2023 年 43 巻 p. 71-78
目的:住民ボランティアのICT機器の使用頻度・使用自信感と地域高齢者見守り自己効力感・見守り訪問頻度との関連を明らかにする.
方法:住民ボランティア927名に質問紙調査を実施した.独立変数にICT機器の使用頻度または使用自信感,従属変数に地域高齢者見守り自己効力感または見守り訪問頻度を投入した多変量ロジスティック回帰分析を行った.
結果:対象者451名(65歳以上の者=76.0%,女性=67.6%)のうち,所持ICT機器は,従来型携帯電話のみ所持群が11.3%,スマートフォンのみ所持群が33.9%,複数所持群が54.8%であった.ICT機器使用自信感が高い者は低い者に比べて,地域見守り自己効力感が高かった(オッズ比=1.57,95%信頼区間=1.04~2.38,p = .03).
結論:住民ボランティアのICT機器使用自信感が高いことと地域高齢者見守り自己効力感が高いことは関連していた.
Aim: The present study aims to examine the association between frequency or confidence of information and communication technology (ICT) devices utilization and self-efficacy of neighborhood watch or frequency of home visits for older adults among local volunteers (LVs).
Methods: A total of 927 LVs living in two municipalities were studied using self-reported anonymous surveys. The frequency and confidence of ICT usage, self-efficacy of neighborhood watch, and frequency of home visits for older adults among LVs were measured. Two multivariate logistic regression analyses adjusted for sociodemographic characteristics were conducted, investigating frequency or confidence of ICT usage as the independent variables and self-efficacy of neighborhood watch or frequency of home visits for older adults as dependent variables.
Results: Among 451 LVs (aged ≥65 years: 76.0% of the total participants, with females comprising 67.6%), 11.3% persons had basic phones, while 33.9% possessed smart phones. The rate of persons having more than one ICT device was 54.8%. High levels of confidence of ICT device usage significantly associated with the self-efficacy of neighborhood watch for older adults among LVs (odds ratio = 1.57, 95% confidence interval = 1.04–2.38, p-value = .03).
Conclusion: The results suggest that confidence in usage of ICT devices could positively associated with self-efficacy of neighborhood watch for older adults, among LVs.
高齢世帯が増加(厚生労働省,2019)するなか,高齢者は家族以外に頼る人がなく(藤森,2021),友人や近隣住民などとの関係が希薄化(舛田ら,2011)している.これに対し,地域では行政や社会福祉協議会などが推進役となり,住民ボランティアなどが地域高齢者に声かけを行い,必要に応じて地域のサロンや地域包括支援センターなどのケア提供機関につなげる地域高齢者見守りが行われている.
住民ボランティアによる高齢者見守りは,高齢者の近隣とのネットワークの強化や孤独死防止に役立つ(島貫ら,2007;豊田,2008).また,見守り対象者数が多いほど住民ボランティアの見守り活動満足感が高く(西ら,2021),ボランティア自身の介護予防(橋口ら,2021)やソーシャルネットワーク低下抑制(岩永ら,2018)に効果がある.しかし,2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大下,社会的距離の確保や不要不急の外出自粛が求められた.その結果,地域住民によるサロンや見守り訪問が休止し,高齢者の人々との交流機会は減少している(ひととまちづくり研究所,2020).高齢者の外出機会の減少により,孤立や生活不活発病による二次健康被害が深刻化する.
COVID-19感染拡大により,社会全体にICT(information and communication technology;情報通信技術)の利活用が急速に進んできた.ICT機器とは,携帯電話やスマートフォン,PCなどの情報技術と人とのコミュニケーションに主眼を置いた機器を指す.通信利用動向調査(総務省,2020)では,高齢者の92%がICT機器を保有しており,高齢者にはICT機器は身近になっているが,今後,一層高齢者のICT機器の利活用が推進されると予測する.
