日本看護科学会誌
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資料
全国の認定看護管理者所属施設の分布及び所属の有無と関連する二次医療圏・施設特性
―地理情報システムを用いたオープンデータ分析―
木田 亮平北村 言磯部 環武村 雪絵
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2023 年 43 巻 p. 305-314

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Abstract

目的:本研究は,認定看護管理者(CNA)の偏在是正と養成の普及推進のため,CNA所属施設の分布及び所属の有無と関連する二次医療圏や施設特性を明らかにすることを目的とした.

方法:本研究は,5つの公開データを施設名で連結し,CNA教育機関所在医療圏と地域分類に区分した地図にCNA所属施設と非所属施設をプロットし地図を作成した.さらに,二次医療圏特性とCNA所属施設数との関連,施設特性とCNA所属の有無との関連を確認するため二変量解析を実施した.

結果:CNAがいない二次医療圏はほとんどが過疎地域型医療圏であり,教育機関がない医療圏では有意に圏内のCNA所属施設数が少なかった(p < .001).施設レベルでは,病床数,教育機関までの距離,開設者,DPC区分が施設のCNAの有無と関連していた(p < .001).

結論:地域特性と施設特性による全国のCNA分布の偏在状況が確認された.

Translated Abstract

Aim: This study aimed to identify the nationwide distribution of certified nurse administrators (CNA), and secondary healthcare area and facility characteristics related to their affiliation.

Methods: We used five open databases. Two national maps were created by adding CNA affiliation/non-affiliation information to the map by secondary medical region characteristics. Furthermore, bivariate analyses (t-test, analysis of variance, and chi-square test) were conducted to confirm the association between secondary medical area characteristics and the number of facilities with CNA affiliation, and between facility characteristics and the presence of CNA affiliation.

Results: The medical areas with no CNAs within the secondary medical area were primarily rural medical areas, and medical areas with no educational institutions had significantly fewer CNAs within the area (p < .001). At the facility level, number of beds, distance to educational institution, establisher, and Diagnosis Procedure Combination (DPC) classification were associated with whether the facility had a CNA (p < .001).

Conclusion: The distribution of CNAs nationwide was uneven according to regional and facility characteristics; it is necessary to implement programs for education and dissemination that will correct the uneven distribution of CNAs.

Ⅰ. 背景

認定看護管理者は,管理者として優れた資質を持ち創造的に組織を発展させることができる能力を有する者(日本看護協会,2020)と定義され,多様なヘルスケアニーズを持つ個人,家族及び地域住民に対して質の高い組織的看護サービスを提供することを目指し1998年にその制度が発足した.2023年1月現在,4,624名が登録され,そのうち82.8%が病院に所属している.現行の制度では,認定看護管理者は,看護師としての実務経験が5年以上あり,そのうち通算3年以上は看護師長相当以上の経験があるもので,認定看護管理者教育課程サードレベル(180時間)の修了または看護管理に関連する学問領域の修士以上の学位を有する者が,認定審査を経て認定される.彼らはヘルスケアシステム論や組織・人材管理,資源・質管理を学修し,看護サービス管理における卓越した知識と技能を持ち,看護職員の労働条件や勤務環境の整備,看護実践能力の強化と体制整備,自組織や地域社会の医療・看護の質向上のための取り組みなどを推進するための組織マネジメントを行っている(日本看護協会,2015).2014年の改正医療法では,各医療施設において医療従事者の勤務環境改善への取り組みが必要となり,看護職員のマネジメントや医療・看護の質管理の両面において認定看護管理者の役割は一層期待されている.

認定看護管理者が担うべき役割は,地域や施設特性によらず重要であるが,彼らの所属施設は地域や施設特性によって偏在している可能性がある.日本看護協会が公表しているデータでは,東京都や大阪府,北海道といった特別区や政令指定都市をもつ都道府県に多く,鳥取県や佐賀県,徳島県といった地域に所属する人数が少ない(日本看護協会,2022c).認定看護管理者は大部分が病院に所属しており,各地域の医療施設数に依存するため,このような都道府県ごとの差が生じていると推察される.しかし,同一都道府県内でも人口や人口密度といった地域特性が異なる(日本医師会総合政策研究機構,2020)ため,二次医療圏ごとに認定看護管理者が所属している施設の分布が異なる可能性がある.

