2022 年 42 巻 p. 870-880
目的:救急看護師への半構造化面接の結果から作成した救急看護ヒューマンケアリング実践評価スケール(HCSEN)の信頼性・妥当性を検討した.
方法:内容妥当性,表面妥当性を検討したHCSEN(60項目)と併存妥当性検討のための外的基準(職務満足に関する質問)の調査を,Web調査会社を通して実施した.救急看護師178名(有効回答率86.4%)を分析対象とし,探索的因子分析,Cronbach’s α係数の算出,相関分析,t検定を行った.
結果:探索的因子分析で8因子が抽出され,Cronbach’s α係数は全体0.982,各因子0.723~0.941であった.HCSEN各因子得点と,外的基準総得点の中間位で分割した2群を比較したt検定では,全ての因子で2群間に有意差が認められた(ps < .002).
結論:抽出された各因子の下位尺度において内的整合性は確認され,職務満足に関する質問項目との併存的妥当性も確認された.以上より,HCSENは一定の信頼性を得ることができた.
Purpose: We aimed to examine the reliability and validity of the Human Caring Scale for Emergency Nursing (HCSEN), which was created from the results of semi-structured interviews conducted with emergency department nurses.
Method: We administered the HCSEN (60 items), which was examined the content validity and surface validity, as well as the external criteria (questions regarding job satisfaction) for coexistence validity examination through a web research company. Responses from 178 emergency department nurses (valid response rate 86.4%) were analyzed, and exploratory factor analysis, Cronbach’s α coefficient calculation, correlation analysis, and t-test were performed.
Results: Eight factors were extracted by exploratory factor analysis. Cronbach’s α coefficient was 0.982 overall, and that for each factor ranged from 0.723 to 0.941. A t-test comparing the HCSEN factor scores and the two groups were divided by the middle of the external criteria total score showed a significant difference between the two groups for all factors (ps < .002).
Conclusion: Internal consistency was confirmed for the subscales of each extracted factor. Moreover, the coexistence validity with the question items related to job satisfaction was also confirmed. Thus, the HCSEN was able to obtain a certain degree of reliability.
三次救急医療は急性病態の重症患者を対象とし,救急搬送されてきた患者(以下,三次救急患者)が最初に医療を受ける場が救命救急センター初期治療室(以下,三次救急初療)である.突然生命の危機的状況に置かれた三次救急患者は身体的苦痛だけでなく全人的苦痛を抱えており,回復後の生活の質(Quality of Life:以下,QOL)にも影響を与えることが問題となっている.前田(2010)が三次救急医療機関において入院治療を受けた重度外傷患者を対象に外傷体験が心理面に及ぼす影響を検討した結果,退院後も長期にわたり心理的ストレス,不安,抑うつが生じていたことが明らかとなった.救命が優先される三次救急医療においても,三次救急患者が全人的苦痛を抱えていることを認識し,可能な限り早期から回復後のQOLを見据えた全人的ケアを行う必要がある.
全人的ケア実践の看護理論として,Watson(1988/1992)は人間を全人的に捉え,「人間的尊厳を守り,高め,維持すること」を目的としたヒューマンケアリング理論を提唱しており,全人的苦痛を抱える三次救急患者もケアリングを必要としている.森島・當目(2016)が「段取りをつけた俊敏力」をコアカテゴリとした三次救急患者に対応する救急看護認定看護師の看護実践能力の構造を明らかにしているように,三次救急初療における看護実践は身体的ニーズの充足に着目されることが多く,患者の全人的ニーズに対する看護実践については言及されていない.また,重久(2020a)はがん看護専門看護師が実践するケアリングを明らかにし,「全人的苦痛を緩和するかかわり」等のがん患者に対する全人的ケアを言及している.しかし,三次救急初療に従事する看護師(以下,救急看護師)は救命優先で短時間しか患者と関わることができないため,救急看護師のケアリングには他領域の看護師とは異なる特徴があるのではないかと考えた.救急看護師のヒューマンケアリングを基盤とした看護実践は明らかとなっていないことから,橋本・黒澤(2022)は三次救急初療における急性心筋梗塞(Acute Myocardial Infarction:以下,AMI)患者に対するヒューマンケアリングを基盤とした救急看護師の看護実践を明らかにした.AMI患者は三次救急初療を必要とする重症患者であり,治療過程において意識が保たれている場合が多く,激しい胸痛や死の恐怖等の全人的苦痛を抱えている.また,退院後の生存率はよいが,QOLは国民標準値までは回復していないという報告もある(Sakai et al., 2011).そこで,三次救急初療におけるAMI患者に対するケアリングを基盤とした救急看護師の看護実践を明らかにすることで,三次救急初療における全人的医療への示唆が得られると考えた.
一方で,救急看護師の看護実践の他者評価は困難であることが多い.藤原ら(2021)はわが国の救命領域における看護師のジレンマに関する文献検討を行い,救急看護師のジレンマの1つとして「自身の行った看護の不確かさから生じるジレンマ」を挙げている.救急看護師は,患者や患者家族から自身の看護実践に対してフィードバックを得たり,患者の回復の過程を目にしたりする機会は少なく,他者評価を受けることが困難な環境にある.救急看護師の看護実践能力向上には,救急看護師が自身の実践を省察できる支援が必要であると考える.
そこで,先行研究で明らかにした看護実践項目を用いて,救急看護師が看護実践をヒューマンケアリングの視点で自己評価する尺度を作成した.Watson(2012/2014)はヒューマンケアリングの科学の文脈を根底で支える土台として「人と人との間に起きる出来事・プロセス・関係の文脈」を挙げている.三次救急初療においても,患者と看護師が相互に影響し合い,患者が全人的ケアを受けて救命される中で,看護師の看護実践能力は磨かれ成長するという,双方の最善のアウトカムを導こうとしていると考えられる.救急看護師のヒューマンケアリングを基盤とした看護実践の自己評価は自己研鑽につながり,よりよい看護実践と救急医療の質向上に寄与すると考える.
救急看護ヒューマンケアリング実践評価スケールHuman Caring Scale for Emergency Nursing(HCSEN)の信頼性と妥当性を検討する.
ヒューマンケアリング:Watson(1988/1992)が提唱する看護の倫理道徳的理念.その目的は,「患者が不健康・苦悩・痛み・存在の意味を見い出せるように手を添えることによって,人間性・人の尊厳・統合性・全体性を守り,高め,保持すること」(Watson, 2012/2014)であり,患者-看護師間で間主観的(自我だけでなく他我をも前提にして成り立つ共同化された主観性)な流れが行きかう看護である.本研究では,「人間的尊厳を守られながら,安全・安楽に適切な治療・処置を受けて救命されるという,三次救急患者の全人的で最善のアウトカムを患者と医療従事者が共に達成しようとする過程」(橋本・黒澤,2022)とする.
看護実践:日本看護協会(2007)は,「看護実践とは,看護職が対象に働きかける行為」と述べている.本研究では,「救急看護師が三次救急患者(家族を含む)に働きかける行為」とする.