これらのことから,従来行われてきた対面型の高齢者見守りに加え,非接触型の高齢者見守りも必要であり,住民ボランティアの見守りの新たな手段としてICT機器が利用できる可能性がある.先行研究より,ICT機器の利活用にはその利用頻度や使用に対する自信感が関連していると考えられている(光武ら,2011;館岡ら,2021).よって,本研究では,ICT機器の使用頻度とICT機器の使用に対する自信感により,住民ボランティアのICT機器の使用状況を把握した.また,住民ボランティアの地域高齢者見守り状況を先行研究(西ら,2021)を参考に,見守り訪問の実施状況と地域見守り自己効力感にて把握した.本研究では,ICT機器の使用の頻度が高く,その自信感が高い住民ボランティアほど,COVID-19感染拡大下においても地域住民とのつながりを認識でき,地域見守り自己効力感や見守り訪問の実施頻度が高い可能性があると仮説をたてた.
本研究では住民ボランティアのICT機器の使用頻度や使用自信感と地域高齢者見守り自己効力感や見守り訪問の実施頻度の関連を明らかにすることを目的とし,高齢者見守りに関する新たな地域看護実践を提案する基礎資料とする.
県内のA市とB町にて調査を実施した.いずれの地域も民生委員児童委員と地区福祉委員が社会福祉協議会と協力し個別援助活動とグループ援助活動による地域高齢者見守りを実施している.個別援助活動には,訪問による見守り,安否確認や配食サービス,グループ援助活動には,会食やサロン等の運営や世代間交流活動が含まれる.調査時点において,両地域とも,個別援助活動やグループ援助活動にICT機器は利用していなかったが,調査の際,COVID-19感染により,見守り活動が大きく影響を受けていることからICT等を活用した新たな取り組みを検討することが調査の趣旨であることを説明した.
調査対象者は,調査地域の全民生委員児童委員と全地区福祉委員の927名である.内訳は,A市の民生委員児童委員は173名,福祉委員は628名,双方の兼務者は19名の計820名,B町の民生委員児童委員は36名,福祉委員は51名,兼務者は20名の計107名である.なお,本研究では住民ボランティアの操作的定義を活動の無償性という観点から民生委員児童委員と福祉委員とした.
2. 調査方法無記名自記式質問紙調査を2021年7~8月に実施した.対象者に文書と口頭で説明の上,質問紙を手渡しにて配布し,回収した.
3. 調査項目 1) 基本属性基本属性として,性別,年齢,家族構成,居住年数,活動年数の5項目を把握した.年齢は,「64歳以下」「65~74歳」「75歳以上」,家族構成は,「独居」と「非独居」,居住年数は,「30年以下」と「31年以上」で把握した.活動年数は,「5年未満」「5~10年」「10年以上」に分類した.兼務と回答した者は,各委員としての活動年数の平均値を用いた.
2) 所持ICT機器所持ICT機器は,「携帯電話(ガラケー,PHS)」「スマートフォン」「パソコン」「タブレット(iPad等)」について複数回答にて把握した.次に,「携帯電話」のみを所持している群(以下,従来型携帯電話のみ所持群),「スマートフォン」のみを所持している群(以下,スマートフォンのみ所持群),複数のICT機器を所持している群(以下,複数所持群)に分類した.
3) 所持ICT機器の使用 (1) 所持ICT機器の使用頻度所持ICT機器使用頻度は,所持ICT機器の4種類について,最近1か月のICT機器使用頻度を「0回」「週に1~6回」「月に1~3回」「毎日」で把握した.次に,使用頻度が「0回」「週に1~6回」「月に1~3回」を低群,「毎日」を高群に分類した.複数所持群は,所持しているICT機器のうち,最も使用頻度が高いICT機器に対する回答を用いた.