また,施設の病床規模別でも,小規模病院に少なく中・大規模病院に多く,病床規模別で偏りがみられる.一都道府県内の300床未満の病院に所属する看護管理者を対象とした調査では,認定看護管理者教育課程未受講の理由として,人員不足や勤務調整が難しいことが挙げられており(大鳥・福島,2014),病床規模が小さい施設では,人員配置等の制約から養成課程に人材を送ることが困難であり,所属の偏りが生じている可能性がある.病床規模の他,施設特性による偏在の可能性が予測されるが,認定看護管理者所属の有無と他の施設特性との関連は不明である.

今後必要性が増すと考えられる認定看護管理者について,地域レベルでの所属施設数や,施設における所属の有無といった偏在を是正し養成と普及を推進するため,現時点での認定看護管理者所属施設の分布を明らかにするとともに,所属の有無と関連する二次医療圏や施設特性を明らかにする必要がある.本研究は,全国における認定看護管理者が所属している地域および施設の分布を明らかにするため,1)二次医療圏ごとの認定看護管理者分布を可視化し,2)認定看護管理者の所属と関連する二次医療圏及び施設特性を明らかにすることを目的とする.

Ⅱ. 方法

1. 研究デザイン

本研究は,オープンデータを用いた横断研究である.

なお,本研究は東京都における皮膚・排泄ケア認定看護師の空間分布を示した類似の先行研究を参考に実施した(飯坂・真田,2016).

2. 使用データ

本研究では,5つのデータを使用した.二次医療圏の境界データとして,国土交通省が公表している国土数値情報「医療圏データ(令和2年)」に含まれる「二次医療圏シェープファイル」を使用した(国土交通省,2020).二次医療圏特性として,二次医療圏内の総人口を同データ内の「総人口(医療計画)」及び「面積(医療計画)」を使用した.認定看護管理者教育機関の所在地データは,日本看護協会が公開している「認定看護管理者教育機関別の開講状況・定員数一覧」(日本看護協会,2022b)から全教育機関を抽出し,ハンドサーチにより住所を確認した.全国の病院の位置情報は,2022年11月時点で地方厚生局が公開している「保険医療機関の指定一覧(医科)」より,病院名および住所情報を抽出し,地図上にプロットするため住所情報をcsvマッチングサービス(東京大学空間情報科学研究センター,2021)により緯度・経度に変換した.施設特性として,国土数値情報「医療機関データ(令和2年)」内の医療機関分類,開設者分類,病床数を,マッチングサービスで変換した病院一覧データと結合した.さらに,「令和2年度病床機能報告データ」(厚生労働省,2021)から各施設のDPC算定区分を抽出し,同じく病院一覧データと結合した.認定看護管理者所属施設のデータは,日本看護協会が公開している「認定看護管理者登録者一覧」(日本看護協会,2022a)より,2022年11月現在の所属施設名のみを抽出し,病院一覧データと結合した.病院の名称変更等により結合できないデータは,可能な限りハンドサーチにより情報を確認し結合した.

3. 地図の作成

地図の作成には,ArcGIS pro(Esriジャパン株式会社)を用いた.病院一覧データの緯度・経度に基づき認定看護管理者の所属施設と非所属施設を地図上にプロットし,二次医療圏内の認定看護管理者所属施設数をカウントした.二次医療圏の特性と圏内の認定看護管理者所属施設数を可視化するため,全国の認定看護管理者教育機関(サードレベル)の所在地および二次医療圏分類ごとに区分した地図を作成した.認定看護管理者教育機関の所在地は,すべての医療施設と最も近い教育機関との直線距離をArcGIS上で算出した.二次医療圏分類は,二次医療圏の医療需給等で主に用いられている,人口及び人口密度による3分類(大都市型,地方都市型,過疎地域型)(日本医師会総合政策研究機構,2020)を,本研究で使用するデータから算出し地図上に表示した.地図データは平面直角座標系に投影変換した.

4. 使用変数

二次医療圏特性の変数として,二次医療圏内の認定看護管理者教育機関所在地および二次医療圏分類を使用した.二次医療圏内の認定看護管理者教育機関所在地は,医療圏レベルでの教育アクセスを示す変数として使用し,二次医療圏分類は,地域規模を示す変数として,先行文献(日本医師会総合政策研究機構,2020)を参考に,圏内の人口が100万人以上もしくは人口密度が2,000人/km2の二次医療圏を大都市型,人口が20万人以上もしくは10~20万人かつ人口密度が200人/km2以上の二次医療圏を地方都市型,それ以外を過疎地域型に分類した.

