日本看護科学会誌
Online ISSN : 2185-8888
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ISSN-L : 0287-5330
43 巻
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総説
  • ―日本語,英語,中国語のデータベースを用いて―
    段 暁楠, 河井 伸子, 山﨑 由利亜, 小野 年弘, 正木 治恵
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 28-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/14
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    目的:文献検討を通して,高齢者ケアで活用しているセンサーとIoT機器の使用上の詳細を明らかにする.

    方法:医中誌Web,CiNii,MEDLINE,CINAHL,CNKIを用いて2021年までに発表された文献を検索し,既に開発されたセンサーとIoT機器の高齢者ケアでの使用目的,使用上のポジティブな面とネガティブな面等の内容を抽出した.使用目的によって,機器を分類した.

    結果:26本の文献を採用した.機器は,身体活動量の算出・評価をする,離床や転倒・転落を予防する,安全を見守る,作業位置と場所移動を推定する,睡眠状態を評価する,24時間のバイタルサインをモニタリングする,おむつの使用による不快感を軽減する,尿の膀胱貯留量を把握する,笑いを検出しコミュニケーションを円滑化する,施設の生活環境をモニタリングする,ケア業務を改善・強化するものの11種類に分類した.

    結論:文献検討で抽出した機器の使用上の詳細は今後高齢者ケア施設で広範囲に機器を導入する際の参考になる.

  • 松原 千晴, 我部山 キヨ子
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 55-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
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    目的:働く女性の月経随伴症状のセルフマネジメントの概念を明らかにし,看護介入における概念活用の有用性を検討することである.

    方法:Rodgers & Knafl(2000)の概念分析の手法を用いた.

    結果:属性は【月経随伴症状や対処に関するリテラシーの獲得と活用】【問題解決に向けた段階的な行動変容】【職場の資源の活用】【就労生活での取り組みの維持】の4つ,先行要件は4つ,帰結は3つが導き出された.

    結論:本概念は「働く女性が月経随伴症状や仕事および生活の支障を改善するために,ヘルスリテラシーや職場の資源を活用し主体的かつ戦略的な管理により課題に対処する活動であり,その人の問題に対する対処行動が洗練されていくプロセス」と定義した.その上で,働く女性という集団へのセルフマネジメント促進に向けた看護支援の基盤としての活用可能性が示唆された.

  • 朝見 優子, 矢郷 哲志, 岡光 基子
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 133-142
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/19
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    目的:小児在宅療養における親とのパートナーシップに関する訪問看護師の実践を文献検討により明らかにし,看護の示唆を得る.

    方法:PubMed,CINAHL,医学中央雑誌を用い,小児在宅療養における親と訪問看護師のパートナーシップに関する質的研究を検索し,パートナーシップに関する看護実践を抽出して内容分析を行った.

    結果:9文献を分析した結果,〈いつでも親の力になれる訪問看護師の実践〉〈子どもの最善に取り組む三者関係からみた訪問看護師の実践〉〈親と最適な関係を築こうとする訪問看護師の実践〉が抽出された.

    結論:親に寄り添い,子どもの最善を追求し,長期にわたり関係を調整する訪問看護師の具体的実践が明らかとなり,小児在宅療養の特性を理解した上で親と関係を構築する重要性が示唆された.小児在宅療養に関わる訪問看護師に特徴的なパートナーシップの実践を具現化し,評価や教育に活かすツールの検討が必要である.

  • 野々口 陽子
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 324-334
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/31
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    目的:本研究の目的は,臨床看護における「優先順位」について概念を分析し,定義を明確にすることであった.

    方法:本研究ではRodgers(2000)の概念分析のアプローチを用い,47文献を分析した.

    結果:3つの属性,【生命への影響から程度が見積もられる】【患者の状態で重みづけられる】【状況によって変動する】,4つの先行要件【看護師および組織の一員としての責務がある】【看護師の熟練度の差がある】【組織文化と制度の影響がある】【時間の制約や人員の不足がある】,3つの帰結【業務が順当に調整される】【効率的に業務が遂行される】【ケア提供にジレンマが生じる】が抽出された.

    結論:臨床看護における「優先順位」を,「生命への影響度を見積もり,患者の状態によって重みを与えて相対的に重要度が判断され,状況に応じて変動する看護実践の位置づけ」と定義した.

  • 西村 結花, 古瀬 みどり
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 379-391
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/08
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    目的:変形性股関節症(Hip osteoarthritis:以下,HOA)患者の保存療法中のセルフマネジメントの定義を明確にする.

    方法:43文献を対象にWalker & Avantの概念分析方法を用いた.

    結果:属性は【意思決定と病気の受容】【治療・養生の知識と技術の獲得】【問題への対処法の洗練】【否定的感情への対処】【社会的役割の調整】【資源・情報の活用】【医療者との協働】が抽出された.

    結論:本概念を「医療者とのパートナーシップに基づく協働により,患者が治療に積極的に参加し,自らの能力を活用しながら個人のニーズに合わせた目標に向けて意図的に継続する日常的な取り組みである.患者が養生に対する責任を持ち,HOAと治療に関する知識と,疾患や感情・社会的役割を管理するためのスキルを習得しながら主体的に対処法を洗練するプロセスである」と定義した.

  • 吉井 ひろ子
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 578-592
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/23
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    目的:嗜癖問題をもつ人と共依存関係にある家族のリカバリーの概念を分析し,定義づける.

    方法:41文献を抽出し,Rogersの手法で分析した.

    結果:7つの属性【自分にあった支援につながり心の居場所をもつ】【依存症や共依存を理解し受容する】【当事者の責任問題に入り込まずかかわり方を変える】【当事者と適切な心理的距離を維持する】【自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組む】【信頼や肯定感を伝え家族関係を再構築する】【新たな自分を肯定し生き直す】と8つの先行要件,2つの帰結【当事者と家族の回復過程が相互作用する家族機能の改善】【新たな自尊心の確立】を抽出した.

    結論:「家族が自分にあった支援につながり心の居場所をもつ中で,当事者を一人の成人として尊重し,適切な心理的距離を維持する一方,自分の内面に向き合うためのセルフケアに取り組み,新たな自分を肯定し生き直していく回復過程」とする.

  • 岩屋 裕美, 香春 知永
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 788-799
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/14
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    目的:概念分析により臨床における自己調整学習の構造を明らかにする.

    方法:42文献を対象にRodgers の概念分析を行った.