(2) 所持ICT機器使用自信感ICT機器使用自信感はVisual Analogue Scale(以下VAS)にて把握した.100 mmの線分の左端を「全く自信がない(0)」,右端を「とても自信がある(100)」と定義し,対象者に「あなたはICT機器の使用にどの程度自信があるか,直線上の当てはまる位置に×印をつけてください」と質問した.印がつけられた点の0からの距離(mm)を定規で計測して,0~100点の得点とした.本研究では,VAS得点の中央値56点をカットオフ値とし,低群と高群の2群に分類した.複数所持群は,各ICT機器に対するVAS得点の平均値を用いた.
4) 地域見守り (1) 地域見守りの定義本研究では,地域見守りを住民ボランティアが同じ地域に暮らす高齢者を見守り・声かけを行い,必要に応じて医療保健福祉専門機関につなげる活動を意味し,その活動の企画や調整等のプロセスを含むことと定義した.なお,その見守りの方法は訪問,電話,ICT機器の活用など,その種別を問わないこととした.また,本研究では地域見守りについて,見守り訪問頻度と地域見守り自己効力感から把握した.
(2) 見守り訪問頻度過去1年間の見守り訪問頻度は「0回」「年に数回」「月に1~3回」「月に4回以上」で把握し,「0回」「年に数回」を低群,「月に1~3回」「月に4回以上」を高群に分類した.
(3) 地域見守り自己効力感地域見守り自己効力感は,コミュニティ・ネットワークと近隣見守りの観点から高齢者の社会的孤立を予防するための自己効力感とし,地域高齢者見守り自己効力感尺度(Community’s Self-Efficiency Scale:以下CSES)(Tadaka et al., 2016)にて把握した.得点範囲は0~24点であり,得点が高いほど見守り活動への自己効力感が高いことを示す.なお,CSESは妥当性やクロンバッハα係数が0.86より信頼性が確認されている(Tadaka et al., 2016).本研究の分析では,CSES得点の中央値13点をカットオフ値として低群と高群に分類した.
4. 分析方法対象者の基本属性等とICT機器の使用頻度および使用自信感との関連は,χ2検定にて検討した.さらに,従属変数を地域見守り自己効力感とし,独立変数を所持ICT機器使用頻度の高低,所持ICT機器使用自信感の高低,調整変数には対象者の基本的属性である年齢,性別,家族構成,居住地域,活動年数,所持ICT機器を投入したロジスティック回帰分析を行った.また,従属変数を見守り訪問頻度とし,独立変数と調整変数については同様の変数を投入したロジスティック回帰分析を行った.統計学的な有意水準は5%未満とし,統計解析には,R(ver. 4.0.4)を用いた.
5. 倫理的配慮対象者には研究内容や目的,研究参加の自由,今回得られた情報について,目的外利用をしないこと,研究終了時には適切に破棄することを文書に明記し,質問紙内の同意の有無の記載と質問紙の返信をもって研究参加の同意を得たものとした.なお,大阪市立大学院看護学研究科の倫理審査委員会の承認を得た.(承認番号:2021-3-2)
927名(100%)のうち,回収者数は512名(55.2%)であり,見守り訪問頻度,地域見守り自己効力感尺度の質問について2割以上の欠損値があった者と所持ICT機器のうち「携帯電話」「スマートフォン」のいずれも持っていなかった者の合計61名(6.6%)を除外し,451名(48.7%)を分析対象とした.
1. 対象の基本属性住民ボランティアの年齢は,分析対象者451名(100%)のうち,65~74歳の者が240名(53.2%)と65~74歳の者が半数近くを占めていた.性別では女性が305名(67.6%)と多かった.所持ICT機器については,従来型携帯電話のみ所持群が51名(11.3%),スマートフォンのみ所持群が153名(33.9%),複数所持群が247名(54.8%)と複数所持群が半数以上みられた(表1).