橋本・黒澤(2022)が先行研究で明らかにした三次救急初療におけるヒューマンケアリングを基盤とした救急看護師の看護実践項目を質問項目に用いた.先行研究では,救急看護師5名を対象にWatson(2012/2014)がヒューマンケアリングの進め方を示したカリタスプロセスの10因子を枠組みとした半構造化面接を行い,各カリタスプロセスの内容について,①三次救急患者の特徴を踏まえてどのように捉えているか,②具体的な実践例,③その実践の上で大切にしていること,について質問した.得られたデータをコード化し,類似性と相違性に沿ってカテゴリを形成した結果,救急看護師が実践するヒューマンケアリングを基盤とした60項目の看護実践が抽出され,21のカテゴリを形成した.この60項目を救急看護ヒューマンケアリング実践評価スケールHuman Caring Scale for Emergency Nursing(HCSEN)(案)と命名した.
2) 内容妥当性の検討分析の過程で,クリティカルケア看護,ヒューマンケアリングに精通する研究者と検討を重ね,分析の厳密性,結果の信憑性の確保に努めた.
3) 表面的妥当性の検討ヒューマンケアリングは看護師だけでなく,協働する医療従事者,治療を受ける患者と共に実践される.救急医療に携わる医師2名・救急救命士3名,AMIのため救急初療で治療を受けた患者2名にHCSEN(案)を用いた半構成化面接を行い,分かりにくい点や不要と思われる点等の意見を収集した.得られた回答より質問項目の表現を修正し,HCSEN(60項目)とした.
2. HCSENの信頼性・妥当性の検討 1) 調査方法本調査の対象者は,救急医療施設の救命救急センター(もしくは救急外来)で,AMIが疑われる患者の初期治療(病院到着から心臓カテーテル室等治療の場へ移動するまで)に従事した経験がある看護師とした.
調査はWeb調査会社の株式会社マクロミルに委託し,ウェブフォームを用いた質問紙調査システムによって実施した.母集団は同社モニタ会員であり,同社が取得している情報である既存属性が「医療業」で登録しているモニタ4,383サンプルに対し調査内容に関する案内を送信した.案内を受信したモニタは,本調査対象者であるかの確認として「看護師である」かつ「救急医療施設の救命救急センター(もしくは救急外来)で,AMIが疑われる患者の初期治療(病院到着から心臓カテーテル室等治療の場へ移動するまで)に従事した経験がある」ことの2条件を満たすか否かを回答し,順次本調査にも回答を得た.サンプル数を200名程度に設定し,目標サンプル数を超えた206サンプルの回答が得られた時点でアンケートを終了した(サンプリング率:4.7%).本調査の実施期間は2020年3月16日~17日であった.
2) 調査内容 (1) 基本属性性別,年齢,看護師経験年数,救急初療経験年数を質問した.
(2) HCSENHCSENは7段階(7-常に実践している~1-全く実践していない)リッカートスケールでヒューマンケアリングを基盤とした看護実践の実践度を評価した.
(3) 外的基準本研究の基盤であるヒューマンケアリング理論は,トランスパーソナルケアリングを提唱している.トランスパーソナルとは,「間主観的・超越的・人間同士の関係性であり,そのなかで,看護師個人は患者に影響を与えると同時に,患者から影響される」(Watson, 2012/2014)という意味である.トランスパーソナルケアリングにより,「患者も看護師も経験に意味を見い出すことができ,内的な調和が保たれる」,「このような触れ合いとプロセスは,次に自己治癒力のプロセスを生み出し,推し進めていく」(Watson, 2012/2014)とされる.これらのことから,ヒューマンケアリングの実践は看護師の内省と癒しに影響を与えることが分かっている.また,Watsonに影響を受けたMontgomery(1993/1995)は,「ケアリングは状況に依存する」と,ケア提供者を支える環境の必要性を挙げ,「ケア提供者が自分を支え,絶望を乗り越えられない人の資源として役立つ広い視点を維持するためには,医療チームの支援的状況が必要である」,「ケアリングを実践するためには,保健医療における人間的要素の価値を重視するケアリングのチームが必要である」と述べている.Heffernan et al.(2020)は,急性期病院の正看護師のケアリング行動と不安の関連を調査し,ケアリング実践を頻繁に行う看護師は不安が少なく,ケアリング実践は協力的な職場環境と職務満足度に影響を与えることを明らかにしている.さらに,Wei & Watson(2019)は,ケアリングが専門職連携チームに適用されると,医療従事者は自分自身とお互いをケアし,患者のケアを促進するケアリング意識を見つけ,それが患者安全を確保するカギとなる可能性があることを示唆している.
以上のことから,ヒューマンケアリング実践は看護師の職務満足や職場環境,医療安全に影響すると言え,救急看護師のヒューマンケアリング実践を評価する尺度であるHCSENの得点と相関すると考えた.そのため,「E1 あなたの職務に対する満足感はどの程度ですか」「E2 あなたの職務に対するストレスはどの程度ですか」「E3 あなたの職務におけるチームワークの良好さはどの程度ですか」「E4 あなたの自己効力感(自己に対する信頼感や有能感)はどの程度ですか」「E5 あなたが勤務する救急初期治療の医療安全度の高さはどの程度ですか」「E6 あなたの勤務する救急初期治療の離職率はどの程度ですか」の6項目を外的基準とし,E2とE6は逆転項目として併存的妥当性を検討することとした.以上の6項目を11段階リッカートスケール(11-100%~1-0%)で評価した.
3. 分析方法HCSEN回答分布を確認し,同じ番号の選択肢を8割以上(48問以上)回答している参加者のデータは回答に信頼性を欠くと判断し,分析対象外とした.次に,HCSEN各項目の天井効果と床効果を確認した後,因子分析の標本妥当性を検討するため,Kaiser-Meyer-Olkin値(以下,KMO値)を算出した.探索的因子分析(因子負荷量0.3未満は削除)による因子抽出を行い,構成概念妥当性の検討を行った.そして,1つの項目点数とその項目を除いた残りの項目の合計点数とのI-R相関(Item score-Remainder correlation),項目間の相関行列からCronbach’s α係数を求め,内的整合性を検討した.併存的妥当性の検討については,HCSEN各因子得点と,外的基準総得点の中間位で分割した2群間で独立したサンプルのt検定を行った.分析はSPSS ver. 26を使用した.
4. 倫理的配慮半構造化面接の研究参加者に対しては,研究の目的と方法,研究協力は研究参加者の自由意思に基づく判断を優先し研究協力をしなくとも何ら不利益は被らないこと,途中で同意を撤回する権利を保証すること,個人情報の保護等の内容を,研究者が説明書を用いて口頭で説明し,書面で同意を得た.
質問紙調査はWeb調査会社を介して実施したため,研究参加者の意思に回答が委ねられ,その質問内容により研究参加者の心理的苦痛をもたらすことは想定し難いが,回答画面上に説明文書を公開した上で,研究協力の意思を表明するチェック欄を作成し,そのチェックをもって研究協力の意思を確認した.無記名式アンケート調査であるため,データは回答者番号を付し管理した.
調査は名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理審査委員会の承認を得て実施した(医師・救急救命士,患者への半構造化面接:承認番号2019-0350)(Web調査:承認番号2019-0432).
