結論:天疱瘡・類天疱瘡患者は,症状や治療,疾患の希少性・難治性,症状の可視性や他者に理解されないことでの困難感を抱いていた.

  • ―リーダーシップの認識による媒介効果―
    髙谷 新, 安保 寛明, 佐藤 大輔
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 375-384
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    目的:看護職員のワーク・エンゲイジメントと看護師長の自己効力感の関連について,看護職員による所属部署の看護師長に対するリーダーシップの認識の媒介効果を明らかにすることを目的とする.

    方法:16医療機関の看護師長,看護職員を対象に看護職員のワーク・エンゲイジメントと看護師長の自己効力感,リーダーシップについて質問紙調査を行った.看護職員269名を対象にマルチレベル媒介分析を行った.

    結果:看護職員による看護師長のリーダーシップの認識は看護師長の自己効力感と看護職員のワーク・エンゲイジメントを完全に媒介していることが明らかとなった.看護師長の自己効力感と看護職員のワーク・エンゲイジメントにおけるリーダーシップの認識の媒介効果は個人レベルでの効果であることが示唆された.

    結論:看護師長の自己効力感は看護職員によるリーダーシップの認識を介して,看護職員のワーク・エンゲイジメントに影響を及ぼしていることが明らかとなった.

  • ―看護専門学校の教員を対象とした質的研究―
    宇都 ルミ, 末次 典恵
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 391-400
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    目的:発達障害特性により特別な教育的支援を必要とする学生への看護教員の関わりを明らかにする.

    方法:看護専門学校3年課程で特別な教育的支援が必要な学生の臨地実習を指導した教員8名を対象に,半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.

    結果:「教員の関わり」は,「学生への教育実践」と「教員の思い」に分類された.学生への教育実践は【困った学生という偏見を持たず,根気強く指導する】【看護職としての適性を見極め,職業選択を助言する】【学生の実習を支援するための特別な環境を調整する】【教員自身の教育力を向上させる】であった.教員の思いは【試行錯誤しながら支援方法に悩む】【学生の成績評価と看護師の適性との間のジレンマに苦悩している】【負の感情をコントロールしている】【これまで培った教育観に基づき教育に期待している】であった.

    結論:教員は,特別な教育的支援が必要な学生に,他の学生より2倍~5倍の時間をかけて指導していたが,学生の成長を感じにくく,成長を促す支援と看護の質の保障との間で葛藤していた.

  • ―デルファイ法による看護実践項目の検討―
    奥田 淳, 遠藤 淑美
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 401-411
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
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    目的:医療観察法通院処遇対象者への訪問看護における看護実践項目をデルファイ法によりコンセンサスを求めて,看護実践として活用できる項目を検討する.

    方法:先行研究において明らかになった再他害行為に関連した支援の困難に対する工夫,社会復帰を地域生活において支援をする困難に対する工夫など5領域における42の看護実践項目案に対して,デルファイ法による質問紙調査を2回実施した.医療観察法通院処遇対象者への訪問看護において豊富な経験があると管理者が推薦した訪問看護師54人を対象とした.

    結果:第1回調査は回収数28で,7項目が表現の修正,自由意見で1項目が追加となった.第2回調査は回収数24で,1項目が削除,1項目が表現の修正となった.最終的に42の看護実践項目のコンセンサスを得ることができた.

    結論:訪問看護師がコンセンサスを得た看護実践項目を活用することで,医療観察法通院処遇対象者の訪問看護における困難感を軽減できる可能性につながる.

  • 木村 美香
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 412-421
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/26
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    目的:糖尿病性腎症高齢患者の透析導入に伴う移行見通し測定尺度を開発し,信頼性と妥当性を検証する.

    方法:インタビュー調査に基づいて尺度原案40項目を作成し,全国1,665施設で定期的に血液透析を行っている糖尿病性腎症から透析を導入した65歳以上の患者に質問紙調査を行い,信頼性と妥当性を検証した.分析には欠損値を補完したデータを用いた.

    結果:収束妥当性の検証では496名,それ以外の検証では502名のデータを分析した.探索的因子分析で6因子32項目が抽出され,確証的因子分析においてCFI = .955,RMSEA = .067であった.収束的妥当性,既知グループ妥当性は統計学的に有意な結果であったが,併存的妥当性は有意な結果ではなかった.信頼性係数は尺度全体で.887,下位尺度で.728~.922であった.

    結論:併存的妥当性に課題はあるが,一定の信頼性,妥当性を確認できた.

  • ~非看護師の市民との比較~
    青木 好美, 日道 俊之, 片山 はるみ
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 437-445
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/26
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    目的:1)看護師と非看護師の市民の共感特性を比較し,看護師の共感特性を明らかにする.2)看護師の共感特性を年齢,臨床経験年数,役職の有無で比較することである.

    方法:研究デザインは,2時点の横断研究であった.研究Aは全国の国立大学附属病院で働く看護師400名を対象とした.研究Bは非看護師の市民416名を対象とした.分析は,基本属性,対人反応性指標および臨床対人反応性指標を用い,対応のないT検定,重回帰分析,相関分析を行った.

    結果:看護師の対人反応性指標の得点は,非看護師の市民と比較して,「共感的関心」と「視点取得」が有意に高く,「個人的苦痛」と「想像性」は有意に低かった.また,看護管理者の臨床対人反応性指標は,役職が無い看護師と比較して,「看護における視点取得」と「無条件の肯定的関心」が有意に高かった.

    結論:本研究は,看護師が「個人的苦痛」と「共感的関心」をそれぞれ区別して認識し,他者を想像する視点での「想像性」を高めることが必要であることを明らかにした.

  • ―事例-コードマトリックスによる事例間の分析を通じて―
    金子 順子, 野呂 千鶴子
    原稿種別: 原著
    2022 年 42 巻 p. 446-455
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/26
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    目的:非糖尿病性保存期CKD患者の病気認知の特徴より,病気認知タイプを分類化すること.

    方法:非糖尿病性保存期CKD患者に対するインタビュー調査により明らかにした病気認知の特徴を,ヘルスビリーフモデルの構成要素をもとに事例-コードマトリックスにまとめ演繹的に分析した.

    結果・結論:健康行動に『利益感』を認める事例と認めない事例に分類でき,さらに『障害感』『行動』より,利益感あり群は3タイプ(A~Cタイプ),利益感なし群は2タイプ(D・Eタイプ)に分類した.Aタイプは「自己管理を生活に取り入れ堅実に実行できるタイプ」,Bタイプは「揺らぎながらも自己管理行動を生活に取り入れ実行するタイプ」,Cタイプは「自己管理への不本意さをもちながらも指示に服従するタイプ」,Dタイプは「病気が納得できず自己管理を実行するが,虚無感があるタイプ」,Eタイプは「病識がなく十分に自己管理が行えていないタイプ」であった.患者タイプに応じた教育内容や教育方法を検討する必要性が示唆された.

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