    結果:属性は構造を示す【3段階の循環するプロセス】,学習プロセスを示す【課題達成に向けた状況分析】【目標設定と方略的計画】【学習機会を臨機応変に活用】【患者ケアに焦点をあてた多様な学習方略の実行】【目標達成状況を内省し目標を洗練する】【専門職としてのアイデンティティの認識】,学習プロセスを支える【メタ認知・動機づけによる学習プロセスの調整】【自分の学習に他者を関与させる】であり,4つの先行要件,3つの帰結を抽出した.

    結論:本概念は「臨床における学習機会を臨機応変に活用し,多様な学習方略を用いて目標達成を目指す循環的で継続的な学習プロセスであり,この学習プロセスはメタ認知,動機づけ,他者との相互作用により駆動される」と定義され,臨床での活用可能性が示された.

  • 平野 優子
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 800-809
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/14
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    目的:人生を脅かす疾患や障害と生きる人々の時間軸を含むライフ経験とレジリエンスとの関連を文献から明らかにし,看護実践と研究への示唆を得る.

    方法:医学中央雑誌,PubMed,CINAHL,PsycInfoを用いて論文を検索し,結果を抽出して内容を整理した.

    結果:計18文献が抽出された.深刻な疾患や障害と生きるライフ経験は,レジリエンスを包含しながら,発症後に崩壊や落ち込みを経験するが時間とともに回復する道筋が示された.レジリエンスは,困難からの回復プロセスや能力,身体・心理社会的アウトカムと直接的・間接的に良好に関連する要因であった.レジリエンスの資源や促進要因は,周囲との良好な人間関係,自己効力感や社会参加が挙げられた.

    結論:時間軸を含むライフ経験上の回復や良好なアウトカムと関連するレジリエンスを獲得するための,心理学的介入アプローチと研究蓄積の必要性が示唆された.

  • 髙橋 百合子, 安田 貴恵子
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 820-830
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/14
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    目的:慢性疾患をもつ小児・思春期の子ども対象にPhoto elicitationを用いた文献を概観し,研究手法の利点と実施上の留意点を明らかにする.

    方法:JBI Manual for Evidence Synthesisに則って,スコーピングレビューを行った.文献は,CINAHL,PubMed,CiNii,医中誌Webにて検索した.

    結果:9編が抽出された.Photo elicitationは,病気とともに生きる子どもの経験を理解・洞察するために用いられており,子どもの記憶を刺激し鮮明にすることができる等の利点があった.9編のうち,子どもが撮影した写真を用いた文献は7編であり,撮影してほしい写真の内容や撮影枚数,撮影時の留意点等について子どもに説明をしていた.

    結論:Photo elicitationは有用な研究手法であるが,肖像権やプライバシーの保護に留意が必要である.

  • 中村 幸代
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 842-851
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/19
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    目的:「看護師の自己犠牲」の概念の構造を明らかにし,看護実践上での概念の活用性を検討する.

    方法:Rodgers & Knafl(2000)の概念分析方法にて,5つのデータベースを用いた33文献を対象とした.

    結果:【患者のために自分を差し置く行動】,【看護師としての肯定的な価値づけに基づく行動】,【身を粉にしてでも働くという選択】という3つの属性,4つの先行要件,3つの帰結が示された.

    結論:「看護師の自己犠牲」は,「看護師としての肯定的な価値づけに基づいて,身を粉にしてでも患者のために自身を差し置いてとる行動」と定義された.本概念は,職務上での闇雲な自己犠牲は愛他心とは異なるものと捉え直す機会の提供や心身の健康を脅かす恐れのある組織風土の変革へ有用性が示唆された.

  • 温井 由美, 山田 忍, 水田 真由美, 宮井 信行
    原稿種別: 総説
    2023 年 43 巻 p. 919-929
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/19
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    目的:看護師の共感疲労について記述されている和・英文献より,看護師の共感疲労の概念と構造を明らかにすることを目的とした.

    方法:和文献12件,英文件10件を分析対象とし,Walker & Avantの手法を用いた.

    結果:属性5項目,先行要件7項目,帰結5項目を抽出し,看護師の共感疲労を「苦悩や苦痛を抱えた患者や家族に長期的,連続して共感的に関わり,看護の意味が見いだせない時に,倫理的葛藤に伴う無力感や罪悪感,身体的・精神的な不調,共感性の低下,深い疲労感,自尊心の低下を呈し,ケアの質の低下,離職などにつながる状態」と定義した.

    結論:看護師にとって,共感は必要不可欠な要素であるが,リスクもある.看護師は,共感のリスクを認識し,共感疲労の知識を身につけ,対策を考えていく必要があることが示唆された.

原著
  • 家吉 望み, 加納 尚美
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 18-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/14
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    目的:性暴力被害直後の女性が産婦人科医療を受診した際に求められる看護実践能力を明らかにする.

    方法:性暴力被害女性,支援経験のある看護職者,産婦人科医,支援員ら合計21名に半構造化面接にてデータを収集し,質的記述的に分析した.

    結果:求められる看護実践能力は,【支援者としての準備】を基盤とし,自身の安全が著しく脅かされた性暴力被害女性への【被害者の安全・安心を守るための対応】であり,【被害者への法医学的なアセスメントとケア】とともに【被害者の回復を見据えた支援】を実践する能力であった.被害者支援における支援者自身のセルフケアと自己研鑽として【支援者自身を支える手立て】も求められていた.

    結論:求められる看護実践能力は,性暴力の専門的な知識や技術を身に付け,トラウマの影響に配慮した被害者中心の支援を実践するためのものであり,被害者の回復を支援することが示唆された.

  • 岩原 由香, 福井 小紀子, 藤川 あや, 石川 孝子, 藤田 淳子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 38-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/14
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    目的:本研究の目的は,高齢者が幸福度・満足度を高めるために大切だと認識していることを明らかにすることである.

    方法:協力の得られた2自治体から層化無作為抽出(年齢,性別)した65歳以上の男女1,440名を対象に,無記名自記式質問紙を用いた郵送調査法を実施した.全回答者796名(回収率55.3%)のうち,自由記述に記載のある524名を分析対象とした.幸福度を高めるために大切なことに関する自由記述を,計量テキスト分析を行った.

    結果:形態素解析の結果1,299語が抽出され,抽出語は,出現頻度,共起性,文書内の特徴語から10テーマに分類された.階層化クラスター分析を行った結果,10のテーマは,【健やかに生活を営む】,【人とのかかわりを持つ】,【前向きに考え,活動を楽しむ】の3つのクラスターに分類された.