回答を得た206名(サンプリング率:4.7%)のデータを分析方法に記載の方法でデータクリーニングを行い,分析対象者を178名(有効回答率86.4%)とした.男性31名(17.4%),女性147名(82.6%),平均看護師経験年数12.7年,平均救急初療経験年数4.0年であった.
n | % | ||
---|---|---|---|
性別 | 男性 | 31 | 17.4 |
女性 | 147 | 82.6 | |
年齢 | 20代 | 40 | 22.5 |
30代 | 78 | 43.8 | |
40代 | 41 | 23.0 | |
50代以上 | 19 | 10.7 | |
看護師経験年数 | 5年未満 | 21 | 11.8 |
5~10年未満 | 58 | 32.6 | |
10~15年未満 | 37 | 20.8 | |
15~20年未満 | 27 | 15.2 | |
20年以上 | 35 | 19.7 | |
救急初療経験年数 | 5年未満 | 112 | 62.9 |
5~10年未満 | 56 | 31.5 | |
10年以上 | 10 | 5.6 |
HCSEN回答分布(表2),外的基準回答分布(表3)を確認し,各設問の点数分布を精査するため,平均値(Mean)と標準偏差(SD)を算出した結果,Mean + SDは6.46~7.32と天井効果がみられたため,Mean + 1.96*SD > 8となったHCSEN4問(質問16.17.20.24)は削除した.Mean-SDは3.49~5.25(>1)となり,床効果は見られなかった.
次の看護実践項目について,救急初期治療の場でどの程度実践しているか(していたか)を7段階(7-常に実践している~1-全く実践していない)で回答してください. | 7 常に実践している | 6 かなり実践している | 5 概ね実践している | 4 どちらともいえない | 3 あまり実践していない | 2 ほとんど実践していない | 1 全く実践していない | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | % | n | % | n | % | n | % | n | % | n | % | n | % | ||
1 | 患者や家族の視点に立って関わっている | 39 | 21.9 | 70 | 39.3 | 45 | 25.3 | 16 | 9.0 | 4 | 2.2 | 3 | 1.7 | 1 | 0.6 |
2 | 患者にとってどのような姿が理想的なのか考えている | 19 | 10.7 | 78 | 43.8 | 50 | 28.1 | 27 | 15.2 | 3 | 1.7 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
3 | 親切と平静さのバランスを保って患者に接している | 23 | 12.9 | 77 | 43.3 | 46 | 25.8 | 27 | 15.2 | 2 | 1.1 | 2 | 1.1 | 1 | 0.6 |
4 | 患者だけでなく,自分自身にも価値をおいて看護を実践している | 26 | 14.6 | 60 | 33.7 | 51 | 28.7 | 27 | 15.2 | 4 | 2.2 | 7 | 3.9 | 3 | 1.7 |
5 | 三次救急初療という過酷な状況から逃げず,責任を持って患者と向き合っている | 33 | 18.5 | 83 | 46.6 | 34 | 19.1 | 22 | 12.4 | 4 | 2.2 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 |
6 | 三次救急初療は一期一会であり,患者に最善を尽くすという看護師としての役割を果たすよう努めている | 36 | 20.2 | 77 | 43.3 | 46 | 25.8 | 15 | 8.4 | 2 | 1.1 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 |
7 | 確かな情報を提供している | 29 | 16.3 | 69 | 38.8 | 50 | 28.1 | 22 | 12.4 | 6 | 3.4 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 |
8 | 患者に恐怖心を抱かせないように説明している | 38 | 21.3 | 71 | 39.9 | 47 | 26.4 | 16 | 9.0 | 5 | 2.8 | 0 | 0.0 | 1 | 0.6 |
9 | スピリチュアルな実践を磨くため,自己の看護実践を振り返り,看護を語っている | 14 | 7.9 | 45 | 25.3 | 58 | 32.6 | 32 | 18.0 | 14 | 7.9 | 9 | 5.1 | 6 | 3.4 |
10 | 他者に対して敏感であるよう,患者の言葉を大切にし,目の前で起きることに注意を払っている | 38 | 21.3 | 79 | 44.4 | 44 | 24.7 | 13 | 7.3 | 2 | 1.1 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 |
11 | 患者の身体的症状を迅速に軽減し,治療効果を実感してもらっている | 31 | 17.4 | 75 | 42.1 | 48 | 27.0 | 18 | 10.1 | 5 | 2.8 | 0 | 0.0 | 1 | 0.6 |
12 | 高度な医療が提供できる病院(三次救急医療施設)で,最善の処置を行っていることを患者に伝えている | 25 | 14.0 | 67 | 37.6 | 42 | 23.6 | 28 | 15.7 | 8 | 4.5 | 2 | 1.1 | 6 | 3.4 |
13 | 患者の思いに先回りして気づき,声をかけている | 27 | 15.2 | 65 | 36.5 | 62 | 34.8 | 19 | 10.7 | 4 | 2.2 | 0 | 0.0 | 1 | 0.6 |
14 | 全力を尽くしているという姿勢を示している | 44 | 24.7 | 71 | 39.9 | 43 | 24.2 | 15 | 8.4 | 3 | 1.7 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 |
15 | 患者に合ったコミュニケーション方法を適切に選択し,実践している | 41 | 23.0 | 72 | 40.4 | 42 | 23.6 | 17 | 9.6 | 2 | 1.1 | 2 | 1.1 | 2 | 1.1 |
16 | 身だしなみを整え,看護師として相応しい外見にしている | 67 | 37.6 | 63 | 35.4 | 33 | 18.5 | 10 | 5.6 | 2 | 1.1 | 1 | 0.6 | 2 | 1.1 |
17 | 患者に自分の名前を名乗り,担当者を明らかにしている | 60 | 33.7 | 56 | 31.5 | 32 | 18.0 | 18 | 10.1 | 4 | 2.2 | 5 | 2.8 | 3 | 1.7 |
18 | 患者の言葉を聞き逃さず,必ず反応している | 39 | 21.9 | 70 | 39.3 | 43 | 24.2 | 18 | 10.1 | 7 | 3.9 | 0 | 0.0 | 1 | 0.6 |
19 | 患者の言葉を医療者や家族へ伝えている | 46 | 25.8 | 73 | 41.0 | 38 | 21.3 | 15 | 8.4 | 2 | 1.1 | 2 | 1.1 | 2 | 1.1 |
20 | 患者の名前を呼んでいる | 88 | 49.4 | 54 | 30.3 | 23 | 12.9 | 8 | 4.5 | 3 | 1.7 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 |
21 | 患者の表情から感情を想像し,代弁している | 30 | 16.9 | 65 | 36.5 | 59 | 33.1 | 19 | 10.7 | 3 | 1.7 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
22 | 否定的な感情(苦痛,恐怖など)を表出することを我慢しなくてよいことを伝えている | 32 | 18.0 | 67 | 37.6 | 49 | 27.5 | 23 | 12.9 | 6 | 3.4 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
23 | 患者の希望に応えられない場合にも,拒否するのではなく可能な限り代替案を提示している | 25 | 14.0 | 68 | 38.2 | 55 | 30.9 | 24 | 13.5 | 5 | 2.8 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
24 | 患者の苦痛な部分にタッチングしている | 51 | 28.7 | 52 | 29.2 | 47 | 26.4 | 16 | 9.0 | 8 | 4.5 | 4 | 2.2 | 0 | 0.0 |
25 | 日頃から,病態や治療計画に関する知識を蓄積している | 23 | 12.9 | 74 | 41.6 | 53 | 29.8 | 22 | 12.4 | 5 | 2.8 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
26 | 看護実践経験の積み重ねや他看護師への教育により,患者のニーズを捉える視点を身につけている | 29 | 16.3 | 68 | 38.2 | 51 | 28.7 | 23 | 12.9 | 3 | 1.7 | 4 | 2.2 | 0 | 0.0 |
27 | 職務や倫理教育の中で倫理的価値観を養うよう努めている | 33 | 18.5 | 67 | 37.6 | 54 | 30.3 | 19 | 10.7 | 4 | 2.2 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
28 | 救急隊からの事前情報から来院する患者が急性心筋梗塞患者であることを予測し,患者到着前から治療計画に則って準備をしている | 43 | 24.2 | 59 | 33.1 | 44 | 24.7 | 25 | 14.0 | 5 | 2.8 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 |