全数 451(100.0) |
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年齢 | |
64歳以下 | 108(24.0) |
65~74歳 | 240(53.2) |
75歳以上 | 103(22.8) |
性別 | |
男性 | 146(32.4) |
女性 | 305(67.6) |
家族構成1) | |
独居 | 57(12.7) |
非独居 | 392(87.3) |
居住年数1) | |
30年以下 | 135(30.1) |
31年以上 | 314(69.9) |
地域 | |
A市 | 370(82.0) |
B町 | 81(18.0) |
所属1) | |
民生委員児童委員 | 131(29.2) |
地区福祉委員 | 270(60.1) |
兼務 | 48(10.7) |
活動年数2) | |
5年未満 | 223(50.7) |
5~10年 | 115(26.1) |
10年以上 | 102(23.2) |
所持ICT機器 | |
従来型携帯電話のみ所持群 | 51(11.3) |
スマートフォンのみ所持群 | 153(33.9) |
複数所持群 | 247(54.8) |
1)全数(n = 449) 2)全数(n = 440)
ICT機器使用頻度の高群では,年齢が64歳以下の者(p < .001),居住年数が30年以下の者(p = .037),所属が民生委員児童委員である者(p = .048),所持ICT機器を複数所持している者(p < .001)の割合が多かった.ICT機器使用自信感の高群には,年齢が64歳以下の者(p = .045),所持ICT機器を複数所持している者(p = .01)の割合が多かった(表2).
ICT機器使用頻度1) N = 451(100.0) |
ICT機器使用自信感2) N = 448(100.0) |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
低群 93(100.0) |
高群 358(100.0) |
χ2値3) | 低群 226(100.0) |
高群 222(100.0) |
χ2値3) | |||
年齢 | ||||||||
64歳以下 | 6(6.5) | 102(28.5) | 33.7** | 43(19.0) | 64(28.8) | 6.2* | ||
65~74歳 | 48(51.6) | 192(53.6) | 126(55.8) | 113(50.9) | ||||
75歳以上 | 39(41.9) | 64(17.9) | 57(25.2) | 45(20.3) | ||||
性別 | ||||||||
男性 | 26(28.0) | 120(33.5) | 0.8 | 68(30.1) | 77(34.7) | 0.9 | ||
女性 | 67(72.0) | 238(66.5) | 158(69.9) | 145(65.3) | ||||
家族構成4) | ||||||||
独居 | 12(12.9) | 45(12.6) | 0.001 | 31(13.7) | 26(11.8) | 0.2 | ||
非独居 | 81(87.1) | 311(87.4) | 195(86.3) | 194(88.2) | ||||
居住年数4) | ||||||||
30年以下 | 19(20.7) | 116(32.5) | 4.3* | 62(27.6) | 72(32.6) | 1.1 | ||
31年以上 | 73(79.3) | 241(67.5) | 163(72.4) | 149(67.4) | ||||
地域 | ||||||||
A市 | 77(82.8) | 293(81.8) | 0.004 | 184(81.4) | 183(82.4) | 0.02 | ||
B町 | 16(17.2) | 65(18.2) | 42(18.6) | 39(17.6) | ||||
所属4) | ||||||||
民生委員児童委員 | 19(20.9) | 112(31.3) | 6.1* | 62(27.7) | 68(30.6) | 2.0 | ||
地区福祉委員 | 65(71.4) | 205(57.3) | 134(59.8) | 135(60.8) | ||||
兼務 | 7(7.7) | 41(11.5) | 28(112.5) | 19(8.6) | ||||
活動年数5) | ||||||||
5年未満 | 38(41.3) | 185(53.2) | 5.6 | 103(46.6) | 118(54.6) | 2.8 | ||
5~10年 | 25(27.2) | 90(25.9) | 63(28.5) | 52(24.1) | ||||
10年以上 | 29(31.5) | 73(21.0) | 55(24.9) | 46(21.3) | ||||
所持ICT機器 | ||||||||
従来型携帯電話のみ所持群 | 30(32.3) | 21(5.9) | 60.4** | 26(11.5) | 24(10.8) | 9.2* | ||
スマートフォンのみ所持群 | 36(38.7) | 117(32.7) | 91(40.3) | 61(27.5) | ||||
複数所持群 | 27(29.0) | 220(61.5) | 109(48.2) | 137(61.7) |
* p < .05,** p < .001
1)ICT機器使用頻度は使用頻度が「0回,月に1~3回,週に1~6回」を低群,「毎日」を高群に分類した.