施設特性の変数は,施設の規模を示す変数として病床数を,教育機関へのアクセスを示す変数として最も近い認定看護管理者教育機関までの直線距離を使用した.また,開設者およびDiagnosis Procedure Combination(DPC)区分を,それぞれ施設の設置主体および施設の医療密度等の機能を示す変数として使用した.開設者は,国や独立行政法人・地方自治体等,医療法人・個人,社会保険関係団体・公益法人・私立学校法人等をそれぞれ「国・公的医療機関」「医療法人・個人」「社会保険関係団体・その他」に分類した.DPC区分は,「大学病院本院群」「DPC特定病院群」「DPC標準病院群」「DPC病院ではない」にそれぞれ分類した.認定看護管理者に関する変数は,二次医療圏単位では圏内の施設に所属する認定看護管理者所属施設数を,施設単位では認定看護管理者の所属の有無を用いた.

5. 統計解析

はじめに,二次医療圏及び施設特性ごとに認定看護管理者所属施設の基本統計量を算出した.次に,地域レベルでの教育機関へのアクセス状況と認定看護管理者所属施設数との関連を確認するため,二次医療圏内の認定看護管理者教育機関所在の有無と認定看護管理者所属施設数をt検定で確認した.二次医療圏分類と圏内の認定看護管理者所属施設数との関連については一元配置分散分析および多重比較を行った.さらに施設特性と認定看護管理者所属施設との関連を確認するため,各施設の病床数および認定看護管理者教育機関までの直線距離と各施設の認定看護管理者所属の有無についてはt検定を,開設者およびDPC区分についてはカイ二乗検定をそれぞれ実施した.最後に,認定看護管理者所属施設割合が低い「医療法人・個人」の施設でのみ同様の分析を行った.有意水準は0.05とし,統計解析にはJupyter notebook for python 3.9(ANACONDA)を使用した.

6. 倫理的配慮

本研究で用いたデータはすべて一般公開されているデータの二次解析であるが,施設名及び認定看護管理者の個人名は分析用データには含めず解析した.研究実施に際し,東京大学医学系研究科・医学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2022004NIe).

Ⅲ. 結果

1. 二次医療圏と施設の特性

二次医療圏および施設の特性を表1に示した.全国335,大都市型医療圏は49(14.6%),地方都市型は157(46.9%),過疎地域型は129(38.5%)であった.二次医療圏内の平均施設数は24.4施設(標準偏差26.3)で,平均病床数は180.1床(標準偏差45.9)であった.大都市型医療圏の平均施設数は59.8施設(標準偏差43.4)で,圏内の施設の平均病床数は213.2床(標準偏差35.5)であった.地方都市型医療圏の平均施設数は26.3施設(標準偏差16.7)で,平均病床数は186.7床(標準偏差38.7)であった.過疎地域型医療圏の平均施設数は8.5(標準偏差5.1)で,平均病床数は159.6床(標準偏差48.0)であった.二次医療圏内の認定看護管理者所属施設数は5.31施設(標準偏差6.59),認定看護管理者数は9.42人(標準偏差12.97)であり,圏内に認定看護管理者がいない医療圏は34(10.1%)であった.

表1 

二次医療圏特性と施設特性の記述統計

平均or度数 標準偏差or % Q1 Q2 Q3
二次医療圏特性(n = 335)
地域分類別二次医療圏数
大都市型 49 14.6
地方都市型 157 46.9
過疎地域型 129 38.5
二次医療圏内の施設数 24.37 26.33 9 16 30
大都市型 59.82 43.35 30 43 77
地方都市型 26.31 16.72 15 21 33
過疎地域型 8.54 5.09 5 8 11
地域分類別の施設当たり病床数a 180.13 45.88 151.91 180.25 206.33
大都市型 213.21 35.45 192.62 206.36 231.15
地方都市型 186.66 38.69 161.90 184.86 206.64
過疎地域型 159.61 47.96 127.70 153.67 183.17
二次医療圏内の認定看護管理者教育機関
含む 29 8.7
含まない 306 91.3
認定看護管理者所属施設数 5.31 6.59 2 3 7
0施設 34 10.1
1~2施設 108 32.3
3~6施設 107 31.9
7施設以上 86 25.7
認定看護管理者数 9.42 12.97 2 5 12
施設特性(n = 8,160)
病床数 184.73 157.73 77 140 237
開設者
国・公的医療機関 1,485 18.2
医療法人・個人 5,798 71.1
社会保険関係団体・その他 877 10.7
DPC区分
大学病院本院群 81 1
DPC特定病院群 167 2
DPC標準病院群 1,561 19.1
DPC病院ではない 6,351 77.8
認定看護管理者所属の有無
所属あり 1,788 21.8
所属無し 6,388 78.2
認定看護管理者教育機関までの距離(km) 42.299 41.625 11.171 31.707 60.961