29 | 処置をしながら患者の情報を収集している | 39 | 21.9 | 78 | 43.8 | 40 | 22.5 | 14 | 7.9 | 5 | 2.8 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
30 | 刻々と変化する患者の状況を捉えて,ニーズを把握して優先順位を考えている | 33 | 18.5 | 74 | 41.6 | 49 | 27.5 | 17 | 9.6 | 3 | 1.7 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
31 | 医師の説明との整合性を保ちつつ,患者に予測される検査や治療を説明している | 27 | 15.2 | 86 | 48.3 | 44 | 24.7 | 14 | 7.9 | 6 | 3.4 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
32 | 医師の説明を繰り返して,患者が理解しやすいよう説明している | 35 | 19.7 | 77 | 43.3 | 45 | 25.3 | 14 | 7.9 | 5 | 2.8 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
33 | 患者の症状を軽減した上で,患者に情報を提供している | 28 | 15.7 | 75 | 42.1 | 51 | 28.7 | 21 | 11.8 | 2 | 1.1 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
34 | 患者に不確実な情報を提供していない | 39 | 21.9 | 76 | 42.7 | 37 | 20.8 | 15 | 8.4 | 8 | 4.5 | 2 | 1.1 | 1 | 0.6 |
35 | 現在,重症度・緊急度が高い状況であることを患者に説明している | 30 | 16.9 | 78 | 43.8 | 45 | 25.3 | 17 | 9.6 | 5 | 2.8 | 3 | 1.7 | 0 | 0.0 |
36 | 患者が疑問を持っていないか確認している | 35 | 19.7 | 71 | 39.9 | 47 | 26.4 | 19 | 10.7 | 3 | 1.7 | 3 | 1.7 | 0 | 0.0 |
37 | 医療機器のアラームを適切に設定している | 42 | 23.6 | 73 | 41.0 | 38 | 21.3 | 22 | 12.4 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 | 1 | 0.6 |
38 | 室温を調整している | 27 | 15.2 | 58 | 32.6 | 50 | 28.1 | 25 | 14.0 | 15 | 8.4 | 3 | 1.7 | 0 | 0.0 |
39 | 処置を行うための広いスペースを確保し,検査・治療がスムーズに行える動線を整えている | 30 | 16.9 | 69 | 38.8 | 55 | 30.9 | 19 | 10.7 | 3 | 1.7 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
40 | 患者の羞恥心への配慮を忘れず,カーテンやつい立を使用して環境を整えている | 43 | 24.2 | 82 | 46.1 | 34 | 19.1 | 15 | 8.4 | 3 | 1.7 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
41 | 看護師自身が環境の一部であることを認識し,患者が安心できる雰囲気づくりをしている | 35 | 19.7 | 70 | 39.3 | 49 | 27.5 | 19 | 10.7 | 4 | 2.2 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
42 | 診断に集中して患者の思いを置き去りにしないようにしている | 28 | 15.7 | 76 | 42.7 | 53 | 29.8 | 15 | 8.4 | 5 | 2.8 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
43 | 治療に関連する部署と日頃から交流を持ち,連携がとれる体制を整えている | 25 | 14.0 | 63 | 35.4 | 60 | 33.7 | 21 | 11.8 | 5 | 2.8 | 3 | 1.7 | 1 | 0.6 |
44 | チーム全体で救命という全人的医療が実践できるための役割分担(チーム構成)ができている | 28 | 15.7 | 78 | 43.8 | 45 | 25.3 | 21 | 11.8 | 4 | 2.2 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
45 | 患者や様々な職種を仲介している | 28 | 15.7 | 77 | 43.3 | 47 | 26.4 | 17 | 9.6 | 4 | 2.2 | 4 | 2.2 | 1 | 0.6 |
46 | 治療に関わる医療者と対等に話し合える人間関係を構築している | 20 | 11.2 | 69 | 38.8 | 57 | 32.0 | 27 | 15.2 | 3 | 1.7 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
47 | 患者の最大のニーズである生存のニーズを捉え,対応している | 24 | 13.5 | 70 | 39.3 | 59 | 33.1 | 19 | 10.7 | 4 | 2.2 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
48 | 患者の痛みや呼吸苦という身体的ニーズを捉え,対応している | 34 | 19.1 | 83 | 46.6 | 46 | 25.8 | 13 | 7.3 | 1 | 0.6 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
49 | 医師の診断・治療が速やかに行えるよう,患者の安全と安静を保っている | 46 | 25.8 | 75 | 42.1 | 41 | 23.0 | 15 | 8.4 | 0 | 0.0 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
50 | 患者が家族など他者との関係が保てるように援助している | 27 | 15.2 | 72 | 40.4 | 55 | 30.9 | 14 | 7.9 | 7 | 3.9 | 3 | 1.7 | 0 | 0.0 |
51 | インフォームドコンセントの上で,患者の意思を確認している | 52 | 29.2 | 74 | 41.6 | 32 | 18.0 | 17 | 9.6 | 2 | 1.1 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
52 | 患者の「心身共に元気に戻りたい」という思いを認識している | 28 | 15.7 | 71 | 39.9 | 56 | 31.5 | 19 | 10.7 | 2 | 1.1 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
53 | 患者の命の保証と今後の予測という患者家族のニーズを捉え,対応している | 25 | 14.0 | 71 | 39.9 | 62 | 34.8 | 17 | 9.6 | 1 | 0.6 | 2 | 1.1 | 0 | 0.0 |
54 | 患者家族の情報を積極的に収集している | 31 | 17.4 | 79 | 44.4 | 45 | 25.3 | 19 | 10.7 | 1 | 0.6 | 3 | 1.7 | 0 | 0.0 |
55 | 「自分の存在が揺らぐ」という経験を受け止められていないという患者の状況を理解している | 20 | 11.2 | 66 | 37.1 | 63 | 35.4 | 21 | 11.8 | 5 | 2.8 | 3 | 1.7 | 0 | 0.0 |
56 | 患者は死の恐怖を感じているということを認識している | 37 | 20.8 | 69 | 38.8 | 56 | 31.5 | 11 | 6.2 | 4 | 2.2 | 1 | 0.6 | 0 | 0.0 |
57 | 目に見えないやり取りの中で,患者と相互に関係しながら看護していると実感している | 28 | 15.7 | 65 | 36.5 | 58 | 32.6 | 20 | 11.2 | 4 | 2.2 | 1 | 0.6 | 2 | 1.1 |
58 | 患者からの返答が難しい状況においても,一方的にでもコミュニケーションをとろうと努めている | 29 | 16.3 | 76 | 42.7 | 46 | 25.8 | 19 | 10.7 | 5 | 2.8 | 3 | 1.7 | 0 | 0.0 |
59 | アイコンタクトやタッチングにより,看護師が側にいることを患者に認識できるようにしている | 39 | 21.9 | 75 | 42.1 | 42 | 23.6 | 16 | 9.0 | 2 | 1.1 | 4 | 2.2 | 0 | 0.0 |
60 | 患者が未来を予測できないという不安を持っていることを捉え,未来が予測できるよう援助している | 21 | 11.8 | 72 | 40.4 | 51 | 28.7 | 25 | 14.0 | 4 | 2.2 | 4 | 2.2 | 1 | 0.6 |
あなたが救急初期治療に従事している(従事していた)期間におけるご経験から感じた度合い(11(100%)~1(0%))でご回答ください. | 11 (100%) |
10 (90%) |
9 (80%) |
8 (70%) |
7 (60%) |
6 (50%) |
5 (40%) |
4 (30%) |
3 (20%) |
2 (10%) |
1 (0%) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
E1 あなたの職務に対する満足感はどの程度ですか(でしたか). | 非常に満足している | まったく満足していない | ||||||||||