2)ICT機器使用自信感は算出した所持媒体使用の自信感のVAS得点の中央値56点をカットオフ値として低群と高群に分類した.
3)χ2検定を用いた.
4)ICT機器使用頻度全数(n = 449),ICT機器使用自信感全数(n = 446)
5)ICT機器使用頻度全数(n = 440),ICT機器使用自信感全数(n = 437)
所持ICT機器の使用頻度の高低と地域見守り自己効力感ならびに見守り訪問頻度に関連はみられなかった(表3).
地域見守り自己効力感1) | 見守り訪問頻度2) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 | オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 | |||
ICT機器使用頻度3) | ||||||||
低群 | 1.00 | 1.00 | ||||||
高群 | 1.05 | 0.61~1.81 | .861 | 1.00 | 0.58~1.72 | .993 | ||
年齢4) | ||||||||
64歳以下 | 1.00 | 1.00 | ||||||
65~74歳 | 1.28 | 0.76~2.16 | .361 | 1.98 | 1.14~3.53 | .018 | ||
75歳以上 | 2.19 | 1.12~4.32 | .022 | 2.71 | 1.36~5.50 | .005 | ||
性別 | ||||||||
男性 | 1.00 | 1.00 | ||||||
女性 | 1.22 | 0.78~1.93 | .389 | 1.43 | 0.90~2.30 | .130 | ||
家族構成 | ||||||||
独居 | 1.00 | 1.00 | ||||||
非独居 | 1.27 | 0.68~2.42 | .452 | 1.24 | 0.67~2.34 | .492 | ||
地域 | ||||||||
A市 | 1.00 | 1.00 | ||||||
B町 | 1.74 | 1.02~2.97 | .043 | 2.33 | 1.38~3.96 | .002 | ||
活動年数5) | ||||||||
5年未満 | 1.00 | 1.00 | ||||||
5~10年 | 1.98 | 1.19~3.29 | .008 | 1.41 | 0.83~2.38 | .204 | ||
10年以上 | 3.84 | 2.32~6.43 | <.001 | 2.15 | 1.30~3.58 | .003 | ||
所持ICT機器6) | ||||||||
従来型携帯電話のみ所持群 | 1.00 | 1.00 | ||||||
スマートフォンのみ所持群 | 0.86 | 0.42~1.77 | .675 | 1.36 | 0.67~2.80 | .402 | ||
複数所持群 | 1.46 | 0.71~3.03 | .307 | 1.15 | 0.57~2.40 | .698 |
従属変数を地域見守り自己効力感・見守り訪問の実施頻度として,独立変数をICT機器使用頻度の高低としたロジスティック回帰分析を行った.
調整変数として,年齢,性別,家族構成,地域,活動年数,所持ICT機器を投入した.
1)地域見守り自己効力感は,算出したCSES得点の中央値13点をカットオフ値として低群と高群に分類した.
2)見守り訪問頻度は実施状況が「0回,年に数回」を低群,「月に1~3回,月に4回以上」を高群に分類した.
3)ICT機器使用頻度は使用頻度が「0回,月に1~3回,週に1~6回」を低群,「毎日」を高群に分類した.
4)年齢は,65歳未満を0,65~74歳,75歳以上を1としたダミー変数を作成した.
5)活動年数は,5年未満を0,5~10年,10年以上を1としたダミー変数を作成した.
6)所持ICT機器は,従来型携帯電話のみを0,スマートフォンのみ,複数所持を1としたダミー変数を作成した.