Q1:25パーセンタイル値,Q2:50パーセンタイル値(中央値),Q3:75パーセンタイル値.

a 各二次医療圏内の平均病床数を算出し,その後地域分類別の平均値を算出.

対象の全施設の特性は,病床数は184.7(標準偏差157.7),開設者が国・公的医療機関である施設が1,485施設(18.2%),医療法人・個人が5,798施設(71.1%),社会保険関係団体・その他が877施設(10.7%)であった.DPC区分では,大学病院本院群が81施設(1.0%),DPC特定病院群が167施設(2.0%),DPC標準病院群が1,561施設(19.1%),DPC病院ではない施設が6,351(77.8%)であった.全国の施設の1,788施設(21.8%)に認定看護管理者が所属しており,6,388施設(78.2%)では認定看護管理者が所属していなかった.各医療施設から最も近い認定看護管理者教育機関までの距離は,平均42.3 km(標準偏差41.6 km)であった.

2. 二次医療圏特性と認定看護管理者所属施設数との関連

認定看護管理者教育機関の所在地および所在する二次医療圏と認定看護管理者所属施設数の分布を図1に示した.地域的に,東京都および近郊の都道府県や大阪府に認定看護管理者所属施設が多く,認定看護管理者教育機関所在二次医療圏に認定看護管理者所属施設が多いこと,東京都や大阪府近郊では,認定看護管理者教育機関所在地域周辺の二次医療圏も,認定看護管理者所属施設が多いことが視覚的に確認された.t検定の結果,二次医療圏に認定看護管理者教育機関がある地域とそうでない地域では,認定看護管理者所属施設数に統計的有意な差がみられた(p < .001)(表2).

図1 

二次医療圏における認定看護管理者教育機関の所在地と認定看護管理者所属施設数の分布.

表2 

二次医療圏特性と圏内の認定看護管理者所属施設数との関連(n = 335)

平均 標準偏差 p 多重比較c
二次医療圏内の認定看護管理者教育機関a
含む 17.72 12.29 <.001
含まない 4.14 4.21
地域分類b
大都市型 14.96 10.89 <.001 大都市型>地方都市型>過疎地域型
地方都市型 5.46 3.72
過疎地域型 1.47 1.24

a t検定を実施.

b 一元配置分散分析を実施.

c Dunnett法による多重比較を実施.

二次医療圏分類と認定看護管理者所属施設数の分布を図2に示した.圏内に認定看護管理者がいない医療圏は,京都府山城南医療圏及び熊本県有明医療圏を除き,過疎地域型医療圏でのみ確認され,大都市型や地方都市型の医療圏に認定看護管理者所属施設が集中している傾向が確認された.一元配置分散分析および多重比較の結果,大都市型,地方都市型,過疎地域型の順に,認定看護管理者所属施設数が多かった(p < .001).

図2 

二次医療圏における二次医療圏分類と認定看護管理者所属施設数の分布.

3. 施設特性と認定看護管理者所属の有無との関連

施設特性と認定看護管理者所属の有無との関連について表3に示した.施設の病床数と認定看護管理者所属の有無では,認定看護管理者が所属している施設の病床数が有意に多かった(p < .001).最も近い認定看護管理者教育機関までの距離と認定看護管理者の有無では,認定看護管理者所属施設が統計的有意にその距離が近かった(p < .001).開設者との関連では,「医療法人・個人」よりも「国・公的医療機関」「社会保険関係団体・その他」の施設で,認定看護管理者所属施設割合が統計的有意に多かった(p < .001).またDPC区分では,「DPC病院ではない」施設で,その他の施設よりも認定看護管理者所属施設割合が統計的有意に少なかった(p < .001).