n | 5 | 11 | 39 | 46 | 25 | 20 | 8 | 10 | 10 | 1 | 3 | |
% | 2.8 | 6.2 | 21.9 | 25.8 | 14.0 | 11.2 | 4.5 | 5.6 | 5.6 | 0.6 | 1.7 | |
E2 あなたの職務に対するストレスはどの程度ですか(でしたか).* | 非常にストレスが強い | ストレスは全くない | ||||||||||
n | 42 | 27 | 41 | 33 | 15 | 16 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | |
% | 23.6 | 15.2 | 23.0 | 18.5 | 8.4 | 9.0 | 1.7 | 0.0 | 0.6 | 0.0 | 0.0 | |
E3 あなたの職務におけるチームワークの良好さはどの程度ですか(でしたか). | 非常に良好 | 非常に悪い | ||||||||||
n | 3 | 17 | 37 | 46 | 34 | 22 | 8 | 6 | 4 | 1 | 0 | |
% | 1.7 | 9.6 | 20.8 | 25.8 | 19.1 | 12.4 | 4.5 | 3.4 | 2.2 | 0.6 | 0.0 | |
E4 あなたの自己効力感(自己に対する信頼感や有能感)はどの程度ですか(でしたか). | 非常に高い | 非常に低い | ||||||||||
n | 3 | 10 | 32 | 32 | 38 | 33 | 13 | 4 | 7 | 3 | 3 | |
% | 1.7 | 5.6 | 18.0 | 18.0 | 21.3 | 18.5 | 7.3 | 2.2 | 3.9 | 1.7 | 1.7 | |
E5 あなたが勤務する(していた)救急初期治療の医療安全度の高さはどの程度ですか(でしたか). | 非常に高い | 非常に低い | ||||||||||
n | 7 | 12 | 46 | 46 | 38 | 17 | 5 | 4 | 1 | 2 | 0 | |
% | 3.9 | 6.7 | 25.8 | 25.8 | 21.3 | 9.6 | 2.8 | 2.2 | 0.6 | 1.1 | 0.0 | |
E6 あなたの勤務する(していた)救急初期治療の離職率はどの程度ですか(でしたか).* | 非常に高い | 非常に低い | ||||||||||
n | 6 | 9 | 29 | 32 | 31 | 28 | 15 | 10 | 9 | 6 | 3 | |
% | 3.4 | 5.1 | 16.3 | 18.0 | 17.4 | 15.7 | 8.4 | 5.6 | 5.1 | 3.4 | 1.7 |
* 逆転項目
標本妥当性を示すKMO値は0.957であり,0.5以上であるため妥当であると判断した.また,Barlettの球面性検定の有意確率はp < .01であり,有意に単位行列とは異なるゆえに因子分析を行う価値があると判断した.共通性が0に近い変数は存在しなかったため,HCSEN56項目を最尤法・プロマックス回転で因子分析を行った.
1) 構成概念妥当性の検討探索的因子分析を行い,カイザーガットマン基準により固定値が1以上の成分,8因子構造と判断した(表4).因子負荷量はすべて0.3以上であった.第1因子は〈身体的にも非身体的にも行き届いた治癒環境の創造〉,第2因子には〈患者の価値観を尊重したケアリング実践のための基盤づくり〉,第3因子〈患者の言葉・思いに反応する責任を持った関わり〉,第4因子〈患者の感情の表出を促す環境づくり〉,第5因子〈患者・患者家族のニーズを捉えた治療の準備〉,第6因子〈危機的状況にある患者の存在の理解〉,第7因子〈言語的・非言語的コミュニケーションによる関わり〉,第8因子〈患者に必要な医療者の実践を促進するための調整〉と命名した.また,各因子間の相関係数(表5)は0.316~0.696で,中程度の正の相関を示した.
尺度全体のCronbach’ α係数=0.982 | 第I | 第II | 第III | 第IV | 第V | 第VI | 第VII | 第VIII | I-R相関 | 項目削除後のα | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
I.身体的にも非身体的にも行き届いた治癒環境の創造(Cronbach’ α係数=0.941) | |||||||||||
37 | 医療機器のアラームを適切に設定している | .868 | .040 | –.028 | –.035 | –.009 | –.019 | –.065 | –.053 | .725 | .937 |
39 | 処置を行うための広いスペースを確保し,検査・治療がスムーズに行える動線を整えている | .694 | .266 | .023 | –.128 | .134 | –.185 | –.079 | .032 | .728 | .936 |
19 | 患者の言葉を医療者や家族へ伝えている | .655 | .030 | .060 | .068 | –.068 | .014 | .124 | –.023 | .759 | .936 |
33 | 患者の症状を軽減した上で,患者に情報を提供している | .572 | .153 | .025 | .259 | –.014 | –.067 | .016 | –.016 | .795 | .935 |
14 | 全力を尽くしているという姿勢を示している | .554 | .007 | .245 | .089 | –.124 | .012 | .156 | –.038 | .786 | .935 |
31 | 医師の説明との整合性を保ちつつ,患者に予測される検査や治療を説明している | .544 | –.031 | .111 | –.033 | .102 | .012 | –.090 | .260 | .702 | .937 |
34 | 患者に不確実な情報を提供していない | .529 | .146 | –.055 | .167 | .027 | –.131 | –.014 | .103 | .652 | .938 |
40 | 患者の羞恥心への配慮を忘れず,カーテンやつい立を使用して環境を整えている | .485 | –.022 | –.008 | .221 | –.068 | –.086 | .336 | –.049 | .652 | .938 |
44 | チーム全体で救命という全人的医療が実践できるための役割分担(チーム構成)ができている | .474 | .212 | –.037 | –.055 | –.066 | .087 | .241 | .065 | .720 | .937 |
48 | 患者の痛みや呼吸苦という身体的ニーズを捉え,対応している | .474 | .032 | .073 | –.021 | .132 | –.066 | .10 | .258 | .746 | .936 |
12 | 高度な医療が提供できる病院(三次救急医療施設)で,最善の処置を行っていることを患者に伝えている | .442 | .299 | .218 | .125 | –.254 | .056 | –.166 | –.116 | .583 | .941 |
32 | 医師の説明を繰り返して,患者が理解しやすいよう説明している | .425 | –.143 | .252 | .044 | –.034 | –.050 | .169 | .163 | .666 | .938 |
11 | 患者の身体的症状を迅速に軽減し,治療効果を実感してもらっている | .417 | .092 | .329 | .064 | –.063 | .189 | –.234 | .152 | .778 | .935 |
38 | 室温を調整している | .417 | .003 | .224 | –.005 | –.060 | .099 | –.008 | –.060 | .559 | .941 |
15 | 患者に合ったコミュニケーション方法を適切に選択し,実践している | .388 | –.038 | .325 | –.009 | .027 | .318 | –.109 | –.063 | .709 | .937 |
II.患者の価値観を尊重したケアリング実践のための基盤づくり(Cronbach’ α係数=0.924) | |||||||||||
43 | 治療に関連する部署と日頃から交流を持ち,連携がとれる体制を整えている | .108 | .611 | –.131 | .102 | –.143 | .089 | .073 | .154 | .688 | .917 |
47 | 患者の最大のニーズである生存のニーズを捉え,対応している | .244 | .591 | –.004 | .062 | –.077 | .013 | –.020 | .182 | .788 | .913 |
9 | スピリチュアルな実践を磨くため,自己の看護実践を振り返り,看護を語っている | –.103 | .546 | .372 | –.058 | –.266 | .093 | .073 | –.028 | .549 | .927 |
50 | 患者が家族など他者との関係が保てるように援助している | .122 | .537 | –.068 | –.071 | .012 | .030 | .251 | .106 | .733 | .915 |
46 | 治療に関わる医療者と対等に話し合える人間関係を構築している | .416 | .518 | –.115 | –.105 | –.009 | .039 | –.032 | .189 | .730 | .915 |
7 | 確かな情報を提供している | .131 | .506 | .286 | .112 | –.023 | .037 | –.078 | .004 | .810 | .911 |
42 | 診断に集中して患者の思いを置き去りにしないようにしている | –.020 | .492 | .041 | .137 | .136 | –.010 | –.008 | .166 | .715 | .916 |
4 | 患者だけでなく,自分自身にも価値をおいて看護を実践している | –.006 | .464 | .307 | –.008 | .035 | –.050 | –.152 | .082 | .575 | .924 |
57 | 目に見えないやり取りの中で,患者と相互に関係しながら看護していると実感している | .004 | .451 | .0 | .219 | –.122 | .206 | .234 | –.085 | .717 | .916 |