    結論:生活を営むために必要な収入の確保に加えて,健康や人との交流などに支援を行うことで,高齢者の幸福度・満足度が高まることが示唆された.

  • 桶作 梢, 濵 耕子, 米田 昌代
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 1-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/06
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    目的:AYA世代がんサバイバーのセクシュアリティにまつわる経験を明らかにする.

    方法:AYA世代でがんを発症し,現在18~39歳の男性5名,女性6名を対象に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.

    結果:男女共に【性や子をもつことの悩みを一人で抱え込む】経験をしていた.男性は【男として受け入れられることへの自信の喪失】によってアイデンティティが揺らぎ【子をもてないかもしれないことでパートナーの将来への負の影響を危惧する】経験をしていた.女性は【外見の変化や後遺症のためにパートナーの反応に受け身になる】経験をしながらも【子をもてないかもしれないと思いながらパートナーとの関係性と子をもつ意味を再考する】に至っていた.

    結論:AYA世代がんサバイバーは性や子をもつことの悩みを抱え込み,アイデンティティが揺らぎながらも,子をもつことを含むこれからのパートナーとの関係性や自らの生き方を模索していた.

  • ―M-GTAを用いた質的研究―
    中垣 和子, 黒田 寿美恵
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 46-54
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/17
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    目的:人工肛門造設高齢者の在宅ストーマケア確立に向けた皮膚・排泄ケア認定看護師(CN)の看護実践プロセスを明らかにし,人工肛門造設直後の主たる支援者であるジェネラリストナースへの示唆を得る.

    方法:皮膚・排泄ケアCN12名に半構造化面接をし,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した.

    結果:看護実践プロセスは,『実施者の見極め』と『人工肛門とともに生きることのイメージ化促進』のうえで『実施者合わせの装具選び』をし,困難時『さらに本領発揮』するものであり,『完璧を求めない』姿勢が推進力として作用していた.

    結論:『完璧を求めない』姿勢の根底には,新たなセルフケアを求められる高齢者の「生きることの困難」に対する看護師の包括的な理解があると考えられた.ジェネラリストナースもこの姿勢を貫くことで,両者が同じ目標を見据えて高齢者の在宅ストーマケア確立を促進すると示唆された.

  • 岩崎 賢一, 山口 曜子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 63-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/05
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    目的:ICU勤務の看護師の睡眠の質と概日リズムの同調因子となる生活行動時刻を調査し,夜間の睡眠の質(睡眠効率:SE)に影響する可能性がある生活行動時刻を把握した.

    方法:ICU勤務の看護師22名に5日間(休日,日勤日,夜勤入り日,夜勤明け日,休日)の生活行動調査とその期間の全3回の夜間睡眠状況をActiwatch®で測定した.さらに各夜間睡眠のSE別の2群(SE-good: SE ≧85.0%, SE-poor: SE <85.0%)間で生活行動時刻の比較を行った.

    結果:全対象のSE(中央値)は各夜間睡眠で85.0%以上であった.生活行動の比較では,夜勤明け日の夜間睡眠においてSE-goodとSE-poor間の夜勤後の初回食事摂取時刻(p = .017)に差があり,SE-goodは午前,SE-poorは午後に摂取する傾向にあった.

    結論:ICU勤務の看護師のSEは概ね85%以上を維持していた.さらに夜勤後の朝食に相当する食事摂取時刻が夜勤明け日のSEに影響する可能性が示唆された.

  • 鳥本 あかり, 河野 あゆみ, 池田 直隆
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 71-78
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/22
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    目的:住民ボランティアのICT機器の使用頻度・使用自信感と地域高齢者見守り自己効力感・見守り訪問頻度との関連を明らかにする.

    方法:住民ボランティア927名に質問紙調査を実施した.独立変数にICT機器の使用頻度または使用自信感,従属変数に地域高齢者見守り自己効力感または見守り訪問頻度を投入した多変量ロジスティック回帰分析を行った.

    結果:対象者451名(65歳以上の者=76.0%,女性=67.6%)のうち,所持ICT機器は,従来型携帯電話のみ所持群が11.3%,スマートフォンのみ所持群が33.9%,複数所持群が54.8%であった.ICT機器使用自信感が高い者は低い者に比べて,地域見守り自己効力感が高かった(オッズ比=1.57,95%信頼区間=1.04~2.38,p = .03).

    結論:住民ボランティアのICT機器使用自信感が高いことと地域高齢者見守り自己効力感が高いことは関連していた.

  • 前田 修子, 福田 守良, 蘭 直美, 森山 学
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 89-98
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
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    目的:訪問看護に従事する看護師のInformation and Communication Technology(以下ICT)スキルを測定する尺度を作成し,作成した尺度の信頼性と妥当性を検討する.

    方法:2022年5月,訪問看護ステーション1,000箇所の管理者宛てに調査依頼を郵送し,訪問看護に従事する看護師156名を分析対象者とした.調査内容は個人特性,訪問看護業務におけるICT機器使用状況,訪問看護業務に関連したICTスキル22項目とした.

    結果:3因子14項目が抽出され,因子1【医療情報を適切に保存・送信するスキル】,因子2【組織的セキュリティに関するスキル】,因子3【有効なパスワード設定と保護に関するスキル】と命名した.Cronbachのα係数は全体で0.91,因子1は0.88,因子2は0.79,因子3は0.76であった.GFIは0.91,AGFIは0.83,CFIは0.88,RMSEAは0.09,SRMRは0.06であった.

    結論:本尺度の信頼性・妥当性は許容範囲である.

  • 林 恵, 飯田 苗恵, 横山 京子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 99-108
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
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    目的:医療的ケア児の児童発達支援等の利用開始に向けた訪問看護実践を明らかにする.

    方法:小児訪問看護の熟練者10人に半構造化面接を実施し,Berelson(1952/1957)の内容分析を参考に分析した.

    結果:【子どもの就学や母親の社会参加を考慮し,好機を逸することなく児童発達支援等の利用を提案する】【両親の希望に応じた児童発達支援等の施設検討に向け,見学の提案や調整を行うとともに,関係者とのやり取りを促す】【児童発達支援等の利用開始に伴う生活の変化への適応に向け,子どもと家族の準備や訪問看護日の調整について提案する】等の15コアカテゴリが形成された.

    結論:児童発達支援等の利用ニーズがある医療的ケア児の看護には,子どもの将来を考えつつ児童発達支援等の利用への親の関心を高め,利用についての親の意思決定を支援し,申請手続きを見守りながら,利用による影響の予測に基づき多職種と連携し準備を行う必要性が示唆された.