所持ICT機器使用自信感が高い者は低い者に比べて地域高齢者見守り自己効力感のORが有意に高かった(OR = 1.57, 95%CI = 1.04~2.38, p = .03).また,所持ICT機器使用自信感の高低と見守り訪問頻度に関連はみられなかった(表4).
地域見守り自己効力感1) | 見守り訪問頻度2) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 | オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 | |||
ICT機器使用自信感3) | ||||||||
低群 | 1.00 | 1.00 | ||||||
高群 | 1.57 | 1.04~2.38 | .030 | 1.32 | 0.87~2.01 | .187 | ||
年齢4) | ||||||||
64歳以下 | 1.00 | 1.00 | ||||||
65~74歳 | 1.34 | 0.79~2.28 | .281 | 2.04 | 1.17~3.66 | .014 | ||
75歳以上 | 2.33 | 1.20~4.58 | .013 | 2.83 | 1.43~5.69 | .003 | ||
性別 | ||||||||
男性 | 1.00 | 1.00 | ||||||
女性 | 1.23 | 0.78~1.95 | .376 | 1.45 | 0.91~2.32 | .122 | ||
家族構成 | ||||||||
独居 | 1.00 | 1.00 | ||||||
非独居 | 1.29 | 0.69~2.46 | .425 | 1.26 | 0.68~2.37 | .466 | ||
地域 | ||||||||
A市 | 1.00 | 1.00 | ||||||
B町 | 1.73 | 1.02~2.98 | .044 | 2.32 | 1.37~3.94 | .002 | ||
活動年数5) | ||||||||
5年未満 | 1.00 | 1.00 | ||||||
5~10年 | 2.08 | 1.23~3.48 | .005 | 1.44 | 0.85~2.44 | .176 | ||
10年以上 | 3.93 | 2.37~6.62 | <.001 | 2.17 | 1.31~3.61 | .003 | ||
所持ICT機器6) | ||||||||
従来型携帯電話のみ所持群 | 1.00 | 1.00 | ||||||
スマートフォンのみ所持群 | 0.89 | 0.44~1.83 | .759 | 1.38 | 0.69~2.80 | .372 | ||
複数所持群 | 1.45 | 0.72~2.93 | .298 | 1.13 | 0.57~2.27 | .733 |
従属変数を地域見守り自己効力感・見守り訪問の実施頻度として,独立変数をICT機器使用自信感の高低としたロジスティック回帰分析を行った.
調整変数として,年齢,性別,家族構成,地域,活動年数,所持媒体を投入した.
1)地域見守り自己効力感は,算出したCSES得点の中央値13点をカットオフ値として低群と高群に分類した.
2)見守り訪問頻度は実施状況が「0回,年に数回」を低群,「月に1~3回,月に4回以上」を高群に分類した.
3)ICT機器使用自信感は算出したICT使用の自信感のVAS得点の中央値56点をカットオフ値として低群と高群に分類した.
4)年齢は,65歳未満を0,65~74歳,75歳以上を1としたダミー変数を作成した.
5)活動年数は,5年未満を0,5~10年,10年以上を1としたダミー変数を作成した.
6)所持ICT機器は,従来型携帯電話のみを0,スマートフォンのみ,複数デバイス所持を1としたダミー変数を作成した.
本研究では,高齢者の見守り活動を行う住民ボランティアに質問紙調査を行い,ICT機器の使用頻度・使用自信感と地域見守り自己効力感・見守り訪問頻度との関連を検討し,以下の知見が得られた.
本研究の対象者の約75%は65歳以上の高齢者であり,そのスマートフォン所持率は88.7%であった.全国高齢者のスマートフォン所持率は約7割(総務省,2020)であり,本対象者のスマートフォン所持率は高かった.