27 | 職務や倫理教育の中で倫理的価値観を養うよう努めている | .063 | .418 | –.107 | .248 | .324 | –.009 | .014 | .015 | .730 | .915 |
26 | 看護実践経験の積み重ねや他看護師への教育により,患者のニーズを捉える視点を身につけている | .184 | .388 | .070 | .091 | .322 | .026 | –.036 | –.161 | .726 | .915 |
III.患者の言葉・思いに反応する責任を持った関わり(Cronbach’ α係数=0.938) | |||||||||||
10 | 他者に対して敏感であるよう,患者の言葉を大切にし,目の前で起きることに注意を払っている | .133 | –.032 | .607 | .050 | .109 | –.017 | .070 | .030 | .797 | .929 |
3 | 親切と平静さのバランスを保って患者に接している | .037 | .064 | .599 | .048 | .092 | .044 | .039 | –.011 | .777 | .930 |
18 | 患者の言葉を聞き逃さず,必ず反応している | .362 | –.030 | .579 | –.032 | .047 | .005 | .049 | –.103 | .792 | .929 |
2 | 患者にとってどのような姿が理想的なのか考えている | –.119 | .281 | .513 | .031 | –.028 | .009 | .143 | .140 | .753 | .931 |
5 | 三次救急初療という過酷な状況から逃げず,責任を持って患者と向き合っている | .170 | –.040 | .433 | –.037 | .303 | .068 | –.098 | .121 | .727 | .933 |
6 | 三次救急初療は一期一会であり,患者に最善を尽くすという看護師としての役割を果たすよう努めている | .141 | .049 | .423 | .052 | .074 | –.068 | .248 | .083 | .789 | .929 |
1 | 患者や家族の視点に立って関わっている | .084 | .249 | .390 | –.049 | .087 | –.003 | .177 | .028 | .784 | .929 |
13 | 患者の思いに先回りして気づき,声をかけている | .295 | .311 | .361 | –.080 | .014 | .035 | –.008 | –.094 | .701 | .934 |
8 | 患者に恐怖心を抱かせないように説明している | .247 | .124 | .308 | .042 | .001 | –.110 | .205 | .152 | .755 | .931 |
IV.患者の感情の表出を促す環境づくり(Cronbach’ α係数=0.886) | |||||||||||
21 | 患者の表情から感情を想像し,代弁している | .038 | .081 | –.060 | .60 | .082 | .008 | .202 | –.022 | .723 | .863 |
23 | 患者の希望に応えられない場合にも,拒否するのではなく可能な限り代替案を提示している | –.207 | .260 | .180 | .534 | .299 | –.210 | .059 | .043 | .701 | .866 |
41 | 看護師自身が環境の一部であることを認識し,患者が安心できる雰囲気づくりをしている | .162 | –.016 | .128 | .453 | –.204 | .172 | .066 | .276 | .712 | .864 |
22 | 否定的な感情(苦痛,恐怖など)を表出することを我慢しなくてよいことを伝えている | –.029 | .036 | .076 | .449 | .249 | .145 | –.006 | .049 | .705 | .866 |
36 | 患者が疑問を持っていないか確認している | .375 | .012 | .103 | .432 | .076 | –.056 | .153 | –.274 | .724 | .862 |
35 | 現在,重症度・緊急度が高い状況であることを患者に説明している | .387 | –.175 | –.207 | .418 | .075 | .339 | .042 | –.050 | .636 | .877 |
V.患者・患者家族のニーズを捉えた治療の準備(Cronbach’ α係数=0.873) | |||||||||||
28 | 救急隊からの事前情報から来院する患者が急性心筋梗塞患者であることを予測し,患者到着前から治療計画に則って準備をしている | –.087 | –.110 | .10 | .067 | .916 | .023 | –.067 | .035 | .730 | .839 |
29 | 処置をしながら患者の情報を収集している | .064 | –.219 | –.069 | .389 | .682 | –.093 | .051 | .095 | .698 | .846 |
53 | 患者の命の保証と今後の予測という患者家族のニーズを捉え,対応している | .059 | .114 | .241 | –.151 | .398 | .221 | .181 | –.101 | .710 | .844 |
25 | 日頃から,病態や治療計画に関する知識を蓄積している | .330 | .193 | –.019 | .124 | .358 | .154 | –.245 | –.068 | .676 | .851 |
30 | 刻々と変化する患者の状況を捉えて,ニーズを把握して優先順位を考えている | .039 | .171 | .056 | .270 | .308 | .119 | .028 | –.022 | .695 | .847 |
VI.危機的状況にある患者の存在の理解(Cronbach’ α係数=0.894) | |||||||||||
60 | 患者が未来を予測できないという不安を持っていることを捉え,未来が予測できるよう援助している | –.269 | .227 | .121 | .093 | –.057 | .779 | .007 | .096 | .765 | .865 |
55 | 「自分の存在が揺らぐ」という経験を受け止められていないという患者の状況を理解している | .161 | .221 | –.010 | –.109 | –.043 | .590 | .025 | .047 | .743 | .870 |
56 | 患者は死の恐怖を感じているということを意識している | .109 | –.080 | –.072 | .001 | .231 | .459 | .290 | .079 | .755 | .867 |
52 | 患者の「心身共に元気に戻りたい」という思いを認識している | –.087 | .271 | .023 | .078 | .157 | .349 | .149 | .095 | .739 | .871 |
51 | インフォームドコンセントの上で,患者の意思を確認している | .223 | –.071 | .133 | .001 | .159 | .331 | .052 | .151 | .699 | .879 |
VII.言語的・非言語的コミュニケーションによる関わり(Cronbach’ α係数=0.818) | |||||||||||
58 | 患者からの返答が難しい状況においても,一方的にでもコミュニケーションをとろうと努めている | –.090 | –.038 | .043 | .265 | –.088 | .091 | .682 | .108 | .696 | .725 |
59 | アイコンタクトやタッチングにより,看護師が側にいることを患者に認識できるようにしている | –.119 | .156 | .152 | .249 | –.041 | –.036 | .623 | –.033 | .735 | .683 |
54 | 患者家族の情報を積極的に収集している | .141 | .336 | –.042 | –.134 | .136 | .113 | .397 | –.083 | .589 | .829 |
VIII.患者に必要な医療者の実践を促進するための調整(Cronbach’ α係数=0.723) | |||||||||||
45 | 患者や様々な職種を仲介している | –.160 | .322 | –.016 | –.055 | .026 | .180 | .052 | .546 | .576 | |
49 | 医師の診断・治療が速やかに行えるよう,患者の安全と安静を保っている | .270 | .067 | .123 | .070 | .102 | –.053 | –.006 | .491 | .576 |
* 質問16.17.20.24は天井効果により削除
第I因子 | 第II因子 | 第III因子 | 第IV因子 | 第V因子 | 第VI因子 | 第VII因子 | 第VIII因子 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第I因子 | 1.0 | |||||||
第II因子 | .668 | 1.0 | ||||||
第III因子 | .696 | .612 | 1.0 | |||||
第IV因子 | .589 | .496 | .582 | 1.0 | ||||
第V因子 | .682 | .608 | .551 | .483 | 1.0 | |||
第VI因子 | .639 | .595 | .576 | .435 | .530 | 1.0 | ||
第VII因子 | .599 | .570 | .524 | .435 | .597 | .538 | 1.0 | |
第VIII因子 | .483 | .344 | .497 | .448 | .393 | .316 | .404 | 1.0 |
Cronbach’s α係数はHCSEN全体で0.982,第1因子:0.941,第2因子:0.924,第3因子:0.938,第4因子:0.886,第5因子:0.873,第6因子:0.894,第7因子:0.818,第8因子:0.723であった.I-R相関係数は,0.549~0.81であった.