  • 池口 佳子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 109-116
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/02
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    目的:看護学実習を終えた当事者が実習を振り返った語りから,実習での経験がどのような意味を帯びて立ち現れたのかを記述する.

    方法:現象学的看護研究.4年次の学生が看護師になるまでの9ヶ月間に亘り非構造化面接を実施した.本稿では,長期的な視点から実習経験がもたらした意味に焦点を当てるため,4年間の実習で生じた変化を語った2名の語りを報告する.

    結果:Bさんは実習で段階的に学んでこれたと振り返り,患者との関係性における変化を認識した.Cさんは看護師となったときに上手くいかなかった実習経験を挽回するように看護実践を行なっていると語り,実習からのつながりを認識した.

    結論:患者との関係や上手くいかなかった実習経験が看護観や看護師としての態度の段階的な変容をもたらしていたことが,当事者に了解された.実習経験は,看護師となったときの態度や看護実践の基づけとなる経験となっていた.

  • 卯川 久美, 細田 泰子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 117-125
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/10
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    目的:新人看護師の組織社会化におけるプロアクティブ行動が職場適応状態に及ぼす影響を検討する.

    方法:新人看護師1,349名を対象に,新人看護師の組織社会化におけるプロアクティブ行動尺度,職場適応状態尺度を用いて質問紙調査を行った.新人看護師の組織社会化におけるプロアクティブ行動は,職場適応状態に影響するという仮説を立て,多重指標モデルを作成し,共分散構造分析を行った.

    結果:有効回答272名を分析対象とした.モデルの適合度は,GFI = .963,AGFI = .922,CFI = .965,RMSEA = .074であった.すべてのパス係数は.1%水準で有意を示し,[プロアクティブ行動]から[職場適応状態]へのパス係数は.77,決定係数は.59を示した.

    結論:新人看護師の組織社会化におけるプロアクティブ行動は,職場適応状態に影響を及ぼすことが明らかになった.新人看護師が職場に適応するためには,組織からの働きかけだけでなく,新人看護師自身もプロアクティビティを発揮する重要性が示唆された.

  • 上元 達仁, 大西 麻未
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 143-153
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/19
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    目的:訪問看護師を対象とした職場環境測定尺度の開発を行うこと.

    方法:全国の訪問看護師2,500名を対象にインターネット調査と質問紙郵送調査を実施し,尺度の信頼性および妥当性の検討をした.

    結果:276名(回収率11.4%)から回答が得られ,5因子35項目(資源の柔軟性と妥当性,管理者のリーダーシップ,看護の質を支える教育・キャリア支援,多職種連携,看護実践に対する支援体制)が抽出された.モデル適合度は,GFI = 0.811,AGFI = 0.779,CFI = 0.901,RMSEA = 0.058で,外的基準との相関係数は,–0.512~0.677であった.尺度全体のクロンバックα係数は0.95,再テスト法による級内相関係数は0.8以上であった.

    結論:モデル適合度は基準をやや下回ったが,一定の信頼性および妥当性を有することが確認された.訪問看護師が職場環境を評価する指標として活用可能である.

  • 浅野 志保, 古瀬 みどり
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 154-163
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/25
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    目的:看護師の終末期がん患者と家族間の対話支援自己評価尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討することを目的とした.

    方法:全国の臨床経験3年以上の看護師1,196名に対し,看護師の終末期がん患者と家族間の対話支援に関する自己評価尺度38項目を含むオンライン調査を実施した.統計解析では,探索的因子分析を行い,内的一貫性と構成概念妥当性を検討した.

    結果:有効回答370件(30.9%)を分析した.探索的因子分析の結果,4因子22項目が抽出された.Cronbach’s α係数は尺度全体.944,下位尺度.797~.908であった.モデル適合度は,GFI = .888,AGFI = .860,CFI = .931,RMSEA = .063であった.収束的妥当性はr = .819,併存的妥当性はr = .403であった.

    結論:4因子22項目が抽出され,本尺度の信頼性と妥当性が検証された.

  • 吉田 みつ子, 谷口 千絵, 喜多 里己, 遠山 義人
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 164-173
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/25
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    目的:妊娠期にがんと診断された妊産婦と家族に実施された助産ケアを記述することである.

    方法:助産師7名に非構造化インタビューを行い,ナラティヴ分析を行った.

    結果:15エピソードのテーマ及びサブテーマ,横断的比較検討により4つのテーマ(「妊娠の継続/中断,がん治療方法の選択,授乳に関して女性の選択を後押する」「妊娠・出産に伴いがん治療を受ける(受けない)女性にお母さんとして関わる」「がん治療と妊娠・出産・育児を連続したスパンで捉え家族全体にもたらす影響を捉えながら対応する」「複数の診療科や職種を超えて同じ方向を向く中で女性と家族に関わる」)が明らかになった.

    結論:助産師の実践は,妊産婦と新生児のケアという助産ケアの価値観に基づき,女性を母親として見るという特徴があった.これらは妊娠期がん女性と家族へのケアにおける複数の診療科,職種間での連携,協働,支援をさらに進めていくうえで重要である.

  • 安野 さゆり, 武石 陽子, 中村 康香, 吉田 美香子, 吉沢 豊予子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 174-182
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/26
    ジャーナル フリー HTML

    目的:子どもの成長に伴う負担などが変化する2~4歳児の育児期において,親のうつ症状に2つの夫婦関係(愛情関係とコペアレンティング関係)を含む要因がどのように影響するかを明らかにする.

    方法:本研究は観察研究で,2~4歳児を養育中の男性136名,女性121名と対象とした.従属変数のうつ症状をCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D),独立変数の夫婦関係を夫婦関係満足度尺度(QMI)とコペアレンティング関係尺度(CRS)で評価し,重回帰分析を行った.

    結果:男性のCES-DにはCRS(β = –.454, p < .001),女性のCES-DにはCRS(β = –.329, p = .002)とQMI(β = –.255, p = .015)が関連した.

    結論:2~4歳の児を養育中の男女に共通して,よりよいコペアレンティング得点は低いうつ症状得点に関連することが明らかになった.

  • 中村 純江, 谷口 千枝
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 194-202
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル フリー HTML

    目的:消化器内視鏡技師資格を持つ看護師のワーク・エンゲイジメント(以下WE)と自律性との関連を明らかにすることを目的とした.