表3 

施設特性と認定看護管理者所属の有無との関連(n = 8,160)

認定看護管理者所属あり(n = 1,788) 認定看護管理者所属なし(n = 6,388) p
平均 標準偏差 平均 標準偏差
病床数a 317.39 214.88 147.72 112.53 <.001
認定看護管理者教育機関までの距離(km)a 37.464 37.491 43.648 42.612 <.001
度数 調整済み残差 度数 調整済み残差 p
開設者b
国・公的医療機関 798 32.9 687 –32.9 <.001
医療法人・個人 655 –36 5,143 36
社会保険関係団体・その他 327 11.7 550 –11.7
DPC区分b
大学病院本院群 77 16 4 –16 <.001
DPC特定病院群 148 21 19 –21
DPC標準病院群 841 34.1 720 –34.1
DPC病院ではない 714 –43.3 5,637 43.3

a t検定を実施.

b カイ二乗検定を実施.

開設者が「医療法人・個人」のみの群で同様に分析した結果,全体での分析と同様に,病床数,最も近い認定看護管理者教育機関までの距離,DPC区分で,認定看護管理者が所属している施設のほうがより病床数が多く(p < .001),教育機関までの距離が短く(p < .001),DPC算定施設の割合が高かった(p < .001)(表4).

表4 

施設特性と認定看護管理者所属の有無との関連(「医療法人・個人」のみ)(n = 5,798)

認定看護管理者所属あり(n = 655) 認定看護管理者所属なし(n = 5,143) p
平均 標準偏差 平均 標準偏差
病床数a 211.37 134.88 139.35 104.13 <.001
認定看護管理者教育機関までの距離(km)a 31.09 31.86 40.63 39.12 <.001
度数 調整済み残差 度数 調整済み残差 p
DPC区分b
DPC特定病院群 17 9.5 6 –9.5 <.001
DPC標準病院群 222 19.3 438 –19.3
DPC病院ではない 416 –20.8 4,699 20.8

a t検定を実施.

b カイ二乗検定を実施.

Ⅳ. 考察

今回,二次医療圏ごとの認定看護管理者分布を可視化し,認定看護管理者の所属と関連する二次医療圏及び施設特性を明らかにした.これまで,都道府県単位での分布は公表されていた(日本看護協会,2022a)が,より詳細な二次医療圏ごとの分布及び地域特性との関連を可視化し,地域特性および施設特性と認定看護管理者所属施設の分布を明らかにできた.

1. 二次医療圏特性と認定看護管理者所属施設の特徴

地理情報システムを用い,全国すべての二次医療圏ごとに認定看護管理者所属施設の分布を示したことにより,現在の視覚的な偏在状況が明らかになった.地域レベルの分析の結果,東京都および大阪府近郊とその周辺,認定看護管理者教育機関が所在する二次医療圏,大都市型・地方都市型二次医療圏で,地域の認定看護管理者所属施設数が多いことが確認された.わが国では大都市型や地方都市型の二次医療圏のほうが医療施設数は多いため,圏内の認定看護管理者所属施設数は,圏内の医療施設数の影響を強く受けた可能性がある.しかし,二次医療圏内に認定看護管理者所属施設がない医療圏が,京都府山城南医療圏および熊本県有明医療圏を除き,すべてが過疎地域型であったことから,認定看護管理者教育機関へのアクセスが容易な都市部に認定看護管理者が偏在している可能性が示唆された.

現在,認定看護管理者教育機関のすべてが大都市型・地方都市型の二次医療圏に位置しており,過疎地域型の二次医療圏に位置している教育機関は存在しない.認定看護管理者教育は,そのほとんどが対面で実施されているため,教育課程受講のために教育機関へ出向する必要がある.教育機関が都市部に所在していたほうが教育機関へのアクセスは容易であると考えられるが,現時点で過疎地域型二次医療圏に位置する施設では認定看護管理者数が少ないことから,ファーストレベルの時間削減(日本看護協会,2018)など,受講しやすい制度改正等がこれまでも検討されているが,都道府県よりもミクロな単位で教育機関の所在地を考慮することや,オンラインwebシステム等を用いた遠隔での講義等の教育機会提供,集合演習を対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式での提供,単一会場でのみ開講するのではなく,教育機関へのアクセスが難しい地域での出張型サテライト会場で複数回開講し受講できるようにすること,単位制の導入等により受講者の状況等に応じ数年の受講期間を認めるなど,アクセスが困難な地域に在住する看護管理者の受講を促進する取り組みも必要と考えられる.