3) 併存的妥当性の検討(表6)HCSEN各因子得点と外的基準総得点の中間位で分割した2群(高得点群39~54点,低得点群16~38点)を比較した独立したサンプルのt検定では,全ての因子において2群間に有意差が認められた(ps < .002).
外的基準総得点* | HCSEN各因子得点平均±SD | p値 | 平均値の差 | 差の95%信頼区間 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
高-低群 | 下限 | 上限 | ||||
第I因子得点 | 高得点群 | 88.6 ± 8.6 | p < .001 | –8.9 | –12.2 | –5.6 |
低得点群 | 79.7 ± 13.2 | |||||
第II因子得点 | 高得点群 | 62.8 ± 6.6 | p < .001 | –6.8 | –9.4 | –4.3 |
低得点群 | 56.0 ± 10.3 | |||||
第III因子得点 | 高得点群 | 52.8 ± 5.5 | p < .001 | –4.8 | –7.0 | –2.6 |
低得点群 | 48.0 ± 8.8 | |||||
第IV因子得点 | 高得点群 | 34.7 ± 3.7 | p < .001 | –2.9 | –4.3 | –1.5 |
低得点群 | 31.9 ± 5.7 | |||||
第V因子得点 | 高得点群 | 29.3 ± 3.3 | p < .001 | –2.7 | –3.9 | –1.5 |
低得点群 | 26.6 ± 4.6 | |||||
第VI因子得点 | 高得点群 | 29.1 ± 3.5 | p < .001 | –2.6 | –3.8 | –1.3 |
低得点群 | 26.6 ± 4.6 | |||||
第VII因子得点 | 高得点群 | 17.6 ± 2.0 | p < .001 | –1.5 | –2.2 | –0.7 |
低得点群 | 16.1 ± 3.1 | |||||
第VIII因子得点 | 高得点群 | 11.8 ± 1.5 | .002 | –0.9 | –1.4 | –0.3 |
低得点群 | 10.9 ± 2.0 |
* 外的基準総得点の中間位で分割した:高得点群(39~54点),低得点群(16~38点)
厚生労働省(2022)の「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると,2020年における全国看護師の男性比率は男性8.1%であるが,救急部門は男性看護師が多く勤務しており,日本看護協会(2021)の報告でも救急看護認定看護師の男性比率は28.6%と他分野の認定看護師よりも高い.本研究参加者は救急部門の勤務経験者であることから,男性比率が高かったと考えられる.
また,看護師経験年数は「5~10年未満」「10~15年未満」が50%以上を占め,中堅看護師とよばれる多くの対象者から回答を得た.
2. HCSENの信頼性と妥当性について表面的妥当性については,救急医療に携わる医師2名,救急救命士3名,救急初療を受けたAMI患者2名にHCSEN(案)を用いた半構成化面接を行い,分かりにくい点等の意見を聴取し,質問項目の表現を修正したことで確保した.また,天井効果を示した設問は削除し,KMO値も0.957と高いことから,因子分析の標本妥当性は十分であることが示された.
Cronbach’s α係数は尺度全体で0.982,各因子0.723~0.941であり,信頼性を十分示す結果であったと言える.また,各因子間の相関係数も中程度の正の相関を示したことから,HCSENは信頼性を確保していると考える.
そして,HCSEN各因子得点と外的基準総得点の中間位で分割した2群を比較した結果からも,ケアリング実践度が高い者は職務満足等に関する外的基準も高い得点を示し,併存的妥当性が確認された.HCSENは他者評価を受ける機会が少ない救急看護師の看護実践の自己評価ツールとなり,救急看護師のヒューマンケアリング実践を可視化することで職務満足度を向上させることが期待できる.
3. HCSENの構成について第1因子〈身体的にも非身体的にも行き届いた治癒環境の創造〉の項目内容は,患者が迅速に適切な全人的治療を受けることができる治癒環境を創造するケアリング実践であった.Watson(1999/2005)は,「看護師はヒーリングスペースを創造するのに決定的役割を演じる必要があろう」と述べ,治癒環境の創造に考慮すべき要因として,「騒音の抑制」「快適な室温」「プライバシー」「コミュニケーション」等を挙げている.また,本田ら(2012)が明らかにした三次救急外来において看護師が特に重要と考える看護実践の一つに「動きやすい物品の配置」等の「外来における環境整備」が挙がった.「一刻もはやく,患者の生命の保証をすることがまず重要であり,それに貢献できる実践が救急外来における看護実践として現場で認識されている」(本田ら,2012)ことから,治癒環境の創造に救急医療の特性が表れたものと考える.そして,河合・高原(2018)は救命救急の場で働く看護師が,生命の危機的状態直後から回復過程にある患者に対して,どのような考えに基づいてどのような看護ケアを行っているのかを検討した結果,「患者の過去と現在をつなぐ」患者の意識の混乱を整えるケアを行っていた.救急看護師は,救命処置を行いながらも,患者の回復後を見据えて患者が現状を理解するためのケアリング実践をしており,三次救急初療における行き届いた治癒環境を創造するケアリング実践が示唆された.