    方法:本研究はオンライン調査を用いた横断研究である.対象は消化器内視鏡技師資格をもつ看護師1,000人とした.調査項目は,個人属性,仕事の要求度,仕事の資源,内視鏡看護特性,日本語版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度短縮版(以下UWES),自律性(看護の専門職的自律性尺度)とした.

    結果:回収率は33.7%であった.WEを従属変数,個人属性,仕事の資源等を独立変数とし多変量ロジスティック回帰分析を行った.自律性はWEの高さに統計学的有意に関連していた(オッズ比1.04,95%信頼区間:1.02~1.05,p < .001).自律性が高く患者との関わりが充分であるときにWEが高まる交互作用がみられた(F,(1, 257) = 6.3, p = .013).

    結論:内視鏡技師看護師のWEと自律性は強く関連することが示された.WEを高めるためには,自律性が高く患者との関わりが充分であることが影響した.

  • 藤後 栄一, 村松 歩, 水野(松本) 由子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 203-214
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/13
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    目的:本研究の目的は,看護学生を対象とし,瞑想を中心とするマインドフルネス呼吸法の効果について,カオス解析を用いて脈波の特徴を抽出することとした.

    方法:看護学生20名(21~22歳)をランダムに振り分け,マインドフルネス実施群(Mi群)10名とマインドフルネス非実施群(nMi群)10名とした.10日間を実験期間とし,1日目,5日目,10日目の脈波を測定した.脈波から算出したアトラクタを視覚的に評価し,両群間の安静閉眼・暗算課題時の最大リアプノフ指数を比較した.最大リアプノフ指数は,交感神経活動の賦活によって増大する.

    結果:実験10日目のアトラクタの形状は,Mi群は変化が少ないのに対し,nMi群は変化が複雑であった.Mi群の最大リアプノフ指数は1.7以下で推移し,nMi群と比較し有意に低値を示した.

    結論:実験10日目のMi群のマインドフルネス実践後に交感神経系が抑制されたことが示唆された.カオス解析を用いた信号処理によりマインドフルネス呼吸法の特徴を評価できる可能性がある.

  • 林 ゑり子, 山田 藍, 青山 真帆, 升川 研人, 宮下 光令
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 215-224
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/13
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    目的:認知症有病者を看取った遺族と認知症のケアの経験がある医療職を対象者として,自分が認知症になった際の希望の死亡場所とその関連要因を明らかにする.

    方法:横断的デザインによるインターネット調査を2019年10月に実施した.対象者は,認知症有病者の遺族(n = 618),医師(n = 198),看護職(n = 197),介護職(n = 193)とした.

    結果:認知症有病者の遺族の希望の死亡場所は,自宅が33%,病院が31%,介護施設が32%であった.医療者は,遺族に比べ自宅の割合が41%~51%と高く,病院の割合が15~20%と低かった(P < .001).遺族の希望の死亡場所は故人の死亡場所と関連していた(故人の死亡場所が介護施設;OR = 2.80,P < .001,自宅;OR = 1.58,P = .05).

    考察:認知症有病者を看取った遺族は,看取りを経験した自宅や介護施設において遺族の経験を通して得た,満足感や看取った場所のイメージが影響している.もしくは,自らが望ましいと考えている死亡場所で遺族の看取りを行った可能性がある.

  • 田中 真木
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 225-233
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/13
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    目的:看護学生が臨地実習で遭遇する身体抑制に焦点をあて,そこから得られる問いの答えを明らかにするための思考や行動はどのように行われるのかを看護学生の経験から明らかにすること.

    方法:ナラティヴ分析による質的記述的研究を行った.機縁法を用い,研究対象者は2021年3月に看護学士課程を卒業する卒業予定者16名とし,インタビューガイドを使用したオンラインによる半構成的面接法を行った.分析手法は,ナラティヴ分析におけるテーマ分析とした.

    結果:全16事例中,251の問いの編集の語りがあった.12の問いの編集のテーマ,32のサブテーマに類型化された.

    結論:倫理を考える上で,看護学の初学者としての思考が2極化する傾向が示され,倫理教育に必要な「考え方の可能性を広げる」ための教員,臨地実習指導者等の関わり方の必要性が示唆された.

  • 山本 さやか, 百瀬 由美子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 234-241
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/13
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    目的:回復期病棟の看護師による退院支援実施状況およびその影響要因を検討した.

    方法:看護師1,937名を対象に質問紙にて退院支援実施状況(8要素36項目)を把握し,経験,研修参加や他部門連携状況,退院支援の重要性の認識の項目をマルチレベル分析により検討した.

    結果:回収数は920部,有効回答903であった.対象者の看護師経験平均年数は15.7年,実施状況は「院内多職種での共通認識の形成」で最も得点が高かった.実施状況の影響要因は,回復期病棟経験年数(非標準化偏回帰係数:B = .693,p < .001),重要性の認識得点(B = .397, p < .001),他部門との連携合計数(B = 1.186, p = .000),脳血管疾患病棟経験年数(B = .244, p = .022)であった.

    結論:退院支援では院内多職種連携活動の実施頻度が高かった.実施状況には重要性の認識,回復期や脳血管疾患病棟経験および多職種連携との影響が推察された.

  • 長友 恵莉, 村上 京子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 242-251
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/13
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    目的:小児病棟看護師が検査・処置時の看護において,子どもの権利擁護のために実践している看護実践プロセスを明らかにする.

    方法:小児病棟経験5年目以上の看護師20名に対し,子どもの権利擁護の場面について半構造化面接調査を行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    結果:《子どもが検査・処置に取り組めそうかの見極め》をしながら【子どもが検査・処置になじめるケアの働きかけ】を行っていた.《恐怖心を減らす関わり》や《頑張ろうと揺れる気持ちを待つ》ようにし,子どもが納得して処置に取り組めるようになり〔権利擁護できた関わり〕となった.業務の都合や看護師の捉え方により〔権利擁護できなかった関わり〕となる場合もあった.

    結論:看護師は検査・処置時の状況を多角的に捉えて子どもができそうか見極め,子どもが主体的に検査・処置に取り組みなじめるように看護実践しているプロセスが明らかとなった.

  • 清水 美代子, 野口 眞弓, 鎌倉 やよい
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 252-260
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
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    目的:就労介護者の就労阻害要因と継続要因を明らかにする.

    方法:高齢近親者の介護を担う就労介護者に半構造化インタビューを行い,就労阻害要因と就労継続要因を抽出した.