2. 施設特性と認定看護管理者所属施設の特徴

各医療施設と認定看護管理者所属の有無との関連を検証した結果,病床数が多いこと,認定看護管理者教育機関までの直線距離が短いこと,開設者が「医療法人・個人」以外の施設であること,DPC算定施設であることが,有意に認定看護管理者の所属に関連しており,開設者が「医療法人・個人」の医療施設でのみ実施した分析でも同様の結果だった.二次医療圏レベルの分析結果から,教育機関へのアクセス状況が認定看護管理者所属に関連していることが示唆されたが,施設レベルでもその傾向が確認された.認定看護管理者教育課程は,一定期間の受講が必要であり,教育機関まで距離が遠い医療施設の看護管理者にとって受講しづらい状況である可能性がある.

また,病床数や施設のDPC算定の有無との関連の結果から,比較的大規模施設に所属している認定看護管理者が多く,小規模施設には少ないという偏在状況も明らかになった.一般的に大規模施設のほうが,看護職員配置も多い傾向にあるため,看護管理者やリーダー層の看護職員が一定期間職場を離れて研修に参加することが可能であり,結果として大規模施設に所属する認定看護管理者が多くなっている可能性がある.さらに,大規模施設のほうが同一施設に所属する看護管理者が多いことから,施設内の看護管理者が複数名いることで,管理者としての研鑽や教育,管理者同士のコミュニケーションが頻繁に行われ,教育課程受講の動機づけや看護管理者としての技能が向上しやすい環境にあると考えられる.小規模施設の看護管理者が容易に受講できるよう,オンラインによる研修や,教育機関へアクセスしにくい地域の看護管理者を対象とした出張型の研修,小規模施設や教育機関へアクセスしにくい地域・施設に対するアウトリーチ活動等を企画することが望まれる.

開設者分類と認定看護管理者所属の有無との関連では,「医療法人・個人」の医療施設で有意に認定看護管理者が少ないことが明らかになった.日本病院会(2019)の調査によると,国・公的医療機関等よりも,医療法人等の医療施設で,1病院あたりの医療人材確保・育成に係る費用金額が少ないことが報告されている.医療法人・個人の医療施設では,他の開設者の施設よりも受講料等の経済的な支援が不足している可能性や,認定看護管理者が組織にもたらすアウトカムが十分示されていないこと,診療報酬上の経済的動機がないことにより,認定看護管理者教育課程の受講を積極的に推奨できていない可能性がある.一方,公的医療施設よりも,医療法人や個人運営の医療施設のほうが相対的に病床数は少なくDPC算定施設が少ないため,これらの変数が交絡している可能性がある.しかし,「医療法人・個人」の医療施設のみを対象とした分析でも,病床数や教育機関までの距離,DPC算定状況は有意に関連していたことから,開設者によらず施設規模や施設の機能(DPC算定の有無),教育機関までの距離は,施設の認定看護管理者所属状況に関連すると考えられる.

3. 限界

本研究は,以下の限界を有している.第一に,使用したオープンデータのうち最新のデータである「認定看護管理者登録者一覧」のデータ取得日に合わせ,可能な限り各種最新のオープンデータを用い,施設情報等が一致しない場合は可能な限りハンドサーチによりデータを更新したうえで使用したが,情報が一致していない可能性がある.第二に,「認定看護管理者登録者一覧」に登録されていない認定看護管理者の所在は不明であるため,認定看護管理者所属施設のデータが実際の所属の有無と一致していない可能性がある.第三に,公開されているデータに無い変数は検討できていないため,他変数が交絡している可能性がある.

Ⅴ. 結論

本研究により,認定看護管理者の分布の現状が可視化され,さらに過疎地域型医療圏や医療法人・個人病院では認定看護管理者の所属施設が少なく,大都市型または地方都市型医療圏に所在する施設,病床規模が大きい施設,教育機関までの距離が短い施設,設置主体が国・公的医療機関や社会保険関係団体等の施設,DPC算定施設で認定看護管理者の所属施設に偏在していることが明らかになった.本研究の知見は,認定看護管理者の偏在を是正し,養成と普及を推進する施策のための基礎資料となることが期待される.

謝辞:本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業若手研究(「専門的教育を受けた看護管理者の配置と患者アウトカムとの関連の検証(22K17419)」(研究代表者:木田亮平))の助成を受け実施したものです.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:RKは,研究デザイン,データセット作成,データ分析,結果の解釈,原稿執筆を担当した.AK,TI,YTは,データ分析および結果の解釈に助言し,原稿に加筆・修正を加えた.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

文献
 
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