本研究では,ICT機器使用頻度やICT機器使用自信感が高い者では64歳以下の者や男性の割合が高く,ICT利用に関する過去の調査(根本ら,2021)と同様の結果を得た.この背景には,64歳以下の者は,1990年代以降のインターネットの普及(厚生労働省,2020)により,現役世代の間よりICT機器使用に慣れ親しんでいた可能性がある.これまで高齢者はICT利用が困難と考えられてきたが,今後,世代が進むにつれ,高齢者へのICT普及が拡大すると推察する.
本研究ではICT機器使用自信感が高い者は,低い者に比べて地域高齢者見守り自己効力感が1.57倍,高かった.地域見守り活動では,見守り対象の高齢者が不在で動向がつかめない,情報が得られない(桝田ら,2009a;桝田ら,2009b)などの負担感がある.本研究では,ICT機器使用自信感が高いことと地域見守り自己効力感が高いことは関連していたが,ICT機器使用に自信がある住民ボランティアは,例えば見守り対象となる高齢者の異変や生活状況などの情報把握のリテラシーが高い可能性があり,そのことが影響していたのかもしれない.
また,高齢者の健康には,孤立など社会的決定要因が影響していることは,よく知られており,これらの要因は,医療や保健の視点のみでは解決されないため,看護職が多職種と協働して地域住民に介入する地域看護実践が必要である.本研究では住民ボランティアのICT機器使用自信感を高いことと高齢者見守り自己効力感が高いことが関連していた.したがって,例えば,感染症のパンデミックや自然災害に備えて,行政や地域包括支援センター等の看護職が高齢者の健康をまもるために福祉職や行政職などの多職種と協働し,住民ボランティアにICT機器利用の教育啓発を行い,高齢者の孤立などを適切に発見し,支援につなげる見守り活動を新たに企画・調整することが重要と考える.
一方,本研究では,ICT機器使用頻度と地域見守り自己効力感や見守り訪問頻度に有意な関連はみられなかった.COVID-19感染拡大下において,先進的な取り組みを行う自治体がICT機器を活用した見守り活動を検討している(日野市,2021;社会福祉法人大阪市社会福祉協議会,2020;近藤,2021;静岡県,2020)が,本研究の対象地域ではまだICT機器利用は見守りに活用されていないこと,本研究では近隣の人々との交流に限ったICT機器利用頻度を把握していなかったことから,ICT機器使用頻度と地域見守りに関する変数との関連はみられなかった可能性がある.今後,ICT機器を活用した見守り活動が普及すれば,ICT機器使用頻度と見守りとの関連についてのより詳細な検討ができると考える.
本研究の有効回答率は48.7%と比較的高かったが,調査対象者の中でも特にICT機器使用や見守り活動への関心が高い者が分析対象となったと予測され,関心がない者の特性をふまえてこれらの関連を検討することが必要かもしれない.また,本研究の調査地域は都市部に近く,ICT機器所持率が全国と比べて,高い可能性がある.また,地域見守りには地域の高齢化率(泉ら,2021)のほか,自治会の組織率,住民の情報の取り扱いなどの認識などの地域特性が関連すると考える.したがって,本研究の結果は,他の地域への一般化には限界があり,様々な地域特性を有する多数の地域にて,同様の調査を行うことが必要である.
今後,住民ボランティアにおいてICT機器を地域見守りに活用する際のICT機器使用のリテラシーの必須項目や情報管理のしくみを明確にすることが課題である.
付記:本論文の内容の一部は第42回日本看護科学学会学術集会において発表した.
謝辞:本研究にご快諾いただいた対象者の皆様,調査地域の市町村行政ならびに社会福祉協議会のご担当者の皆様に心より御礼申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:ATは研究計画,データ収集,分析,論文の主要な執筆を行った.AKは研究の着想と研究のデザインを企画し,研究過程全般のマネジメント,一部の分担執筆を行った.NIはデータ収集,調査の分析および結果の解釈に貢献した.すべての著者が最終原稿を読み,承認した.