    結果:主介護者9名を対象とし,質的帰納的に分析した結果,就労阻害要因は,【介護に時間がとられる】【介護量が増加しても仕事量の調整が難しい】【同僚への気兼ね】【介護者の生活と健康への脅かし】【介護に必要な情報の不足】などの15カテゴリーが抽出された.また,就労継続要因は,【仕事継続を後押しする家族・仲間の理解と支え】【仕事と介護が両立できる職場の体制とゆとり】などの8カテゴリーが抽出された.

    結論:就労を継続するには,介護者が【気負わない介護】を実施し,健康状態も良好であることが重要である.そのためには,介護者が一人で介護を抱え込まないように,家族や職場,制度・サービスなどのサポートが必要である.

  • 山﨑 晶子, 濱西 誠司, 泊 祐子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 261-269
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/03
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    目的:3歳未満の子どもを育てる父親のコペアレンティングに妊娠期から出産後に形成される父親像が及ぼす影響を明らかにする.

    方法:対象者は1,621人であった.先行研究よりコペアレンティングとの関連が示唆された項目と「親になる移行期の父親らしさ尺度」を独立変数,「日本語版コペアレンティング関係尺度:CRS-J」を従属変数とし,独立変数を段階的に投入した3つの重回帰モデルを作成した.

    結果:全てのモデルで有意な回帰性が認められた(p < .01).ただし,CRS-J得点との有意な関連は,「子どもの存在から沸き立つ思い」「父親意識の高まり」「妻への思い」の得点にのみ認められた.

    結論:妊娠期からの父親像の形成状況が,乳幼児期のコペアレンティングに影響を及ぼしている可能性が示された.特に,独立変数の中で最も高く影響していたのは「妻への思い」であり,妊娠中の良好な夫婦関係がコペアレンティングに影響を及ぼす重要な要因となっていることが示唆された.

  • 渡部 菜穂子, 戸沼 由紀, 尾崎 麻理, 石沢 幸恵, 鎌田 洋輔, 中根 明夫
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 270-279
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/03
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    目的:清拭タオルに起因するとされる血流感染リスクを軽減するため,前腕の清拭による綿タオルへのセレウス菌付着と,保管による菌の増殖について検証した.

    方法:未使用の綿タオルで対象者50名の両前腕を清拭し,片側のタオルは清拭直後に,もう片側は24時間常温保管後にセレウス菌を検出した.

    結果:セレウス菌が検出されたタオルは清拭直後で7枚(14.0%),24時間保管後で37枚(74.0%)であり,セレウス菌数は,24時間保管後には約6,000倍に増加した.細菌検出の関連要因として,皮膚洗浄後の保湿剤等の塗布,前腕のムダ毛処理をしない場合にセレウス菌検出量が有意に多かった(p < 0.05).

    結論:個人差はあるが,前腕にはセレウス菌が付着している.清拭後のタオルを常温保管し細菌が増殖することで,セレウス菌が芽胞を形成する可能性が高くなるため,使用したタオルの細菌増殖を抑制する必要がある.

  • 飯田 倫佳, 加藤 真由美, 田中 浩二, 谷口 好美
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 285-294
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/03
    ジャーナル フリー HTML

    目的:熟練看護師が回復期の脊髄損傷患者の変化する思いへ,支援するプロセスを明らかにすること.

    方法:「脊損患者の変化した思いに対して支援を行った経験」について熟練看護師14名に半構成的面接法を実施し,M-GTAを用いて分析した.

    結果:熟練看護師は,リハ病棟転入後の不安や恐怖に対して【安心して療養生活を送られる支援】をし,〈埋蔵資源の意識化と増幅の支援〉[他者に向ける怒りと自分の内に向ける落胆の緩和]や多職種と連携し[新たな排泄テクニック獲得意欲の支援]を組み合わせて実践する中で,〈揺れ動く意欲の安定化〉を図りながら【その人らしさの再認識支援】を行い,家族に迷惑をかけるために自分が存在して良いのかと揺らぐ思いに対して【存在意味の否定的認知からの解放支援】をしていた.

    結論:変化する思いを支えるには,支援を組み合わせて,微調整しながら多職種と連携し,患者との対話を含め支援し続けていく必要がある.

  • 布谷 麻耶, 髙橋 美宝
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 295-304
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/03
    ジャーナル フリー HTML

    目的:炎症性腸疾患患者が大腸内視鏡検査に伴いどのような苦痛を体験しているかを明らかにする.

    方法:発症後に大腸内視鏡検査を1回以上受けた経験がある寛解期の患者10名に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.

    結果:患者は大腸内視鏡検査に伴い,【前処置による心身の負担】【検査中の痛み】【検査への恐怖】【異性の医療者に対する抵抗感】【検査後の疲労と病状悪化】【検査結果への不安】【時間と費用の負担】という苦痛を体験していた.【検査中の痛み】には『炎症時の内視鏡操作に伴う痛み』『内視鏡挿入時や体位変換時の合併症による痛み』『腸管屈曲部に内視鏡が当たる痛み』『送気による腹部の張りと痛み』があった.

    結論:大腸内視鏡検査に伴い炎症性腸疾患患者は,腸管の炎症や合併症によって疾患特有の苦痛を体験していた.

  • 中村 彩希子, 正岡 経子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 315-323
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/12
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    目的:産科混合病棟で勤務する助産師が認識する,産科混合病棟特有のケア経験とその経験から培った自己のケア能力について明らかにする.

    方法:産科混合病棟の経験が4~5年以上の助産師8名に,半構造化面接にてデータ収集し,質的記述的に分析した.

    結果:助産師は,産科混合病棟特有のケア経験と自己のケア能力は,【助産師1人の重責を感じる勤務経験に基づく,産科領域の的確な判断と調整能力】,【他科患者へのケア経験に基づく,広い視野を持ったアセスメントと調整能力】,【他科患者の人生に触れた経験に基づく,長期的な視点で退院後の生活や育児を考える能力】,【看護師と働くことに基づく,看護職チームの中で助産師の専門性をケアに活かす能力】であると認識していた.

    結論:助産師1人体制での勤務や他科患者との関わりなど,産科混合病棟特有のケア経験から助産師として必要なケア能力を培えるよう,教育体制を検討する必要性が示唆された.

  • 中本 妙, 黒田 寿美恵, 榊 美穂子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 335-343
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/31
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    目的:末期がんサバイバーの「生ききる」の実現に向けた訪問看護師の意思決定支援プロセスを明らかにする.

    方法:訪問看護経験3年以上,在宅でのがん終末期ケアかつ看取り経験を有する看護師17名に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法で分析した.