第2因子〈患者の価値観を尊重したケアリング実践のための基盤づくり〉の項目内容は,患者の人間的尊厳を尊重したケアリング実践を可能にする医療者の基盤づくりのための看護実践であった.Watson(2012/2014)はトランスパーソナルケアリングという関係に必要な条件として,「患者が主観的にまたスピリチュアルに感じている意味を積極的に認める,看護師の意図と意思」を挙げている.また,重久(2020b)は看護実践におけるケアリングの概念分析を行い,カテゴリ「対象者の人格を尊重したケアの実践」,ケアリングの先行要因として「ケアリングの価値を認めるチーム医療体制」「看護師の倫理的・道徳的態度」を挙げている.救急看護師は患者と対峙するその場だけではなく,常日頃からケアリング実践のための基盤づくりを行っていることが示唆された.
第3因子〈患者の言葉・思いに反応する責任を持った関わり〉の項目内容は,三次救急初療という患者の生死に向き合う過酷な状況において,人間性と利他主義の価値をもって,患者や患者家族の言葉や思いをとりこぼさないよう関わろうとするケアリング実践であった.Watson(2012/2014)はトランスパーソナルケアリングに必要な条件として,「患者の感情や内面の状態を実感し,正確に感知できる看護師の能力.瞬時にさえ,患者を‘見’,スピリットとスピリットでつながろうと努力すること.行為・言葉・振る舞い・認知・ボディランゲージ・感情・思考・感覚・直観などを通して,看護師が信頼できる存在となり,心を開き,心して気を配ることで実現できる.」を挙げている.また,看護における共感について検討した山﨑(2020)は,「共感とは目に見えないものであるが,看護を受ける側にとって看護師の共感は,看護師の行動,態度,言葉などを通して伝わるものであり,それは患者の心身に望ましい結果を促進し,とりわけ心理面に影響するもの」と述べている.限られた時間の中でも患者の感情や内面を瞬時に捉え,真摯な姿勢で患者と向き合おうとする熱意を持った救急看護師のケアリング実践が示唆された.
第4因子〈患者の感情の表出を促す環境づくり〉の項目内容は,患者が全ての感情を表出できるよう意図的に関わる救急看護師のケアリング実践であった.Watson(2012/2014)は,「患者が自分自身を知り,コントロールし,ケアリングができるようにし,外的な環境がどのようなものであっても内的調和を回復することで自分を癒すことができるように手助けをする」と述べている.また,岡(2020)が日本における「寄り添う看護」の実践内容に関する文献検討から挙げたカテゴリ「対象の悲観的な心情を察知」の実践内容は,「つらい内面を探る」「感じ取る」等であった.突如,心身共に危機的状況に置かれ,自分の感情を明確化できない患者に寄り添い,感情を表出することを支える救急看護師のケアリング実践が示唆された.
第5因子〈患者・患者家族のニーズを捉えた治療の準備〉の項目内容は,創造的な問題解決能力により,患者・患者家族のニーズを捉えて支援するケアリング実践であった.Watson(2012/2014)は,「ケアリングに必要なのは,個々のニーズを知り,理解すること,他者のニーズにどのように対応するかを知ること」と述べている.また,森島・當目(2016)が救急看護認定看護師の看護実践を検討した結果,カテゴリ「得られた情報から直観的に患者の成り行きを予測する」「エビデンスによる緊急度と重症度から優先度を見極める」を挙げている.三次救急初療では患者や患者家族の情報は少なく,得られたデータから今後の成り行きを予測すること,重症かつ緊急性の高い患者とその家族のニーズを即時的に捉えて対応するという救急看護師のケアリング実践が示唆された.
第6因子〈危機的状況にある患者の存在の理解〉の項目内容は,患者が死の恐怖を感じているということを認識して関わろうとするケアリング実践であった.Watson(2012/2014)は,「従来の科学/医学モデルに合わせた一連の行動ではなく,スピリチュアルな次元を有する,人間同士のケアリングプロセスとしての看護を打ち立てる」ために,実際に見たり確かめたりすることができない事物の本質や存在を探究する形而上学的な文脈の中に看護を置くことを提唱している.また,増田・森(2021)が明らかにしたクリティカルケア領域の達人看護師が大事にしている信念や態度の一つとして,「明確に表現できない感覚も患者の声としてとらえ傾聴していく姿勢で接する」等の「全人的にとらえた患者との関係性の中で生きる道を見通し伴走する」が挙がっている.心身共に危機的状況にあり,自分の存在が揺らぐという患者が抱える全人的苦痛を,目に見えなくとも受け止めようとする救急看護師のケアリング実践が示唆された.
第7因子〈言語的・非言語的コミュニケーションによる関わり〉の項目内容は,患者や患者家族とのコミュニケーションを工夫するケアリング実践であった.Watson(2012/2014)は,「看護師が心から誠心誠意患者に対峙し,誠実になればなるほど,感情の一体感やスピリットとスピリットのつながりという意味での『トランスパーソナルケアリング』は高められる」と述べている.また,日本の看護における全人的ケアの概念分析を行った荻原ら(2020)は,全人的ケアの属性のカテゴリ「寄り添う」,そのサブカテゴリ「心の声を聴き共に乗り越える」「家族の力になる」を挙げている.激しい苦痛や意識状態の悪化,突然の出来事に動揺しコミュニケーションがスムーズにとれないことが多い患者と患者家族に寄り添う救急看護師のケアリング実践が示唆された.
第8因子〈患者に必要な医療者の実践を促進するための調整〉の項目内容は,患者-医療者の橋渡しとなるケアリング実践であった.Montgomery(1993/1995)は,「ケアリングは医療チームのメンバー間の支援的な結びつきの基盤やネットワークを促進するチームの中でもっとも起こりやすい」と述べている.また,本田ら(2012)は三次救急外来において看護師が特に重要と考える看護実践の一つに「チーム医療」を挙げている.三次救急初療の場においては,様々な職種の医療者が同時進行で実践するため,「緊迫した現場でも医療チームがお互いを気遣いながら協力する」(本田ら,2012)中で,患者の不利益とならないよう,それぞれの実践の調整を行う救急看護師のケアリング実践が示唆された.
ヒューマンケアリング理論を基盤として重症患者の回復後のQOLを見据えた三次救急医療を検討すると,「人間的尊厳を守られながら,安全・安楽に適切な治療・処置を受けて救命されるという,三次救急患者の全人的で最善のアウトカムを患者と医療従事者がともに達成しようとする過程」(橋本・黒澤,2022)であると言える.よって,8つの因子は三次救急初療におけるヒューマンケアリングの過程を表していると考える.
本研究は,Web調査による標本抽出を行ったため,研究参加者の具体的な救急看護経験内容についての把握は行えず,調査結果に偏りが生じた可能性がある.今後は本尺度を用いた多施設研究により更なる知見の蓄積が必要であると考える.また,8因子56項目は回答者の負担が懸念されるため,対象者の状況を詳細に反映する本尺度と共に,簡易的に評価ができる尺度を検討していく.
救急看護師のヒューマンケアリング実践評価スケールHCSENの信頼性・妥当性を検討した.8因子が抽出され,内的整合性が確認された.また,看護師の職務満足に関する項目との併存的妥当性も確認された.
謝辞:本研究を実施するにあたり,面接にご協力頂きました看護師・医師・救急救命士・患者様,質問紙調査にご協力頂きました看護師の皆様に心より感謝申し上げます.なお,本研究はJSPS科研費JP17K17455の助成を受け実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:AHは研究の着想,データ収集と分析,および草稿の作成;MK・MUはデータ分析,草稿;TEは研究プロセス全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.