    結果:意思決定支援プロセスは,「暮らしの日常・非日常の実現」「がん治療への未練に付き合う」「人生の締めくくりに向けた伴走」により構成される「共にいのち・人生に向き合う」支援が核となっていた.これは「現実的決断への仲立ち」「症状緩和に徹する」支援により促進され,「看護師主導の体制整備」が基盤にあることで成立していた.

    結論:本意思決定支援プロセスは,残りの人生を主体的にデザインすることやGood deathを実現し,末期がんサバイバーがわずかであっても希望を持ち続け,「生ききる」ことを可能にする.

  • 河田 照絵
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 353-361
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/03
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    目的:慢性呼吸器疾患患者の療養支援に関わる熟練看護師が病期移行期においてACPをどのように支援しているのかを明らかにすることを目的とした.

    方法:慢性呼吸器疾患患者を支援している熟練看護師に半構造化インタビューを行い,質的帰納的に分析した.

    結果:【信頼関係を築きながら,日常の生活にこだわって聴く】ことで,途切れない関係性を構築していた.それは【患者や家族が選択できる土台をつくる】支援へとつながっていた.また,【意思決定が求められるタイミングをみはからう】ことができるよう,【変化する状況を見極め(る)】ていた.そして【チームとしての信頼をつなぎ,前に進む】ことができる支援環境を築いていた.

    結論:病期移行期のACPの支援は,安定期から不安定期を行き来する軌跡の中で,生活背景や価値を見据え,患者が選択し,意思決定ができるようサポートし,チームで支えていくため,継続的な支援が行われていた.

  • 重田 ちさと, 上野 恭子, 栗原 加代, 宇留野 由紀子, 長津 貴子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 362-371
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/08
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    目的:不穏状態を呈し,精神科病院に入院となった初対面の患者に対する,精神科看護師の入院時の対応プロセスを明らかにすることを目的とした.

    方法:修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた探索的質的研究であり,精神科看護師12名を対象に半構造化面接を実施した.

    結果:不穏状態を呈する初対面の精神疾患患者に対する看護師の入院時の対応は,【脅かさない接近】から始まり,【患者が体験している世界のイメージ】をしながら,患者に【味方であるという認識の促進】を図るプロセスであった.また,このプロセスは【味方であり続けるためのセルフマネジメント】が支えており,さらに【通じ合う感性を探る姿勢】という看護師の信念が基盤になっていた.

    結論:精神科看護師は患者と通じ合える感性があるという信念があり,入院時から私はあなたの味方であるというメッセージを患者に送り続けることが重要であることが示唆された.

  • 鍋島 純世, 安東 由佳子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 408-418
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
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    目的:訪問看護師による高齢者の難聴ケアの実態を明らかにする.

    方法:訪問看護師1,361名を対象に,難聴ケアの実態として知識,アセスメント,ケア,多職種連携,困難感,学習ニーズについてWeb調査を実施した.

    結果:難聴ケアの知識は,全項目で60~90%の訪問看護師がもっていなかった.アセスメントは全項目で50~100%,ケアは1項目を除くと40~100%の訪問看護師が実施しておらず,全般的に低かった.多職種連携は全項目で60~90%の訪問看護師が実施していなかった.困難感は,難聴の程度のアセスメント(約80%),耳垢の除去(約70%)実施時の困難感が高かった.一方,学習ニーズは全項目で90%以上の訪問看護師がさらに知識が必要と回答した.

    結論:訪問看護師による難聴ケアに関する知識やケアの実施率は低かったが,学習ニーズは高かった.今後の訪問看護師に対する難聴ケア教育の必要性が示唆された.

  • 渡邉 賢治, 鹿野 浩子, 春山 早苗
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 419-428
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/16
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    目的:コントロール感覚の喪失を多様な階層で繰り返し知覚するALS患者が取り組む内的・外的交渉の構造を統合的に解釈すること

    方法:原著論文(和文献11編,英文献2編)を対象に,Patersonらのメタ統合法を実施した.分析には知覚制御理論の枠組みを活用した.

    結果:ALS患者の内的・外的交渉に関する99のシステムより3つのコントロールシステム「脅かしを確かめる」「抵抗し撤退し自己に期待する」「病に開かれた世界を進む」が特定された.

    結論:多様な階層で喪失を知覚するALS患者がコントロール感覚の維持に取り組む構造に関する新たな知見と今後の研究上の課題を明らかにした.ALS患者にとって外的交渉の継続がコントロール感覚の維持において必要であることが示唆された.今後の研究は,コントロール感覚の維持を図るALS患者に関して,内的・外的交渉への統合的な解釈に焦点をあてる必要がある.

  • 寺田 智美, 佐藤 奈保, 宮﨑 美砂子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 429-438
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/16
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    目的:被災した認知症高齢者の家族の発災から災害中長期における生活上の困難を明らかにする.

    研究方法:平成28年熊本地震または平成30年7月豪雨による被災経験があり,被災前に認知症高齢者と在宅で生活をしていた5名の家族に半構造化面接を行い,Riessmanのテーマ分析を実施した.

    結果:12のテーマから[認知症高齢者の介護,自身の健康維持,被災後の生活再建を並行して行う苦悩],[避難生活の中で我慢や遠慮をしつつ全てを一人で背負う理不尽さ]等の4つのコアテーマが得られた.認知症高齢者を優先せざるをえない介護,生活再建を全て一人で抱えることが家族の被災後の生活をより困難にした.

    結論:認知症高齢者とその家族の関係職者は,平時より災害後の支援対策を講じると共にインフォーマル・フォーマルサポートの情報提供と活用を促すことで,家族の被災後の生活上の困難を軽減できる可能性がある.

  • 松井 陽子, 片岡 三佳
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 439-449
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/16
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    目的:精神科病院の看護部長が認識する入院患者のリカバリーに向けた実践に影響する要因について明らかにする.

    方法:全国の精神科病院の看護部長20名を対象に半構造化面接調査を実施した.面接データは逐語録を作成し,Graneheimのデータ分析方法を参考に質的記述的分析を行った.

    結果:精神科病院の看護部長が認識するリカバリーに向けた実践に影響している要因として325のコードが抽出され,【看護部長のリカバリー志向と伝達】【看護部長を理解する仲間の存在】【退院支援における看護職の充実感】【病院組織の文化と風土】の4つのコアカテゴリに分類された.

    結論:精神科病院においてリカバリーに向けた実践を行っていくためには,看護管理者のリカバリー志向を高める教育と,多職種・他部門を含んだ病院全体に対するリカバリーの教育の必要性,退院後の生活を知るなどリカバリーを目の当たりにする体験の必要性が示唆された.

  • 川口 江美子, 水田 真由美, 宮井 信行
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 458-468
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/21
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    目的:広域合併自治体における過疎地域での支所保健師活動の構造を明らかにし,保健師人材育成の方向性を探る.

    方法:過疎地域で支所保健師活動経験がある保健師8名に半構造的面接を行い,質的統合法(KJ法)で分析した.

    結果:支所保健師活動の連携には,住民までも含む【広範におよぶ連携構築】とシステム化する【継続できる連携構築】の両面があり,【新たな地域づくりへの進展】を加えて双方向の善き循環を成していた.また【力量形成を要す支所業務遂行】が,保健福祉業務全般を担う【支所勤務での地区担当】と地区診断とPDCAによる【地域特性に基づく事業展開】の基盤となっていた.

    結論:過疎地域の支所保健師活動の構造が明らかになった.長期俯瞰的指導と支所勤務経験者による公認の相談体制のもと,【力量形成を要す支所業務遂行】が全ての基盤となることが示された.今後の人材育成の方向性を見極めるのに寄与すると考える.

  • 二宮 寿美, 中谷 久恵
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 469-476
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/19
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    目的:在宅で老老介護を行っている主介護者の生活満足度に影響する要因を明らかにする.

    方法:訪問看護を利用している65歳以上の療養者とその介護を半年以上担う65歳以上の主介護者92名を対象に,聞き取り調査を行った.調査内容は,年齢,性別,介護期間,生活満足度,介護負担感,精神健康度,ストレス対処能力(SOC)であった.主介護者の生活満足度を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.

    結果および考察:分析の結果,主介護者の生活満足度が高い者は,低い者よりもSOCが高く,介護負担感が低下しており,介護期間,介護負担感およびSOCが関連していた.これは,主介護者のSOCが高いことにより介護に対するストレスを適切に対処できたため介護負担感が低下し,生活満足度が高くなったと考えられる.

    結論:主介護者の生活満足度に影響する要因として 介護期間,介護負担感,SOCが重要であることが示唆された.

  • ―信頼性・妥当性の検証―
    本谷 久美子, 荒木田 美香子
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 477-487
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/19
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    目的:看護学教師(以下,教師)の「看護学実習における病態教授活動評価尺度」(EPTA-NCP)を開発し,その信頼性と妥当性を検証する.

    方法:質的研究の結果をもとに,尺度原案37項目を作成した.看護系大学の成人看護学,老年看護学の看護専門領域に所属する教師2年目以上を対象に質問紙調査を行い,構成概念妥当性,内的整合性,基準関連妥当性を検証した.また,尺度の再現性を検証するため再テスト法を行った.

    結果:有効回答385名(有効回答率47.4%)を分析対象とした.探索的因子分析により6因子23項目を示し,確認的因子分析のモデル適合度はGFI = .899,AGFI = .858,CFI = .924,RMSEA = .063であった.外的基準との相関が認められ,Cronbach’s α係数は尺度全体.911であった.さらに再テスト法では有効回答80名(有効回答率39.0%)を分析し,得点間の相関は尺度全体.911であった.

    結論:本尺度の信頼性・妥当性は概ね確保されていることを確認した.

  • 笠原 邑斗, 菅野 雄介, 松尾 まき, 白濵 伴子, 瀧澤 美奈, 廣島 麻揚
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 488-498
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/19
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    目的:男性看護師におけるHopeを媒介としたワーク・エンゲイジメント(WE)プロセスモデルを明らかにする.

    方法:混合研究法の説明的デザインを用いた.男性看護師839名にWeb調査を行い,WEプロセスモデルを構造方程式モデリングで検証した.同意を得た13名に半構造化面接を行い,内容を量的結果と統合した.

    結果:228名を解析対象とした(有効回答率27.2%).WEプロセスモデルとして,上司の配慮,看護関連資格,進学の支援がHopeを仲介しWEに影響していた(GFI = .951,AGFI = .906,RMSEA = .084).対象者は男性役割を意識しており,上司の配慮とHopeの関連は「支援の充実した組織でキャリアアップを目指す」等で説明された.

    結論:男性看護師のHopeを媒介したWEプロセスモデルを混合研究法で明らかにした.男性看護師は性別意識を持つ一方,仕事と家庭の両立も意識していた.

  • 武井 勇介
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 499-508
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/19
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    目的:インストラクショナルデザインを用いて開発した産後うつ病に関する保健師の実践能力向上のための研修プログラムの効果と有用性を評価する.

    方法:産後うつ病に関する研修プログラムを開発し,保健師を対象にeラーニングを用いて実施した.研修前,研修直後,研修1か月後の知識テスト得点,目標達成度の得点はFriedman検定,各時期の比較はBonferroni法を用いた多重比較を行った.

    結果:保健師40名を分析対象とした.研修プログラム内容は興味関心など高い反応が得られ,対象者は研修前に比べ研修直後,1か月後では知識テスト得点,目標達成度の得点が有意に上昇(p < .05)し,本研修で得た知識,技術を実践活動で活かしていた.

    結論:本研修プログラムでは,対象者への高い学習意欲や動機付けがされ,知識の習得や実践能力の向上に繋がった.今後の保健師教育でもインストラクショナルデザインの手法を取り入れて教育や研修を行うことは有用であることが示唆された.

  • 渡邊 美奈子, 篠原 ひとみ
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 p. 509-519
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/19
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    目的:妊婦の主観的・客観的睡眠指標を経時的に測定し妊娠経過に伴う睡眠障害と自律神経活動の関係を明らかにする.

    方法:初期,中期,後期に主観的睡眠指標(PSQI-J, JESS),Silmee Bar type Liteを用い客観的睡眠指標と自律神経活動を測定した.

    結果:37名を分析対象とした.PSQI-J得点(高いほど自覚的睡眠の質が悪い)は初期より中期で有意に低かった.自律神経活動では,初期にHF平均(高いほど副交感神経活動優位)は有意に高く,LF平均/HF平均(高いほど交感神経活動優位)は有意に低かった.相関分析の結果,後期にPSQI-J得点とHF平均との間に負の相関,LF平均/HF平均との間に正の相関,JESS得点(高いほど日中の過度な眠気が強い)とHF平均との間に負の相関,LF平均/HF平均との間に正の相関を認めた.

    結論:妊婦の睡眠障害の一因に自律神経活動が関係している可能性がある.

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